生々しさを感じるボーカルが大きな魅力
Title:Devotion
Musician:Tirzah
今回紹介するアルバムは残念ながら日本では「知る人ぞ知る」的なミュージシャンかもしれません。ちょっと読みにくいその名前は「ティルザ」と読むそうで、ロンドンのアンダーグラウンドシーンで活躍する女性ミュージシャン。バイオグラフィーによると「エセックス出身、サウス・ロンドンを拠点に活動するエクスペリメンタル・ポップ・アーティスト。」と紹介されていますが、正直なところ、いまひとつピンと来ません。ただシングル「Gladly」がPitchfolkでベスト・ニュー・トラックに選ばれたほか、デビューアルバムである本作も高い評価を受けており、徐々に話題となってきています。
そんな私も今回、このアルバムではじめて彼女の名前を知り、その高い評価から試しに聴いてみた訳です。まず本作の特徴として強く感じるのが静かでダウナーなミニマルサウンド。例えば「Do You Know」は非常にダウナーなトラックが延々と続き、その中で「Do You Know」という歌詞が繰り返され、一種のトリップ感を味わうことが出来ます。先行シングルとなった「Gladly」でもピッチを落としながらもミニマル的にループするトラックが印象的な曲に仕上がっています。
また「エクスペリメンタル・ポップ」という肩書通り、全11曲の収録曲それぞれ個性的なトラックを聴くことができ、「Basic Need」ではメタリックなサウンドが強いインパクトを持っていますし、タイトルチューン「Devotion」はピアノの単音で構成されたトラックにダウナーな男性コーラスが重なるというちょっと幻想感あるサウンドが耳に残ります。
そんな実験的なサウンドも非常に魅力的ではあるのですが、加えて本作の大きな特徴であり、かつ魅力に感じたのは彼女のボーカル。録音の手法によるところも大きいのでしょうが、彼女のボーカルに非常な生々しさを感じました。
例えば1曲目の「Fine Again」からして静かに歌い上げる彼女のボーカルの息継ぎの音まで聴こえてきます。「Affection」もピアノの静かなトラックをバックに力強く歌い上げるナンバーなのですが、シンプルなトラックなだけに彼女のボーカルがとても生々しく聴こえてきます。小さなライブハウスの中のすぐ近い場所で彼女の歌を聴いているような、そんな空気感をこのアルバムからは感じることが出来ました。
さらにエクスペリメンタル「ポップ」なだけあって、意外とメロディーラインはポップでメロディアス。そのサウンドと反していい意味での聴きやすさを強く感じます。アンダーグラウンドシーンで活躍しているということですが、いわゆるアングラ臭みたいなものはほとんど感じられません。例えればビョークやAntony and The Johnsonsあたりが好きならおそらく気に入りそうなタイプのミュージシャンではないでしょうか。
今後、爆発的にブレイク・・・というタイプのミュージシャンではないかもしれません。ただ、そのボーカルを含め個性的なスタイルは魅力的。徐々にオーバーグラウンドでもその評判は高まっていくのではないでしょうか。これからの活躍が楽しみです。
評価:★★★★★
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