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2018年10月 1日 (月)

雑食性を感じるバラエティー富んだ構成

Title:Be the Cowboy
Musician:Mitski

前作「Puberty 2」が各種メディアに軒並み高評価となり一躍注目を集めた女性シンガーソングライター。ちょっと読みにくいその名前は「ミツキ」と呼ぶらしいのですが、なんと日本出身で日本人の母親とアメリカ人の父親のもとで生まれたということもあり日本でも大きな注目を集めてきています。さらに日本人の母親の影響で日本の音楽にも大きな影響を受けたようで、影響を受けたミュージシャンとして椎名林檎の名前をあげているそうです。

そんな彼女のアルバムは全体的にはエレクトロサウンドを取り入れつつもロックの色合いも強いメロディアスなポップチューンが並んでいます。1曲目「Geyser」はいきなり荘厳な雰囲気の曲でスタート。伸びやかな彼女の歌声をあわせてちょっと神秘的な雰囲気を感じさせます。ただ2曲目「Why Didn't You Stop Me?」はエレクトロサウンドにギターサウンドが入った軽快なポップチューン。メロディアスなメロディーラインはとても聴きやすく、インパクトある耳馴染みあるナンバーに仕上がっています。

基本的に「Why Didn't You Stop Me?」と同様に、メロディーがポップでフックが効いているというのも彼女の楽曲の大きな魅力。例えば「Lonesome Love」もアコースティックテイストのサウンドと伸びやかな彼女の歌声により爽やかでちょっと切なさを感じるメロディーラインを実に効果的に聴かせてくれますし、終盤の「Washing Machine Heart」などもエレクトロサウンドのテンポよいリズムをバックにウィスパー気味のボーカルで歌い上げるポップなメロディーが耳に残ります。インパクトを感じるメロディーラインがアルバムを通じて大きな魅力に感じました。

また上にも書きましたがギターロックの色合いを強く感じさせるのも大きな特徴。「A Pearl」のサウンドはギターを中心としたバンドサウンドがベースですし、「Remember My Name」もバンドサウンドでダイナミックに聴かせるナンバーに仕上がっています。ただ全体的にはロック系のミュージシャンというよりも、バンドサウンドやエレクトロサウンドを入れつつ、アルバム全体としてはかなりごちゃまぜな印象を受ける構成となっていました。

例えば「Me and My Husband」ではピアノを入れてもっとポップなテイストが強くなっていましたし、「A Horse Named Cold Air」はピアノと彼女の歌声で幻想的に聴かせるナンバーに。ラストの「Two Slow Dancers」も静かに聴かせるエレクトロのナンバーで締めくくっています。ある意味この雑食性的な部分がJ-POPからの影響・・・・・・と言えるかもしれません。

ただ少々統一感に欠けるようなサウンド構成になっていてもポップなメロディーラインと美しくも同時に力強さを感じるMitskiのボーカルにより、しっかりとMitskiの個性が生じているアルバムに仕上がっていました。また今回のアルバム、全14曲入りながらも32分という短い内容。1曲あたり1、2分程度の曲が並んでおり、ポンポンと曲が変わっていく展開になっています。この1曲あたりの短さもこのアルバムが聴きやすかった大きな要因。この点含めて、とてもポップで聴きやすいアルバムに仕上がっていたと思います。

日本人としても応援したくなるミュージシャンですが、ただその点を差し引いても非常に才能を感じる、これからが楽しみなミュージシャンなのは間違いありません。またこのアルバムはアメリカビルボードで52位とブレイクには至っていませんが、近いうちに大ブレイクしそうな予感も。次回作以降も要注目です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Sweetener/Ariana Grande

アリアナ・グランデ約2年ぶりとなるニューアルバム。ご存じの通り、前作と本作の間に開催された2017年の公演中に会場内で自爆テロが発生し、多くの観客が死傷したという悲劇に見舞われました。その後リリースされた本作。「これまでリリースした3枚のアルバムとは一変し、普遍的な愛のメッセージがたっぷり詰まった」という売り文句になっていますが、だからといっていままでの彼女のスタイルが大きく変わった訳ではありません。ミディアムテンポのチューンが中心ながらもインパクトあるポップチューンがメインとなっている本作。基本的に心地よく幅広いリスナー層が楽しめるポップチューンになっていました。

評価:★★★★

Ariana Grande 過去の作品
My Everything
The Best

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