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2018年8月13日 (月)

歌手宇多田ヒカルの才能を強く感じる傑作

Title:初恋
Musician:宇多田ヒカル

宇多田ヒカルについてはここ最近、明らかに歌手としての「ステージ」が変わった、そう感じます。久々の新作となった前作「Fantome」から声質があきらかに変わり、大人の女性になったことを強く感じました。ただ一方、大人な声質になったけども表現力の面で物足りなさも感じたのも事実でした。しかし、今回のアルバムに関してはあきらかに表現力の面でもグッと大人びた印象を受けます。ひとことで言ってしまえば「すごみが増した」といったところでしょうか。サウンド的には洋楽テイストの強いR&Bなのですが、ボーカルで言えば歌謡曲的な「情念」すら感じる部分もありました。

アルバムの出だしの「Play A Love Song」からそのハイトーンボイスで優しく聴かせる歌声にまずゾクゾクっとさせられますが、序盤ではタイトルチューンでもある「初恋」が秀逸。サウンド的にはシンプルなピアノやストリングスをバックに歌い上げる楽曲なのですが、恋する切なさを静かに歌う彼女の歌声は切なさも感じられ、胸をうちます。

基本的には今回のアルバム、そんな彼女の歌を前面に押し出して聴かせるようなスタイルのアルバムになっていました。全体的にリズムやサウンドを聴かせるというよりもシンプルに彼女の歌に主軸を置いたような構成になっており、そのため彼女の歌の持つ力がよりわかりやすい形でアルバムに収録されていたように感じます。

後半でも「残り香」のように伸びやかなボーカルを聴かせるナンバー、「夕凪」のようなピアノやストリングスで郷愁感を出しつつ、そんなサウンドが作り出す雰囲気に沿った歌を聴かせるナンバーなど聴かせどころはたくさん。最後を締めくくる「嫉妬されるべき人生」も静かながら力強い歌声を聴かせてアルバムを幕を閉じます。

さてそんな今回のアルバム。サウンド的にはピアノやストリングスを軸としたシンプルなサウンドで上にも書いた通り、基本的には歌を生かすようなサウンドになっていました。そのためサウンドの側面からは決して目新しいといった感じはありません。ただ、そんな中、「Too Proud」ではHIP HOP的なトラックを用いており、男性ラッパーがゲストに参加。「残り香」でも最近流行りのトラップミュージック的な高音のスネアが短く早いリズムを流すリズムトラックを入れてきたりと、特に後半では今風のHIP HOPの要素を入れてきてしっかりと今の時代にアップデートしてきています。ここらへん、歌を中心としたアルバムとはいえサウンド的にはさりげなく今時の音をしっかりと取り込んできている点、彼女のミュージシャンとしての視線はしっかりと今という時代を見据えているんだな、ということを感じさせます。

そんな訳で冒頭にも書いた通り、歌手宇多田ヒカルとして大きく一歩前へ踏み出した傑作アルバムに仕上がっていました。もう本当にミュージシャンとして立っているステージが変わったな、ということを強く感じさせます。宇多田ヒカルのすごさをただただ感じた1枚でした。

評価:★★★★★

宇多田ヒカル 過去の作品
HEAT STATION
This Is The One(Utada)
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2
Fantome


ほかに聴いたアルバム

SHISHAMO 5/SHISHAMO

チャットモンチーなき後(?)のガールズギターロック界を担うべき3ピースバンドSHISHAMOのニューアルバム。基本的に明るくポップなギターロックに女性の本音を描いたような歌詞が魅力的。良くも悪くも非常にシンプルなギターロックというスタイルなのですが、以前の作品に比べてポップスさが増したような印象もあります。いい意味で売れているバンドらしく、よりポピュラリティーが広がりつつある印象を受けるアルバムでした。

評価:★★★★

SHISHAMO 過去の作品
SHISHAMO 3
SHISHAMO 4

天体/Polaris

もともとはLab LIFeとして活動していたオオヤユウスケとFishmansの柏原譲によるユニットPolaris。一時期は活動休止状態でしたが、ここにきて活動を活発化。フルアルバムとしては3年4ヵ月ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。とはいっても基本的にはこれまでの彼らのスタイルと変わらず、ダビーな雰囲気で横ノリのリズムが心地よい浮遊感あるポップチューンがメイン。終始、夢見心地な気分になる心地よいポップチューンが魅力的な作品でした。

評価:★★★★★

Polaris 過去の作品
MUSIC
走る

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