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2018年9月11日 (火)

変わらぬ魅力

Title:歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Musician:斉藤和義

今年デビュー25周年を迎えたせっちゃんこと斉藤和義。そのデビュー25周年を記念したベスト盤がリリースされました。ちょうど10年前、デビュー15周年を記念したベスト盤「歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007」がリリースされましたが、そのベスト盤以降にリリースされたシングル曲を配信限定のものを含めてリリース順に2枚のCDに収録。まだDisc3としてカップリング曲を収録した3枚組のアルバムとなっています。

斉藤和義といえばデビュー直後に「歩いて帰ろう」でスマッシュヒットを記録。一躍話題のミュージシャンとなり売上を伸ばしていったものの、その後は低迷。ただ「ゼクシイ」のCMソングにもなった「ウェディング・ソング」が話題となり再び人気が出てきた・・・それが10年前のベスト盤がリリースされた頃のせっちゃんでした。

そしてその後の10年といえばご存じの通り。このアルバムでも1曲目に収録されている「やぁ 無情」がアリナミンのCMソングとなり、シングルでは初となるベスト10ヒットを記録。さらに2011年には話題になったドラマ「家政婦のミタ」の主題歌になった「やさしくなりたい」が大ヒットを記録。今年3月リリースされたオリジナルアルバム「Toys Blood Music」ではシングルアルバム通じて初となるチャート1位を記録するなど、人気面では絶頂期を迎えた10年になっていました。

ただ正直言うとこの10年の斉藤和義の楽曲的には絶頂期を迎えた人気の面とは異なり、必ずしも「脂がのっている」という印象は受けていません。個人的に彼の楽曲が最も脂ののっていた頃は再ブレイク前夜のアルバム「35 STONES」「NOWHERE LAND」「青春ブルース」あたり。最近のアルバムももちろん傑作は少なくないのですが、かと思えば凡作・・・とまではいかないまでもちょっと物足りなさを感じてしまうアルバムがリリースされるなど、「脂ののった」とか「勢いがある」という形容詞がつくまでの状況、とは思いませんでした。

ただそれでも今回、この10年間のシングルとそのカップリング曲をまとめて聴くと、やはり名曲をコンスタントにつくり続けてきたんだな、という印象は強く受けます。前述の「やぁ 無情」や「やさしくなりたい」はもちろんのことながらも個人的には彼のベストソングの1曲に推したい「ずっと好きだった」は言うまでもなく胸の奥にある甘酸っぱい感情をノスタルジーとともに呼び起こすような名曲。この男性心理を素直なまま歌いこんだ歌詞はデビュー当初からの彼の大きな魅力。今回のベスト盤に収録されている曲では「満男、飛ぶ」あたりもそんな素直な男性心理を読み込んだ歌と言えるでしょうか。

そして彼の曲のもうひとつの方向性が厳しい現実を素直に肯定しつつ、その中でもそっと背中を押すような歌詞。今回のアルバムで言えば「ワンダーランド」とか「攻めていこーぜ!」などがそんな方向性でしょうか。この10年のシングル曲で言えば、比較的、この方向性の曲が多かったように思います。ちょっといじわるな見方をしてしまいえば、男性のみならず女性を含めた広い層に支持されそうなこのタイプの曲が、「売る」ためにはシングル曲として求められた、という側面もあるのでしょうか。

また楽曲的には基本的にアコギの弾き語りを中心としたスタイルも変わりありません。ギターロックやブルースの影響が比較的強い一方、「Always」のようなモータウンビートの曲や「行き先は未来」のようなブギウギ調の曲、また「FISH STORY」はガレージロック風とより激しいロックの曲になっているなど、あくまでもロック、ブルースを主軸としつつバラエティーを持たせています。

ただ、この歌詞の方向性もサウンド的な方向性もデビュー当初から変わっていません。今回のベスト盤ではその「変わらなさ」を良い意味で再確認できましたし、なによりも圧倒的に歌詞とメロディーが魅力的であるがゆえに、デビューから25年、変わらないスタイルを維持しつつも全くマンネリに陥っていない点にあらためて驚かされます。

まだまだこれからも続々とヒット曲を世に送り出しそうな予感のするせっちゃん。そんな彼の変わらない魅力を再確認できたベスト盤でした。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music


ほかに聴いたアルバム

KING OF ONDO ~東京音頭でお国巡り~

おそらく日本で最も知られた盆踊りの1つと思われる「東京音頭」にスポットをあて、「東京音頭」から派生した様々な楽曲を集めたコンピレーションアルバム。原曲はもちろん、演歌風、ムード歌謡曲風からジャズ風にアレンジされた曲や外国人が歌う曲などバリエーション豊かな「東京音頭」が収録されており、いかにこの曲が多くの日本人に愛されたのかわかります。

後半は全国各地のご当地の名物を歌いこんだ「替え歌」。こちらは単なる歌詞を替えただけであまり面白味はありませんでしたが・・・ただ「台湾」や「朝鮮」まで飛び出してくるのが戦前ならでは。広く全国各地で親しまれていたことがわかります。

さらにラストは民謡歌手の木津茂里が歌う「東京音頭」をなんと岡村靖幸がアレンジ。こちらは今風の軽快でリズミカルな「東京音頭」になっており非常にユニークに感じます。個人的には「東京音頭」といえばヤクルトスワローズの応援歌というイメージがあるので、スワローズの応援歌版なんかも収録されていてもおもしろかったと思ったのですが・・・。ともかく、「東京音頭」がいかに幅広く日本人に愛されていたかがわかる1枚。いろいろと興味深く感じるコンピ盤でした。

評価:★★★★

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