前々作、前作も大きな話題に
Title:Ordinary Corrupt Human Love
Musician:Deafheaven
今回紹介するアルバムはDeafheavenというアメリカの5人組バンド。彼らのアルバムを聴くのは本作がはじめてなのですが、前々作「Sunbather」も前作「New Bermuda」も海外では高い評価を得たとか。もともとこのアルバムを聴いたはPitchfolkで「BEST NEW ALBUM」の評価を得たことがきっかけだったのですが、それ以上に興味を引いたのは彼らの音楽のスタイル。ジャンル的にはブラックメタルにカテゴライズされるとか。ただ単純なメタルバンドではなく、シューゲイザーやポストロックなどの影響の強い「ポストメタル」というジャンルにカテゴライズされるバンドのようです。
確かにこのアルバムも、1曲目「You Without End」は静かなピアノの音からスタートします。中盤あたりもバンドサウンドが徐々に加わっていくのですが、メロディアスなフレーズが印象的。ただ中盤、バックにいきなり金切り声が鳴り響き、ブラックメタルらしさがあらわれてきます。
続く2曲目「Honeycomb」はブラックメタルの特徴らしい、トレモロリフと金切り声がいきなり鳴り響きますので、そういう意味ではブラックメタルらしいサウンドと言えるかもしれません。ただ、こちらもそんなヘヴィーなサウンドをバックにダイナミックながらもメロディアスなギターが鳴り響いており、いい意味で聴きやすく、なおかつ重層的なサウンドが楽曲に深みを与えています。
基本的に非常にメランコリックなギターサウンドがメロディアスに鳴り響く中、分厚くダイナミックなバンドサウンドが複雑に展開する構成が特徴的。途中、ブラックメタルらしい金切り声が登場し、メタルらしいへヴィネスさを楽曲に加えています。7曲入りのアルバムながらも、うち4曲が10分以上の曲となっており、その長さの中でサウンドが徐々に展開していくのも大きな魅力となっています。
シューゲイザーからの影響も強いということですが、楽曲のタイプ的にはMOGWAIやGodspeed You! Black Emperorに近いイメージがあります。ブラックメタル好きの壺にももちろんはまりそうなバンドかもしれませんが、それ以上にギターサウンドが主体のポストロックが好きな方にははまりそうなバンドのように感じました。
彼らの曲はメロディーラインも美しく、特に「Night People」ではアメリカでゴシック・ロックを奏でる女性ミュージシャン、チェルシー・ウルフをゲストとして迎えているのですが、こちらはメタル色の薄いポップチューン。ただ男女デゥオの歌のメロディーが美しく、非常に心を打ちます。ラストの「Worthless Animal」も10分という長尺の曲で、ダイナミックなバンドサウンドと金切り声が終始展開されるへヴィーな曲なのですが、どこか郷愁感のあるフレーズが楽曲全体を通じて流れており、心に響いてくる曲になっていました。
今回はじめて聴いた彼らのアルバム。「ブラックメタル」ということで最初は構えたのですが、結果的にはその美しいフレーズとへヴィーなバンドサウンドにすっかりはまってしまいました。申し分ない傑作アルバム。日本ではさほど知名度が高くないように感じるのですが・・・ポストロックが好きならかなりはまりそうな1枚です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Collagically Speaking/R+R=NOW
2度のグラミー賞を受賞し、今、最も注目されるジャズピアニスト、ロバート・クラスパーと同じくケンドリック・ラマーにも重用され大きな話題となったプロデューサーでありサックス奏者でもあるテラス・マーティンというジャズシーンで最も注目を集める2人を中心としたバンド、R+R=NOW。全体的にはメロウなメロディーラインがまず耳に残るポップなナンバーが多く収録されています。ジャズのアルバムながらもソウル、HIP HOPの要素も取り入れており、自由度も高いサウンドも魅力的。ただ全体的にはポップでおとなしくまとまってしまっているような印象も。
評価:★★★★
I'm All Ears/Let's Eat Grandma
「おばあちゃんを食べちゃおう!」とはかなり刺激的な名前のつけられたミュージシャンですが、10代の女の子2人によるイギリスのエレクトロポップデュオ。今年のフジロックにも出演するなど、徐々に話題を集めています。基本的には軽快なシンセの音をバックとしたガールズポップがメインなのですが、終盤には9分にも及ぶ「Cool&Collected」や11分にも及ぶ「Donnie Darko」といった曲も展開。いずれも楽曲が進むにつれ複雑に展開していき、ダイナミックで分厚いサウンドやサイケ風のサウンドなども飛び出すなど、単純なエレクトロポップに留まらない一面を楽しめます。一度その名前を聞いたら忘れられなさそうなユニットですが、これからの活躍も楽しみです。
評価:★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2018年」カテゴリの記事
- 恒例のブルースカレンダー(2018.12.29)
- 大物然としたステージセットだけども(2018.12.28)
- オリジナルメンバー3人が顔をそろえる(2018.12.25)
- まさかの第2弾(2018.12.21)
- ディスコブームそのままに(2018.12.17)
コメント