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2018年8月 5日 (日)

末期がんを乗り越えて

Title:Blow Your Mind
Musician:Wilko Johnson

70年代のロンドンのパブロックシーンをけん引。その後のパンクロックムーブメントにもつながる活動を見せたDr.Feelgood。今回紹介するのは、そのオリジナルメンバーでありギタリストのウィルコ・ジョンソンの新作。新作としてはロジャー・ダルトリーと組んで話題となった2014年の「Going Back Home」以来、また淳前たる新曲のみで構成されたアルバムとしては、なんと1988年の「Barbed Wire Blues」以来、実に30年ぶりとなるアルバムとなるそうです。

ウィルコ・ジョンソンといえば2013年。末期がんを患っていることが公表。その時点では延命治療を行わないことを表明しており、ファンにとっては非常にショッキングなニュースとなりました。ところがその後もコンスタントに活動を続け、なんと最終的にはがんを克服。気が付けば末期がん公表から5年。待望のニューアルバムがリリースされました。

楽曲はベテランの彼らしい、いわば渋みのあるようなブルースロックが主体。特にブルースロック、というよりはむしろブルースの色合いが濃い楽曲が多く収録されています。例えば「Marijuana」なども軽快なブルースハープとギターを聴かせる正統派なブルースナンバーですし、「Low Down」もこれでもかというほど哀愁感を帯びたブルースギターをバックに静かに語るようなボーカルが特徴的で、かなり痺れます。「Lament」はインストナンバーなのですが、こちらもむせび泣くようなブルースハープとブルースギターの音色が心に響いてきます。

御年71歳の彼。そのボーカルはさすがの年のせいか、若干不安定に感じる部分もあります。ただ、その年齢なりの不安定さも含めて、酸いも甘いもかみ分けたような渋みのあるボーカルがブルージーな楽曲にもピッタリとマッチ。まさにこのボーカルと合わせて楽曲の世界観をしっかりとつくりこんでいます。

特に今回は、がん告知からの5年間を歌詞のテーマとした曲が多く、「Mrijuana」や「Take It Easy」などはまさにがん告知をテーマとした曲だとか。それだけに歌詞のテーマ的にも「ブルース」のイメージにピッタリとマッチしているようにも思えます。

ただもっともそんなダウナーな雰囲気の曲ばかりではなく、例えば「That's The Way I Love You」はブルージーながらも軽快でダンサナブルなロックンロールチューン。「I Love The Way You Do」なども軽快で楽しいロックンロールナンバーに仕上がっています。そういうこともあり、アルバム全体としてはがんをテーマにしていたりブルージーだったりするのもも、決して必要以上にダウナーになることなく、ブルースを主体としたカッコよく渋みのあるロックンロールを楽しめるアルバムになっていたと思います。

末期がん公表の時は私もショックを受けましたが、非常に良い意味で予想に反して、まだまだ元気な姿を見せてくれている彼。これはまだまだ「お迎え」なんて話はもっともっと先の話になりそうですね。次のアルバムも期待しています。

評価:★★★★★

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