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2018年9月29日 (土)

奇跡のコラボ

Title:Teatime Dub Encounters
Musician:Underworld&Iggy Pop

60年代末から70年代にかけてThe Stoogesとして活躍。その後も数多くの名曲を生み出したロック界のレジェンド、イギーポップ。一方では「Born Slippy Nuxx」がダンスミュージックの大定番となり、これまたダンスミュージックシーンのレジェンドとも言えるUnderworld。今回、この両者がなんとコラボレーション。その奇跡のコラボとも言える組み合わせが大きな話題となりました。

もともとイギーポップとUnderworldといえば、1996年に公開され話題となった映画「トレインスポッティング」に共に楽曲を提供。特にUnderworldの「Born Slippy Nuxx」は同作のエンディングに起用され大きな話題となり、彼らがブレイクする大きなきっかけとなりました。それから約20年。昨年、同映画の続編「T2トレインスポッティング2」が公開されました。この作品ではUnderworldのリック・スミスが音楽を担当しましたが、そこでイギーポップに声をかけ、両者が再開。さらにそこから一歩進み、両者のコラボレーションが産みだされることになったようです。

Underworldといえばご存じの通り、エレクトロ・ダンス・ミュージックのミュージシャン。一方イギーポップといえば、ある意味「エレクトロ」とは全く逆を行くような、非常に人間くさい、しゃがれたボーカルが大きな特徴のボーカリスト。それだけにちょっと考えると両者の組み合わせは水と油ではないか?とすら思ってしまいます。しかし、実際に今回のコラボを聴くと、この両者の相性が意外なほどにマッチしており、不思議にすら感じてしまいます。

まず1曲目「Bells&Circles」。Underworldらしいテンポよくビートの利いたエレクトロチューンからスタートするこの曲。途中からイギーの語りが重なる形になります。ただUnderworldらしい高揚感あるエレクトロナンバーとイギーの急かすようなボーカルが絶妙にマッチしています。続く「Trapped」もUnderworldらしいテンポのよいナンバー。こちらはUnderworldに合わせるようなテンポよいイギーのボーカルが楽曲にしっかりと組み合わさっています。

3曲目「I'll See Big」はしんみりミディアムチューン。哀愁を感じるUnderworldのトラックにイギーのこれまた哀愁を感じる語りが入ります。こちらはイギーをUnderworldのトラックがしっかりと下支えしている印象。非常に心に染み入るナンバーに仕上がっています。そして事実上のラストとなる「Get Your Shirt」はこれまた高揚感あるUnderworldらしいエレクトロダンスチューン。女性コーラスも加えて、明るくテンポのいイギーのボーカルが、こちらはUnderworldのトラックをサポートしているような形に。これまたしっかりと息の合ったコラボとなっています。

最後の曲は「Get Your Shirt」のラジオ・エディットのため実質上、4曲入りの今回のアルバム。まずはイギーとのコラボという話云々以前に、Underworldのトラック自体が、いい意味で彼ららしく、魅力的に仕上がっています。前作「Barbara Barbara, we face a shining future」は、流行っていたEDMへの反発ということもあり、彼らにしては地味な作風となっており内容に賛否がありました。しかし今回のアルバムに関してはイギーとのコラボで企画盤的な内容だったということもあってでしょうか、実に彼ららしいシンプルで高揚感のあるエレクトロダンスチューンに仕上がっています。素直にUnderworldらしいといえる楽曲の連続で、ファンならばかなり満足の行く内容になっていたのではないでしょうか。

またイギーとのコラボに関しても、どちらも必要以上に自己主張する訳ではなく、お互いの良さをしっかりと生かしあったコラボになっていたように感じます。どちらかというとUnderworldの世界にイギーが乗っかかったような楽曲が多かったでしょうか。そのためUnderworldの楽曲の良さがしっかりと生かされていましたし、またそれだけUnderworldの世界に沿ったようなコラボになっていながら、イギーの癖のつよいボーカルもあって、イギーの良さもしっかりと生かされていた楽曲になっていました。

おそらくUnderworld、Iggy Popどちらのファンも大満足のアルバムに仕上がっていたのではないでしょうか。コラボがたった4曲というのはあまりにも惜しい!是非、この勢いでアルバムを、それもフルアルバムでもう1枚!そう感じてしまうほどの傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

UNDERWORLD 過去の作品
Oblivion with Bells
The Bells!The Bells!
Barking
LIVE FROM THE ROUNDHOUSE
1992-2012 The Anthology
A Collection
Barbara Barbara, we face a shining future

IGGY POP 過去の作品
POST POP DEPRESSION


ほかに聴いたアルバム

4:44/JAY-Z

Beyonceの旦那さんとしてもおなじみのラッパー、JAY-Zの約4年ぶりとなる新作。先日、Beyonceとのユニット、THE CARTERSとしてアルバムをリリースして話題となりましたが、本作は2017年リリースのアルバム。リリース当初は日本ではサービスを開始していないストリーミングサービス、TIDALのみでのリリースとなり、日本では聴けない状況が続いていましたが、その後無事CDでもリリース。日本のリスナーも楽しめるようになりました。

楽曲はテンポのよいラップがメイン。サウンドはメロウさも感じつつもポップにまとめており、ソウル風な曲やレゲエの要素を取り入れた曲、トライバルなナンバーなどバラエティーも豊富。最近流行りのトラップ的な要素を取り入れた曲もあったりして、今風の要素も感じ取れます。Beyonceも最近活動に脂がのっていますが、旦那様も決して負けていないと感じられる傑作でした。

評価:★★★★★

JAY-Z 過去の作品
AMERICAN GANGSTER
THE BLUEPRINT 3
WATCH THE THRONE(JAY-Z&KANYE WEST)
MAGNA CARTA....HOLY GRAIL

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