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2018年8月24日 (金)

酩酊感あるサウンドが心地よい

Title:Mars Ice House II
Musician:ゆるふわギャング

「ゆるふわ」という言葉と「ギャング」という言葉の真逆のイメージ同士の言葉の組み合わせがユニークなHIP HOPグループ、ゆるふわギャング。前作「Mars Ice House」が話題となり同作ではじめて彼らの作品を聴きましたが、それに続く新作が本作。タイトル通り、前作に続く続編的なアルバムなのですが、前作とはまた異なる進化も感じさせるアルバムになっていました。

サウンド的には最近、話題となっている典型的なトラップミュージック。スネアの「チャチャチャ」という高音のビートが続き、そこにダークなエレクトロサウンドが重なるようなスタイル。Ryugo IshidaとSophieeという男女2人のラッパーによる実生活でも恋人同士という2人の息の合ったラップがそこに乗るスタイル。ラップは基本的にダウナーな雰囲気で、サウンドを含めて楽曲全体に流れる酩酊感が実に気持ちよさを感じさせる楽曲が続きます。

ここらへんは前作と同じ方向性なのですが、今回のアルバム、前作以上にサウンド面のバラエティーが増し、力の入った作品のように感じます。例えば「Palm Tree」ではトラップミュージックのリズムの中に終始スペーシーなサウンドが流れて心地よい酩酊感を楽しめますし、「ICY(Peppermint Acid)」ではラップにもエフェクトをかけまくり、楽曲全体としてサイケなトリップ感が楽しめるサウンドに仕上げています。

後半も「Antwood」ではノイジーなサウンドが破壊的な空気感を醸し出していますし、「Coolermachine」ではどこか中国風なシンセの音がユニーク。どの曲もそれぞれ個性的なサウンドを聴かせており、一言でトラップミュージックといっても楽曲の方向性は様々。最後まで非常に刺激的なサウンドを楽しめるアルバムに仕上がっていました。

一方で前作の大きな特徴だった北関東の郊外に住むヤンキー的な若者の日常を描いたようなリリックは今回は後退。基本的に前作と同様の方向性とはいえ、前作のような耳に残るようなインパクトあるフレーズはほとんどなく、その点はちょっと残念に感じました。ただ、個人的には前作では共感できなような歌詞も少なくなかったため、アルバム全体の印象としては今回インパクトあるフレーズがなかったという点は必ずしもマイナスには働いていないのですが・・・。

そんな訳で、終始酩酊感あふれるサウンドが非常に心地よい傑作アルバム。個人的にはそのサウンドにすっかりはまってしまいました。「ゆるふわギャング」というミュージシャン名ですが、ギャングスタ的な要素は本作ではほとんどありません。一方、刺激的なサウンドで「ゆるふわ」という感じでもないのですが・・・。独特な世界観が楽しめる気持ちの良いアルバムでした。

評価:★★★★★

ゆるふわギャング 過去の作品
Marc Ice House

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