ブルース界最後のリビング・レジェンド
Title:THE BLUES IS ALIVE AND WELL
Musician:BUDDY GUY
ここ数年、非常に残念ながらブルース全盛期を知る最後の世代のレジェンドたちが鬼籍に入るというニュースが続いています。2013年にはボビー・ブランドが鬼籍に入り、2015年にはB.B.KINGもついにあの世に旅立ちました。また、ブルースではなくロックンロールですが、昨年はチャック・ベリーも亡くなっています。
そんな中、最後に残ったリビング・レジェンドといえるのが彼、BUDDY GUY。御年82才となる彼ですが、いまだに2、3年に1枚のペースでアルバムをリリースし続けており、バリバリ現役の姿を見せ続けています。
本作はそんな彼の約3年ぶりとなるニューアルバム。タイトルからして「THE BLUES IS ALIVE AND WELL」と、まさに彼自身、最後のブルース・レジェンドとしての立場を引き受けるかのようなアルバムタイトルになっています。また今回のアルバムはなんといってもゲスト勢が豪華。「Cognac」ではジェフ・ベックとキース・リチャーズが、「You Did The Crime」ではミック・ジャガーがゲストとして参加しています。このとんでもない豪華な顔ぶれがゲストとして参加するあたり、彼の今の音楽シーンの中での存在感の大きさがわかります。
そしてそんな立場を背負った彼がリリースした最新作は、いつも以上に気合いが入りまくっている作品になっていました。基本的にスタイルは良くも悪くも以前から大きな変化がありません。楽曲的にはシカゴブルースの王道を行くような路線。今回のアルバムでも特段の目新しさはありません。
ただ、「Whiskey For Sale」では非常に力強いギターとシャウト気味なボーカルを聴かせ、ファンキーなナンバーに仕上げていますし、「Old Fashioned」の力強いギターリフも印象的。ホーンセッションも入って賑やかなナンバーに仕上がっています。ラスト前の「End Of The Line」でも力強いギターサウンドを聴かせますし、ボーナストラックである「In This Day And Age」でもギターでグイグイと押し込んでくるナンバーで、ギタリストとして全く衰えを感じさせないパワフルなプレイを聴かせてくれます。
ジェフ・ベックとキース・リチャーズが参加している「Cognac」ではさすがに2人の天才ギタリストが参加しているだけあって、表現力あふれる力強いギターが実に魅力的ですし、ミック・ジャガーがボーカルではなくハーモニカで参加している「You Did The Crime」ではそのハーモニカの音色をバックに力強い歌声でバラードを歌い上げています。
正直言ってボーカルはちょっと安定感が欠ける部分もあり、寄る年波を感じてしまう部分は否定できません。ただ、ギタープレイはいまなお年齢を感じさせない現役感がありますし、ボーカルにしても声量は十分。アルバム全体を通じて、82歳という年齢を感じさせない若々しさがあります。ここ最近は無難にまとめたようなアルバムが続いていたのですが、今回のアルバムはタイトルからもそうですが、ブルース界を背負って立つという意気込みを感じさせる勢いを取り戻したかのようなアルバムに仕上がっていました。しかし、彼はまだまだ元気に現役を続けそうですね。次の作品もその次の作品も、まだまだ傑作を期待できそうです。
評価:★★★★★
Buddy Guy 過去の作品
LIVING PROOF
Live at Legends
RHYTHM&BLUES
ほかに聴いたアルバム
HEAVEN&EARTH/Kamasi Washington
今をときめくケンドリック・ラマーやサンダーキャットの作品でも話題となったアメリカのジャズ・サックス奏者、カマシ・ワシントン。「新世代ジャズの象徴」みたいな紹介のされ方をしていますので、どちらかというとエレクトロサウンドなどを入れて、「クラブ系」の色合いが強いサウンド・・・と予想して聴いたのですが、サウンド的にはAORやフュージョンなどの色合いが強い感じ。哀愁感を帯びたメロディーもアルバムに終始流れており、むしろオーソドックスなフュージョン系ジャズという印象を強く受けました。ちょっと期待していた音とは違った感じでしたが・・・これはこれで2枚組のフルボリュームな内容を楽しめた作品でした。
評価:★★★★
永井“ホトケ"隆のブルースパワー・ラジオ・アワー ~10th アニバーサリー
以前にも紹介しました日本を代表するブルースミュージシャン永井"ホトケ"隆がパーソナリティーとなってコミュニティーFMを中心に放送している日本唯一のブルースのラジオ番組「ブルースパワー」。3年前に7周年を記念したコンピレーションアルバムがリリースされましたが、本作はその第2弾。タイトル通り、番組は見事10周年を迎え、それを記念して本作がリリースされました。
コンピレーションのスタイルとしては前作と同様。BUDDY GUYやLIGHTNIN' HOPKINS、B.B.KINGやMAGIC SAMなどブルースのレジェンドたちの曲を集め、その曲の合間にラジオ番組よろしく永井"ホトケ"隆による曲紹介が入るスタイル。まさにブルースの入門盤としてうってつけな1枚で、ブルースに興味があるけどどこから入ったらいいかわからない・・・という方に是非ともおすすめしたいコンピになっています。
ただ、前作同様、なぜかロバート・ジョンソンとマディー・ウォーターズは未収録。ここらへん、権利の関係なのかなぁ。ちょっと残念な感じも。まあ、それを差し引いても文句なしに素晴らしいコンピレーションなのは間違いありません。入門盤としてはもちろんですが、ブルースをいろいろと聴いている方にも、永井"ホトケ"隆のブルースにかける思いを曲の合間に聴け、ブルースの魅力がより強く感じることが出来る魅力的なコンピになっていました。
評価:★★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2018年」カテゴリの記事
- 恒例のブルースカレンダー(2018.12.29)
- 大物然としたステージセットだけども(2018.12.28)
- オリジナルメンバー3人が顔をそろえる(2018.12.25)
- まさかの第2弾(2018.12.21)
- ディスコブームそのままに(2018.12.17)
コメント