スリーピースバンドのカッコよさを実感
Title:No New World
Musician:MASS OF THE FERMENTING DREGS
もともとは女性3人組のガールズバンドとして活動していたものの、デビュー直前にメンバーの1人が脱退。その後もその力強いバンドサウンドに大きな注目を集めていたものの、2010年にはオリジナルメンバーのギタリスト石本知恵美が、さらにその後はメンバー脱退後に新加入していたドラマー吉野功が相次いで脱退し、2012年に残念ながらその活動を休止していたマスドレことMASS OF THE FERMENTING DREGS。しかしその後、2015年にはボーカルの宮本菜津子を中心に、ドラムに吉野功が復帰。さらに新メンバーとしてQomolangma Tomatoの小倉直也が参加し、ライブを中心に活動を再開していました。
そしてこのたび、待望のニューアルバムがリリース。実に8年ぶりとなるニューアルバムですが、8年というブランクを全く感じさせない勢いある傑作に仕上がっていました。まずは1曲目「New Order」からしてめちゃくちゃカッコいい!まずは分厚いギターサウンドが耳を惹きます。スリーピースバンドらしくギター、ドラム、ベースのみのシンプルなサウンドながらも迫力があり、バンドとしての底力をまずは感じさせるのですが、爽快感あるメロディーラインに、新たな一歩への決意を感じさせるような歌詞も強いインパクトになっています。
続く「あさひなぐ」もダイナミックなバンドサウンドが耳を惹きますし、さらに「だったらいいのにな」はメタリックなヘヴィーなギターリフからスタート。ズシリと重いバンドサウンドがとにかくカッコよく、バンドの実力を感じさせるナンバー。そしてそれに続く「YAH YAH YAH」は(某チャゲアスのナンバーじゃないよ)は1分に満たないインストナンバーなのですが、メンバー3人の息の合った迫力ある演奏が魅力的なナンバー。公式サイトでチャットモンチー橋本絵莉子が「ライブで10回は聴きたい」とコメントを寄せていましたが、そのコメントも納得。ライブで聴いたら気持ちいいだろうなぁ。
後半のタイトルチューン「No New World」はドリーミーなシンセが入りシンセちっくなミディアムテンポのナンバー。いままでとはちょっとタイプの異なるナンバーでちょっと気分転換となるのですが、続く「Hu Hu Hu」はポップなメロディーラインのギターロックながらも、こちらも重厚感あるバンドサウンドがズシリと響いてくるナンバーに。ノイジーなギターで聴かせるミディアムテンポのナンバー「Sugar」を挟み、ラストナンバー「スローモーションリプレイ」もインパクトあるポップなメロディーラインながらも、スリーピースの良さを存分に生かしたようなヘヴィーなバンドサウンドが迫力満点。ポップなメロディーと重厚感あるバンドサウンドの組み合わせがとにかく気持ちよい楽曲に仕上がっていました。
そんな訳でわずか8曲入りのナンバーながらもどの曲もマスドレの魅力がつまった傑作アルバムになっていました。また今回、いままでの作品以上にバンドサウンドを前面に押し出したのも大きな特徴。特に前作「ゼロコンマ、色とりどりの世界」ではポップなメロディーラインを前に押し出していたのですが、今回のアルバムはラストの「スローモーションリプレイ」などポップなメロディーラインを聴かせる曲もあるものの、基本的にポップなテイストは後ろに下がっています。
ただ、そんな点が気にならなくなるほどへヴィーなバンドサウンドがとにかくカッコいいアルバムに。この3人によるはじめてのアルバムなのですが、そんな事実が全く信じられないほど息の合ったプレイを聴かせてくれています。再結成からアルバムリリースまで2年以上の時間が経過したのですが、これだけ息の合ったプレイを聴かせるにはそれだけの時間が必要だった、ということでしょうか。これはライブもまた見てみたいなぁ。とにかく心からスリーピースバンドのカッコよさを実感できた傑作でした。
評価:★★★★★
MASS OF THE FERMENTING DREGS 過去の作品
MASS OF THE FERMENTING DREGS
ワールドイズユアーズ
ゼロコンマ、色とりどりの世界
ほかに聴いたアルバム
収穫祭!/町あかり&池尻ジャンクション
町あかりの最新アルバムは、カシオトーンを駆使したチープなサウンドが特徴的だった前作から一転、彼女のライブでのバックバンド、池尻ジャンクションをバックに従え、「町あかり&池尻ジャンクション」名義となるアルバム。そのためいままでのアルバムの中では最も分厚いサウンドを聴かせるアルバムになっており、良くも悪くもサウンドがチープという印象があった彼女のイメージを一新する内容となっています。
ただ正直言うと、どこか「B級」的な香りが漂う彼女の楽曲は分厚いバンドサウンドよりも前作のカシオトーンのようなチープなサウンドの方がなんとなく似合っているような印象も。今回は他のミュージシャンなどへの提供曲のセルフカバーがメインとなっており、そういう意味でも町あかりの持ち味も十分に発揮されていないようにも感じました。とはいえ彼女らしい昭和歌謡曲の雰囲気は十分アルバム全体に流れており、そういう意味では町あかりの魅力もしっかり感じされる作品にはなっているのも事実なのですが。
評価:★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2018年」カテゴリの記事
- 前作同様、豪華コラボが話題に(2019.01.26)
- その「名前」を聞く機会は多いのですが・・・(2019.01.25)
- 「ラスボス」による初のベスト盤(2018.12.24)
- 民謡歌手としての原点回帰(2018.12.23)
- 相変わらずの暑さ(2018.12.22)
コメント