前作とは対となる作品に
Title:Lamp Lit Prose
Musician:Dirty Projectors
毎回、アルバムをリリースする毎に安定した傑作をリリースし続けているDirty Projectors。セルフタイトルとなった前作の作成時には、バンドの中心メンバーであるDavid Longstrethが失恋を経験。さらにバンドメンバーほぼ全員が脱退し、事実上、デイヴィッドのソロプロジェクトとなった中でのアルバムリリースとなり、その影響かアルバム全体として憂いを感じる作品となっていました。
しかし、そこからわずか1年。今回のアルバムはある意味、前作とは対になるような作品に仕上がっていました。1曲目「Right Now」は爽やかなアコギの音色をバックに歌いあげるナンバーなのですが、途中、ホーンセッションなども入り、明るい雰囲気に。続く「Break-Thru」も明るくポップな作風になっています。このホーンセッションの導入はアルバム全体でもひとつのキーとなっており、「I Feel Energy」もホーンが鳴り響きながら軽快なパーカッションで彩られた明るくポップなナンバー。「What Is The Time」もメロウなソウルチューンにピッタリとはまるホーンセッションを聴かせる楽曲に仕上がっています。
憂いを感じ、基本的にソロプロジェクトとして進んできた前作に対して、今回のアルバムはアルバム全体として明るさを感じ、またホーンセッションの導入など、多くのメンバーが参加しての作品ということを印象づけられる内容となっています。そういう意味で前作と対になるようなアルバムと言えるのではないでしょうか。
ただ一方ではもちろん前作との類似点も少なくありません。まずは前作同様、多くのゲストが本作でも参加しています。「Right Now」ではThe InternetのSydが、「That's A Lifestyle」では女の子3人組バンドHaimが参加しているほか、「You're The One」ではFleet FoxesのRobin PecknoldにVampire WeekendのRostamが参加するなど、非常に豪華なゲスト陣が目をひきます。
また今回もデイヴィッドの書くポップなメロディーが非常に魅力的。「Blue Bird」のような切ないメロディーラインも耳を惹きますし、「You're The One」ではアコースティックなサウンドをバックにファルセット気味のボーカルで美しいメロディーラインを聴かせてくれます。またサウンド的にはアコースティックなサウンドやホーンセッションなどが入っている一方、様々な音を取り入れた打ち込みも要所要所に顔をのぞかせており、宅録的な要素も感じられます。サウンドは複雑ながらもメロディーは至ってポップという構成も以前から変わりありまえんでした。
そして前作に色濃く感じられたR&Bの方向性ですが、今回のアルバムも特に後半、R&B以上にソウルミュージックやジャズの要素を強く感じられる作風になっていました。複雑なリズムが特徴的な「I Found It In U」もそのメロディーからソウル的な要素を感じさせますし、特に続く「What Is The Time」は70年代あたりの時代を強く感じさせる正統派のソウルナンバーに。そしてアルバムを締めくくるラスト「(I Wanna)Feel It All」はジャジーな雰囲気のナンバーに仕上がっていました。
そんな訳で前作に引き続き今回のアルバムも魅力的なサウンドやメロディーが楽しめる傑作に仕上がっていたDirty Projectors。本当に毎作ハズレがありませんね。今回もポップなメロディーを楽しみつつ、サウンドの魅力にはまっていく、そんな作品でした。
評価:★★★★★
Dirty Projectors 過去の作品
SWING LO MAGELLAN
Dirty Projectors
ほかに聴いたアルバム
Both Directions At Once:The Lost Album(邦題 ザ・ロスト・アルバム)/John Coltrane
1950年代から60年代にかけて活躍したジャズミュージック界の巨匠、サックスプレイヤーのジョン・コルトレーン。今年、彼の「新作」がリリースされた大きな話題となりました。このアルバム、もともと当時所属していたアメリカのインパルス・レーベルに録音の記録はあったもののマスターテープが紛失しており、いままで「謎」と言われていた音源。その音源が今回発見され、リリースに至ったそうで、未発表のライブ盤とか別バージョンの音源とかではなく、純粋な新曲も含まれる純然たる「ニューアルバム」となるそうです。
日本でも大きな注目を集めオリコンチャートでも14位とジャズのアルバムとしては好セールスを記録しています。もっとも演奏的には良くも悪くも予想通りといった演奏で、目新しいという印象はあまりありません。もっとも所々で聴かせてくれるスリリングな演奏は魅力的ですし、全体としてはいい意味でポップでメロディアス、聴きやすいという印象も受けるアルバム。なによりジャズの巨人の新作を今、聴けるという点を考慮して下の評価に。ジャズリスナーなら聴いて損は・・・・・・って、とっくに聴いてますよね(^^;;
評価:★★★★★
John Coltrane 過去の作品
The Final Tour: The Bootleg Series, Vol. 6(Miles Davis&John Coltrane)
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