「3」人組となった「3」枚目のアルバム
Title:3
Musician:Sweet Robots Against The Machine
テイ・トウワのソロプロジェクト、Sweet Robots Against The Machineがなんと3人組となって復活。オリジナルアルバムとしてはなんと約16年ぶりの新作となります。タイトル通り、「3」枚目となる本作。さらには「3」人組となってのアルバムとなるのですが、その3人がテイ・トウワと、最近ではMETA FIVEとして共に活動している砂原良徳、そしてバカリズムの3人・・・・・・え、バカリズム?
かなり意外な人選で驚いたのですが、じゃあこのバカリズムがどのようにアルバムに参加しているのか聴いてみると・・・基本的にこのアルバムではバカリズムがポエトリーリーディング、あるいは女性との会話を「ネタ」として披露しつつ、そのバックにテイ・トウワと砂原良徳のトラックが流れてくるスタイル。ちなみにゲストとして参加している女性陣も夏帆や麻生久美子とかなり豪華なメンバーが参加しています。
この楽曲にバカリズムのネタが全面的に展開しているスタイルは賛否両論あるようで、確かに主題であるはずのテイ・トウワや砂原良徳のトラックが単なる「伴奏」のようにも感じてしまいます。ただ、テイや砂原のトラックが楽曲としてバカリズムの「ネタ」としっかり組み合わさっており決して単純な「伴奏」とはなっていません。今回のアルバムではスポークン・ワードとテクノを融合させた「スポークン・テクノ」なるジャンルを提唱しているようですが、まさに話し言葉とサウンドがしっかりとマッチしており、ひとつの音楽のジャンルとして機能しているように感じます。
実際、おそらくバックのトラックだけをインストで聴くと物足りなさを感じそうですし、逆にバカリズムの「ネタ」だけを聴いていても物足りなさを感じてしまいそう。バカリズムのトークはサウンドに乗って展開していますし、サウンドはサウンドでそのトークに沿った、主張しすぎない、かといってもBGM的に完全に埋没している訳でもない、絶妙なバランスを保っています。
そのテイ・トウワと砂原良徳のトラック、クレジットを見る限りは両者が協力して作った、というよりは基本的にテイ・トウワが主導で、「非常識クイズ(Insane quiz)」「捨てられない街角(Boxes)」の2曲が砂原良徳が担当している感じ。両者ともラウンジ色の強いテクノでアルバム全体として統一感があり、清涼感あるサウンドが心地よい印象。あえていえばテイのサウンドはよりラウンジ色が強く、砂原は「非常識クイズ(Insane quiz)」はほどよいビート感が心地よく、また「捨てられない街角(Boxes)」はラテンテイストのサウンドをバックした男女デゥオの「歌謡曲」的なナンバーになっており、テイ・トウワの曲とはちょっと違った雰囲気の曲とすることによってアルバムの中でインパクトを出しています。
バカリズムのネタの方はシュールなネタがメイン。以前、土岐麻子のアルバムに参加したことがあり、その時の「ネタ」が正直言って非常に寒かったので、彼のネタは自分には合わないのかな、と思っていたのですが、今回のネタは素直におもしろかったです(笑)。こちらも比較的淡々とした感じに進んでおり、トラックに対して必要以上に主張しすぎず、ほどよくバランスを保っている感じになっていました。
そんな訳で単なるバカリズムのネタアルバムになっているのでは?という意見も散見されるのですが個人的にはしっかりと3人の個性が組み合わさった「スポークン・テクノ」の楽曲を収録しているアルバムに仕上がっていたと思います。スタイリッシュなサウンドとユニークなネタがほどよくバランスよく組み合わさった傑作でした。
評価:★★★★★
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