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2018年10月 8日 (月)

へヴィーなサウンドが素直にカッコいい

Title:NINTH
Musician:the GazettE

タイトル通り9作目のアルバムとなる、ヴィジュアル系ロックバンドthe GazettEの新作。前作「DOGMA」から約3年ぶりとなるニューアルバムで、ちょっと久々となる新譜。ただし、途中にベストアルバム「TRACE VOL.2」のリリースもあったため、さほど久々という印象は受け間視線。

the GazettEといえばヴィジュアル系バンドの中でも特にハードコアのテイストが強いバンド。今回のアルバムでもイントロ的な「99.999」からいきなりノイズが全開のへヴィーな楽曲からスタート。実質的な1曲目となる「Falling」も、最初は哀愁感ある耽美的なメロでスタートしつつ、いきなりへヴィーなサウンドとデス声でズシリとした楽曲に展開していきます。

その後も「NINTH ODD SMELL」「GUSH」といわゆるヴィジュアル系らしい耽美的なメロディーラインがバックに流れつつも、かなり分厚くハードコアなサウンドが流れる楽曲が続きます。

オリジナルアルバムでは前々作「BEAUTIFUL DEFORMITY」あたりから、ハードコア志向が強くなり、いわゆるヴィジュアル系的な雰囲気の強いメロディーよりも、へヴィーなサウンドを前に押し出した楽曲が目立つようになりました。今回のアルバムも基本的にその路線を引き継ぐようなスタイル。途中、「虚蜩」「その声は脆く」のようにメロディーを前に押し出したような曲もあるのですが、全体的にはへヴィーなバンドサウンドが前面に押し出された曲が並びます。

少々ナルシスティックに感じる鼻にかかったような歌い方と、歌謡曲的で哀愁感漂うメロディーラインという、いわゆるいかにもヴィジュアル系っぽいメロディーについてはおそらく好き嫌いが分かれそうに感じます。正直言うと個人的にも聴いていてあまり好みではありません。ただここ最近の彼らのアルバムもそうですし本作もそうですが、まずはカッコいいバンドサウンドが前に押し出された結果、そういった癖のあるメロディーの部分があまり気にならないレベルになっています。本作もそう。結果として最初から最後まで、おそらく普段ヴィジュアル系を聴かない、ハードコアが好きなリスナー層でも楽しめる作品になっていたと思います。

ただ一方で、このハードコア路線についても正直言うと、若干ありふれた感がありthe GazettEらしいサウンドという部分をあまり確立されていないような感じがするのも気になるところ。サウンドのパターンもあまり少なく、アルバムでも似たような雰囲気の曲も目立ちます。サウンド自体は非常にカッコよいと思うのですが、その点が気になりました。もちろん、メロディーとの組み合わせにより「彼ららしさ」はしっかり出ているとも言えるのですが・・・。

そんな訳でいい意味で「ヴィジュアル系」という枠組みに捕らわれずにハードコアバンドの作品として十分に楽しめそうな良作に仕上がっていた本作。いろいろと課題に感じる部分もありつつも、素直にサウンドのカッコよさを楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★

the GazettE 過去の作品
TRACES BEST OF 2005-2009
DIM
TOXIC
DIVISION
BEAUTIFUL DEFORMITY
DOGMA
TRACES VOL.2


ほかに聴いたアルバム

Future Pop/Perfume

かなり久しぶりに聴いてみたPerfumeのニューアルバム。「Tiny Baby」のようなキュートなポップチューンもあったりして、J-POP路線は貫かれている一方、「FUSION」のようなインストナンバーもあったりして、歌よりも中田ヤスタカのサウンドが強調されているような印象も。結果、ポップスとしてのインパクトはちょっと薄くなったようなイメージがあるのですが、エレクトロのアルバムとしては強度が増している印象も。中田ヤスタカfeaturing Perfumeみたいな作品になってしまいそうな懸念もありますが。

評価:★★★★

Perfume 過去の作品
GAME

FREE TOKYO/SKY-HI

avexのダンスグループAAAのメンバーながらラッパーとしても活躍。最近ではラッパーとしての活動も高い評価を受けるようになったSKY-HIこと日高光啓の6曲入りのミニアルバム。日本語ラップの先駆者への敬意を綴った「FREE TOKYO」や自身のラッパーとしての決意を綴った「Name Tag」などリリックは比較的わかりやすく、かつしっかりと聴かせます。サウンド的にもトラップミュージックの要素を強く感じ、今時の要素が強い音。ラッパーとしてのスキルは言うまでもなく、間違いなく本格的なラップのアルバム。個人的にはちょっとラッパーとしてラップの迫力が弱いかな、という感じはしますが、今後の活躍にも期待したいところです。

評価:★★★★

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