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2018年8月26日 (日)

ポップな歌の後ろに独特のグルーヴ感が

Title:THE POOL
Musician:Jazzanova

「ジャズ」と「ボサノヴァ」を融合させた、ある意味かなりストレートなバンド名が印象に残るJazzanova。1995年にドイツ・ベルリンで5名のDJ、プロデューサーにより結成されたバンドで、ジャズをキーワードにエレクトロサウンドと融合させたクラブ・ミュージックが大きな話題に。特に2002年にリリースされたデビューアルバム「In Between」は大きな話題となりました。

そんな彼らは2008年にアルバム「Of All The Things」をリリースした。しかしその後は2012年にはライブアルバムをリリースしたり、シングルリリースなどで継続的な活動はあったもののアルバムのリリースはなし。しかしそんな彼らはなんと10年ぶり、待望となるニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムは全12曲、それぞれ別々のミュージシャンがゲストとして参加している点が大きな特徴的。アルバムを通じて方向性としてはジャジーな雰囲気の漂う現代にアップデートされたJazzanova流ソウルミュージックという作風に仕上がっています。しかし、様々なゲストの参加により、Jazzanova流ソウルといってもその非常に広い音楽性の幅に、彼らの実力を感じさせてくれるアルバムとなっていました。

例えば2曲目「Rain Makes The River」ではレイチェル・サーマンニがゲストボーカルとして参加。マイケル・キワヌーカ、エルヴィス・コステロ、ロン・セクスミスらが絶賛した今、注目のシンガーのようで、その透明感あふれるボーカルが印象的。その「歌声」にまずは魅了される楽曲となっています。ベルリンを拠点として活動しているシンガーソングライター、ノア・スリーが参加した「Sincere」は軽快なディスコチューンに。80年代的な匂いもあるナンバーで、ポップで聴きやすいナンバーに仕上げています。

イギリス出身のジャズシンガー、ジェイミー・カラムが参加した「Let's Live Well」は哀愁感たっぷりに歌い上げるバラードナンバーが胸をうちますし、エドワード・バンゼットが参加した「I'm Still Here」もフォーキーな雰囲気の漂うメロディーが印象的。ただ、この曲はフォーキーなサウンドの中にスペーシーなエレクトロサウンドを紛れ込ませており、独特なサウンド構成が耳を惹きます。

そんな感じで全編、歌モノのナンバーが多い作品になっており、いい意味で非常に聴きやすいアルバムに仕上がっていました。歌モノもポップなナンバーが多く、ポップのアルバムとして聴く限り、初心者リスナーをこばみようなマニアックさは皆無。いい意味で幅広い層が聴きやすいアルバムに仕上がっていたと思います。

とはいえ、もちろん単純に歌を聴かせるだけのポップアルバムになった訳ではありません。例えばHIP HOPを取り入れた「No.9」ではミニマル的なサウンドでグルーヴィーなサウンドを心地よく聴かせてくれますし、「Heatwave」でも非常にカッコいいファンキーなサウンドを聴かせてくれます。全体的にソウルミュージックのテイストの強い独特のグルーヴ感が心地よく、サウンド面でも1曲1曲、音の感触が異なっており、バリエーション豊かなサウンド構成が楽しめるアルバムに仕上がっていました。

10年ぶり久々となるアルバムでしたが、その実力に全く衰えはなく、大満足な傑作アルバム。いわゆる「クラブ系」にカテゴライズされる彼らですが、ソウルミュージックが好きなら間違いなく気に入りそうなアルバムですし、ポップな歌モノも多いだけに幅広い層が楽しめそうなアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Essentials/Jack Johnson

日本でも高い人気を誇るサーフ・ミュージックの第一人者の日本独自企画によるベストアルバム。アコースティックなサウンドをベースとしたオーガニックな雰囲気漂うポップソングは刺激的か、と問われると正直な話、物足りなさを感じてしまうのですが、グッドミュージックという意味では文句なしの名曲揃い。全18曲というボリューム感、ほとんどがアコギで聴かせるという似たタイプの曲ばかり、にも関わらず飽きることなく聴けてしまうあたりがやはり彼の実力なのでしょう。

評価:★★★★★

Jack Johnson 過去の作品
SLEEP THROUGH THE STATIC
To The Sea
All The Light Above It Too

beerbongs&bentleys/Post Malone

おそらく今、アメリカで最も人気のあるミュージシャンと言えるのが白人ラッパー、Post Malone。最新アルバムである本作はビルボードで1位を獲得したのは当然のこと、1週間あたりのアルバム・ストリーミング記録を更新。さらにHot100のベスト20に9曲を同時にランクインさせ、ビートルズとJ.コールが保持していた複数曲のベスト20同時ランクイン数の記録を更新しています。先日のフジロックにも来日を果たし、日本においても注目度がかなり増しているミュージシャンになっています。

そんな彼のアルバムはジャンル的にはHIP HOP。サウンドは今流行りのトラップミュージックの要素を盛り込んだアルバムになっています。が、基本的にラップというよりも終始、ポップなメロディーが流れている「歌モノ」のアルバム。このメロディーラインもしっかりとフックが効いており、インパクト十分。そういう意味では良くも悪くも売れそうなアルバムになっていたと思います。

正直言うと、今の大人気に関しては聴いていて、そこまでか・・・と思う部分はなきにしもあらずなのですが、確かに最新のサウンドにわかりやすいメロディーという構成は売れそうといえば売れそうなタイプな感じも。HIP HOPリスナー層にもアピールできそうな楽曲なだけに、日本でも今後もっと人気が高まってくるかも。

評価:★★★★

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