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2018年9月25日 (火)

統一感がないが・・・ただ、それが良い!

Title:the SEA
Musician:サニーデイ・サービス

3月に突如配信限定でリリースされ、賛否両論含め大きな話題となったサニーデイ・サービスのニューアルバム「the City」。様々なゲストミュージシャンが参加し、ある意味非常に挑戦的とも言えるアルバムになっていた同作。しかしサニーデイ曽我部恵一の挑戦はさらに続いていきました。今度は同作に収録されている曲をリミックスし、再構築。Spotifyで順次配信されていったのですが、今回はそれらの楽曲をまとめて「the SEA」としてリリースしました。

今回のリミックスにも1曲ずつ、様々なミュージシャンが参加。鈴木慶一やMURO、Fumiya Tanakaなどなど、有名どころから新進気鋭のミュージシャンまで様々なミュージシャンが参加しています。そんな様々なミュージシャンがそれぞれ思い思いに曲を再構築し、彼らなりのスタイルで新しい作風にまとめあげています。

もともとアルバムとしてリリースされた作品ではなく、Spotifyで1曲ずつ配信されていった作品だからでしょうか、アルバム全体としての統一感はほとんどありません。ある種のプレイリスト的な感覚のある作品とすら言えるかもしれません。ただ逆にそれだけに、1曲1曲自由度の高い、様々なアレンジが楽しめるバリエーション豊かなアルバムに仕上がっていました。

とにかく1曲目「FUCK YOU音頭」から非常にユニーク。「the CITY」では「FUCK YOU」だけをつぶやく曲ということで話題となった「ラブソング2」のリミックス・・・といってもほとんど原曲の様相はなく(笑)、サビで「FUCK YOU」と歌う音頭になっています。

続く石田彰リミックスによる「甲州街道の十二月」のリミックスもユニーク。チープさを感じる打ち込みのサウンドを取り入れているのですが、郷愁感あるメロディーと微妙なミスマッチが逆にユニークなリミックスになっています。また若干19歳の若いミュージシャン、ヤナセジロウのソロプロジェクトbetcover!!による「熱帯低気圧」も原曲が持っているメタリックな部分をさらに強調した迫力あるカバーが魅力的。まだ全く知られていない新人ミュージシャンながらも若い才能を感じることが出来ます。

かと思えば原曲ではサイケな曲調だった「ジュース」は平賀さち枝によりアコースティックな楽曲に変身。これも原曲の全く違う側面を発掘したユニークなカバーになっています。

その後もダビーなレゲエに再構築された「シックボーイ組曲」、よりサイケな雰囲気にリミックスした「おばあちゃんのドライフラワー」、逆にサイケな楽曲と比べてシンプルに仕上げた「ザッピング」など、曲によっては原曲の音をより分厚くしたり、かと思えばシンプルにしたりと、その方向性は様々。またそれが非常にユニークに感じられるリミックスアルバムになっています。

ラストは「the CITY」と同じく「町は光でいっぱい」で締めくくり。ただ、明るさを感じた「the CITY」に比べて、こちらはノイズがより強調され、むしろダークな雰囲気で締めくくり。そういう意味では「the CITY」とは対照的な締めくくりとなっていました。

ただ、原曲を再構築したといっても、基本的に原曲の魅力もそのまま残したような曲が多く、そういう意味でも個々のミュージシャンの魅力に加えて、サニーデイの魅力もしっかりと感じられたアルバムになっていました。原曲もかなりバラエティーに富んでアルバム全体に統一感のない作品になっていましたが、こちらはそれに増して統一感のないアルバムに。ただ、本作の場合、それが良い!と強く感じさせてくれるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

Popcorn Ballads
Popcorn Ballads(完全版)
the CITY
DANCE TO THE POPCORN CITY


ほかに聴いたアルバム

ITALAN/安藤裕子

Googleで検索すると変なサジェスチョンが出てくるのですが、「ITALIAN」ではなく「ITALAN」です。デビュー15周年を迎えた彼女によるセルフプロデュースによる新作。全編ファンタジックな雰囲気の作風になっており、まさに彼女の世界観が前面に押し出された、セルフプロデュースらしい作品になっていました。キラキラときらめくような世界を見せたかと思うと、「こどものはなし」のようなサイケ風な作品や「風雨凄凄」のようにソウルにこぶしを効かせたボーカルを聴かせてくれる曲もあったりして、わずか7曲のミニアルバムながらも彼女の魅力をしっかりと伝えてくれる傑作に仕上がっていました。

評価:★★★★★

安藤裕子 過去の作品
クロニクル
THE BEST '03~'09
JAPANESE POP
大人のまじめなカバーシリーズ
勘違い
グッド・バイ
Acoustic Tempo Magic
あなたが寝てる間に
頂き物

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