アラブ、アフリカ、西洋が融合
Title:El Ndjoum
Musician:Sofiane Saidi&Mazalda
今日紹介するのは、ワールドミュージックのミュージシャン。パリ在住のアルジェリア人ライ歌手、Sofiane Saidi(ソフィアン・サイディ)です。女性の顔がジャケットになっているので、その人がソフィアン・サイディかと思いきや、流れてきたのはおもいっきりおじさんの声。なんでも40代後半くらいの男性歌手。ライとはアルジェリア西部のオラン地方起源のポピュラー音楽。90年代のイスラム原理主義の伸長により多くのミュージシャンがフランスに移住し、活動を続けているとか。彼もそんなミュージシャンの一人ということなのでしょう。
アラブ音楽からの影響を強く受けているのがライの特徴のようで、本作も最初、「Wahdi Ana W Galbi」のスタートはアラビア音楽のような哀愁感あふれる笛の音色からスタート。ソフィアンのボーカルも哀愁感あふれる歌声を聴かせてくれています。続く「El Ndjoum」もリズミカルなダンスチューンなのですが、軽快なパーカッションのリズムにのせて歌われるメロディーやサウンドは中近東的なエキゾチックさがあふれる音楽。アラブ系の音楽らしいこぶし聴いたボーカルと哀愁感あるメロディーが大きな魅力になっています。
ただ一方ではアフリカ的なリズムが同時に加わっている点も大きな魅力に感じます。例えば前述の「El Ndjoum」のパーカッションなどはトライバルな要素を強く感じますし、「Yamma」などはリズミカルなパーカッションにはアフロビート的なリズムを感じますし、「Gasbah Trinsiti」のリズムにも同じくアフリカ音楽的な要素を強く感じます。ここらへん、アラビアとアフリカの文化の交差点で生まれた音楽のような大きな魅力を感じることが出来ます。
あともうひとつユニークなのは基本的に生音主体。また最近、ライのミュージシャンでは声にエフェクトをかける、いわゆる「ロボ声」が流行っているようなのですが、完全に生声でロボ声はなし。泥臭さを感じるソフィアンのボーカルが大きな魅力となっています。ただその一方ではシンセのサウンドは要所要所に取り入れており、例えば「Bourkan」はシンセのリズムやサウンドが楽曲全編に。さらに「La classe Fi Las Vegas」は完全なディスコチューンになっています。
また、シンセを取り入れたナンバーに関してはワールドミュージック的な独特の癖のある要素は薄くなり、むしろ西洋音楽的な垢抜けたポップチューンになっている点も大きな特徴に感じます。そのため、彼のボーカルや生音により、最初アルバムを聴きはじめたころは泥臭いなぁ、と強く感じさせる一方、中盤以降に関してはむしろ垢抜けた雰囲気さえ感じるアルバムになっていました。
ここらへん、アラビア、アフリカ、さらに西洋という文化が混じり合ったサウンドというのが最大の魅力といった感じでしょうか。アルバムの中に様々な音楽的な要素が入り、非常にユニークなアルバムに感じます。最初、ちょっと取っつきにくさも感じる部分もあるのですが、アルバムを最後まで聴くと、いい意味で意外な聴きやすさを感じ、はまってしまうようなそんな1枚でした。
評価:★★★★★
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