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2018年10月15日 (月)

不倫騒動を皮肉った曲も登場

Title:好きなら問わない
Musician:ゲスの極み乙女。

例の不倫騒動以来、すっかりと「国民のヒール」的な状況になってしまった川谷絵音率いるゲスの極み乙女。いまだに時おり見受けられるバッシング記事にはいい加減うんざりさせられるのですが、そんな状況とは裏腹にむしろミュージシャンとしては脂がのってかなり充実しているように感じられます。前作「達磨林檎」もゲスの極み乙女。史上最高傑作といえる充実作となっていましたが、続く本作も文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。

特に今回のアルバムでは、例の騒動をかなり皮肉った当てつけとも思われる歌詞も登場。配信オンリーでリリースされた「あなたには負けない」では不倫騒動のスキャンダルを暴いた文芸春秋社とコラボして話題となりましたが(残念ながら本作には未収録ですが)、「戦ってしまうよ」も今回の騒動を彷彿とさせる内容になっていますし、さらにストレートなのが「僕は芸能人じゃない」はまさにそのまま今回の騒動を皮肉った内容に。川谷絵音が誰と恋愛しようが、自分の人生に何一つ関係ないくせにバッシングを続ける連中にとっては、バッシングが加速しそうな苛立たせそうな歌詞でしょうが、過剰なバッシングにいい加減飽き飽きしている人にとっては、ある意味かなり痛快な歌詞になっています。

さて、ゲスの極み乙女。といえば、当初は「ヒップホッププログレバンド」と自称し、ギターロックを軸にソウル、ファンク、HIP HOPなどの要素を入れた複雑、実験的なサウンドが大きな特徴となっていました。今回のアルバムでも1曲目「オンナは変わる」(これも不倫騒動を考えると意味深な歌詞ですが)ではファンキーなリズムを取り入れたり、11曲目にはインディーズ時代にリリースした「踊れないなら、ゲスになってしまえよ」に収録した「ホワイトワルツ」をadult ver.として収録。アダルティーでジャジーなアレンジに仕上げており、原曲の雰囲気をガラリと変えてきています。

ただアルバム全体としては哀愁感あふれたメロディーラインを前に押し出した、ある種の歌謡曲のテイストが強くなった作品となっていました。「はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした」も切なさを感じらせるメロディーと歌詞が大きなインパクトとなっていますし、「もう切ないとは言わせない」も哀しげなメロディーラインが大きなインパクトとなっています。ゲスらしいメロディーラインに一ひねりを加えている部分もあるとはいえ、雰囲気としては川谷絵音率いる別バンド、indigo la Endに近づいているような印象すら受けました。

そしてこの彼らしい哀しさを帯びたメロディーラインが実に秀逸。indgo la Endの最新アルバム「PULSATE」も川谷絵音のコアな部分が表に出たような美しいメロディーラインが強い印象を与えてくれるアルバムでしたが、本作も同様にとろけるように美しいメロディーは彼のミュージシャンとしての本質的な部分があらわてきています。特にラストを飾る「アオミ」はちょっと80年代的なテイストも漂う美しいAORのサウンドとメロディーが素晴らしい傑作。個人的にはバックの「は~あ~」という女性のコーラスラインには鳥肌が立つほどの気持ちよさを感じます。

ちなみに本作ではアニメ「中間管理録トネガワ」の主題歌「颯爽と走るトネガワ君」も収録。アニメの内容に沿ったいかにもなアニメソングだっただけにアルバムに収録されたのはちょっと意外にも感じたのですが、こういう「飛び道具」的な曲でもアルバムの中で違和感なく聴けてしまうのも、ゲスの極み乙女。らしい魅力と言えるかもしれません。

そんな訳でミュージシャンとして非常に脂ののっていることを感じる傑作アルバム。前作に比べると前作に軍配が上がるかもしれませんが、それを差し引いても文句なしの傑作だったと思います。これからの活動も実に楽しみです。

評価:★★★★★

ゲスの極み乙女。 過去の作品
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
みんなノーマル
魅力がすごいよ
両成敗
達磨林檎


ほかに聴いたアルバム

822/森山直太朗

前回、ベストアルバム「大傑作撰」で久しぶりに彼のアルバムを聴いたのですが、本作はベスト盤リリース後、はじめてリリースされたオリジナルアルバム。興味をもったのは最近、子どもとよく聴いているNHKの子ども向け番組「みいつけた」のエンディングテーマ「みんなおんなじ」が収録されていたから。番組のキャラクターが歌う部分もそのままになっていたのは個人的にはうれしかったのですが(笑)、ちなみにこの曲、メロディーが完全にKANの「愛は勝つ」なんですよね・・・。

もっとも森山直太朗の曲で気になる「いかにも文学的風な歌詞だけど、内容的には何も言っていない」歌詞は本作でも気になります。個人的には彼の書く歌詞はどうも好きになれません。一方でバラードばかりで単調だったメロディーラインは以前に比べてグッと進化した感じで、ミディアムテンポ中心の構成でも最後まで飽きずに聴くことが出来ました。悪いアルバムとは思わないけど・・・次聴くのは次のベスト盤でいいかな・・・。

評価:★★★★

森山直太朗 過去の作品
大傑作撰

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