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2018年8月 6日 (月)

松任谷由実のコアな部分

Title:ユーミンからの、恋のうた。
Musician:松任谷由実

2012年にデビュー40周年を記念し、3枚組のオールタイムベスト「日本の恋と、ユーミンと。」をリリースした彼女。このベスト盤は大ヒットを記録し、トータルセールスで100万枚を突破しました。ユーミン健在を見せつけたベスト盤だったのですが、それからわずか5年。今度はデビュー45周年をリリースし、新たなベスト盤がリリースされました。今回のアルバムは、5年前のベストアルバムに収録されなかった曲から彼女が選んだ楽曲だそうで、3枚組フルボリュームでのベスト盤をリリースした後でも、まだこんなにたくさんの「名曲」が残っていることにまず驚かされます。

ただ今回のアルバムに収録されている曲はほとんどがアルバムオンリーの収録曲。誰もが知っているような日本ポップス史上に残るスタンダードナンバーの連続だった前作とはある意味対照的。シングル曲はわずか2曲で、そのうち1曲はまだ彼女がブレイクする前の曲。おそらく唯一ファンでなくても知られているような曲は「輪舞曲」くらいではないでしょうか。ある意味、知る人ぞ知る的な曲が並んでいました。

そんなこともあって、ある意味バブル期のイメージも強く、派手な印象が先に立ちがちなユーミンなのですが、今回のベスト盤に収録されている曲に関しては、むしろ「地味」という印象すら強く受ける内容になっていました。

ただそれだけに変な装飾がない分、松任谷由実の本来の魅力である歌詞とメロディーラインの良さが光る曲が並んでいた印象を受けます。例えば歌詞でいえば「瞳を閉じて」のようなシンプルな歌詞だけにその裏にある物語性を感じさせる歌詞や「ただわけもなく」のような目に浮かぶ風景描写が見事な歌詞が実に魅力的です。メロディーラインで言えば「雨の街を」の物悲しげで叙情的なメロディーは鳥肌がたつほど。数少ないシングル曲「輪舞曲」もラテンなメロディーラインはしっかりと耳に残ります。

そして今回のベスト盤の中で一番強く印象に残ったのが「ツバメのように」という曲。失恋して飛び降り自殺をした若い女性について歌った曲なのですが、そんな女性の最期を「ツバメ」に例えるなどあまり悲壮感を表に出さないことにより、逆に聴く者にとっては切なさを強く感じさせるようなナンバーになっています。

実はこの曲、歌詞には元ネタがあるみたいで、こちらのサイトで詳しく書いてありました。ただ元ネタを知った上でも歌詞の内容的にはユーミンの方が強い印象を抱かせる構成になっており、「パクリ」というよりもむしろ、「このネタを使うなら私の方がもっと上手くできる」というユーミンのある種の自負すら感じさせられます。

そんな訳で、彼女の有名な楽曲とはまた異なる、というよりもむしろ本質的なユーミンの魅力を感じさせるベスト盤。3枚組のボリューム感ある内容で、かつ有名曲がほとんどありませんが、一気に楽しむことが出来るアルバムだったのはさすがの一言。あらためて松任谷由実というミュージシャンの才能を感じることが出来るアルバムでした。

評価:★★★★★

松任谷由実 過去の作品
そしてもう一度夢見るだろう
Road Show
日本の恋と、ユーミンと。
POP CLASSICO
宇宙図書館


ほかに聴いたアルバム

今夜だけ俺を/菅原卓郎

9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎による初のソロアルバム。「平成最後に放つオルタナ歌謡曲集」をコンセプトにしたアルバムで、作詞はいしわたり淳司、9mm Parabellum Bulletのギタリスト滝善充が作曲とプロデュースを手掛け、本人はまさに「歌謡曲歌手」に徹したコンセプチュアルなアルバムに仕上がっています。

もともと9mm自体、メロディーに歌謡曲からの影響を強く感じられましたが、今回はその方向性をもっと歌謡曲寄りにシフトした形。「Baby どうかしてるぜ」などはまさに昭和のアイドル歌謡曲が強いテイストになっていますし、「今夜だけ俺を」「ボタンにかけた指先が」は歌謡ファンクのテイストが強い曲に。ただ、最近、この手の「昭和歌謡そのまんま」な歌手が増えてきている中、菅原卓郎のみの独自性はちょっと薄かった印象も。今後、このコンセプトを進めていく中に、彼らしさを確立していくことを期待したいのですが。

評価:★★★★

BAD HOP HOUSE/BAD HOP

BAD HOPの新作は8曲入りのEP。ゆっくりグルーヴィーなエレクトロサウンドのトラックにけだるい雰囲気を醸し出しているエフェクトかかったボーカルのラップというスタイルは以前と変わらず。仲間とのツアーをそのまま綴った「Mobb Life Tour」やおそらく人気が出てきた彼らにたかってくる外部の人間を皮肉った「Don't Touch My Cash」など、仲間との絆をつづったようなラップも相変わらず。いい意味でBAD HOPらしさをしっかりと確立しており、なによりもサウンドもラップもカッコよく耳に残るのが大きな特徴。まだまだ彼らの勢いは続きそうです。

評価:★★★★★

BAD HOP 過去の作品
BAD HOP 1DAY
Mobb Life

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