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2018年9月10日 (月)

音楽的な素養の高さを感じる

Title:green
Musician:藤原さくら

女性シンガーソングライター、藤原さくらの全6曲入りのミニアルバム。いまさらながらの説明となるのですが、藤原さくらといえばフジテレビ月9ドラマのヒロイン役に抜擢され話題となり、福山雅治作詞作曲の「Soup」がブレイクを果たしたミュージシャン。しかし、その後リリースされたアルバム「PLAY」を聴いたところ、「月9ドラマでブレイクした女性シンガー」というイメージとは程遠い、洋楽テイストの強いオーガニックな楽曲ばかり収録されており、「Soup」のイメージとの乖離にかなり驚かされました。

そんなアルバム「PLAY」から約1年を経てリリースされた本作も、基本的にはそんな「PLAY」の雰囲気をそのまま引き継いだようなアルバムになっています。1曲目「Dance」からしていきなりの全英語詞。ピアノが軽快なブギウギ風のナンバーからスタートしておりJ-POP的なイメージからはかなり乖離しています。続く「Time Flies」もピアノが軽快なナンバーなのですが、こちらは60年代のオールディーズの雰囲気が漂うナンバー。彼女はまだ若干22歳なのですが、そんな若い世代のミュージシャンがこのような曲を歌うというのは非常に驚きです。

続く「Sunny Day」は日本語詞のポップチューンなのですが、ブルージーな雰囲気が漂っており、哀愁感のあるメロディーが胸をうちますし、「グルグル」も裏打ちのリズムでちょっと怪しげな雰囲気が漂うポップチューンがユニーク。そして「bye bye」はアコギのアルペジオで聴かせるフォーキーでオーガニックな雰囲気漂うナンバー。「PLAY」を聴いているとおそらくこういうタイプのナンバーが一番彼女らしい、と言える楽曲なんでしょうね。

楽曲は非常に洋楽テイストが強くて垢抜けている印象。ノラ・ジョーンズあたりからの影響も感じるフォーキーな楽曲もある一方、オールディーズやブギウギ、ブルースなどの影響を感じる部分もあり、22歳という若さでありながら音楽的な素養の高さには驚かされます。それだけに前作「PLAY」でも感じたのですが、なぜ月9ドラマで福山雅治作詞作曲の曲を歌うという、ある種のJ-POP真ん中路線をあえて取らせたのか、強く疑問に思います。

もっとも一方では、そういう売れ線の楽曲を歌わせつつも、アルバムではきちんと彼女の好きな曲を歌わせている訳ですから、そういう意味では良心的といえば良心的なのかもしれませんが・・・。ただ今の時代、J-POP王道系でマスを狙うよりも、もっとコアな固定ファンを狙った方が「細く」かもしれませんが結果として長く売れるような気もするのですが・・・。

今回のアルバムでもラストの「The Moon」はアニメ主題歌となり先行配信されていたこともり、今回のアルバムの中ではJ-POPテイストの強い「売れ線」系の曲。これはこれで悪くないのですが、やはりほかの曲に比べると物足りなさを感じてしまう曲でした。

そんな訳で、今回のアルバムも彼女の才能を強く感じる傑作アルバムに仕上がっていました。前作「PLAY」の評でも書いたのですが、「福山雅治作詞作曲の曲を歌っていた」というよりもむしろ彼女が影響を受けたというノラ・ジョーンズやジョニ・ミッチェルあたりが好きなら気に入りそうなタイプのミュージシャン。今回のアルバム、残念ながらオリコン最高位13位とベスト10入りを逃しており、正直「Soup」の一発屋・・・的なイメージがついてしまう恐れも出てきています。次はいかにもJ-POPという曲ではなく、彼女らしいナンバーで再度ブレイクできればいいのですが・・・。

評価:★★★★★

藤原さくら 過去の作品
PLAY


ほかに聴いたアルバム

TWISTER-EP-/NICO Touches the Walls

NICOの新作は前のEPより8ヶ月のインターバルとなる新たなEP盤。彼ららしいギターロックからはじまり、キャバレーロック風の作品にロックンロール調の曲、さらにはラテン風の歌謡曲まで前作「OYSTER-EP-」以上にわずか5曲ながらもバラエティー豊富な作品に。それもどの曲もインパクトがあり、バンドとしての勢いも感じます。フルアルバムの前作「勇気も愛もないなんて」は傑作な出来でしたが、次のフルアルバムも期待できそう。

評価:★★★★★

NICO Touches the Walls 過去の作品
Who are you?
オーロラ
PASSENGER
HUMANIA
Shout to the Walls!
ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト
Howdy!! We are ACO Touches the Walls
勇気も愛もないなんて
OYSTER-EP-

エプロンボーイのさしすせす/DJみそしるとMCごはん

いつも「食事」をテーマにユニークなラップを展開する女性ラッパー(1人です、念のため)によるミニアルバム。今回はアニメ「衛宮さんちの今日のごはん」の「エプロンボーイ」を中心とした料理の調味料の基本「さしすせそ」をテーマとした曲が並んでいます。全体的に優しい雰囲気の曲が多く、いつもよりもラップというよりポップのテイストが強いアルバムに。ラップバトルを模した「甘辛MCバトル ~タまご焼き編~」や、アイドルグループNegiccoが参加したユニークな歌詞も楽しい「スプーンガールのマイカレー」など楽しい楽曲も多く収録されており、いつもの彼女の楽曲と同様、HIP HOPを普段聴かない層にもアピールできる作品が並んでいました。

評価:★★★★

DJみそしるとMCごはん 過去の作品
ジャスタジスイ
味の向こう側~入り口~
ごちそんぐDJの音楽
コメニケーション

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アルバムレビュー(邦楽)2018年」カテゴリの記事

コメント

藤原さくらさんの「green」は1曲目から心地良いアコースティックなサウンドが素晴らしいですね。

投稿: ひかりびっと | 2019年3月15日 (金) 19時27分

>ひかりびっとさん
ご感想ありがとうございました。

投稿: ゆういち | 2019年4月 1日 (月) 00時11分

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