湿度ある夏を描いた作品
Title:湿った夏の始まり
Musician:aiko
約2年ぶりとなるaikoのニューアルバム。今回のアルバムは6月リリースと、タイトル通り「夏の始まり」にリリースされた訳ですが、このアルバムタイトルは「(2001年発売の)『夏服』の17年後を描きたい、『夏服』の後に私が過ごしてきた夏を描いたアルバムにしたい」とaikoが思ったことによってつけられたとか。要するにこの17年にaikoの歩みがこのアルバムには込められているといったところでしょうか。
そういった観点でアルバムを聴くと、このアルバム、やけに「雨」という言葉が多く登場してきます。「君がスニーカーを履くと 必ず雨が降るね」(「ハナガサイタ」)、「雨の匂いに包まれて 泣いたらとてもみじめに見えそう」(「あなたは」)、「今降るこの雨 遠くは晴れている」(「恋をしたのは」)・・・などなど。まさにアルバムタイトル通り、「湿った夏」を描写したような表現が要所要所に見受けられます。
ちょっと憂いを感じるジャケット写真といい、アルバム全体に湿気を感じるのは、やはり単純にカラッと明るいだけでは語れない、aikoの17年の歩みがあるから、といったところでしょうか。今回のアルバムは、まさにaikoらしい大人の恋愛を綴った作品と言えるのかもしれません。
そんな今回のアルバム、歌詞もそうですが、メロディーやサウンドの面も、aikoらしいいい意味で安定感あるポップアルバムに仕上がっていました。「格好いいな」や「愛は勝手」など、aikoらしいこぶしを聴かせたボーカルが魅力的な曲があれば、先行シングルとなった「ストロー」はまさにaikoらしい複雑に展開していくサビが魅力的。それにも関わらずインパクトあって爽やかなメロディーはまさにメロディーメイカーの才が十二分に発揮された作品になっています。
ほかにも疾走感あるギターサウンドが心地よい「ハナガサイタ」「夜空綺麗」や、ビッグバンド風のホーンセッションが入りつつ、メロディーはしんみり聴かせる「うん。」など、基本的にはaikoらしいシンプルなポップチューンが多い中でもバラエティーを持たしています。
ラスト前の「宇宙で息をして」は非常に切ない歌詞が印象に残る、ピアノとストリングスで切なく聴かせるナンバー。そしてラストの「だから」もピアノとストリングスでしんみり聴かせます。ただし最後の曲は恋人どうしの2人がこれから歩んでいこうと歌うナンバーで、爽やかな気持ちでアルバムは幕を下ろします。
正直なところ、基本的にはアルバム全体としてさほど目新しいものは感じません。ただ、良質なポップチューンの並ぶ、高いレベルで安定したポップアルバムに仕上がっていました。そういう意味では今回も文句なしの傑作アルバムと言えるでしょう。安心して聴けるアルバムでした。
評価:★★★★★
aiko 過去の作品
秘密
BABY
まとめI
まとめII
時のシルエット
May Dream
ほかに聴いたアルバム
SOUNDTRACK~Beginning&The End~/吉井和哉
2016年12月の武道館ライブの模様を収録した作品で、ソロデビュー15周年にあわせてリリースされたライブアルバム。当日はリクエストに基づいたセットリストだったようで、それだけに本作もベスト盤的な選曲になっている点が魅力的。基本的にベテランらしい安定した演奏が楽しめるアルバムになっており、ベスト盤的な感覚で楽しめる作品に仕上がっていました。
評価:★★★★★
吉井和哉 過去の作品
Hummingbird in Forest of Space
Dragon head Miracle
VOLT
The Apples
After The Apples
18
AT THE SWEET BASIL
ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!!~
STARLIGHT
SUPERNOVACATION
ヨジー・カズボーン~裏切リノ街~
ALL TIME BEST/UVERworld
UVERworldに関しての印象といえば、シングル曲などを聴く限りでは、一応ハードコアの影響を受けたようなへヴィーなロックの音を鳴らしているものの、サウンドは平坦でメロディーも平凡なJ-POP。いかにも「売れ線ポップ」にありそうな、スタイルだけは「ロック」だけどもルーツレスで楽曲に奥行を感じさせない悪い意味での「J-POP」というイメージでした。ただ、なぜかROCKIN'ON JAPANあたりが妙に絶賛していて、まあ、聴かず嫌いは良くないか、とも思い、今回、3枚組のオールタイムベストを聴いてみた訳です。
・・・・・・が、このベスト盤を聴いた後でも私が最初に彼らに関して思っていた印象が一歩たりとも動きませんでした。正直、メロディーにしてもおもしろさは感じられず、サウンドもただへヴィーな音が鳴っているだけ。彼らに限らず、特に最近のROCKIN'ON JAPANは「なんでこんなつまんないバンドをこれだけ大きく取り上げるんだろう?」というケースが以前に増して目立っている感があるのですが、正直なところ予想していたよりも残念な感じ。もっと雑誌として取り上げるべきミュージシャンはいると思うんですけどね(苦笑)。
評価:★★★
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