ラストアルバムでありながら・・・
Title:誕生
Musician:チャットモンチー
昨年11月、非常にショッキングなニュースが飛び込んできました。チャットモンチー解散。2005年のデビュー以来、女の子だけのロックバンドとして高い注目を集め、かつ高い人気を博してきた彼女たち。途中、メンバーの脱退や、結婚・出産などの出来事がありつつ活動を続けてきましたが、デビューから13年目である今年、残念ながらその活動に幕を下ろしました。
そんな彼女たちのラストアルバムが本作。そしてタイトルが「誕生」・・・最後のアルバムにつけるタイトルとしてはあまりにもユニークです。ただ彼女たちは今回のチャットモンチー解散の理由について、インタビューなどでチャットモンチーとしてやれることはやりつくした、チャットモンチーという殻を抜け出して新たな一歩に進みたい、という話をしていました。そういう意味では今回のアルバムに「誕生」と名付けたのは、チャットモンチーという殻を割って、新たな一歩を踏み出すための最初のアルバムという意味があったのかもしれません。
実際驚かされるのは今回のアルバム、ラストアルバムにも関わらずいままでのチャットモンチーとは違うスタイルに挑戦しています。2016年のライブでは「チャットモンチー・メカ」と称したメンバー2人と打ち込みのみによるライブを行っていましたが、今回のアルバムも1曲目「CHATMONCHY MECHA」ではいきなりエレクトロサウンドのインストチューンからスタート。続く「たったさっきから3000年までの話」でも大々的にエレクトロサウンドを導入したナンバー。その後も打ち込みを取り入れた曲が続き、ロック色が強かったいままでのチャットモンチーからは一風変わった作風になっています。
最後のアルバムがあえていままでのチャットモンチーらしくないアルバムを作ってきたあたりに彼女たちのあくなき挑戦心を感じさせます。実際、女の子オンリーのバンドというチャットモンチーのスタイル自体、今となっては珍しくなくなりましたがデビューした2005年当時は非常に珍しく、まさに挑戦的と言えましたし、メンバー脱退後は新しいメンバーを加えず2人だけでアルバムを作ったりライブツアーを行ったりと、そのポップな作風とは異なる挑戦的なスタイルを多く見せていました。
そういう意味ではこのラストアルバムでエレクトロサウンドを導入するという挑戦を行うあたり、チャットモンチーらしいと言えるのかもしれません。もっとも今回のアルバム、ラストらしい試みも少なくなく、例えば「砂鉄」ではメジャーデビュー当時のメンバーである高橋久美子が作詞を手掛けており、デビュー当時からのファンにとってはうれしい「3人組チャットモンチー」が曲の中で復活しています。
また彼女たちにとってラストのナンバーとなった「びろうど」もある意味ファンへのメッセージとこれからの決意を歌ったようなラストらしいナンバー。ちなみにボーカルには4才になる橋本絵莉子の息子も参加しています。
ただ、そんなラストアルバムだったのですが、正直な感想としてアルバムの出来としては残念ながら決して良くはありませんでした。エレクトロサウンドも目新しいものではありませんでしたし、メロディーラインのインパクトもいまひとつ。解散が決まりながらもアルバム1枚をリリースしてくれるのはファンとしてはうれしいものの、3年ぶりのアルバムでありながら7曲入りの事実上ミニアルバムな構成も物足りなさを感じます。正直言ってしまえば、確かにチャットモンチーとしてのモチベーションは低くなっているんだな、ということを感じてしまったアルバムでした。
そんな訳で、ラストアルバムで新たな挑戦という点では斬新なスタイルではあったものの、一方、チャットモンチーとしてやりつくした感を覚えてしまうという点では悪い意味でラストアルバムらしい作品と言えるかもしれません。確かに「チャットモンチーとしてやりつくした」というメンバーの解散理由もよくわかってしまうような気もします。チャットモンチーの解散という事実は非常に残念なのですが、ただ一方、メンバーが新たな一歩を進めるという意味では決してネガティブなことではないのかもしれません。えっちゃんとあっこのこれからの活躍に心から期待したいところです。
評価:★★★★
チャットモンチー 過去の作品
生命力
告白
表情
Awa Come
YOU MORE
チャットモンチーBEST~2005-2011~
変身
共鳴
ほかに聴いたアルバム
植物男子ベランダー ENDING SONGS/大橋トリオ
今年4月から7月にNHK総合で放送したドラマ「植物男子ベランダー」。このドラマのエンディングを担当していたのが大橋トリオ。毎回、エンディングテーマが変わる構成だったようで、そのエンディングテーマをまとめたのが配信限定でリリースされた本作です。基本的に大橋トリオの代表曲の中から、おそらくよりドラマにマッチしたオーガニックな雰囲気の曲をまとめた企画盤で、暖かい雰囲気の楽曲が魅力的。彼の曲は良くも悪くも優等生的な部分が強いのですが、こうやって並べて聴くと、やはり魅力的な名曲が多いなぁ、と感じさせてくれます。基本的に既発表曲ばかりですが、入門盤としても最適なアルバムでした。
評価:★★★★★
大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R
FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
「天命の城」オリジナル・サウンドトラック/坂本龍一
今年6月に日本でも公開された韓国映画「天命の城」。その劇中音楽を坂本龍一が担当。はじめて韓国映画の音楽を担当するということでも話題となりました。映画は1936年に起こった「丙子の役」を舞台とした歴史スペクタクルのようですが、その映画に合わせるかのような、全体的にダークな雰囲気が覆いつつも、スケール感あるダイナミックなサウンドが目立ちます。基本的にいかにも映画音楽的な内容なので、映画を見ていないと厳しいものはありますし、特に挑戦的な作風の曲もありませんでしたので、熱心なファンか、映画を楽しんだ方はどうぞ。
評価:★★★
坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984
ASYNC-REMODELS
Year Book 1985-1989
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2018年」カテゴリの記事
- 前作同様、豪華コラボが話題に(2019.01.26)
- その「名前」を聞く機会は多いのですが・・・(2019.01.25)
- 「ラスボス」による初のベスト盤(2018.12.24)
- 民謡歌手としての原点回帰(2018.12.23)
- 相変わらずの暑さ(2018.12.22)
コメント