延べ8時間のオウテカ体験
Title:NTS Sessions 1-4
Musician:Autechre
オウテカの最新作はある意味すさまじい作品です。ロンドンのラジオ局「NTS Radio」に4回にわたって出演し、それぞれセッションを実施。「NTS Sessions」と名付けられたこれらのセッションは、1回につき2時間、延べ8時間にわたるセッションになりました。本作はそれをCDに収録したもの。1度のセッションにつきCD2枚組、計8枚組となる作品で、全部聴くと8時間にも及ぶアルバムになっています。
本作は8時間にもわたる作品ながらも、全曲新曲によるオリジナルアルバム。ある意味、その創作意欲は驚異的とも言えます。彼らは前作「elseq 1–5」(こちらは未聴)も5枚組5時間にも及ぶ内容でしたし、その前作「Exai」も2時間という大作。どんどん長くなる傾向にあるのですが、全8時間というのは行き着くところまで行き着いたといった感じでしょうか。
ただ、正直言ってしまうと、さすがに8時間は長すぎ・・・。全体的に淡々と同じ調子で展開していくような曲が多く、聴いていてさすがにダレてしまいました。楽曲は2分程度の短い曲もある一方、概ね10分程度の長尺の曲がほとんど。特にラストの(タイトルどおり)「all end」はなんと1曲が58分にも及ぶ大作・・・なんですが、ノイズの音が少し濃淡を加えて展開していくだけでひたすら同じ調子で淡々と展開していくのみ。さすがに聴いていてちょっと厳しいものがありました。
Session 4まであるのですが、全体を聴いてみて一番よく出来ているのがやはりSession 1。ミニマルなサウンドが目立つのですが、例えば「bqbqbq」では彼ららしい無機質なサウンドの中にどこかメロディーを感じることが出来るのもオウテカの大きな魅力。「north spiral」ではファンキーな要素も感じますし、特に「gonk steady one」では22分にも及ぶ長尺の曲ながらも、メタリックなサウンドからスタートし、途中、ロック的なサウンドも顔を覗かせたりしてバラエティー富んだ展開になっている楽曲。長い曲ですが飽きずに聴くことが出来ます。
その後も要所要所にオウテカのユニークなアイディアを楽しめる曲は顔を覗かせます。例えばSession 2の「elyc9 7hres」はどこか昔のゲームミュージックみたいな雰囲気を感じさせる楽しい曲になっていますし、「violvoic」もよりアバンギャルドさを増したサウンドが耳を惹きます。オウテカ自体はこれだけボリューム感あるアルバムをつくってくるあたり、決して調子は悪くないのでしょう。ただ、さすがに8時間通じて聴けないので、ちょっとずつ順番に聴いていったのですが、最初聴き始めは「これはカッコいい!」と感じても、徐々に飽きてしまうような展開が続いています。似たような雰囲気を感じる曲も多く、そういう意味ではこのアルバムをもっと凝縮すれば、傑作アルバムになったのにな、と残念に感じます。
多分、まとめて1時間程度の長さにすれば、文句なしの傑作になっていたと思いますし、2時間程度にまとめても良作に仕上がっていたと思います。しかし如何せん、8時間は長すぎる・・・。かなり淡々と続いていくような曲も多く、片手間で聴くようなラジオプログラムということも影響したのかもしれませんが、少なくともCDでしっかりと聴くにはちょっと向いていないようにも感じました。
彼らの才能は決して衰えた訳ではないと思うのですが・・・惜しい印象も受けるアルバム。次回作はもっとシンプルに1時間程度のアルバムを期待したいところ。ここ最近続く長尺傾向に拍車がかかり10時間超え、とかはさすがに勘弁してほしいのですが・・・。
評価:★★★
Autechre 過去の作品
Quaristice
Oversteps
move of ten
Exai
ほかに聴いたアルバム
Woman Worldwide/Justice
フレンチ・エレクトロのミュージシャン、Justiceの最新作は、過去の楽曲を再レコーディングしたアルバム。それもライブを通じてリアレンジされた楽曲を、スタジオ・ライブという形で収録されたアルバムだそうで、彼らの楽曲が新たに生まれ変わっています。とはいえ、基本的にはいままでの彼らの楽曲のイメージからは大きく変わっておらず、目新しさのようなものはありません。ただし、ライブ感を最重要視したアルバムとなっており、難しいこと抜きに素直にリズミカルなフレンチ・エレクトロのサウンドを楽しめるアルバムに。ライブ、とても楽しそうだなぁ。
評価:★★★★
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