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2018年9月

2018年9月30日 (日)

生々しさを感じるボーカルが大きな魅力

Title:Devotion
Musician:Tirzah

今回紹介するアルバムは残念ながら日本では「知る人ぞ知る」的なミュージシャンかもしれません。ちょっと読みにくいその名前は「ティルザ」と読むそうで、ロンドンのアンダーグラウンドシーンで活躍する女性ミュージシャン。バイオグラフィーによると「エセックス出身、サウス・ロンドンを拠点に活動するエクスペリメンタル・ポップ・アーティスト。」と紹介されていますが、正直なところ、いまひとつピンと来ません。ただシングル「Gladly」がPitchfolkでベスト・ニュー・トラックに選ばれたほか、デビューアルバムである本作も高い評価を受けており、徐々に話題となってきています。

そんな私も今回、このアルバムではじめて彼女の名前を知り、その高い評価から試しに聴いてみた訳です。まず本作の特徴として強く感じるのが静かでダウナーなミニマルサウンド。例えば「Do You Know」は非常にダウナーなトラックが延々と続き、その中で「Do You Know」という歌詞が繰り返され、一種のトリップ感を味わうことが出来ます。先行シングルとなった「Gladly」でもピッチを落としながらもミニマル的にループするトラックが印象的な曲に仕上がっています。

また「エクスペリメンタル・ポップ」という肩書通り、全11曲の収録曲それぞれ個性的なトラックを聴くことができ、「Basic Need」ではメタリックなサウンドが強いインパクトを持っていますし、タイトルチューン「Devotion」はピアノの単音で構成されたトラックにダウナーな男性コーラスが重なるというちょっと幻想感あるサウンドが耳に残ります。

そんな実験的なサウンドも非常に魅力的ではあるのですが、加えて本作の大きな特徴であり、かつ魅力に感じたのは彼女のボーカル。録音の手法によるところも大きいのでしょうが、彼女のボーカルに非常な生々しさを感じました。

例えば1曲目の「Fine Again」からして静かに歌い上げる彼女のボーカルの息継ぎの音まで聴こえてきます。「Affection」もピアノの静かなトラックをバックに力強く歌い上げるナンバーなのですが、シンプルなトラックなだけに彼女のボーカルがとても生々しく聴こえてきます。小さなライブハウスの中のすぐ近い場所で彼女の歌を聴いているような、そんな空気感をこのアルバムからは感じることが出来ました。

さらにエクスペリメンタル「ポップ」なだけあって、意外とメロディーラインはポップでメロディアス。そのサウンドと反していい意味での聴きやすさを強く感じます。アンダーグラウンドシーンで活躍しているということですが、いわゆるアングラ臭みたいなものはほとんど感じられません。例えればビョークやAntony and The Johnsonsあたりが好きならおそらく気に入りそうなタイプのミュージシャンではないでしょうか。

今後、爆発的にブレイク・・・というタイプのミュージシャンではないかもしれません。ただ、そのボーカルを含め個性的なスタイルは魅力的。徐々にオーバーグラウンドでもその評判は高まっていくのではないでしょうか。これからの活躍が楽しみです。

評価:★★★★★

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2018年9月29日 (土)

奇跡のコラボ

Title:Teatime Dub Encounters
Musician:Underworld&Iggy Pop

60年代末から70年代にかけてThe Stoogesとして活躍。その後も数多くの名曲を生み出したロック界のレジェンド、イギーポップ。一方では「Born Slippy Nuxx」がダンスミュージックの大定番となり、これまたダンスミュージックシーンのレジェンドとも言えるUnderworld。今回、この両者がなんとコラボレーション。その奇跡のコラボとも言える組み合わせが大きな話題となりました。

もともとイギーポップとUnderworldといえば、1996年に公開され話題となった映画「トレインスポッティング」に共に楽曲を提供。特にUnderworldの「Born Slippy Nuxx」は同作のエンディングに起用され大きな話題となり、彼らがブレイクする大きなきっかけとなりました。それから約20年。昨年、同映画の続編「T2トレインスポッティング2」が公開されました。この作品ではUnderworldのリック・スミスが音楽を担当しましたが、そこでイギーポップに声をかけ、両者が再開。さらにそこから一歩進み、両者のコラボレーションが産みだされることになったようです。

Underworldといえばご存じの通り、エレクトロ・ダンス・ミュージックのミュージシャン。一方イギーポップといえば、ある意味「エレクトロ」とは全く逆を行くような、非常に人間くさい、しゃがれたボーカルが大きな特徴のボーカリスト。それだけにちょっと考えると両者の組み合わせは水と油ではないか?とすら思ってしまいます。しかし、実際に今回のコラボを聴くと、この両者の相性が意外なほどにマッチしており、不思議にすら感じてしまいます。

まず1曲目「Bells&Circles」。Underworldらしいテンポよくビートの利いたエレクトロチューンからスタートするこの曲。途中からイギーの語りが重なる形になります。ただUnderworldらしい高揚感あるエレクトロナンバーとイギーの急かすようなボーカルが絶妙にマッチしています。続く「Trapped」もUnderworldらしいテンポのよいナンバー。こちらはUnderworldに合わせるようなテンポよいイギーのボーカルが楽曲にしっかりと組み合わさっています。

3曲目「I'll See Big」はしんみりミディアムチューン。哀愁を感じるUnderworldのトラックにイギーのこれまた哀愁を感じる語りが入ります。こちらはイギーをUnderworldのトラックがしっかりと下支えしている印象。非常に心に染み入るナンバーに仕上がっています。そして事実上のラストとなる「Get Your Shirt」はこれまた高揚感あるUnderworldらしいエレクトロダンスチューン。女性コーラスも加えて、明るくテンポのいイギーのボーカルが、こちらはUnderworldのトラックをサポートしているような形に。これまたしっかりと息の合ったコラボとなっています。

最後の曲は「Get Your Shirt」のラジオ・エディットのため実質上、4曲入りの今回のアルバム。まずはイギーとのコラボという話云々以前に、Underworldのトラック自体が、いい意味で彼ららしく、魅力的に仕上がっています。前作「Barbara Barbara, we face a shining future」は、流行っていたEDMへの反発ということもあり、彼らにしては地味な作風となっており内容に賛否がありました。しかし今回のアルバムに関してはイギーとのコラボで企画盤的な内容だったということもあってでしょうか、実に彼ららしいシンプルで高揚感のあるエレクトロダンスチューンに仕上がっています。素直にUnderworldらしいといえる楽曲の連続で、ファンならばかなり満足の行く内容になっていたのではないでしょうか。

またイギーとのコラボに関しても、どちらも必要以上に自己主張する訳ではなく、お互いの良さをしっかりと生かしあったコラボになっていたように感じます。どちらかというとUnderworldの世界にイギーが乗っかかったような楽曲が多かったでしょうか。そのためUnderworldの楽曲の良さがしっかりと生かされていましたし、またそれだけUnderworldの世界に沿ったようなコラボになっていながら、イギーの癖のつよいボーカルもあって、イギーの良さもしっかりと生かされていた楽曲になっていました。

おそらくUnderworld、Iggy Popどちらのファンも大満足のアルバムに仕上がっていたのではないでしょうか。コラボがたった4曲というのはあまりにも惜しい!是非、この勢いでアルバムを、それもフルアルバムでもう1枚!そう感じてしまうほどの傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

UNDERWORLD 過去の作品
Oblivion with Bells
The Bells!The Bells!
Barking
LIVE FROM THE ROUNDHOUSE
1992-2012 The Anthology
A Collection
Barbara Barbara, we face a shining future

IGGY POP 過去の作品
POST POP DEPRESSION


ほかに聴いたアルバム

4:44/JAY-Z

Beyonceの旦那さんとしてもおなじみのラッパー、JAY-Zの約4年ぶりとなる新作。先日、Beyonceとのユニット、THE CARTERSとしてアルバムをリリースして話題となりましたが、本作は2017年リリースのアルバム。リリース当初は日本ではサービスを開始していないストリーミングサービス、TIDALのみでのリリースとなり、日本では聴けない状況が続いていましたが、その後無事CDでもリリース。日本のリスナーも楽しめるようになりました。

楽曲はテンポのよいラップがメイン。サウンドはメロウさも感じつつもポップにまとめており、ソウル風な曲やレゲエの要素を取り入れた曲、トライバルなナンバーなどバラエティーも豊富。最近流行りのトラップ的な要素を取り入れた曲もあったりして、今風の要素も感じ取れます。Beyonceも最近活動に脂がのっていますが、旦那様も決して負けていないと感じられる傑作でした。

評価:★★★★★

JAY-Z 過去の作品
AMERICAN GANGSTER
THE BLUEPRINT 3
WATCH THE THRONE(JAY-Z&KANYE WEST)
MAGNA CARTA....HOLY GRAIL

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2018年9月28日 (金)

テレビ黄金期のスーパーグループ

今回紹介するのは、本書の帯によると「クレイジーキャッツ初の音楽ヒストリー&レコードガイド本」、「娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー」を名乗る佐藤利明氏による「クレイジー音楽大全」です。書店に並んでいたのを見て妙に惹かれて、読んでみました。

ただ、個人的には正直言うとクレイジーキャッツに対する思い入れはほとんどありません。世代的には「ひょうきん族」がリアルタイム。物心ついたころにはドリフターズも全盛期が終っていました。ただし、子どもの頃。土曜8時は「全員集合」→「加トケン」を見ており、個人的にドリフターズには思い入れがあり、その「師匠筋」という意味でクレイジーキャッツに対しての興味はありました。

そんな私が今回この本に対して興味を抱いたのは、やはり昭和のポップスの歴史を追うのに避けては通れないクレイジーキャッツに関して総括的に書いた本だったから。書店で立ち読みする中で興味が出てきて、買ってみることにしました。

本書はまず最初、80ページもかけてカラーで、クレイジーキャッツのレコード/CDジャケットの豊富な写真や、当時の公演などのパンフレットなどを紹介。これだけでもかなり見ごたえがあります。その後はクレイジーキャッツの結成から彼らの全盛期となる昭和37年(1962年)までの歩みを第1章から第3章で描き、第4章ではそれ以降の彼らの活動について、舞台公演、映画、新曲やLP盤毎に紹介しています。

もともと同じ佐藤利明氏の著書として「映画大全」「テレビ大全」を発売していたこともあり、今回の作品では主に音楽という視点から描いています。映画やテレビの活動についても紹介していますが、音楽的な視点からの紹介がメイン。もっとも、クレイジーの活動については総括的に記述しているため、この本を読めば、彼らの活動についての概ねはわかるような内容になっていました。

「大全」というタイトルなだけに彼らの活動を網羅的に描いた資料的内容も大きな魅力なのですが、やはり読んでいて一番楽しめたのは彼らの結成に至るまでの歴史や全盛期に至るまでの歩みを描いた第1章から第3章。クレイジーキャッツのメンバーが揃う直前は、メンバーそれぞれ様々なバンドに加入しては脱退して、という流れを繰り返しており、若干頭の中がごっちゃになりそうに思いつつ、クレイジーに関わらずメンバーの出入りが激しいというのはこの時代の傾向なのでしょうか。

そして特に読んでいてワクワクしたのが第2章の後半から第3章にかけて。まさに日本は高度経済成長期まっただ中。国全体に勢いがあり、また新しいものにどんどん挑戦しようという気概を、クレイジーキャッツをめぐる活動からも強く感じることが出来ました。また、登場してくる人物が、クレイジーのメンバーを含めてみんな若いこと若いこと。みんな20代、30代の人たちばかりが時代をつくってきたことがよくわかります。それだけ国全体が若かったんでしょうし、若さゆえの勢いがあった時代なんでしょうね。

いままでさほど興味がなかったのですが、この本を読んだことをきっかけに俄然、クレイジーキャッツに興味が沸いてきました。幸い、今の時代、You Tubeに彼らの全盛期の映像もアップされており、簡単に見ることが出来る時代。この本を読んだ後、You Tubeの動画もいろいろと見まくっています。今となっては彼らのコントはかなり素朴な笑いといった印象を覚えるのですが、その一流の音楽の腕前もあって、非常にスタイリッシュなものを感じました。彼らみたいに音楽の腕は一流でコントも出来るようなグループ、出てきてもいいと思うんだけど、いないなぁ・・・。

あとこの本を見て感じたのですが、彼らって昭和30年代に絶頂期を迎えつつ、ただその人気の絶頂はせいぜい10年くらいだったんですね。いや、それって彼らがどうこうというよりは、それだけ芸能界の新陳代謝が激しかったってことなんですよね。振り返って今の時代、音楽シーンもお笑いも、10年単位でトップを取っている人がほとんど変わっていないように思います。80年代にシーンを席巻したはずの秋元康がいまだに「トッププロデューサー」として活躍しちゃっている自体が、正直言って、テレビに元気がなく、今の芸能界がつまらない最大の要因のようにも思うのですが・・・。いろいろな意味で昭和30年代がよかったとは一概に言えないのですが、ただ芸能界の勢いは間違いなくあの時代の方があったよなぁ、ということを強く感じてしまいます。

またもうひとつこの本を見て感じたのですが、クレイジーのメンバーもそうなのですが、この本に紹介されている人たちのあまりにも多くが2000年代に鬼籍に入られていることに気が付きます。多くの方が1930年代生まれでちょうど70代になった頃、ということなのでしょうが、「昭和は遠くなりにけり」ということを強く感じてしまいました。

最後に、ちょっと残念だった点も。本書、文章中に注釈がついています。注釈の内容についてはページのすぐ下に記載されており参照しやすいのですが、注釈に番号が振っていないため、どの注釈がどの※印に対応しているのかが非常にわかりにくく困りました。この点は正直、もうちょっと考えてほしかったのですが・・・。

そんな訳で、いろいろと読み応えのあった1冊。上にも書いたのですが、いままであまり興味のなかったクレージーキャッツでしたが、一気に興味がわいてきました。これを機に、CDとかも聴いてみたいですね。昭和高度経済成長期の勢いが伝わってくるような1冊でした。

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2018年9月27日 (木)

安室奈美恵、引退!・・・の影響で

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

9月15日に行われた安室奈美恵引退ライブ。先週はその影響もあり彼女のベストアルバム「Finally」がチャートを駆け上がりました。今週はその余波をかって、さらに売上増。先週の2万枚から3万7千枚に売上枚数が増え、さらに3位から2位にランクアップしています。彼女の引退公演のニュースを一区切りに、おそらくベスト盤の売上も再び落ち着くものと思われますが、まだまだロングヒットは続きそうです。

そんな中、1位初登場となったのは韓国の男性アイドルグループ東方神起。2015年からの兵役義務終了後、初となる約3年10ヶ月ぶり、久々のニューアルバム「TOMORROW」が1位を獲得しました。初動売上は12万5千枚。直近作は韓国リリースのアルバム「NEW CHAPTER#1:THE CHANCE OF LOVE」でランクイン2週目に売上1万1千枚で7位を獲得しており、こちらからは大幅アップ。直近のベストアルバム「FINE COLLECTION ~Begin Again~」の13万枚(1位)からは若干のダウン。またオリジナルアルバムとしては前作となる「WITH」の23万3千枚(1位)からは大きくダウンしています。

3位は先週1位を獲得したTWICE「BDZ」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。4位に「Disney 声の王子様  Voice Stars Dream Selection」がランクイン。ディズニーの名曲を人気声優が歌う企画アルバム。初動売上1万3千枚でこの位置に。正直言うと、ディズニーも、こういう一部の固定層だけをターゲットした、いかにも売らんかな的なアルバムをリリースするんだ・・・と思ってしまいます。まあ、ディズニー自体、本質的には商業主義の権化という意見は否定できませんが。

5位初登場はくるり「ソングライン」。こちらも途中、メンバーのファンファンの産休や20周年のベスト盤リリースなどを挟み、4年ぶりとなるニューアルバム。久々のアルバムながらなんとメンバーは前作から変わっていません(笑)。初動売上は1万3千枚。直近のベストアルバム「くるりの20回転」の1万枚(9位)よりアップ。オリジナルアルバムとしては前作の「THE PIER」の1万9千枚(4位)からダウンしています。

6位にはスキマスイッチ「スキマノハナタバ~Love Song Selection~」がランクイン。デビュー15周年を迎えた彼らが、「記念日に贈りたい曲、記念日に聴きたい曲」をテーマに選曲した企画盤。初動売上は9千枚。直近のアルバム「新空間アルゴリズム」の1万6千枚(4位)からはダウンしています。

7位には女性アイドルグループPimm's「Human Xrossing」がランクイン。初動売上8千枚。本作がデビューアルバムとなります。

8位初登場はthe pillows「REBROADCAST」。約1年半ぶりのアルバムとなる本作ですが、来年9月にはなんと結成30周年(!)を迎える彼ら。本作はその30周年に向けての第1弾となるアルバムだそうです。初動売上6千枚は前作「NOOK IN THE BRAIN」(11位)から横バイ。

最後10位にはPEDRO [BiSH AYUNi D Solo Project]「zoozoosea」がランクイン。アイドルグループBiSHのメンバーAYUNiによるバンド形態のソロプロジェクトだそうです。初動売上5千枚でベスト10入り。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年9月26日 (水)

安室効果はシングルにも

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まずは初登場勢から。

まず今週1位はAKB48「センチメンタルトレイン」が獲得。先週の79位からCDリリースにあわせてのランクアップ。CD販売数が1位なのに対してダウンロード数が31位というあたり、典型的なCDをアイテムとして購入するファン層が多いアイドルらしい売上傾向が見て取れます。ほかにラジオオンエア数20位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数1位を獲得。オリコンでは初動売上144万枚で1位獲得。前作「Teacher,Teacher」の166万6千枚からダウンしています。

2位は刀剣男士team幕末 with巴形薙刀「決戦の鬨」が初登場で獲得。ゲーム「刀剣乱舞」から派生したミュージカルの出演俳優によるシングル。CD販売数2位、PCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数24位を獲得。ラジオオンエア数及びYou Tube再生回数は圏外となっており、典型的な一部固定ファンに支えられた形のヒット形態となっています。オリコンでは初動売上9万6千枚で2位初登場。刀剣男士関係では直近作、刀剣男士 formation of つはもの名義による「BE IN SIGHT」の9万9千枚(2位)より若干のダウンとなっています。

そして3位にはDA PUMP「U.S.A.」が先週の4位からランクアップし2週ぶりにベスト3へ返り咲きを果たしました。CD販売数は23位に留まっていますが、ダウンロード数は4位、ストリーミング数に至っては今週も1位をキープ。You Tube再生回数も1位となっており、「ちょっと聴いてみよう」という浮動層の支持が高いことを伺わせます。

続いて4位以下の初登場曲です。今週、初登場曲は1曲のみ。10位に高橋優「ありがとう」が初登場でランクインしています。映画「パパはわるものチャンピオン」主題歌。CD販売数10位、ダウンロード数19位、PCによるCD読取数24位、Twitterつぶやき数65位にとどまりましたが、ラジオオンエア数は見事1位を獲得し、総合チャートではベスト10入りしてきています。オリコンでは初動売上1万1千枚で9位初登場。前作「プライド」の1万7千枚(7位)よりダウンしています。

さて、今週は初登場が少な目だった一方、ロングヒット曲が目立ちました。上記の通り「U.S.A.」がベスト3に返り咲いたほか、米津玄師「Lemon」も5位から4位にアップ。ダウンロード数は3位から2位にダウンしましたが、You Tube再生回数では相変わらず2位をキープ。まだまだ強さを感じます。また今週はMISIA「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」が先週の8位から2ランクアップで6位獲得。これで7週連続のベスト10入りとなりました。話題となっているTBS系ドラマ「義母と娘のバラード」主題歌。CD販売数は27位に留まっていますが、ダウンロード数5位、さらにストリーミング数では2位を獲得しており、ドラマ主題歌らしい浮動層中心のヒット傾向が見て取れます。先日、ドラマは大ヒットの末に最終回を迎えました。ロングヒットはこれで一段落となるのか、まだ続くのか・・・これからの動向は曲本来の力が試されそうです。

そしてそして、アルバムチャートでは先週、安室奈美恵引退ライブに合わせてベストアルバム「Finally」が大きくランクをあげましたが、Hot100でも安室奈美恵効果があらわれました。今週8位に安室奈美恵「Hero」が先週の11位からランクアップ。今年の1月22日付チャート以来、36週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。特にダウンロード数では今週1位を獲得。その強さを見せつける結果となりました。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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2018年9月25日 (火)

統一感がないが・・・ただ、それが良い!

Title:the SEA
Musician:サニーデイ・サービス

3月に突如配信限定でリリースされ、賛否両論含め大きな話題となったサニーデイ・サービスのニューアルバム「the City」。様々なゲストミュージシャンが参加し、ある意味非常に挑戦的とも言えるアルバムになっていた同作。しかしサニーデイ曽我部恵一の挑戦はさらに続いていきました。今度は同作に収録されている曲をリミックスし、再構築。Spotifyで順次配信されていったのですが、今回はそれらの楽曲をまとめて「the SEA」としてリリースしました。

今回のリミックスにも1曲ずつ、様々なミュージシャンが参加。鈴木慶一やMURO、Fumiya Tanakaなどなど、有名どころから新進気鋭のミュージシャンまで様々なミュージシャンが参加しています。そんな様々なミュージシャンがそれぞれ思い思いに曲を再構築し、彼らなりのスタイルで新しい作風にまとめあげています。

もともとアルバムとしてリリースされた作品ではなく、Spotifyで1曲ずつ配信されていった作品だからでしょうか、アルバム全体としての統一感はほとんどありません。ある種のプレイリスト的な感覚のある作品とすら言えるかもしれません。ただ逆にそれだけに、1曲1曲自由度の高い、様々なアレンジが楽しめるバリエーション豊かなアルバムに仕上がっていました。

とにかく1曲目「FUCK YOU音頭」から非常にユニーク。「the CITY」では「FUCK YOU」だけをつぶやく曲ということで話題となった「ラブソング2」のリミックス・・・といってもほとんど原曲の様相はなく(笑)、サビで「FUCK YOU」と歌う音頭になっています。

続く石田彰リミックスによる「甲州街道の十二月」のリミックスもユニーク。チープさを感じる打ち込みのサウンドを取り入れているのですが、郷愁感あるメロディーと微妙なミスマッチが逆にユニークなリミックスになっています。また若干19歳の若いミュージシャン、ヤナセジロウのソロプロジェクトbetcover!!による「熱帯低気圧」も原曲が持っているメタリックな部分をさらに強調した迫力あるカバーが魅力的。まだ全く知られていない新人ミュージシャンながらも若い才能を感じることが出来ます。

かと思えば原曲ではサイケな曲調だった「ジュース」は平賀さち枝によりアコースティックな楽曲に変身。これも原曲の全く違う側面を発掘したユニークなカバーになっています。

その後もダビーなレゲエに再構築された「シックボーイ組曲」、よりサイケな雰囲気にリミックスした「おばあちゃんのドライフラワー」、逆にサイケな楽曲と比べてシンプルに仕上げた「ザッピング」など、曲によっては原曲の音をより分厚くしたり、かと思えばシンプルにしたりと、その方向性は様々。またそれが非常にユニークに感じられるリミックスアルバムになっています。

ラストは「the CITY」と同じく「町は光でいっぱい」で締めくくり。ただ、明るさを感じた「the CITY」に比べて、こちらはノイズがより強調され、むしろダークな雰囲気で締めくくり。そういう意味では「the CITY」とは対照的な締めくくりとなっていました。

ただ、原曲を再構築したといっても、基本的に原曲の魅力もそのまま残したような曲が多く、そういう意味でも個々のミュージシャンの魅力に加えて、サニーデイの魅力もしっかりと感じられたアルバムになっていました。原曲もかなりバラエティーに富んでアルバム全体に統一感のない作品になっていましたが、こちらはそれに増して統一感のないアルバムに。ただ、本作の場合、それが良い!と強く感じさせてくれるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

Popcorn Ballads
Popcorn Ballads(完全版)
the CITY
DANCE TO THE POPCORN CITY


ほかに聴いたアルバム

ITALAN/安藤裕子

Googleで検索すると変なサジェスチョンが出てくるのですが、「ITALIAN」ではなく「ITALAN」です。デビュー15周年を迎えた彼女によるセルフプロデュースによる新作。全編ファンタジックな雰囲気の作風になっており、まさに彼女の世界観が前面に押し出された、セルフプロデュースらしい作品になっていました。キラキラときらめくような世界を見せたかと思うと、「こどものはなし」のようなサイケ風な作品や「風雨凄凄」のようにソウルにこぶしを効かせたボーカルを聴かせてくれる曲もあったりして、わずか7曲のミニアルバムながらも彼女の魅力をしっかりと伝えてくれる傑作に仕上がっていました。

評価:★★★★★

安藤裕子 過去の作品
クロニクル
THE BEST '03~'09
JAPANESE POP
大人のまじめなカバーシリーズ
勘違い
グッド・バイ
Acoustic Tempo Magic
あなたが寝てる間に
頂き物

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2018年9月24日 (月)

いまなお圧倒的な個性を感じる

日本のミュージックシーンにおいて残念ながら早世したミュージシャンが、その後も長く支持され続けるケースは少なくありません。典型的なのが尾崎豊とhideでしょう。尾崎豊はいまだに熱心な信者が少なくありませんし、hideは彼が所属していたバンドX JAPANが活動中ということもあって、若い世代でファンになる方も少なくありません。

残念ながら大ブレイクしたバンドではないため「音楽ファン」のレベルに留まるのですが、Fishmansのボーカル、佐藤伸治もそんな一人でしょう。90年代に活躍し、レゲエ、ダブの要素を取り入れた独特の浮遊感あるサウンドが非常に高い評価を得たFishmans。そのボーカリストでありほぼ全ての曲の作詞作曲を手掛けた佐藤伸治は1999年にわずか33歳という若さでこの世を去りました。

それから約20年。Fishmansとしての新たな音源がリリースされることはありませんが、残されたメンバー茂木欣一を中心として、Fishmansはライブ活動を中心として今でも活動を続けています。そして今回、彼らのベストアルバムが2作同時にリリースされました。

Title:BLUE SUMMER~Selected Tracks 1991-1995~
Musician:Fishmans

まずこちらは初期ベスト。タイトル通り、1991年から1995年にリリースされたポニーキャニオン時代の作品を収録されています。大きな特徴はリリース形態がレコードと配信のみという点。このスタイルは最近、時々お目にかかりますが、特に今回は選曲を担当した茂木欣一によると「レコードで聴いてほしい曲」をセレクトしたとか。Fishmansは2005年にもベスト盤「空中」「宇宙」をリリースしていますが、それとはまた異なった視点からのセレクトとなっているそうです。

Title:Night Cruising 2018
Musician:Fishmans

そしてこちらはポリドール時代の曲を集めた後期ベスト。こちらはアナログ、配信の他にCDでもリリースされています。

今回、この2作品で久々にFishmansの曲を聴いたのですが、佐藤伸治の逝去から20年経った今でもその独特の個性が全く失われていない点に大きな驚きを感じました。上でも書いた通り、Fishmansの音楽の大きな特徴はレゲエやダブなどの要素を大胆に取り入れた音楽性。特に、夢の中の世界で空を飛んでいるかのような、浮遊感あふれるサウンドは佐藤伸治のボーカルによる部分も大きく、いまなお、彼らのスタイルを引き継げるようなバンドはいません。Fishmansはあれだけ高い評価を得ながらも、いまだに「トリビュートアルバム」という類のものがリリースされていませんが、あまりにサウンドが独自すぎて、誰にも彼らの曲を上手くカバーすることが出来ないからではないか、とすら思っています。

特に今聴くとすさまじいのが、後期ベストの「Night Cruising 2018」の方。タイトルチューン「ナイトクルージング」も浮遊感あふれる横ノリのリズムの中でサイケなギターサウンドが展開され強いインパクトを与えますし、続く「I DUB FISH」もタイトル通り、これでもかというほどリバースのかけられたサウンドがリスナーをFishmansという底なし沼の底へ底へと引きずりこむような奇妙な感覚に陥ります。

ラストにはエンジニアのzAkによる「ナイトクルージング」のリミックスも収録。リズムを強調したエレクトロトラックが今風のアレンジなのですが、そのサウンドにより彼ららしい浮遊感はしっかりと強調されており、確かに今、佐藤伸治が生きていたらこんな音を作り出すのかな、という感触を持てるリミックスに仕上がっていました。

いまから聴くと、ポリドール時代のFishmansはこのスタイルでのひとつの完成形に至りつつあったのかな、という印象も受けます。ただ、それだけに佐藤伸治の早世がなければ、さらにその向こうのFishmansの形が聴けたのに・・・といまさらながら残念に感じてしまいました。

一方、ポニーキャニオン時代の曲を集めた「BLUE SUMMER」は後期ベストと比べるとかなりメロディアスでポップという印象を受けます。とはいっても、この時期の曲も今聴いても圧倒的な個性を感じられ、魅力は十分。特に「静かな朝」のようなピコピコサウンドだったり、「感謝(驚)」のようなファンクだったり、サウンドが完成しつつあった後期よりもサウンド的にはバラエティーに富んでいます。

彼らのサウンドはいまでも全く古さを感じさせないどころか、いまなお圧倒的な個性を感じさせますし、リアルタイムを知らない若い音楽ファンにこそ聴いてほしいアルバム。もちろん、私のようなアラフォー世代のファンにとってもあらためてFishmansというバンドの偉大さを感じさせてくれるベストアルバムでした。

評価:★★★★★

Fishmans 過去の作品
LONG SEASON '96~7 96.12.26 赤坂BLITZ


Gracia/浜田麻里

なんと22年ぶりのベスト10ヒットを記録し、人気健在をアピールしたへヴィメタ姉ちゃん浜田麻里の新作。ただサウンド的には90年代あたりと全く変わらないスタイル。いくら様式美が特徴的なヘヴィーメタルとはいえ、昨今のミュージシャンはそれなりに今時の音を取り入れている中、逆に潔さすら感じてしまうのですが・・・。そういう意味では旧来のファンにとっては安心して聴ける内容。良くも悪くも大いなるマンネリといった感じでした。

評価:★★★★

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2018年9月23日 (日)

湿度ある夏を描いた作品

Title:湿った夏の始まり
Musician:aiko

約2年ぶりとなるaikoのニューアルバム。今回のアルバムは6月リリースと、タイトル通り「夏の始まり」にリリースされた訳ですが、このアルバムタイトルは「(2001年発売の)『夏服』の17年後を描きたい、『夏服』の後に私が過ごしてきた夏を描いたアルバムにしたい」とaikoが思ったことによってつけられたとか。要するにこの17年にaikoの歩みがこのアルバムには込められているといったところでしょうか。

そういった観点でアルバムを聴くと、このアルバム、やけに「雨」という言葉が多く登場してきます。「君がスニーカーを履くと 必ず雨が降るね」「ハナガサイタ」)、「雨の匂いに包まれて 泣いたらとてもみじめに見えそう」「あなたは」)、「今降るこの雨 遠くは晴れている」「恋をしたのは」)・・・などなど。まさにアルバムタイトル通り、「湿った夏」を描写したような表現が要所要所に見受けられます。

ちょっと憂いを感じるジャケット写真といい、アルバム全体に湿気を感じるのは、やはり単純にカラッと明るいだけでは語れない、aikoの17年の歩みがあるから、といったところでしょうか。今回のアルバムは、まさにaikoらしい大人の恋愛を綴った作品と言えるのかもしれません。

そんな今回のアルバム、歌詞もそうですが、メロディーやサウンドの面も、aikoらしいいい意味で安定感あるポップアルバムに仕上がっていました。「格好いいな」「愛は勝手」など、aikoらしいこぶしを聴かせたボーカルが魅力的な曲があれば、先行シングルとなった「ストロー」はまさにaikoらしい複雑に展開していくサビが魅力的。それにも関わらずインパクトあって爽やかなメロディーはまさにメロディーメイカーの才が十二分に発揮された作品になっています。

ほかにも疾走感あるギターサウンドが心地よい「ハナガサイタ」「夜空綺麗」や、ビッグバンド風のホーンセッションが入りつつ、メロディーはしんみり聴かせる「うん。」など、基本的にはaikoらしいシンプルなポップチューンが多い中でもバラエティーを持たしています。

ラスト前の「宇宙で息をして」は非常に切ない歌詞が印象に残る、ピアノとストリングスで切なく聴かせるナンバー。そしてラストの「だから」もピアノとストリングスでしんみり聴かせます。ただし最後の曲は恋人どうしの2人がこれから歩んでいこうと歌うナンバーで、爽やかな気持ちでアルバムは幕を下ろします。

正直なところ、基本的にはアルバム全体としてさほど目新しいものは感じません。ただ、良質なポップチューンの並ぶ、高いレベルで安定したポップアルバムに仕上がっていました。そういう意味では今回も文句なしの傑作アルバムと言えるでしょう。安心して聴けるアルバムでした。

評価:★★★★★

aiko 過去の作品
秘密
BABY
まとめI
まとめII

時のシルエット
May Dream


ほかに聴いたアルバム

SOUNDTRACK~Beginning&The End~/吉井和哉

2016年12月の武道館ライブの模様を収録した作品で、ソロデビュー15周年にあわせてリリースされたライブアルバム。当日はリクエストに基づいたセットリストだったようで、それだけに本作もベスト盤的な選曲になっている点が魅力的。基本的にベテランらしい安定した演奏が楽しめるアルバムになっており、ベスト盤的な感覚で楽しめる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

吉井和哉 過去の作品
Hummingbird in Forest of Space
Dragon head Miracle
VOLT
The Apples
After The Apples
18
AT THE SWEET BASIL
ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!!~
STARLIGHT
SUPERNOVACATION
ヨジー・カズボーン~裏切リノ街~

ALL TIME BEST/UVERworld

UVERworldに関しての印象といえば、シングル曲などを聴く限りでは、一応ハードコアの影響を受けたようなへヴィーなロックの音を鳴らしているものの、サウンドは平坦でメロディーも平凡なJ-POP。いかにも「売れ線ポップ」にありそうな、スタイルだけは「ロック」だけどもルーツレスで楽曲に奥行を感じさせない悪い意味での「J-POP」というイメージでした。ただ、なぜかROCKIN'ON JAPANあたりが妙に絶賛していて、まあ、聴かず嫌いは良くないか、とも思い、今回、3枚組のオールタイムベストを聴いてみた訳です。

・・・・・・が、このベスト盤を聴いた後でも私が最初に彼らに関して思っていた印象が一歩たりとも動きませんでした。正直、メロディーにしてもおもしろさは感じられず、サウンドもただへヴィーな音が鳴っているだけ。彼らに限らず、特に最近のROCKIN'ON JAPANは「なんでこんなつまんないバンドをこれだけ大きく取り上げるんだろう?」というケースが以前に増して目立っている感があるのですが、正直なところ予想していたよりも残念な感じ。もっと雑誌として取り上げるべきミュージシャンはいると思うんですけどね(苦笑)。

評価:★★★

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2018年9月22日 (土)

胸が熱くなるスプリット盤

Title:Ken Yokoyama VS NAMBA69
Musician:Ken Yokoyama/NAMBA69

昨年、2017年の日本のミュージックシーンにおいてもっとも大きなニュースのひとつは、間違いなく約18年ぶりとなるHi-STANDARDのニューアルバムリリースというビックニュースでしょう。90年代の日本のパンクシーンにおいて絶大な人気を誇ったバンド、Hi-STANDARD。特に99年にリリースしたアルバム「MAKING THE ROAD」はミリオンセラーを達成。大きな話題となり、数多くのパンクロックバンドに大きな影響を与えました。

しかし2000年には残念ながらその活動を休止。一時はメンバーの横山健、難波章浩の不仲が伝えられ、実際に2007年には難波章浩のブログ上でハイスタの収益の分配をめぐるトラブルがWeb上で掲載されるなど、その活動再開が絶望視されていた時期もありました。しかし、その後2人の不仲も解消されたようでハイスタの活動も再開し、昨年は待望のニューアルバムのリリースに至りました。

そして今回、なんと横山健と難波章浩のバンド、NAMBA69がスプリットアルバムをリリース。ある意味、一時期の両者の不仲という経緯があり、かつKen Yokoyama名義での活動もNAMBA69としての活動もハイスタ活動休止中に開始された活動であっただけに、ある意味、ハイスタ活動再開以上に胸熱な企画のように感じました。

特に今回のアルバムで印象的なのはNAMBA69の「PROMISES」で、

「We're here!
(Did we really wanna fight?)

We're here!
(Why did we part ways?)」
(訳;僕たちはここにいる!
(僕たち本当に喧嘩したかったのか?)
僕たちはここにいる!
(何故僕たちは別々の道を歩んだんだろう?))

(「PROMISES」より 作詞 AKIHIRO NAMBA、TOSHIYA OHNO)

と、ハイスタが活動休止となり2人が離れ離れになっていた時期の事を歌ったような歌詞になっていますし、またタイトルとなった「PROMISES」も、ハイスタが活動休止になってもハイスタが戻ってくるまでレーベル「PIZZA OF DEATH」を守っていくという「約束」のことだという話もあります。そういう意味でも難波章浩の思いが強く感じられる曲になっています。

本作にはKen Yokoyamaの楽曲が3曲、NAMBA69の楽曲が3曲収録されています。Ken Yokoyamaの曲は「Support Your Local」とHANOI ROCKSのカバー「Malibu Beach Nightmare」もいずれもへヴィーで、よりハードコア志向が強いナンバーに仕上がっています。また3曲目の「Come On,Let's Do The Pogo」は一転して軽快なスカパンクなナンバーに。いずれもハイスタの方向性とは若干違う雰囲気を見せる楽曲になっています。

一方NAMBA69の曲は前述の「PROMISES」もそうですが、メロディアスパンク色の強い楽曲に。タイプ的には比較的、ハイスタに近いものを感じます。もちろん、Ken Yokoyama、NAMBA69どちらの曲もハイスタとは異なるものなのは間違いありませんが、ハイスタの方向性としては、より難波章浩の意向が比較的強いのかな、という印象も受けました。

ちなみにそれぞれの3曲中1曲はカバーとなっている本作ですが、NAMBA69はblurの「SONG2」をカバー。印象的なイントロと、「フゥーフゥー」という印象に残る合いの手がそのまま残っており、原曲のイメージそのままにパンクロックにした楽しいカバーに仕上がっていました。

前述の通り、Ken YokoyamaとNAMBA69の曲が1枚のCDに収録されているだけで胸が熱くなってくるような1枚。内容的にもお互い思い入れを感じられる名曲、名カバーが揃っていました。またハイスタでの活動とは別に、お互いのソロ活動も継続しそうですね。ハイスタの活動を長く続けるためにも並行してソロとして活動を続けるスタイルの方がいいのかもしれませんね。ハイスタ、Ken Yokoyama、NAMBA69それぞれの今後の活動に期待です。

評価:★★★★★

Ken Yokoyama 過去の作品
Four
Best Wishes
SENTIMENTAL TRASH

NAMBA69 過去の作品
21st CENTURY DREAMS
LET IT ROCK

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2018年9月21日 (金)

3年ぶりのオリジナルアルバム

Title:GOING TO A GO-GO
Musician:クレイジーケンバンド

デビュー以来、律儀にほぼ1年に1枚のペースでアルバムをリリースし続けるクレイジーケンバンド。ただ、昨年はベスト盤、おととしにリリースした「香港的士-Hong Kong Taxi-」はセルフカバーアルバムと2年続けて企画盤的なアルバムをリリース。オリジナルアルバムとしては3年ぶりとちょっと久々のアルバムとなります。

昨年のベスト盤はデビュー20周年、おととしの企画盤は横山剣のデビュー35周年とベテランの領域である彼ら。一時期は「リリースするたびに最高傑作を更新する」と言われるほどの勢いのあった彼らでしたが、ここ最近は一段落。ただ、直近のオリジナルアルバム「もうすっかりあれなんだよね」はここ最近のアルバムとしては一番の出来でしたし、バンドとしては安定期に入っているといった印象を受けます。

実際に今回のアルバムでもタイトルチューンであり1曲目を飾る「GOING TO A GO-GO」は彼ららしい軽快で楽しいポップチューンに仕上がっていますし、おきまりのアイキャッチを挟む「そうるとれいん」も彼ららしいソウルと昭和歌謡が融合した聴かせるナンバーで、暖かいメロディーラインにほっとさせられる名曲。アルバム全体として一時期のような勢いことないものの、安定感のある良曲が並んでおり、ファンならずとも安心して聴ける歌謡曲テイストの強いソウルポップが並んでいます。

さてそんな今回のテーマは「支離滅裂」だそうで、アイキャッチが3トラックがあるため全17曲となる今回のアルバム、様々なタイプの曲が収録されています。おなじみのソウル、歌謡曲の要素だけではなく、例えば「GARDEN」はラテンなパーカッションが目立つナンバーになっていますし、「SOUL 痛  SOUL」では裏打ちのリズムが展開されるレゲエのテイストも強いナンバーに。「オハヨウゴザイマス」はダンサナブルなナンバーに仕上がっているなどバラエティー豊富。音楽のジャンル的な部分のみならず、ほかにも例えば「山鳩のワルツ」はNHKの「みんなのうた」に採用されるなど、子どもにもアピールできるようなポップチューンになっていますし、「夜のドドンパ」「のっぺらぼう」のようなコミカルなナンバーも収録されています。

そんな訳でバラエティー豊富なアルバムとなった今回の作品ですが、ただ正直言うと、このバラエティーの豊富さは今回のアルバムに限った訳ではなく、クレイジーケンバンドは以前から、音楽的な懐の深さを感じさせます。今回のアルバム、「支離滅裂」を唄っている割には、そんなに「支離滅裂」じゃなかったな、と思ってしまいます。個人的にはちょっと安定しすぎている感じもするため、もっと「支離滅裂」になってもおもしろかったのでは?と思う部分もあるのですが・・・。もっとも今回のアルバムテーマの「支離滅裂」は、彼ららしい単なるジョークという気もしないではないのですが・・・。

もっともそうはいっても内容的には上にも書いた通り、安心して聴ける傑作アルバムという点は間違いありません。3年待たされたファンも納得できる内容だったと思います。次はまた1年後にオリジナルアルバムがリリースされるのでしょうか?次回作も楽しみです。

評価:★★★★★

クレイジーケンバンド 過去の作品
ZERO
ガール!ガール!ガール!
CRAZY KEN BAND BEST 鶴
CRAZY KEN BAND BEST 亀

MINT CONDITION
Single Collection/P-VINE YEARS
ITALIAN GARDEN
FLYING SAUCER
フリー・ソウル・クレイジー・ケン・バンド
Spark Plug
もうすっかりあれなんだよね
香港的士-Hong Kong Taxi-
CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST 愛の世界


ほかに聴いたアルバム

Rappuccino/GAKU-MC

ラップグループEAST ENDのメンバーで、ミスチル桜井和寿とのユニット、ウカスカジーとしても活躍しているGAKU-MCの2年ぶりとなるニューアルバム。前作同様、日常生活の中での応援歌的な歌詞がメイン。正直、前作でもちょっと気になったのですが、そういうテーマだとしてもあまりにも毒がなさすぎる・・・。特にJ-POP系のミュージシャンでよくありがちな「前向き応援歌」系の歌詞と異なり、歌詞にある程度具体性があるだけに、あまりに清潔に漂白された内容に鼻白んでしまいました。

あとちょっと気になったのが「オー・シャンゼリゼ」のサビを「表参道」に代えた「オー・オモテサンドウ」って曲があるんですよね。でもこのネタって既にKANが「表参道」って曲でやってるんだよなぁ。知る人ぞ知る的な曲ならまだしも、この曲、アイドルグループのチャオ ベッラ チンクエッティがカバーしてオリコンで最高位3位を取っているだけに、周りの誰も「知らなかった」ではちょっと許されないと思うんだよね・・・。もちろん、一言話を通しているんならば、何も問題ない話だとは思うんだけど・・・。

評価:★★★

GAKU-MC 過去の作品
世界が明日も続くなら
ついてない1日の終わりに

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2018年9月20日 (木)

安室奈美恵のベスト盤、再び

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

9月15日の沖縄でのライブを最後に惜しまれつつ引退した安室奈美恵。引退公演は大きなニュースとなりましたが、今週、その引退公演にあわせる形で彼女のベストアルバム「Finally」がランクをあげています。先週の9位から大きくランクをあげ3位にランクアップ。なんとベスト3入りを果たしています。売上枚数も9千枚から2万枚に大きくアップしています。

今週はその引退公演のニュースが大きく取り上げられています。来週以降もまだまだ高い売上をキープしそうです。

そんな中、今週1位を獲得したのは韓国の女性アイドルグループTWICE「BDZ」がランクイン。ちょっと意外な印象も受けるのですが、アルバムでは初の1位獲得となるそうです。初動売上は18万1千枚。直近作は輸入盤「Summer Nights:2nd Special Album」で、こちらの2万6千枚(4位)からは大きくアップ。国内盤としては前作「#TWICE」の13万枚(2位)からもアップしています。

2位初登場はTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「THE RAMPAGE」。ミュージシャン名義通り、LDH所属の男性ボーカルグループによる1stアルバム。初動売上3万6千枚でデビュー作にていきなりのベスト3獲得です。

続いて4位以下の初登場盤です。まず7位に岡部啓一「NieR Orchestral Arrangement Special Box Edition」がランクイン。スクエア・エニックスが発売したアクションRPG「ニーア ゲシュタルト」&「レプリカント」とその続編「ニーア オートマタ」のゲームミュージックをオーケストラアレンジにして3枚組としたボックスセット。初動売上は6千枚。

8位初登場はSHINee「THE STORY OF LIGHT EPILOGUE」。いままでEP1からEP3にわけてリリースしていたアルバム「THE STORY OF LIGHT」に新曲「Countless」を加えて1枚のアルバムにしたものだそうで・・・相変わらずアコギな商売しているなぁ(苦笑)。初動売上6千枚。直近作「The Story of Light EP.3」の7千枚(18位)からダウンしています。

9位には「『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』舞台オリジナルソングCD」がランクイン。男子アイドル育成プロデュースゲーム「あんさんぶるスターズ!」が「あんさんぶるスターズ! オン・ステージ」として舞台化。その舞台で使われた楽曲をあつめたアルバムです。初動売上6千枚。

最後10位には「艦隊これくしょん -艦これ-KanColle Original Sound Track vol.Ⅳ【雨】」がランクイン。ゲーム「艦隊これくしょん -艦これ-」のサントラ盤。初動売上6千枚。サントラ盤では前作「艦隊これくしょん -艦これ- KanColle Original Sound Track vol.III 雲」の1万3千枚(7位)より大きくダウンしています。

さてロングヒット組ではサザンオールスターズのベストアルバム「海のOh,Yeah!!」は先週の7位から5位にランクアップ。ただし売上枚数は1万3千枚から1万枚へと若干のダウンとなっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年9月19日 (水)

男性アイドル勢がベスト3独占

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はHot100としては珍しく、ベスト3に男性アイドル勢が並びました。

まず1位を獲得したのがジャニーズ系アイドル、NEWS「『生きろ』」。先週の47位からCDリリースにあわせての1位獲得です。日テレ系ドラマ「ゼロ 一獲千金ゲーム」主題歌。タイトル通りの前向きソングで良くも悪くもベタなJ-POPらしい曲。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で1位。ラジオオンエア数も11位にランクインしています(ダウンロード及びストリーミングは未配信)。オリコンでは初動売上21万5千枚で1位獲得。前作「BLUE」の16万4千枚(1位)からアップしています。

2位初登場は名古屋を中心に活動する男性アイドルグループBOYS AND MEN「炎・天下奪取」。TBS系ドラマ「マジで航海してます。-Second Season-」主題歌。ヒャダイン作詞作曲によるナンバーですが、その割には平凡なアイドルポップといった印象が。CD販売数2位、Twitterつぶやき数11位、ラジオオンエア数26位を獲得(ダウンロード及びストリーミングは未配信)。オリコンでは初動売上11万5千枚で2位初登場。前作「進化理論」の13万9千枚(1位)よりダウンしています。

で3位はK-POPの男性アイドルグループ。MONSTA X「LIVIN' IT UP」が獲得。エレクトロビートの強いHIP HOPからスタートし、サビはポップな歌モノというアイドル系によくありがちなパターン。CD販売数3位、PCによるCD読取数53位、Twitterつぶやき数5位(ダウンロード及びストリーミングは未配信)。オリコンでは初動6万4千枚で3位初登場。前作「SPOTLIGHT」の7万枚(2位)よりダウンしています。

以上1位から3位までCDの売上ランキングと一致しており、かつ、曲がヒットしているというよりもファンズアイテム的にCDだけが売れているアイドル系が並ぶというHot100らしからぬベスト3となりました。ただ、4位以下はある意味、Hot100らしい配信中心のヒット曲が並びます。

まず初登場では6位に西野カナ「Bedtime Story」が先週の16位からCDリリースにあわせてベスト10入り。映画「3D彼女 リアルガール」主題歌。タイトル通りの物語性のある歌詞が聴かせる曲なのですが、物語の展開にひねりもなにもないのが非常に残念。CD販売数が7位なのに対してダウンロード数が3位を記録。ただストリーミング数は31位に留まっており、音源を手元に残したい固定ファンの人気がメインで、ストリーミングでちょっと聴いてみようという層には届いていない模様。ほかにラジオオンエア数12位、PCによるCD読取数16位、Twitterつぶやき数71位、You Tube再生回数60位を記録。オリコンでは初動売上1万6千枚で7位初登場。前作「アイラブユー」(8位)から横バイとなっています。

7位には韓国の女性アイドルグループTWICE「BDZ」が先週の12位からランクアップしベスト10入り。今週のアルバムチャートで上位にランクインしてきているアルバム「BDZ」のタイトルチューン。配信オンリーのためCD販売数はランク外ですが、ダウンロード数35位、ストリーミング数で3位を獲得し、浮動層の人気が高い模様。またラジオオンエア数1位、Twitterつぶやき数2位、You Tube再生回数4位といずれも上位にランクインしています。

このように初登場組はいずれも配信中心のヒットとなっている今週のチャート。また同じく配信中心のヒットとなっているロングヒット曲は今週も目立ちます。まず4位におなじみDA PUMP「U.S.A.」がランクイン。残念ながら先週の2位からはダウンしてしまいましたが、ダウンロード数で5位、ストリーミング数では1位をキープ。さらにYou Tube再生回数でも1位を獲得しています。また米津玄師「Lemon」は7位から5位にランクアップ。こちらはダウンロード数で2位(ストリーミングは未配信)と根強い人気を保っているほか、PCよるCD読取数6位、Twitterつぶやき数8位、You Tube再生回数2位といずれも上位をキープ。まだまだロングヒットが続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年9月18日 (火)

あの頃に戻ったような

B'z LIVE-GYM Pleasure 2018-HINOTORI-

日時 2018年9月6日(木)18:00~ 会場 豊田スタジアム

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個人的に以前から一度は行ってみたいなぁ、と思っていたライブに足を運んできました。B'zのワンマンライブ。今回は5年に1度開催する「Pleasureシリーズ」と題うたれる、主に過去のヒット曲を中心とする構成からなるライブ。だから、という訳でもなくちょうどライブの日程が私の予定と合ったから、というのが大きな理由なのですが、ついに念願のライブに足を運んできました。

いつもはライブには開演時間ギリギリに足を運ぶものの、この日はスタジアムライブということもあって1時間くらい前に会場入り。席に着いてからもビールを飲むなどして、のんびりしながら開演を待ちました。そして席の場所にビックリ。スタンド席だったのですが、ステージのすぐ真横!メンバーの姿が非常にはっきりと見える位置で予想外に良い席でうれしくなりました。

そして開演を5分程度過ぎた頃、ついにライブがスタートしたのですが・・・まずは一言言わせてください。予想以上に最っ高に楽しいライブでした!!

というのもその大きな理由がこの日の選曲。途中のMCでも「みんなが口ずさみやすいもの」と稲葉さんが言っていましたが、ほとんどが1990年代の楽曲ばかり。つまり私が中学生から高校生の頃に聴いていた曲ばかりで、陳腐な言い方かもしれませんが、本当にあの頃に戻ったような錯覚に陥るひと時で、文字通りの感涙モノのセットリストになっていました。

スタートはまず「ultra soul」からスタート。ある意味、つかみ的な盛り上がりやすいナンバーなのですが、それに続いてはなんと「BLOWIN'」!非常に懐かしいナンバーがいきなり飛び出し、気分はあがりまくります。その後、ステージ上のモニターは紙コップでドリンクをのむ稲葉さんをクローズアップ。稲葉さんがカメラを招き寄せるような動作をしたから何かな、と思ったら、紙コップの後ろに「B'z LIVE-GYMへようこそ」という手書きのメッセージが(笑)。なかなかコミカルな演出で盛り上げます。

続いては「ミエナイチカラ ~INVISIBLE ONE~」と懐かしいナンバーから、「TIME」へ。「BLOWIN'」のカップリング曲で、これまた感涙モノ。さらに「love me,l love you」と自分が中高生の頃にリアルタイムで聴いていたナンバーが続き、気分は高揚します。

ここで一度会場はクールダウン。「光芒」をしんみり聴かせた上で、こちらも是非聴いてみたかった「もう一度キスしたかった」を静かに感情たっぷりに歌い上げいます。そして続いては「B'zでは珍しくふりつけのあるナンバー」ということで、「恋心(KOI-GOKORO)」へ!個人的にも大好きなナンバーで、間違いなく聴きたかった曲No.1だったので、もう狂喜です。はじまる前に稲葉さん自らふりつけの指導(?)があり、みんなで踊りつつのライブ。途中、メンバー2人と女性の下半身の風船の像がステージ上に登場し、ちょっとコミカルな雰囲気に。そのまま「OH!GIRL」とこれまた懐かしい、ポップなナンバーと続きます。

「イチブトゼンブ」を挟んで、これまた非常に懐かしい「ZERO」へ。途中ラップのパートでは松本孝弘がこれまた懐かしい「ZERO」の8cmシングルの歌詞カードをみながらラップを口パクなんていうコミカルなシーンが。途中、稲葉さんに突っ込まれていました(笑)。

その後メンバー紹介があり、松本さんが「星に願いを」を叙情感たっぷりにギターソロで披露。そしてステージの下からピアノがせり上がってきたかと思うと、稲葉さんのピアノ弾き語り+ギターによる「ALONE」へと続きます。こちらも私が中学時代の超懐かしいナンバーで、あの頃を思い出してしまいました。

さらにステージ上に怪しげな鏡のようなものが登場。ステージ上が怪しい雰囲気になると「LOVE PHANTOM」へ。これまた聴きたかったナンバーなので否応なしに気分は盛り上がります。途中、「HINOTORI」を挟んで、最後はバンパイアの格好になった稲葉さんが高所にあがると、そのままジャンプ(!)という演出。この曲の時のお決まりの演出みたいですね。最後のダイブはもちろんスタントマンと入れ替わっての演出のようですが。

その後は「Real Thing Shakes」を1番のみ披露し、カッコイイギタープレイを存分に聴かせたかと思うと、「juice」へ。ここでは大きなジュースの缶を模した風船が登場し、観客席の上を跳ねまわりました。「juice」の途中では「NATIVE DANCE」と「太陽のKomachi Angel」をちょっとだけ披露するシーンも。そして「juice」が終ると・・・もうイントロが聴こえただけで気分が一気にあがってしまいます、「BAD COMMUNICATION」へ。こちらも大好きなナンバーで気持ち的に大盛り上がりです。

そして本編ラストはツアータイトルにもなっている「Pleasure 2018-人生の快楽-」。もともと「Pleasure'91~人生の快楽~」が、ライブツアー毎に一部歌詞を替えつつ披露されているそうです。この曲、私が一番最初にリアルタイムで聴いたB'zのナンバーなのですが、その懐かしさと、さらにある意味ノスタルジックさを感じる歌詞の内容から・・・正直、聴いていて涙が出てきました(^^;;

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本編は終わりアンコールへ。ただなかなかメンバーはあらわれません。25分くらい経ってようやく2人が会場の後ろから登場!会場のアリーナ後方部に設けられたミニステージに2人だけのぼってアンコールとなりました。ここでのMCは松本さんに振られ、ここでは「B'zと名古屋」ということで、B'zの初のワンマンライブが名古屋の芸創センターで演ったという話。そしてアンコール1曲目は「Brotherhood」へ。最初はメンバー2人のみの演奏からスタート。最後はバンドの演奏をバックに後方のミニステージからスタンドとアリーナの間の通路を通りつつ、前方のステージへ。歌詞の「We'll be alright」をみんなで大合唱していました。

そして本編ラストは「RUN」で締めくくり。こちらも昔のナンバーで、懐かしさを感じつつ、幕を下ろします。最後はメンバー2人のみがステージ上に並んでご挨拶。約2時間45分程度でライブは幕を下ろしました。

本当に最初から最後まで懐かしい曲の連続。聴きたかったナンバーもかなりの割合で聴けて、かなり満足度の高いライブでした。ライブを見に行って、「自分、このミュージシャンがこんなに好きだったんだ」と気づかされるライブって何度かありましたが、今回もまさにこのパターン。もちろん思い出補正的な部分も大きいのですが、もう最初から最後まで感動しっぱなしのライブでした。

客観的に言えば、ある意味予想通りではあるのですが、非常に完成度の高いステージという印象。演奏は原曲から大きな変化もなく、ある意味CD通り。演奏の迫力で聴かせる、といった感じではないのですが、安定感ある演奏と、数多くのパフォーマンスで彩られており、とにかく楽しめるエンターテイメント性抜群のステージでした。

30周年のステージということもあって、バックのモニターでは過去のライブ映像なども流されて、こちらも懐かしい気分に。「Real Thing Shakes」の前では96年のライブツアー「Sprit Loose」のオープニング映像も流れていたりして、非常に若い2人の姿に懐かしく感じると共に、お金のかかった演出にはCD業界は景気のよかったあの頃を思い出したりして・・・。

しかし稲葉浩志は御年53歳なのに実に若々しい。先日の福岡公演で声が出なくなるトラブルがあったりして、この日もどうも本調子ではなかったようで、本編ラストのMCでは「万全じゃなくてごめんなさい」と言っていたり、アンコールのMCでも「みんなにエネルギーもらって甘えてしまいました」というMCがあったりしたのですが、30年近く前のナンバーを当時と全く変わらないキーと声量で歌い上げるあたり点には驚きを感じます。

一方、松本孝弘はさすがにルックスはそれなりに年齢なりに(^^;;ただやはりギターをかかえているだけで二の腕はかなりムキムキな感じでしたが(笑)。

そんな訳で、稲葉さんのボーカルも万全な状況ではなかったのですが、それを差し引いても最後まで心の底から楽しめるステージでした。再度書きますが、中高生時代にリアルタイムで聴いていた曲の連続で、本当にあの頃に戻ったような錯覚に陥った一瞬。また、次の「Pleasure」シリーズも、是非とも足を運びたいと感じたステージでした。

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2018年9月17日 (月)

前々作、前作も大きな話題に

Title:Ordinary Corrupt Human Love
Musician:Deafheaven

今回紹介するアルバムはDeafheavenというアメリカの5人組バンド。彼らのアルバムを聴くのは本作がはじめてなのですが、前々作「Sunbather」も前作「New Bermuda」も海外では高い評価を得たとか。もともとこのアルバムを聴いたはPitchfolkで「BEST NEW ALBUM」の評価を得たことがきっかけだったのですが、それ以上に興味を引いたのは彼らの音楽のスタイル。ジャンル的にはブラックメタルにカテゴライズされるとか。ただ単純なメタルバンドではなく、シューゲイザーやポストロックなどの影響の強い「ポストメタル」というジャンルにカテゴライズされるバンドのようです。

確かにこのアルバムも、1曲目「You Without End」は静かなピアノの音からスタートします。中盤あたりもバンドサウンドが徐々に加わっていくのですが、メロディアスなフレーズが印象的。ただ中盤、バックにいきなり金切り声が鳴り響き、ブラックメタルらしさがあらわれてきます。

続く2曲目「Honeycomb」はブラックメタルの特徴らしい、トレモロリフと金切り声がいきなり鳴り響きますので、そういう意味ではブラックメタルらしいサウンドと言えるかもしれません。ただ、こちらもそんなヘヴィーなサウンドをバックにダイナミックながらもメロディアスなギターが鳴り響いており、いい意味で聴きやすく、なおかつ重層的なサウンドが楽曲に深みを与えています。

基本的に非常にメランコリックなギターサウンドがメロディアスに鳴り響く中、分厚くダイナミックなバンドサウンドが複雑に展開する構成が特徴的。途中、ブラックメタルらしい金切り声が登場し、メタルらしいへヴィネスさを楽曲に加えています。7曲入りのアルバムながらも、うち4曲が10分以上の曲となっており、その長さの中でサウンドが徐々に展開していくのも大きな魅力となっています。

シューゲイザーからの影響も強いということですが、楽曲のタイプ的にはMOGWAIやGodspeed You! Black Emperorに近いイメージがあります。ブラックメタル好きの壺にももちろんはまりそうなバンドかもしれませんが、それ以上にギターサウンドが主体のポストロックが好きな方にははまりそうなバンドのように感じました。

彼らの曲はメロディーラインも美しく、特に「Night People」ではアメリカでゴシック・ロックを奏でる女性ミュージシャン、チェルシー・ウルフをゲストとして迎えているのですが、こちらはメタル色の薄いポップチューン。ただ男女デゥオの歌のメロディーが美しく、非常に心を打ちます。ラストの「Worthless Animal」も10分という長尺の曲で、ダイナミックなバンドサウンドと金切り声が終始展開されるへヴィーな曲なのですが、どこか郷愁感のあるフレーズが楽曲全体を通じて流れており、心に響いてくる曲になっていました。

今回はじめて聴いた彼らのアルバム。「ブラックメタル」ということで最初は構えたのですが、結果的にはその美しいフレーズとへヴィーなバンドサウンドにすっかりはまってしまいました。申し分ない傑作アルバム。日本ではさほど知名度が高くないように感じるのですが・・・ポストロックが好きならかなりはまりそうな1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Collagically Speaking/R+R=NOW

2度のグラミー賞を受賞し、今、最も注目されるジャズピアニスト、ロバート・クラスパーと同じくケンドリック・ラマーにも重用され大きな話題となったプロデューサーでありサックス奏者でもあるテラス・マーティンというジャズシーンで最も注目を集める2人を中心としたバンド、R+R=NOW。全体的にはメロウなメロディーラインがまず耳に残るポップなナンバーが多く収録されています。ジャズのアルバムながらもソウル、HIP HOPの要素も取り入れており、自由度も高いサウンドも魅力的。ただ全体的にはポップでおとなしくまとまってしまっているような印象も。

評価:★★★★

I'm All Ears/Let's Eat Grandma

「おばあちゃんを食べちゃおう!」とはかなり刺激的な名前のつけられたミュージシャンですが、10代の女の子2人によるイギリスのエレクトロポップデュオ。今年のフジロックにも出演するなど、徐々に話題を集めています。基本的には軽快なシンセの音をバックとしたガールズポップがメインなのですが、終盤には9分にも及ぶ「Cool&Collected」や11分にも及ぶ「Donnie Darko」といった曲も展開。いずれも楽曲が進むにつれ複雑に展開していき、ダイナミックで分厚いサウンドやサイケ風のサウンドなども飛び出すなど、単純なエレクトロポップに留まらない一面を楽しめます。一度その名前を聞いたら忘れられなさそうなユニットですが、これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★

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2018年9月16日 (日)

逝去後20年目のトリビュートアルバム

Title:hide TRIBUTE IMPULSE

ある意味、ブルーハーツと並んでおそらく今、もっとも多くのトリビュートアルバムがリリースされているミュージシャン、hide。今回のアルバムは没後20年にあたってリリースされたトリビュートアルバム。一体何作目だよ!とも思ったりするのですが、今年5月に彼の最期の足取りをたどったドキュメンタリー映画「HURRY GO ROUND」が公開されており、本作はその映画公開にあわせて作成されたといったところでしょうか。

今回のトリビュートアルバムに参加しているのはタイプ的には比較的hideからの影響が容易に想像できるようなロック系ミュージシャンがメイン。西川貴教やACID ANDROID、BREAKERZ、MIYAVIなどが参加しています。カバーも原曲のイメージに沿ったシンプルなカバーがメイン。そのため無難で目新しさはあまり感じられない反面、ファンからすると賛否がわかれそうな「これはちょっと・・・」といった感じのカバーもあまりなく、全体的に卒なくこなしている印象を受けました。

ただ、参加メンバーの中でもっとも意外性があったのがCocco。彼女が「GOOD BYE」をカバーしているのですが、アコギのアルペジオをバックに彼女らしい感情のこもった力強いボーカルで歌い上げており、完全にCoccoの曲として仕上がっている絶品のカバーに仕上がっています。Coccoのファンはもちろんのこと、おそらくhideのファンも大満足のカバーだったのではないでしょうか。

そしてもうひとつ本作の聴きどころが(トリビュートアルバムという趣旨からは少々ずれるのですが)最後に収録されているhideの歌う「HURRY GO ROUND」。今回、はじめて見つかった未発表の音源だそうで、デモ音源なのですが、hideの息吹がそのまま伝わるような生々しいボーカルが収録されており、間違いなくファンなら感涙モノの1曲。ファンにとってはおそらくこの曲を聴くだけで本作を聴く価値はあり、といった感じでしょう。

ほかのカバーは・・・「ROCKET DIVE」をカバーしたDragon Ashはロックバンドとしての魅力を最大限に発揮した疾走感あるロックチューンで、Dragon Ashのバンドとしての実力も強く感じます。西川貴教の「ever free」はエレクトロ・・・というよりもデジロックという表現がピッタリきそうなカバー。良くも悪くも彼らしい、ちょっとベタさを感じるカバーになっています。BREAKERZの「EYES LOVE YOU」は、ある意味今回のカバーの中では良くも悪くももっとも無難で原曲準拠のカバー。ただDAIGOのボーカルはあきらかにhideを意識しており、その点、トリビュートらしい原曲への愛情も感じます。「Bacteria」をカバーしたSEXFRiENDなるグループはアイドルグループBiSHのアイナ・ジ・エンドとMOROHAのUKによるデゥオ。UKのファンキーなアコギ1本でのサウンドが耳を惹き、また、ちょっとベタさを感じるもののロッキンなアイナ・ジ・エンドのボーカルもカッコいいカバーに仕上がっていました。

Coccoやラストのhideなど聴きどころはありつつ、全体的には卒なくまとめた感のあるトリビュートアルバム。おそらくファンにとっても参加ミュージシャンのファンにとってもそれなりに楽しめる内容になっていたと思います。しかし、本当にhideのトリビュート、多いですね。おそらくhideが参加していたX JAPANが、断続的とはいえ未だに活動を続けているため、そこから遡ってhideを好きになるような方が多いんでしょうね。もろ手をあげて絶賛するような内容ではありませんでしたが、十分楽しめるトリビュートアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

XIII/lynch.

名古屋出身のロックバンド、lynch.によるタイトル通り13枚目となるオリジナルアルバム。いわゆるヴィジュアル系にカテゴライズされるタイプのバンドで、楽曲的にはハードコア的な要素も強いタイプ。方向的にはDir en greyやもっとポップ寄りという意味ではthe GazettEと近い感じなのですが、the GazettEよりもさらにポップ寄りになった感じ。悪い意味でヴィジュアル系らしい耽美的なボーカルにベタな哀愁感をたっぷりと塗りたくったメロディーラインが耳につきます。決して悪い内容ではないけれど・・・メロディーはさほど面白味を感じず、ハードコア路線としても少々中途半端。今回はじめて聴いたのですが、おそらく次回作は積極的には聴かないだろうなぁ。

評価:★★★

hameln/おいしくるメロンパン

とにかくユニークなバンド名がまず先に立つスリーピースバンドの3枚目となるミニアルバム。メランコリックさを感じるメロディーラインが魅力的で、所々シティポップ的な要素も感じられる点がユニーク。要所要所にハッとさせられるようなフレーズが登場するなど、その実力を感じさせてくれる一方、肝心のサビについてはちょっと平凡な感じになってしまっているかな。彼ら、まだミニアルバムだけのリリースでフルアルバムをリリースしていないだけに、フルアルバムをリリースした時にどんなアルバムを作ってくるか、非常に楽しみなミュージシャンではありますが。

評価:★★★★

おいしくるメロンパン 過去の作品
indoor

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2018年9月15日 (土)

HIP HOPリスナーに限定しない「聴きやすさ」を感じる傑作

Title:?
Musician:XXXTENTACION

今年6月、フロリダ州南部のディアフィールド・ビーチにて強盗に襲われ、わずか20歳という若さで不遇の死を遂げたラッパー、XXXTENTACION。デビューアルバム「17」はいきなり全米チャート2位を記録。かのケンドリック・ラマーもTwitter上で絶賛するなど大きな話題となり、今年3月にリリースされた同作はビルボードチャートでついに1位を記録するなど、さらに大きくブレイク。さあこれから、という矢先の突然の死はシーンに大きな衝撃を与えました。

ただ残念ながら日本においてはさほど知名度も高くなく、ネット上にあるXXXTENTACIONに関する記事もほとんどが強盗事件を受けてかかれたものばかり。もっともかく言う私も今回の事件を受けて話題となりはじめて彼のことを知っただけに偉そうなことは言えませんが(^^;;どちからというとその話題性から聴いてみたアルバムだったので正直大きな期待はしていなかったのですが、聴いてみるとこれが予想外に「聴きやすい」素晴らしい傑作アルバムになっていました。

まずアルバム全体を貫く大きな特徴としては憂いを帯びた作風の曲が多いという点があげられます。もともと彼のラップには孤独感や厭世観を表現した作品が多いらしく、それがサウンドにも強く反映しています。残念ながらラップの内容自体については詳しくはわからないのですが、そんな方向性は歌詞の世界が詳しくわからなくても、そのサウンドから確実に伝わってくるようです。そして、非英語圏のリスナーにとってもサウンドからしっかりとその主張が伝わってくるという点が、アルバムの聴きやすさのひとつの要因になっているように感じます。

また、今回のアルバム、全18曲入りというボリュームながらも全体の長さはわずか38分という短さ。どの曲も1、2分程度の長さで次々と曲が展開していきます。この次から次へと展開するというアルバムの構成もまた、アルバムの聴きやすさの大きな要素となっています。

そしてジャンル的にはHIP HOPのアルバムなのですが、歌モノの曲が多く収められています。1曲目「ALONE,PART 3」からアコギの音色からスタートし哀愁感たっぷりに歌われる歌モノのナンバーからスタートしますが、続く「Moonlight」も一応はボーカルはラップ風ですし、サウンドもトラップ風ですが、そのラップはまるで歌われているかのようなメロディアスなもの。「Changes」みたいにピアノをバックにソウルフルに歌われるような完全にR&Bのナンバーなどもあったりして、アルバム全体としてラップというよりもメロディーを聴かせる曲が多いのが特徴的。そのためHIP HOPを普段聴かないような方でも聴きやすさを感じるアルバムだったように思います。

さらにサウンド的にもバリエーションを感じさせます。前述の通り、アコースティックなサウンドを取り入れていたり、今風のトラップの要素を入れていたりするのも特徴的ですが、特に特徴的なのはロックからの影響。「NUMB」などダイナミックなサウンドと哀愁感あるメロの組み合わせで、ちょっとベタさも感じるのですが、これだけ聴くと、どこかのオルタナ系バンドの曲と思われても不思議ではありません。「Pain=BESTFRIEND」もギターサウンドをメインとしたロックな歌モノでサビではシャウトまで登場。「schizophrenia」もハードコア風のナンバーとなっており、ロックリスナーにとっても聴きやすいアルバムに仕上がっていました。

そんな感じでアルバム全体としてバラエティーがあり、いい意味でHIP HOPリスナーに限定しない聴きやすさを感じるアルバム。それだけにアメリカで多くのリスナーに支持されていたのが納得感がありますし、またわずか20歳という突然の訃報はあらためて残念に感じてしまいます。残念ながら遺作となってしまった本作ですが、いまからでも是非チェックしてほしい1枚。普段HIP HOPを聴かない方でも十分お勧めできる傑作です。

評価:★★★★★

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2018年9月14日 (金)

アマゾンの奥地から聴こえてくるような(?)

Title:Debut
Musician:ASA-CHANG エマーソン北村

元スカパラのリーダーであり、現在はASA-CHANG&巡礼としての活動やパーカッショニストとして活躍しているASA-CHANGと、JAGATARA、MUTE BEATなどでも活躍したキーボーディスト、エマーソン北村。どちらも日本のミュージックシーンを表から裏から支えてきたいわば重鎮とも言えるミュージシャンなのですが、その2人が手を組み、アルバムをリリースしました。

「Debut」とある意味そのままなタイトルがつけられた本作。どちらもベテランのミュージシャンである彼らのアルバムにこういうタイトルがつけられる点にユーモラスを感じるのですが、それと同時にこの1作だけではなく、今後もコンスタントに活動を続けていこうという決意も感じさせます。

今回のアルバムは全7曲25分の長さのミニアルバム。7曲中6曲はカバーとなっています。そのカバー6曲も有名なスタンダードナンバーのカバーばかりで、タイトルを見ただけでメロディーが思い浮かばなくても実際に聴いてみると「ああ、あの曲」と思う方がほとんどではないかと思います。そういう意味では「ベタな選曲」と言えるかもしれません。

そしてこのカバーが実にユニーク。ASA-CHANGは今回、トランペットでの参加が多く、彼のトランペットがメインのフレーズを奏でている曲が多いのですが、力強い演奏というよりは脱力感のある演奏となっており、どこかユーモラス。またエマーソン北村のキーボードやリズムボックスも、チープな感触を残すようなサウンドと演奏となっており、これもユーモラスを感じさせます。

特にポール・モーリアなどの演奏でも知られるイージーリスニングの代表作「恋は水色」のカバーでは、トランペットとキーボードの音色が脱力感と湿っぽい雰囲気を楽曲に与え、さらにバックに流れるASA-CHANGのタブラの音色が独特のトライバルな雰囲気を楽曲に加えています。イージーリスニングらしい、爽やかで無味透明だった原曲に熱帯雨林のようなねっちりとした独特の空気感を加味しており、そこに楽曲がもともと持っていたインパクトあるフレーズが流れることにより、癖の強い独特な雰囲気を持つ楽曲に変わっていました。

この曲に限らず今回のカバーではどの曲も、どこか湿度の高いねちっとした雰囲気のカバーが多いのが特徴的。特にトライバルな雰囲気を醸し出すリズムやサウンドも多いのですが、もともと活動履歴からもわかるようにASA-CHANGもエマーソン北村もレゲエ、ラテン方面の音楽を奏でるミュージシャン。そのため、今回も曲もレゲエやラテン音楽の要素を強く感じさせ、いわばアマゾンの奥地に流れてくるようなちょっと怪しげな音楽、といったイメージを今回のアルバムからも彷彿としました。

最後の7曲目はレゲエミュージシャンのチエコ・ビューティーをボーカルに迎えた唯一のオリジナル曲「ミリバールの歌」。ちょっとムーディーな雰囲気のある歌モノのポップチューン。オリジナル曲がポップで聴きやすい歌モノというのはちょっと意外な印象もあるのですが、だた全体的に暑さを感じさせるアルバムの中、ラストは爽やかな雰囲気を残しつつアルバムは幕を下ろしました。

とにかくその熱帯雨林のような雰囲気と脱力感を覚えるサウンドが魅力的で強いインパクトを感じさせる傑作アルバム。これがデビュー作ながらもASA-CHANGとエマーソン北村の相性の良さも感じさせます。アルバムタイトルがタイトルなだけにこれからもコンスタントなアルバムリリースも期待できそう。これからがとても楽しみです。

評価:★★★★★

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2018年9月13日 (木)

今週もK-POPだらけ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週も先週に引き続きK-POPがやたらと目立つチャートとなっています。

まず今週の1位は先週2位だったBTS(防弾少年団)「LOVE YOURSELF 結 'Answer'」が先週からワンランクアップ。全米ビルボードチャートで1位を獲得したことでも話題となりましたが、アメリカに続いて日本でも1位獲得です。売上も先週の4万8千枚から14万枚にアップ。これは主に公式サイトでの予約販売分が、今週のアルバムチャートの集計対象日に到着した影響ではないかと思われます。

2位初登場はAfter the Rain「イザナワレトラベラー」。ニコニコ動画の「歌ってみた」コーナーでの「歌い手」として人気を博しているそらるとまふまふによるユニット。初動売上8万2千枚で、前作「クロクレストストーリー」の3万6千枚(2位)から大きくアップしています。

3位には韓国のアイドルグループSEVENTEEN「You Make My Day」が先週の31位から大きくランクアップして、8月20日付チャート以来、3週ぶりのベスト10返り咲きです。これは今週の集計対象期間に行われたさいたまスーパーアリーナでのライブで、握手会参加券が抽選で入っているCDの販売が行われた影響と思われます。

さて、ベスト3のうち2枚がK-POPでしたが、4位以下もK-POPが目立ちます。まず4位にはTEAM H「Mature」がランクイン。韓国の人気俳優チャン・グンソクがサウンドプロデューサーのBIG BROTHERと組んだユニット。初動売上2万1千枚は前作「Monologue」の1万9千枚(3位)からアップ。5位にはV.I(from BIGBANG) 「THE GREAT SEUNGRI」がランクイン。こちらはミュージシャン名義通り、韓国の人気アイドルグループBIGBANGのメンバーによるソロ作。初動売上1万4千枚は前作「LET'S TALK ABOUT LOVE」の1万9千枚(4位)からダウンしています。

そして6位にはようやくK-POP以外が。Paul McCartney「EGYPT STATION」がランクインしています。御年76歳でありながら精力的に活動を続けている彼。本作は約5年ぶりのニューアルバムで、10月から11月にかけて待望の日本公演も予定されています。初動売上は1万3千枚。前作「NEW」の2万2千枚(2位)からダウンしています。

最後8位にはEMPiRE「EMPiRE originals」がランクイン。BiSやBiSHが所属する事務所WACKとavexの共同プロジェクトとしてスタートしたアイドルグループ。初動売上1万2千枚は前作「THE EMPiRE STRiKES START!!」の7位からアップしています。

ロングヒット組では先週9位にランクアップした安室奈美恵「Finally」が今週も9位をキープ。相変わらず根強い人気を誇っています。またサザンオールスターズのベストアルバム「海のOh,Yeah!!」は今週も7位をキープ。これで6週連続のベスト10入りとなりました。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年9月12日 (水)

星野源のV3ならず

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週まで星野源「アイデア」が2週連続1位を獲得していましたが残念ながら今週は4位にランクダウン。V3達成とはなりませんでした。

代わって1位にランクインしてきたのが関ジャニ∞「ここに」。テレビ朝日系「関ジャム 完全燃SHOW」エンディングテーマ。いかにも青春パンクっぽいナンバーだと思ったら、楽曲提供はパンクバンドのWANIMAだそうです。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位獲得。Twiterつぶやき数17位、ラジオオンエア数はジャニーズ系としては珍しく6位と上位に入ってきています(ダウンロード及びストリーミングは未配信)。オリコンでは初動売上24万2千枚で1位初登場。前作「応答セヨ」の21万8千枚(1位)からアップ。

2位はDA PUMP「U.S.A.」が2週連続で1位獲得。ストリーミング数及びYou Tube再生回数は1位をキープしており、固定ファンというよりも幅広い層に支持されている印象が。いい加減、1位を取らせてあげたいと思うのですが・・・。

3位には女性シンガーAimer「Black Bird」が初登場でランクイン。映画「累-かさね-」主題歌。ストリングスにロックサウンドを重ねダイナミックにまとめたサウンドに力強く歌うスタイルで、Coccoとか鬼束ちひろとかがブレイクした頃にこの手の女性シンガーがよく出てきたなぁ、という印象を受けます。CD販売数8位、ダウンロード数1位、ストリーミング数12位ですので、アイドル的な人気ではないまでも固定ファンの支持が強いタイプの売れ方となっています。ほかにラジオオンエア数13位、PCによるCD読取数12位と上位に入ってきている一方、Twitterつぶやき数42位、You Tube再生回数は79位と低迷気味。オリコンでは初動1万6千枚で5位初登場。前作「Refrain」の1万8千枚(6位)から若干のダウン。

5位には男性アイドルグループB2takes!「ブラン・ニュー・アニバーサリー」が初登場でランクイン。CD販売数で2位を獲得した以外はすべて圏外という、固定ファン以外に一切波及していないという典型的なアイドルの売れ方となっています。楽曲も何のひねりもない爽やかなアイドルポップで、ファン以外は全く対象としていない感じ。まあ無理にロックっぽくしたりオルタナっぽくしてロックリスナーあたりを取り込もうとしているアイドルグループよりもよっぽど潔さを感じるのですが。オリコンでは初動売上4万4千枚で2位初登場。前作!「Shananaここにおいで」の3万5千枚(3位)からアップ。

今週の初登場は以上。ロングヒット組では米津玄師「Lemon」が今週8位から7位にワンランクアップ。ダウンロード数が先週の10位から5位にアップ。PCによるCD読取数7位、You Tube再生回数2位は以前から変わらず。まだまだロングヒットが続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年9月11日 (火)

変わらぬ魅力

Title:歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Musician:斉藤和義

今年デビュー25周年を迎えたせっちゃんこと斉藤和義。そのデビュー25周年を記念したベスト盤がリリースされました。ちょうど10年前、デビュー15周年を記念したベスト盤「歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007」がリリースされましたが、そのベスト盤以降にリリースされたシングル曲を配信限定のものを含めてリリース順に2枚のCDに収録。まだDisc3としてカップリング曲を収録した3枚組のアルバムとなっています。

斉藤和義といえばデビュー直後に「歩いて帰ろう」でスマッシュヒットを記録。一躍話題のミュージシャンとなり売上を伸ばしていったものの、その後は低迷。ただ「ゼクシイ」のCMソングにもなった「ウェディング・ソング」が話題となり再び人気が出てきた・・・それが10年前のベスト盤がリリースされた頃のせっちゃんでした。

そしてその後の10年といえばご存じの通り。このアルバムでも1曲目に収録されている「やぁ 無情」がアリナミンのCMソングとなり、シングルでは初となるベスト10ヒットを記録。さらに2011年には話題になったドラマ「家政婦のミタ」の主題歌になった「やさしくなりたい」が大ヒットを記録。今年3月リリースされたオリジナルアルバム「Toys Blood Music」ではシングルアルバム通じて初となるチャート1位を記録するなど、人気面では絶頂期を迎えた10年になっていました。

ただ正直言うとこの10年の斉藤和義の楽曲的には絶頂期を迎えた人気の面とは異なり、必ずしも「脂がのっている」という印象は受けていません。個人的に彼の楽曲が最も脂ののっていた頃は再ブレイク前夜のアルバム「35 STONES」「NOWHERE LAND」「青春ブルース」あたり。最近のアルバムももちろん傑作は少なくないのですが、かと思えば凡作・・・とまではいかないまでもちょっと物足りなさを感じてしまうアルバムがリリースされるなど、「脂ののった」とか「勢いがある」という形容詞がつくまでの状況、とは思いませんでした。

ただそれでも今回、この10年間のシングルとそのカップリング曲をまとめて聴くと、やはり名曲をコンスタントにつくり続けてきたんだな、という印象は強く受けます。前述の「やぁ 無情」や「やさしくなりたい」はもちろんのことながらも個人的には彼のベストソングの1曲に推したい「ずっと好きだった」は言うまでもなく胸の奥にある甘酸っぱい感情をノスタルジーとともに呼び起こすような名曲。この男性心理を素直なまま歌いこんだ歌詞はデビュー当初からの彼の大きな魅力。今回のベスト盤に収録されている曲では「満男、飛ぶ」あたりもそんな素直な男性心理を読み込んだ歌と言えるでしょうか。

そして彼の曲のもうひとつの方向性が厳しい現実を素直に肯定しつつ、その中でもそっと背中を押すような歌詞。今回のアルバムで言えば「ワンダーランド」とか「攻めていこーぜ!」などがそんな方向性でしょうか。この10年のシングル曲で言えば、比較的、この方向性の曲が多かったように思います。ちょっといじわるな見方をしてしまいえば、男性のみならず女性を含めた広い層に支持されそうなこのタイプの曲が、「売る」ためにはシングル曲として求められた、という側面もあるのでしょうか。

また楽曲的には基本的にアコギの弾き語りを中心としたスタイルも変わりありません。ギターロックやブルースの影響が比較的強い一方、「Always」のようなモータウンビートの曲や「行き先は未来」のようなブギウギ調の曲、また「FISH STORY」はガレージロック風とより激しいロックの曲になっているなど、あくまでもロック、ブルースを主軸としつつバラエティーを持たせています。

ただ、この歌詞の方向性もサウンド的な方向性もデビュー当初から変わっていません。今回のベスト盤ではその「変わらなさ」を良い意味で再確認できましたし、なによりも圧倒的に歌詞とメロディーが魅力的であるがゆえに、デビューから25年、変わらないスタイルを維持しつつも全くマンネリに陥っていない点にあらためて驚かされます。

まだまだこれからも続々とヒット曲を世に送り出しそうな予感のするせっちゃん。そんな彼の変わらない魅力を再確認できたベスト盤でした。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music


ほかに聴いたアルバム

KING OF ONDO ~東京音頭でお国巡り~

おそらく日本で最も知られた盆踊りの1つと思われる「東京音頭」にスポットをあて、「東京音頭」から派生した様々な楽曲を集めたコンピレーションアルバム。原曲はもちろん、演歌風、ムード歌謡曲風からジャズ風にアレンジされた曲や外国人が歌う曲などバリエーション豊かな「東京音頭」が収録されており、いかにこの曲が多くの日本人に愛されたのかわかります。

後半は全国各地のご当地の名物を歌いこんだ「替え歌」。こちらは単なる歌詞を替えただけであまり面白味はありませんでしたが・・・ただ「台湾」や「朝鮮」まで飛び出してくるのが戦前ならでは。広く全国各地で親しまれていたことがわかります。

さらにラストは民謡歌手の木津茂里が歌う「東京音頭」をなんと岡村靖幸がアレンジ。こちらは今風の軽快でリズミカルな「東京音頭」になっており非常にユニークに感じます。個人的には「東京音頭」といえばヤクルトスワローズの応援歌というイメージがあるので、スワローズの応援歌版なんかも収録されていてもおもしろかったと思ったのですが・・・。ともかく、「東京音頭」がいかに幅広く日本人に愛されていたかがわかる1枚。いろいろと興味深く感じるコンピ盤でした。

評価:★★★★

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2018年9月10日 (月)

音楽的な素養の高さを感じる

Title:green
Musician:藤原さくら

女性シンガーソングライター、藤原さくらの全6曲入りのミニアルバム。いまさらながらの説明となるのですが、藤原さくらといえばフジテレビ月9ドラマのヒロイン役に抜擢され話題となり、福山雅治作詞作曲の「Soup」がブレイクを果たしたミュージシャン。しかし、その後リリースされたアルバム「PLAY」を聴いたところ、「月9ドラマでブレイクした女性シンガー」というイメージとは程遠い、洋楽テイストの強いオーガニックな楽曲ばかり収録されており、「Soup」のイメージとの乖離にかなり驚かされました。

そんなアルバム「PLAY」から約1年を経てリリースされた本作も、基本的にはそんな「PLAY」の雰囲気をそのまま引き継いだようなアルバムになっています。1曲目「Dance」からしていきなりの全英語詞。ピアノが軽快なブギウギ風のナンバーからスタートしておりJ-POP的なイメージからはかなり乖離しています。続く「Time Flies」もピアノが軽快なナンバーなのですが、こちらは60年代のオールディーズの雰囲気が漂うナンバー。彼女はまだ若干22歳なのですが、そんな若い世代のミュージシャンがこのような曲を歌うというのは非常に驚きです。

続く「Sunny Day」は日本語詞のポップチューンなのですが、ブルージーな雰囲気が漂っており、哀愁感のあるメロディーが胸をうちますし、「グルグル」も裏打ちのリズムでちょっと怪しげな雰囲気が漂うポップチューンがユニーク。そして「bye bye」はアコギのアルペジオで聴かせるフォーキーでオーガニックな雰囲気漂うナンバー。「PLAY」を聴いているとおそらくこういうタイプのナンバーが一番彼女らしい、と言える楽曲なんでしょうね。

楽曲は非常に洋楽テイストが強くて垢抜けている印象。ノラ・ジョーンズあたりからの影響も感じるフォーキーな楽曲もある一方、オールディーズやブギウギ、ブルースなどの影響を感じる部分もあり、22歳という若さでありながら音楽的な素養の高さには驚かされます。それだけに前作「PLAY」でも感じたのですが、なぜ月9ドラマで福山雅治作詞作曲の曲を歌うという、ある種のJ-POP真ん中路線をあえて取らせたのか、強く疑問に思います。

もっとも一方では、そういう売れ線の楽曲を歌わせつつも、アルバムではきちんと彼女の好きな曲を歌わせている訳ですから、そういう意味では良心的といえば良心的なのかもしれませんが・・・。ただ今の時代、J-POP王道系でマスを狙うよりも、もっとコアな固定ファンを狙った方が「細く」かもしれませんが結果として長く売れるような気もするのですが・・・。

今回のアルバムでもラストの「The Moon」はアニメ主題歌となり先行配信されていたこともり、今回のアルバムの中ではJ-POPテイストの強い「売れ線」系の曲。これはこれで悪くないのですが、やはりほかの曲に比べると物足りなさを感じてしまう曲でした。

そんな訳で、今回のアルバムも彼女の才能を強く感じる傑作アルバムに仕上がっていました。前作「PLAY」の評でも書いたのですが、「福山雅治作詞作曲の曲を歌っていた」というよりもむしろ彼女が影響を受けたというノラ・ジョーンズやジョニ・ミッチェルあたりが好きなら気に入りそうなタイプのミュージシャン。今回のアルバム、残念ながらオリコン最高位13位とベスト10入りを逃しており、正直「Soup」の一発屋・・・的なイメージがついてしまう恐れも出てきています。次はいかにもJ-POPという曲ではなく、彼女らしいナンバーで再度ブレイクできればいいのですが・・・。

評価:★★★★★

藤原さくら 過去の作品
PLAY


ほかに聴いたアルバム

TWISTER-EP-/NICO Touches the Walls

NICOの新作は前のEPより8ヶ月のインターバルとなる新たなEP盤。彼ららしいギターロックからはじまり、キャバレーロック風の作品にロックンロール調の曲、さらにはラテン風の歌謡曲まで前作「OYSTER-EP-」以上にわずか5曲ながらもバラエティー豊富な作品に。それもどの曲もインパクトがあり、バンドとしての勢いも感じます。フルアルバムの前作「勇気も愛もないなんて」は傑作な出来でしたが、次のフルアルバムも期待できそう。

評価:★★★★★

NICO Touches the Walls 過去の作品
Who are you?
オーロラ
PASSENGER
HUMANIA
Shout to the Walls!
ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト
Howdy!! We are ACO Touches the Walls
勇気も愛もないなんて
OYSTER-EP-

エプロンボーイのさしすせす/DJみそしるとMCごはん

いつも「食事」をテーマにユニークなラップを展開する女性ラッパー(1人です、念のため)によるミニアルバム。今回はアニメ「衛宮さんちの今日のごはん」の「エプロンボーイ」を中心とした料理の調味料の基本「さしすせそ」をテーマとした曲が並んでいます。全体的に優しい雰囲気の曲が多く、いつもよりもラップというよりポップのテイストが強いアルバムに。ラップバトルを模した「甘辛MCバトル ~タまご焼き編~」や、アイドルグループNegiccoが参加したユニークな歌詞も楽しい「スプーンガールのマイカレー」など楽しい楽曲も多く収録されており、いつもの彼女の楽曲と同様、HIP HOPを普段聴かない層にもアピールできる作品が並んでいました。

評価:★★★★

DJみそしるとMCごはん 過去の作品
ジャスタジスイ
味の向こう側~入り口~
ごちそんぐDJの音楽
コメニケーション

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2018年9月 9日 (日)

あくまでもロックバンドとして

Title:The Very Best of CARNATION "LONG TIME TRAVELLER"
Musician:カーネーション

1983年にバンド名を「カーネーション」と改名してから今年で35年。その区切りとなる年を記念して、オールタイムベストがリリースされました。デビューシングルである「夜の煙突」からスタートして現時点で直近のオリジナルアルバムである「Suburban Baroque」収録曲、さらには新曲2曲を加えたCD2枚組全30曲。発表順に並んでおり、カーネーション35年の歩みを暦年順で知ることのできるベストアルバムになっています。

カーネーションのイメージというと個人的には非常に音楽的な偏差値の高いバンドというイメージがあります。AORやソウル、ファンクなどの要素を取り込み、落ち着いた雰囲気のメロディアスなギターロックにまとめるバンド。特にネットを中心に、若手ギターロックバンドを「ロケノン系」という呼び方をすることがありますが、さしずめ彼らは同じ音楽専門誌のミュージックマガジンに好意的に取り上げられることが多く、いわば「ミューマガ系」というカテゴライズされそうなバンド、というイメージを持っていました。

実際、このベスト盤を聴くとギターロックを主軸にしつつ、AORやソウルなどの要素をほどよく取り入れた楽曲が実に魅力的。その傾向は初期の作品から強く、例えば「It's a Beautiful Day」もファンキーなギターで軽快に聴かせてくれますし、「I WANT YOU」もメロウなソウルナンバーに仕上げています。彼らの楽曲に関してはムーンライダーズとの相似性をよく言われるそうですが、AORの要素が強い楽曲などは山下達郎的な雰囲気も感じられました。

ただ、今回のベスト盤を聴いてひとつ強く感じたのは、曲によってはソウルやAORの方向に大きくシフトしようともあくまでもギターロックをその主軸に置いているという点でした。特に初期の楽曲に関しては例えば「Garden City Life」のような軽快なギターロック的要素が強く、思っていた以上にロックバンドとしての骨太の演奏を聴かせてくれています。

そしてその傾向はDisc2の比較的最近の曲に関しても顕著で「ジェイソン」みたいな疾走感あるギターロックチューンがあったり「アダムスキー」ではロッキンなシャウトを聴かせてくれたりとロック的な要素はむしろ強くなってきたりもします。ある意味、落ち着いたAORバンドとしての立ち位置を拒否して、あくまでもロックバンドとしてこだわっていることをこのベスト盤から強く感じることが出来ます。実際、今回新曲として入っている2曲「Future Song」「サンセット・モンスターズ」も骨太なギターロックとしての要素が強く、ギターロックバンドとしてのある種のこだわりを強く感じることが出来ました。

彼らは「大人のロックバンド」とは言わせないということをひとつのスタンスとして維持しているようです。確かにデビュー35周年のベテランバンドで、かつAORやソウル的な要素も強いメロディアスな楽曲を奏でる、というとどうしても「大人のロックバンド」という形容をつけがち。実際、彼らの落ち着いた楽曲からはそういう表現がピッタリくる部分もある点は否定できません。

ただ一方このベスト盤で感じられたギターロックバンドとしてのこだわりは、「大人のロックバンド」と言わせないとするある種の若さ、勢いを感じさせる部分もありました。そういう意味では確かに彼らが「大人の」という形容詞がつきがちな「落ち着いた」というイメージをいまでも払拭すべく骨太のロックを奏でようとしているスタンスを強く感じさせます。いままでのオリジナルアルバム以上に彼らのそんな方向性を強く感じたベスト盤。デビュー35年、まだまだ彼らの活動の勢いは止まらなさそうです。

評価:★★★★★

カーネーション 過去の作品
Velvet Velvet
UTOPIA
SWEET ROMANCE
Multimodal Sentiment
Suburban Baroque


ほかに聴いたアルバム

Sonatine/D.A.N.

Suchmosやceroなど相変わらずシティポップにカテゴライズされそうなミュージシャンが高い人気を博していますが、おそらく彼らもその一組。彼らの場合、比較的クラブミュージックとの親和性が強く、ミニマルなエレクトロサウンドと独特のグルーヴィーで気だるさを感じるサウンドが非常にカッコよく感じます。ミニアルバム「Tempest」以来、約1年3ヶ月ぶりのアルバムなのですが、基本的には前作と同じ方向性の作風。とにかく終始心地よさを感じる傑作でした。

評価:★★★★★

D.A.N. 過去の作品
Tempest

WOKE/The BONEZ

RIZEのJESSEを中心に、元RIZEのNAKA、Pay money To my PainのT$UYO$HI、ZAXによるバンド。へヴィーなバンドサウンドを聴かせるパンクバンドといった感じなのですが、印象的にはRIZEの延長線上にいるような感じ。全英語詞なのでRIZEより洋楽寄りでしょうか。ただ基本的にはRIZEからラップの部分を差し引いて、パンクの要素をより強くしたといった印象。ただ、これならRIZEでも出来るでは?と思ったり、思わなかったり・・・。

評価:★★★★

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2018年9月 8日 (土)

アラフォー世代には懐かしさあふれる選曲

Title:芹澤廣明 ANIME GOLDEN HITSTORY

「ギザギザハートの子守唄」や「涙のリクエスト」など初期チェッカーズの数々のヒット曲や中森明菜の「少女A」など数多くのヒット曲を世に送り出し、日本歌謡界を代表する作曲家のひとりといえる芹澤廣明。彼は特にアニメソングを数多く手掛けていますが、今回、彼の作家活動35周年を記念して、彼のアニメソングのみにスポットをあてた作品集がリリースされました。彼が手掛けたアニメソングといえば「タッチ」や「キン肉マン」のテーマ曲などアラフォー世代にとってはかなり懐かしさを感じるラインナップとなっており、その懐かしさゆえにこのオムニバスアルバムも聴いてみました。

今回、2枚組のアルバムなのですが、うちDisc1はすべて80年代に大ヒットを記録したアニメ「タッチ」やその派生作品としての劇場盤などに使用された楽曲。Disc2も18曲中9曲が「ナイン」や「陽あたり良好!」などあだち充アニメの作品になっています。そういう意味では若干バランスが悪いように感じないではないのですが・・・。「タッチ」についてはほかに使用された曲を集めた「ベスト盤」もリリースされていますし・・・。

とはいえ「タッチ」をリアルタイムで見ていた世代にとっては、特にDisc1については聴いていて懐かしさで胸がいっぱいになってくるような楽曲が続きます。おそらくアニメを見ていなくてもこの曲は知っている、という方も多いであろう、あまりにも有名な主題歌「タッチ」はもちろんですが、同じオープニングテーマだった「愛がひとりぼっち」「チェッ!チェッ!チェッ!」、エンディングテーマだった「青春」とかもかなり懐かしく記憶しています。今聴くと、ある意味アニメソングらしい、叙情感やダイナミズムをベタに強調した歌謡曲という印象を受けるのですが、当時、まだ小学生だった私にとっては、「タッチ」に使用された曲というのは非常に大人びた感じがして、とてもカッコいいと感じていた記憶があります。あらためて聴くと、そんな懐かしさがよみがえってきました。

またアニメの挿入歌として使用された「星のシルエット」「風のメッセージ」などもよくアニメの中で流れてきて非常に懐かしさを覚えます。こちらはAORの要素が強く、洋楽テイストの強いナンバーで、こちらも当時、大人びた雰囲気にカッコよさを覚えた記憶があります。ただ今回はじめて知ったのですが、これらの曲って歌っていたのはご本人様だったんですね・・・。

逆に「キン肉マン」に使用された「キン肉マンGo Fight!」などもリアルタイム世代だった私にとっても非常に懐かしさを感じます。こちらは「タッチ」とは打って変わっていかにもなアニメソング。ただ「タッチ」にしろ「キン肉マン」にしろ、いい意味でわかりやすいベタさが曲の中で表現されており、彼の曲が数多くアニメソングに起用されたのはそこらへんが大きな要因だったのでしょう。

また、彼の書く曲は比較的その影響がわかりやすく、これは初期チェッカーズの曲とも共通するのですが、ロカビリーやオールディーズなど60年代以前のアメリカのロックンロール、ポップスの影響が非常に顕著。また哀愁感強い歌謡曲的な楽曲も数多く書いているのですが、これらの曲に関してもオールディーズからの要素が楽曲の中に混じっており、楽曲の中にどこかあか抜けた要素を感じることが出来ます。この歌謡曲的な要素と洋楽的な要素のほどよいバランスが彼の楽曲の大きな魅力のように感じました。

ちなみにこのアルバムのラストに収録されている「Light It Up!」は今年6月になんとアメリカでリリースされ彼の全米デビュー作となった曲だとか。軽快な打ち込みのラテン風の曲で、特に目新しさもなく、またさすがに御年70歳なだけにボーカルの衰えは隠せませんが、ただ、この年齢になっても新たな挑戦を続ける彼の意欲には感心させられました。

そんな訳で、特にアラフォー世代にとっては懐かしさあふれるコンピ盤。「タッチ」などをリアルタイムで見ていた方にとっては非常に懐かしく楽しめることの出来るアルバムになっていました。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Chasing the Horizon/MAN WITH A MISSION

純然たるオリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなる新作。シンセのサウンドで軽快に聴かせつつ、ダイナミックなバンドサウンドを重ねるスタイルが耳を惹きます。基本的には以前からと方向性に変化はなく、楽曲によっては、特に英語詞の曲は「オッ」と思うようなカッコいい曲もチラホラある一方、サウンド的にもメロディー的にも平凡な曲も見受けられ、アルバム全体としては悪くないんだけども絶賛するにはちょっと物足りない、といういつもの感想に。

評価:★★★★

MAN WITH A MISSION 過去の作品
Trick or Treat e.p.
MASH UP THE WORLD
Beef Chicken Pork
Tales of Purefly

5 Years 5 Wolves 5 Souls
The World's on Fire
Out of Control(MAN WITH A MISSION x Zebrahead)
Dead End in Tokyo European Edition

クソカワPARTY/大森靖子

オリジナルアルバムとしては4枚目、約1年4ヶ月ぶりとなるアルバム。ほどよく狂った歌詞は相変わらずで、基本的には前作の路線を踏襲した形なのですが、ただアルバム全体としてはいままでの彼女としては薄味。正直言うと、あまりインパクトの強いような歌詞も見受けられず、一番印象に残ったのは歌詞でもメロでもなく彼女の歌声になってしまったような。悪いアルバムではないのですが、「無難」という印象を受けてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

大森靖子 過去の作品
洗脳
トカレフ(大森靖子&THEピンクトカレフ)
TOKYO BLACK HOLE
kitixxxgaia
MUTEKI

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2018年9月 7日 (金)

20歳を迎えた彼女

Title:魔法が使えたみたいだった
Musician:にゃんぞぬデシ

前作をリリースした時は「現役女子高生シンガー」として話題となったにゃんぞぬデシ。それから早2年。今年彼女は成人式を迎えたようで、大人の女性へと成長を遂げています。そしてその傑作アルバムだった前作から2年、待望のニューアルバムがリリースされました。

前作でみせた彼女の魅力といえば、「女子高生」という売り文句とは裏腹に、制作当時17歳だったという年齢を全く感じさせないようなこぶしの利いた歌いまわしとブルースの要素すら感じる歌詞とメロディーライン。ただ一方では現役女子高生らしい歌詞もちらほら登場しており、そのアンバランスさもまた、非常にユニークに感じる作品になっていました。

今回の作品についても基本的にその方向性に大きな変化はありません。1曲目でPVも作成された「同じ空の下どころか」はアップテンポな楽曲ながらもこぶしを利かせたボーカルを聴かせてくれますし、「同じ空の下どころか隣の隣の隣の町に住んでいるのに気持ちがひとつにならない」という切ない片思いの歌詞も印象的。そして今回のアルバムで特に印象に残ったのが「全てお見通しよ」。アコギとピアニカによるシンプルな演奏に切ないメロディーラインが胸をうつ曲。好きな人に対して「全てお見通しよ」と言ってみたいという切ない気持ちを綴った歌詞も印象に残ります。

歌詞のテーマ的には20歳の彼女らしい切ない恋心を歌った曲がメインで、素直な気持ちが歌われているのですが、歌詞はどこか落ち着いて大人びた雰囲気を感じられるのも特徴的。ただ一方、タイトルチューンでもある「魔法が使えたみたいだった」では高校の卒業をテーマとして歌っており、高校時代の自分について、若さゆえの勢いを「魔法が使えたみたいだった」と歌っています。こちらは20歳の彼女ならではの歌詞と言えるのですが、ここでも昔を振り返る視点に客観性が感じられる点から、大人びた雰囲気を感じ取れます。

そんな訳で前作と同様、20歳という年齢にも関わらず楽曲にはどこか老成した雰囲気が感じられるのが大きな特徴。ただ前作に比べるとブルージーな雰囲気を感じる点が薄くなってしまっており、そこはちょっと残念だったような印象も受けます。もっともとはいえアルバム全体から伝わる彼女の魅力は前作同様。わずか6曲のミニアルバムという長さが残念に感じられる傑作アルバムに仕上がっていました。

また、彼女の歌詞やボーカルを聴くと強く感じられるのが、これから10年後20年後に彼女がどんな歌を歌っているか、とても楽しみになってくるということ。彼女の書く歌詞や歌い方には味があり、特にこれから経験を重ねることにより、より熟成されていきそうなそんな予感があります。彼女くらいの年齢のミュージシャンは、ある意味若さゆえの勢いから成り立っていることが多く、それだけに「若さ」をいかに持続していくかがポイントになるようなミュージシャンが多いのですが彼女の場合は逆。ただそれだけ彼女の才能にはまだまだ大きなポテンシャルがあることを感じられます。これからの活躍がとても楽しみになってくるミュージシャン。これからも要注目です。

評価:★★★★★

にゃんぞぬデシ 過去の作品
はじめまして。17歳です。ハッピーエンド建設中。


ほかに聴いたアルバム

6月から7月にかけて配信限定で電気グルーヴのライブアルバムが相次いでリリースされました。今回はそのご紹介。

TROPICAL LOVE TOUR 2017/電気グルーヴ

こちらはDVD/Blu-rayでリリースされた同名の映像作品の初回盤についてきたライブ盤のみを配信限定でリリースされたもの。昨年3月にZepp Tokyoで行われた「TROPICAL LOVE TOUR」の模様を収録したもの。序盤は「人間大統領」「東京チンギスハーン」などユーモラスで軽快なポップチューンで場を暖め、中盤は「The Big Shirts」「Shameful」などといったダンサナブルなナンバーで観客を踊らせ、そして後半は「トロピカル・ラヴ」「ヴィーナスの丘」などラテン風のトロピカルなナンバーで締めくくるという構成も見事。しっかりリスナーを楽しませる展開になっています。同ツアーは私も見に行ったのですが、全体的には電気グルーヴのコミカルな部分よりもテクノミュージシャンとしての側面を強調した構成になっており、ミュージシャンとしての実力をより強く感じさせるライブ盤になっていました。

評価:★★★★★

クラーケン鷹2018/電気グルーヴ

こちらは今年の3月にZepp Tokyoで行われたワンマンライブの模様を収録したライブ盤。選曲は比較的最近の曲が多く、「TROPICAL LOVE TOUR」と同じような方向性を感じつつも、「TROPICAL LOVE TOUR」に比べるとよりコミカルな要素も強くなっている印象も。「flight to Shang-hai」のような石野卓球ソロ曲を披露したり、「燃える!バルセロナ」では日出郎が参加したりとよりバラエティーに富んだ展開が楽しめる構成に。アルバムリリース後のツアーとは異なる、より自由度の高い構成が楽しめるライブ盤になっていました。

評価:★★★★★

電気グルーヴ 過去の作品
J-POP
YELLOW
20
ゴールデンヒッツ~Due To Contract
人間と動物
25
DENKI GROOVE THE MOVIE?-THE MUSIC SELECTION-
TROPICAL LOVE
DENKI GROOVE DECADE 2008~2017
TROPICAL LOVE LIGHTS

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2018年9月 6日 (木)

K-POPが目立つチャート

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

先週はK-POP勢の目立つチャートとなりました。

ただし、そんな中で1位を獲得したのがAAA「COLOR A LIFE」。彼ら12枚目となるアルバムでオリジナルアルバムでは5作連続の1位獲得となりました。ただし初動売上は7万枚と1位としては若干寂しい数値に。前作「WAY OF GLORY」の10万7千枚(1位)よりも減少しています。

そして2位に初登場してきたのが韓国の男性アイドルグループBTS(防弾少年団)の輸入盤「LOVE YOURSELF 結 'Answer'」。初動売上4万8千枚は前作「LOVE YOURSELF 轉 'Tear'」の4万4千枚(3位)よりアップ。前作ではアメリカのビルボードチャートで1位を獲得して大きな話題となりましたが、本作も前作に引き続き2作連続でビルボードチャート1位を獲得して大きな話題となっています。

今週、ほかにもK-POP勢としては4位に男性アイドルグループPENTAGON「SHINE」が、6位には4人組バンドCNBLUEのベスト盤「Best of CNBLUE / OUR BOOK [2011 - 2018] 」がそれぞれランクインしています。PENTAGONはもともと韓国のテレビ番組からデビューしたアイドルグループで、韓国人メンバーの中に中国人メンバーのほか、日本人のメンバーも参加しています。初動売上2万5千枚は前作「Violet」の2万1千枚(4位)からアップ。CNBLUEは日本ではこれが初のベストアルバム。初動売上1万9千枚は直近のオリジナルアルバム「STAY GOLD」の2万8千枚(3位)から大きくダウンしています。

ベスト3に戻ります。3位はUNDEAD「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ UNDEAD」がランクイン。女性向け男性アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!」からのキャラクターソング。初動売上4万8千枚。同シリーズの前作、紅月「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ 紅月」の1万6千枚(9位)から大幅にアップ。

続いて4位以下の初登場盤です。まず7位に「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED キャラクターソングアルバム 1」がランクイン。「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED」はテレビアニメ「戦姫絶唱シンフォギア」から派生したスマホゲーム。同作はそのゲームに登場するキャラクターによるキャラソンになります。初動売上1万4千枚でベスト10入り。

最後10位には吉田拓郎「From T」がランクインしてきました。全3枚組からなる本作は、「吉田拓郎が日常、就寝前に聴いているというリアルな自らのプレイリスト27曲からなる『思い入れのある作品』『もう一度聴いて欲しい歌』など、 吉田拓郎が愛した曲ばかりを収録。」したセレクトアルバム。そういう意味ではベストアルバムではないので、例えば吉田拓郎の曲といって最も有名と思われる「人間なんて」だとか「結婚しようよ」などは収録されていません。初動売上は1万1千枚。ベスト10入りは2009年にリリースされた「午前中に・・・」以来。前作「AGAIN」の9千枚(14位)よりもアップしています。

一方、今週は返り咲き組も。安室奈美恵「Finally」が先週の14位から9位にランクアップ。2週ぶりにベスト10に返り咲いています。まだまだロングヒットが続きそうです。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年9月 5日 (水)

星野源が2週連続!

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot100から、いままで「CD販売・ダウンロード・ストリーミング数」として一括で表記されていたランキングが、CDセールス、ダウンロード数、ストリーミング数とわかれて表記されるようになりました。これで、「売れている」と一言で言ってもCDで売れているのか、ダウンロードなのか、ストリーミングなのかが一発でわかるようになり、その売れ方によって興味深い傾向が読み取れるようになりました。

個人的な印象論ではあるのですが・・・
① CD販売が上位に来ている曲=「グッズ」としてCDを欲しがる熱心なファンが多い=アイドル的な人気が先行している曲
② ダウンロードが上位に来ている曲=①ほどではないものの「曲」を自分のものとして保持したいリスナーが多い=アイドル人気ほどではないが、熱心な固定ファンによって聴かれているタイプの曲
③ ストリーミングが上位に来ている曲=なんとなく聴いてみようというリスナーが多い=固定ファンだけではなく広く聴かれているタイプの曲

といったイメージでしょうか。この「売れ方」からチャートを眺めてみるのも楽しそうです。

で、今週1位は星野源「アイデア」が先週に引き続き2週連続で1位を獲得。配信オンリーのためCD販売数は圏外ですが、ダウンロード数で1位を獲得。一方、ストリーミング数は16位と思ったよりも奮っていません。固定ファンによる人気が高いという傾向が読み取れます。ほか、ラジオオンエア数2位、Twitterつぶやき数1位、You Tube再生回数5位といずれも上位にランクインしています。

2位はDA PUMP「U.S.A.」が先週の3位からワンランクアップし再び2位にランクイン。こちら、CD販売数は18位ながらもダウンロード数6位、そしてストリーミング数は1位という結果に。やはり浮動層の人気が高い傾向にありそうです。またラジオオンエア数51位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数11位、You Tube再生回数は相変わらず1位をキープしています。

3位は先週2位のback number「大不正解」がワンランクダウン。CD販売数19位ながらもダウンロード数では2位をキープしています(ストリーミングは配信なし)。ほか、PCによるCD読取数では見事1位を獲得しているほか、ラジオオンエア数は10位を獲得。一方、Twitterつぶやき数は84位、You Tube再生回数は26位に留まっています。

続いて4位以下の初登場曲です。4位にはsumika「ファンファーレ」が先週の58位からCDリリースにあわせてベスト10入りです。劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」。広い層に支持されそうな爽快感あるポップチューンが特徴的なロックバンドですが、本作も爽快なメロがインパクトあるナンバーに仕上がっています。CD販売数5位、ダウンロード数17位(ストリーミング配信はない)となっており、アイドル人気・・・と言った感じではないんでしょうが、比較的固定ファンが多い傾向にあるのでしょうか。一方、ラジオオンエア数は1位を獲得しており、良くも悪くも万人受けする曲調がラジオ向けといった感じなのでしょうか。ほか、PCによるCD読取数5位、Twitterつぶやき数19位。オリコンでは初動1万9千枚で4位初登場。前作「Fiction e.p.」の1万7千枚(3位)よりアップしています。

5位にはジャニーズ系のアイドルグループA.B.C.-Z「JOYしたいキモチ」が先週の100位からCDリリースにあわせてランクアップ。東京ジョイポリスとのコラボ曲。ジャニーズ系のため配信系は一切なしなのですが、CD販売数では見事1位を獲得しています。ほか、Twitterつぶやき数2位、PCによるCD読取数は10位にランクイン。一方、ラジオオンエア数は93位に留まっています。オリコンでは初動4万4千枚で1位獲得。前作「終電を超えて~Christmas Night」の4万5千枚(2位)から微減。

9位には渋谷凛(福原綾香),北条加蓮(渕上舞),神谷奈緒(松井恵理子)「Trinity Field」がランクイン。スマホゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」使用曲のキャラソン。配信オンリーのリリースでダウンロード数で3位を記録。ほかにはTwitterつぶやき数で69位にランクインしています。なおオリコンではデジタルシングルランキングで3位に入ってきています。

今週の初登場曲は以上。一方、ロングヒット曲では米津玄師「Lemon」が先週から変わらず8位をキープ。ダウンロード数で10位、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数6位、You Tube再生回数3位といずれも上位をキープしています。ただしCD販売数は40位に留まっており、こちらも配信中心のヒットとなっています。(ストリーミングはなし)

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

 

 

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2018年9月 4日 (火)

洗練されたシティポップの中に泥臭さが

Title:Still Life
Musician:アナログフィッシュ

約2年10ヶ月ぶり。ちょっと久々となるアナログフィッシュのニューアルバム。前々作「最近のぼくら」、前作「Almost A Rainbow」と傑作アルバムが続いている彼ら。それだけに期待を持ってアルバムを聴き始めました。

で、いきなり耳に飛び込んできたのがアカペラ。1曲目「Copy&Paste」はいきなりのアカペラ曲で驚かされます。そして続く「With You(Get It On)」はメロウなAORのナンバー。Tokyo No.1 Soul Setあたりを彷彿とさせるポエトリーリーディング気味のラップも心地よく、メロウなグルーヴ感を楽しめるナンバーに。前作も爽やかなシティポップなアルバムに仕上がっていたのですが、基本的にはその延長線上のような作風になっています。

ただバラエティーが豊富だった前作に比べるとあきらかによりシティポップ、ブラックミュージック寄りにシフト。「Dig Me?」「Ring」のようなギターロック色の強い楽曲もあるのですが、特に終盤は「Uiyo」のようなグルーヴィーなギターサウンドをベースにしつつメロウなメロディーラインを聴かせるような曲や、ファンキーなリズムが奏でるグルーヴがとても心地よい「Time」、さらにHIP HOPを取り入れた「Pinfu」とメロウでグルーヴィーな曲が並びます。

SuchmosやNulbarich、ceroにD.A.Nといったメロウなグルーヴ感を奏でるシティポップのバンドが次々と人気を博していますし、サニーデイ・サービスも傑作アルバムを短期間にリリースし続けています。今回のアナログフィッシュのアルバムはそんな今時の流れに乗ったアルバムのようにも感じます。

ただ一方、これらのグループと比べると彼らの楽曲にはある種の泥臭さも感じます。例えば「Dig Me?」などはバンドサウンドが強く、オルタナ系ギターロックバンドからの流れを強く感じますし、申し訳ありませんが、佐々木健太郎のボーカルも泥臭く、洗練されたシティポップ向きのボーカルとは言えません。だからこそそんな「泥臭さ」を隠せるハイトーンボイスを多く用いているのでしょうが・・・。

そういう点ではいろいろな意味で洗練されたSuchmosらのグループに比べるとちょっと物足りなさを感じる点も否定できません。ただ、一方ではシティロックの要素の中で隠し切れないオルタナ系ギターロックバンドらしい泥臭さもまた彼らの大きな魅力に感じます。東京に出てきたけども隠し切れない田舎っぽさ(実際、中心メンバーの2人は長野県の伊那地方出身ですし)もまた彼らの特徴ですし、魅力だと思います。

「脂がのっている」という点では正直、前作、前々作の方が上かな、とは思います。ただ今回の作品も実に魅力的な傑作アルバムに仕上がっていました。シティポップが人気を博する中、彼らももうちょっと売れてもいいと思うのですが・・・まだまだこれからにも期待できそうな新作でした。

評価:★★★★★

アナログフィッシュ 過去の作品
荒野/On the Wild Side
NEWCLEAR
最近のぼくら
Almost A Rainbow


ほかに聴いたアルバム

VLP/LEO今井

KIMONOSやMETAFIVEのメンバーとしても活動している男性シンガーソングライター、LEO今井の最新作。彼自身、日本人とスウェーデンのハーフで、ロンドン大学及びオックスフォード大学の大学院卒という経歴の持ち主であることもあり、楽曲は洋楽テイストの強いギターロック。個人的にはかなり好みのタイプの音なのですが、全体的にはおとなしい感じで、インパクトは薄め。1曲1曲はカッコよかったのですが、よくありがちな洋楽志向の強いのギターロックという印象でLEO今井の個性がいまひとつ出ていなかった印象が。

評価:★★★★

the BEST HIT GMA/グッドモーニングアメリカ

現在のメンバーになって10周年、メジャーデビュー5周年を迎えたグッドモーニングアメリカの初ベストアルバム。選曲はファン投票によって選曲されたそうで、彼らの代表曲が並んでいます。アップテンポなナンバーが多く、サビにはそれなりにインパクトはあるものの全体的には特にこれとって特徴の薄い無難なギターロックという印象も。インパクトあるサビを生かしてもっと突き抜けたようなポップスを聴かせてくれるともうちょっとおもしろくなると思うのですが・・・。

評価:★★★

グッドモーニングアメリカ 過去の作品
inトーキョーシティ
グッドモーニングアメリカ
鉛空のスターゲイザー
502号室のシリウス

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2018年9月 3日 (月)

Odd Futureの一員だけども。

Title:Hive Mind
Musician:The Internet

ある意味、名前があまりにもそのまんまなThe Internet。Tyler,The Creator率いるHIP HOPグループOFWGKTAのメンバーであり、自らもプロデューサーとして活躍しているSyd the Kydと同じくOFWGKTAのメンバーであり、彼もまたプロデューサーとして活躍しているMatt Martiansを中心とした、現在は5人組によるバンド。彼らっまた、Tyler,The Creator率いるHIP HOP集団、Odd Futureに所属していることでも知られています。

本作はそんな彼らの約3年ぶりとなるニューアルバム。Odd Futureに所属、ということでHIP HOPのグループのように思われるかもしれまえせんが、彼らの楽曲は主に歌モノがメイン。それも女性ボーカリストでもあるシドがボーカルを取る曲が多く、メロディアスでメロウな曲が多いのが実に魅力的。「Come Over」などもちょっと気だるげにメロウに聴かせるボーカルが魅力的なのですが、特に魅力的だったのが「Stay The Night」。ウィスパー気味のボーカルが実に美しく、しんみりと聴き入ってしまう楽曲になっています。

その後も哀愁感漂う「Mood」、ハイトーンボイスで美しく聴かせる「It Gets Better(With Time)」など、実に美しくメロディアスに聴かせるナンバーが並んでいます。なにげにウイスパー気味で幻想感あるボーカルを伸びやかに美しく聴かせるシドのボーカルが魅力的。まずこのボーカルに聴き入ってしまう内容になっていました。

また、メロディーラインに関しては比較的シンプルでわかりやすいフックを利かせたフレーズが登場する曲が多く、どこか90年代っぽさを感じ、懐かしさすら感じられました。いい意味で耳馴染みのあるフレーズという印象も強く、そういう点からも最後まで楽しめる内容になっていたと思います。

もっとも一方ではタイトル通りのファンキーなグルーヴを聴かせる「Roll(Burbank Funk)」あたりが典型的なのですが、単純な90年代風な感じとも異なるグルーヴ感を覚える曲が多かったほか、例えば「Bravo」「Next Time/Humble Pie」など低音を重視した強いビート感など、HIP HOP的な要素は強く感じます。そういう意味では今時のHIP HOP的なグルーヴ感もしっかり取り入れたバンドというイメージも強く感じてました。やはりOdd Futureに所属するグループらしい、といった感じでしょうか。

基本的にいい意味で聴きやすくポップにまとまっており、ちょっと懐かしさを感じる要素と、今時を感じる要素がほどよいバランスで両立しているように感じます。特にその美しいボーカルやメロディーラインに終始聴きほれてしまうアルバム。個人的には年間ベスト候補の傑作アルバムだと感じました。HIP HOP集団の・・・というよりはむしろR&B、それも90年代あたりのものが好きなら文句なしに気に入りそうなアルバムだと思います。とにかく気持ちのよい1枚でした。

評価:★★★★★

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2018年9月 2日 (日)

川谷絵音のコアの部分

Title:PULSATE
Musician:indigo la End

例のベッキーとの不倫騒動ですっかりヒール的な立ち位置でお茶の間レベルに知られるようになってしまった川谷絵音。いまだにネットなどでは叩かれたりしていますが、正直、彼にもベッキーにも川谷絵音の元妻にも何の関係のない人がなぜあれだけ継続的に叩けるのか不思議に思ってしまいます・・・。もっとも、そんな評判などどこ吹く風。むしろあの騒動以降、ミュージシャンとしての活動は非常に充実したものを感じます。騒動の後にリリースされたゲスの極み乙女。の作品は傑作が続いていますし、indigo la Endについても前作「Crying End Roll」も傑作でしたし、続く本作も、そんな彼の充実した状況を反映するかのような傑作アルバムに仕上がっていました。

今回のアルバム、バリエーションという観点から言えば、決してバラエティーに富んだ作品ではありません。「魅せ者」のようなファンキーでアップテンポなナンバーや、エレクトロジャズな「プレイバック」、エレクトロチューンの「雫に恋して」のような曲もありますが、基本的にシンプルなバンドサウンドをバックにしたミディアムテンポの聴かせるナンバーがメイン。いままでも飛び道具的な曲が多かったゲスの極み乙女。に比べると、地味目に感じる曲が多かったのですが、今回は派手なインパクトある曲がより少なくなったように思います。

しかし、それにも関わらずアルバム全体としての出来は前作を上回る傑作に感じました。その大きな要素としてはまずメロディーラインの美しさにあるように思います。インパクトあるサビがあるわけでもありませんし、わかりやすいポップなフレーズが流れている訳でもありませんが、心うつようなメロディーラインがとにかく魅力的。個人的に特に印象的だったのが「Play Back End Roll」で、サビの最後にファルセットボイスで歌われるフレーズの美しいこと・・・。

歌詞についても決して強いインパクトあるフレーズが飛び出している訳ではありません。ただ、いままでのIndigo la End同様、いや、いままで以上にロマンチックさがあふれる歌詞が魅力的。まあ、こういう歌詞を臆面もなく書けるような人だからこそ女性にもモテるわね(^^;;そんな中で今回ちょっと気になったのが「冬夜のマジック」の歌詞。Indigo la Endといえばそのバンド名の由来はスピッツの「インディゴ地平線」なのですが、今回、この曲の歌詞にいきなり「スピッツ スピッツ」という言葉が登場。出だしの「冬夜の魔法」という言葉遣いはどこかスピッツ的。ひょっとしたらスピッツを意識したのでしょうか?

前作のアルバム評では「脂ののりまくった」とまでの印象は受けない、と書きました。しかし今回のアルバムに関しては川谷絵音の脂がのりまくった傑作アルバムだと思います。特に決して飛び道具の登場しないシンプルな歌詞とメロで勝負しているだけに、川谷絵音のミュージシャンとしてのコアな部分を出しまくっているアルバムのように感じます。ある意味、ゲスの極み乙女。以上に評価を受けてよいアルバムだと思うのですが・・・。しかし最近、この2バンド以外にも新しいバンド、ユニットの活動を開始しているようで、その勢いは止まらなさそう。indigoとしてのこれからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

Indigo la End 過去の作品
あの街レコード
幸せが溢れたら
藍色ミュージック
Crying End Roll


ほかに聴いたアルバム

夏を好きになるための6の法則 Part.2/The Mirraz

最近は配信限定で主にミニアルバムを積極的にリリースしているThe Mirraz。今回、突如リリースされた本作は2013年にリリースされた「夏を好きになるための6つの法則」の続編的な内容。かなり粋がった内容が目立ったPart1に比べると、粋がったスタイルは鳴りを潜めたものの、それでも身近なテーマを皮肉的に歌うスタイルは健在で、ある種の小気味よさを感じます。全体的にギターリフを主導で早口で歌いまくるギターロックで、ある意味いつも通りの彼ら。夏らしいサマーチューン6曲が収録されており、The Mirrazらしさを楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★

The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
言いたいことはなくなった
選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ
夏を好きになるための6の法則
OPPOTUNITY
しるぶぷれっ!!!
BEST!BEST!BEST!
そして、愛してるE.P.

ぼなぺてぃっ!!!
Mr.KingKong
バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロとMoon Song Baby
ヤグルマギク
RED JACKET

ALL TIME BEST~全部このままで~1988-2018/JUN SKY WALKER(S)

デビュー30周年を迎えるJUN SKY WALKER(S)の初となるオールタイムベスト。ジュンスカというとイメージとして後の「青春パンク」に直結するようなJ-POP色強いパンクロックを奏でていたバンド、という印象が強かったのですが、今回のベスト盤、特に初期の作品については演奏に関してもかなり荒々しい演奏が印象的で、彼らが間違いなくパンクバンドだった、ということを再認識させられました。

ただ一方、「START」あたり以降の作品については演奏も悪い意味でまとまってしまい、メロディーの迫力も薄れ、J-POP的な無味無臭な曲が増えてきてしまいます。この時期の楽曲に関しては、完全に2000年代の「青春パンク」につながるようなタイプの曲で、形式的な「パンクロック」に留まってしまっています。ここらへん、彼らがブレイクしたからこういう無難路線に移行せざるを得なかったのでしょうか。デビュー当初のスタイルを維持すればもっともっと面白いバンドになったんでしょうけどね。その点、残念に感じてしまったベスト盤でした。

評価:★★★★

JUN SKY WALKER(S) 過去の作品
B(S)T
LOST&FOUND
FLAGSHIP
BACK BAD BEAT(S)
FANFARE
BADAS(S)

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2018年9月 1日 (土)

前作とは対となる作品に

Title:Lamp Lit Prose
Musician:Dirty Projectors

毎回、アルバムをリリースする毎に安定した傑作をリリースし続けているDirty Projectors。セルフタイトルとなった前作の作成時には、バンドの中心メンバーであるDavid Longstrethが失恋を経験。さらにバンドメンバーほぼ全員が脱退し、事実上、デイヴィッドのソロプロジェクトとなった中でのアルバムリリースとなり、その影響かアルバム全体として憂いを感じる作品となっていました。

しかし、そこからわずか1年。今回のアルバムはある意味、前作とは対になるような作品に仕上がっていました。1曲目「Right Now」は爽やかなアコギの音色をバックに歌いあげるナンバーなのですが、途中、ホーンセッションなども入り、明るい雰囲気に。続く「Break-Thru」も明るくポップな作風になっています。このホーンセッションの導入はアルバム全体でもひとつのキーとなっており、「I Feel Energy」もホーンが鳴り響きながら軽快なパーカッションで彩られた明るくポップなナンバー。「What Is The Time」もメロウなソウルチューンにピッタリとはまるホーンセッションを聴かせる楽曲に仕上がっています。

憂いを感じ、基本的にソロプロジェクトとして進んできた前作に対して、今回のアルバムはアルバム全体として明るさを感じ、またホーンセッションの導入など、多くのメンバーが参加しての作品ということを印象づけられる内容となっています。そういう意味で前作と対になるようなアルバムと言えるのではないでしょうか。

ただ一方ではもちろん前作との類似点も少なくありません。まずは前作同様、多くのゲストが本作でも参加しています。「Right Now」ではThe InternetのSydが、「That's A Lifestyle」では女の子3人組バンドHaimが参加しているほか、「You're The One」ではFleet FoxesのRobin PecknoldにVampire WeekendのRostamが参加するなど、非常に豪華なゲスト陣が目をひきます。

また今回もデイヴィッドの書くポップなメロディーが非常に魅力的。「Blue Bird」のような切ないメロディーラインも耳を惹きますし、「You're The One」ではアコースティックなサウンドをバックにファルセット気味のボーカルで美しいメロディーラインを聴かせてくれます。またサウンド的にはアコースティックなサウンドやホーンセッションなどが入っている一方、様々な音を取り入れた打ち込みも要所要所に顔をのぞかせており、宅録的な要素も感じられます。サウンドは複雑ながらもメロディーは至ってポップという構成も以前から変わりありまえんでした。

そして前作に色濃く感じられたR&Bの方向性ですが、今回のアルバムも特に後半、R&B以上にソウルミュージックやジャズの要素を強く感じられる作風になっていました。複雑なリズムが特徴的な「I Found It In U」もそのメロディーからソウル的な要素を感じさせますし、特に続く「What Is The Time」は70年代あたりの時代を強く感じさせる正統派のソウルナンバーに。そしてアルバムを締めくくるラスト「(I Wanna)Feel It All」はジャジーな雰囲気のナンバーに仕上がっていました。

そんな訳で前作に引き続き今回のアルバムも魅力的なサウンドやメロディーが楽しめる傑作に仕上がっていたDirty Projectors。本当に毎作ハズレがありませんね。今回もポップなメロディーを楽しみつつ、サウンドの魅力にはまっていく、そんな作品でした。

評価:★★★★★

Dirty Projectors 過去の作品
SWING LO MAGELLAN
Dirty Projectors


ほかに聴いたアルバム

Both Directions At Once:The Lost Album(邦題 ザ・ロスト・アルバム)/John Coltrane

1950年代から60年代にかけて活躍したジャズミュージック界の巨匠、サックスプレイヤーのジョン・コルトレーン。今年、彼の「新作」がリリースされた大きな話題となりました。このアルバム、もともと当時所属していたアメリカのインパルス・レーベルに録音の記録はあったもののマスターテープが紛失しており、いままで「謎」と言われていた音源。その音源が今回発見され、リリースに至ったそうで、未発表のライブ盤とか別バージョンの音源とかではなく、純粋な新曲も含まれる純然たる「ニューアルバム」となるそうです。

日本でも大きな注目を集めオリコンチャートでも14位とジャズのアルバムとしては好セールスを記録しています。もっとも演奏的には良くも悪くも予想通りといった演奏で、目新しいという印象はあまりありません。もっとも所々で聴かせてくれるスリリングな演奏は魅力的ですし、全体としてはいい意味でポップでメロディアス、聴きやすいという印象も受けるアルバム。なによりジャズの巨人の新作を今、聴けるという点を考慮して下の評価に。ジャズリスナーなら聴いて損は・・・・・・って、とっくに聴いてますよね(^^;;

評価:★★★★★

John Coltrane 過去の作品
The Final Tour: The Bootleg Series, Vol. 6(Miles Davis&John Coltrane)

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