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2018年8月

2018年8月31日 (金)

「ソロ」としての作品を収録

Title:音道
Musician:Chage

今回紹介するのはご存じCHAGE&ASKAのChageによるソロベストアルバム。CHAGE&ASKAといえば、2009年より無期限の活動休止状態になっていました。その後、2013年には一度活動再開がアナウンスされたものの、ご承知の通り2014年にASKAが覚せい剤保持で逮捕。メディア報道によれば、覚せい剤の使用を止めようとしたCHAGEと仲に亀裂が入ったようで、ASKAはソロでの活動を再開していますが、現状、CHAGE&ASKAとして活動再開の目途は経っていません。

個人的にどんな犯罪であろうと罪を償えばミュージシャンがどのように活動を再開しても問題ないと思っているのですが、ただASKAの活動再開前後の言動を見ても覚せい剤所持の件について真摯に反省しているとは思えず、そんな中での活動再開には疑問を思っていました。

そして今回リリースされたアルバムは、Chageのソロデビュー20周年を記念してリリースされたベストアルバム。このベスト盤を聴いてみたのは、率直なところ、そんな現状に対してのChageに対する同情心がまず半分ほどありました。ただ一方では一般的にCHAGE&ASKAに関するChageの印象といえばASKAに比べると・・・という印象が強い一方で、チャゲアスのファンの中ではChageの評価が非常に高いという話も聴いており、そういうこともあって今回、Chageのベスト盤に興味を持ち、このアルバムを聴いてみました。

Chageはチャゲアスの曲の中でも多くの曲を提供しているのですが、今回のアルバムはチャゲアスとしての曲は2曲をセルフカバーしているのみ。また80年代から90年代にかけて彼が中心となって活動していたバンド、MULTI MAXの楽曲は含まれていません。そういう意味で純然あるソロミュージシャンChageとしてのベストアルバムになっています。

そういうこともあって20周年のベスト盤といってもほとんどがチャゲアス活動休止後にリリースされた曲で、チャゲアスの曲やMULTI MAXの曲でも名曲の多い中、ちょっと物足りなさを感じないでもありませんでした。ただ、もっとも今回のアルバムに収録されている曲に関しては全体的に完成度が高く、インパクトも十分。チャゲアスのヒット曲というとASKAの曲がメインなのですが、Chageも間違いなくシンガーソングライターとしての実力を持っていることを実感できます。

ASKAの曲と比べると、率直に言ってしまうとChageはボーカリストとしても歌い方にさほど癖もありませんし、「華」という要素は薄いように感じます。それがチャゲアスのシングル曲の多くをASKAが担当している要因かもしれません。ただ一方、ASKAの曲が彼の特徴あるボーカルに引っ張られるような形になるのが多い反面、彼はボーカリストとしての癖がASKAに比べると薄いだけに曲のバリエーションは広いように感じます。今回のベスト盤でも「Viva!Happy Birthday!」は本格的にファンクの要素を取り入れていますし、カバー曲の「遠くへ行きたい」はラテン風に仕上げていますし、「GO!GO!GO!」はロック調の曲に仕上げています。全体的にメロディーの癖としてはASKAよりも歌謡曲的な要素を強く感じるのですが、楽曲の自由度については強く感じさせるベスト盤になっていました。

ちなみに今回、1曲目はチャゲアスの「終章(エピローグ)」のセルフカバーを収録。これはチャゲアス時代から知っているのですが、歌詞、メロディー含めて絶品の名曲。これだけで彼の実力を感じ取れます。また1984年にリリースされ大ヒットを記録した「ふたりの愛ランド」もしっかりとオリジナルで収録されているのもうれしいところです。

またラストはチャゲアスの「愛すべきばかちんたちへ」のセルフカバーを収録しているのですが、こちらはASKAとの共作曲。この曲をあえて収録している点、彼のASKAに対する思いを感じることが出来ます・・・。

今回のベスト盤を聴いて、ASKAの影に隠れがちですが、彼も間違いなく実力あるミュージシャンだと実感したベスト盤。これを機に、是非。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

なつめきサマーEP/the peggies

3ピースガールズロックバンドによる配信限定の4曲入りミニアルバム。かわいらしい雰囲気の軽快なギターロックが並んでいて、良くも悪くも「女の子バンド」らしい曲が並んでいます。タイトル通り、いかにも夏向きの爽快なサマーソングが並んでいますが、正直、これといったインパクトはちょっと薄い印象も。まだまだこれから、といった感じでしょうか。

評価:★★★★

the peggies 過去の作品
super boy! super girl!!

【Ko-Ou-Doku-Mai】/KEMURI

前作から11ヵ月という短いスパンでのリリースとなったスカパンクバンドKEMURIのニューアルバム。基本的にはいつものスカパンク路線で「大いなるマンネリ」といった感じなのはいつも通り。毎度の通り、ライブでは盛り上がりそうな曲ばかりで、安心して聴けるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

KEMURI 過去の作品
ALIVE Live Tracks from The Last Tour "our PMA 1995-2007"
RAMPANT
SKA BRAVO
F
FREEDOMOSH

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2018年8月30日 (木)

お盆明けで新譜は多め

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

先週は集計対象週がお盆期間中であったため新譜の数は少な目だったのですが、今週は一転、ベスト10のうち7枚が新譜という新譜ラッシュとなりました。

そんな中、1位を獲得したのがジャニーズ系。Hey!Say!JUMP「SENSE or LOVE」が1位獲得です。初動売上20万9千枚。直近作はベスト盤「Hey!Say!JUMP 2007-2017 I/O」でこちらの29万7千枚(1位)からは大幅ダウン。また直近のオリジナルアルバム「DEAR」の25万7千枚(1位)からもダウンしています。

2位はまだまだ強い!サザンオールスターズ「海のOh,Yeah!!」が2週連続2位をキープ。売上枚数は5万4千枚から3万2千枚とダウンしていますが、まだまだロングヒットが続きそうです。ただし、先週までベスト10入りしていた「海のYeah!!」は残念ながら今週24位までランクダウンしています。

3位には倖田來未「DNA」がランクイン。前作「AND」からわずか6ヶ月のスパンとなる新作で、その前作の対となるアルバムだそうです。初動売上は1万5千枚。直近作はリミックスアルバム「Koda Kumi Driving Hit's 8」で、こちらの2千枚(40位)からはもちろん大幅に上昇。オリジナルアルバムの前作「AND」の1万4千枚(6位)から微増となっています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位には河野伸「テレビ朝日系土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ』オリジナル・サウンドトラック」がランクイン。今年4月から6月まで放送され話題となったドラマ「おっさんずラブ」のサントラ盤。その話題を反映するかのように初動売上1万3千枚を記録して見事ベスト10入りです。

6位にはKAmiYU「Happy-Go-Lucky」がランクイン。男性声優神谷浩史と入野自由で結成されたユニットによる3枚目のアルバム。同作がシングルアルバム通じて初のベスト10ヒットとなります。初動売上は9千枚。前作「Road to Wonderland」(13位)から横バイ。

8位初登場はヴィジュアル系ロックバンドシドのミニアルバム「いちばん好きな場所」。結成15周年を記念するアルバムだそうです。初動売上は7千枚。直近のオリジナルアルバム「NOMAD」の1万6千枚より大きくダウン。

9位は森山直太朗「822」が初登場。2016年にベスト盤「大傑作撰」が4位にランクインしていますが、オリジナルアルバムでのベスト10入りは2004年の「新たなる香辛料を求めて」以来、なんと14年、9作ぶりとなります。それだけ派手なヒットはなかったものの、根強い固定ファンに支えられていたということでしょうか。初動売上7千枚。直近のベスト盤「大傑作撰」の2万1千枚(4位)からはダウンしていますが、オリジナルアルバムとしての前作「嗚呼」の5千枚(13位)からはアップ。ヒットしたベスト盤リリースによりかつてのファンが戻ってきたのでしょうか。

最後10位には沖縄出身のロックバンドHY「STORY~HY BEST~」がランクイン。以前所属していたavexから本人たちが関与しない状態でリリースされたベスト盤のリリースはあったものの、正式なベスト盤は本作が初。また、今回あらためてセルフカバーを行い、彼女たちの代表曲を収録しています。初動売上は6千枚。直近のオリジナルアルバム「CHANCE」の4千枚(19位)からアップしています・・・が、かつてのHYの人気を考えると、初の正式ベストとしてはちょっと寂しい数値のような・・・。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に。

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2018年8月29日 (水)

やはり圧倒的な強さで

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はAKB系のいわゆる「坂道」グループが上位に2曲ランクインしています。

今週1位は星野源「アイデア」が獲得。NHK朝の連続テレビ小説「半分、青い。」主題歌。Hot100では「恋」の大ヒット以来、出す曲出す曲大ヒット&ロングヒットが続いていますが、今回も難なく1位にランクインしてきました。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)、ラジオオンエア数、Twitterつぶやき数でいずれも1位獲得。You Tube再生回数のみ惜しくも2位に留まっています。

星野源らしい爽快なポップチューンに仕上がっている本作は、なんとCDでの販売はなく配信のみでのリリース。大ヒットした「恋」もCDの売上よりも配信での売上がメインだっただけに、もうシングルをCDでリリースする意味が彼にとっては乏しいのかもしれません。配信のみに関わらずチャート1位獲得はピコ太郎の「PPAP」以来だそうで、その人気のほどを見せつける結果となっています。オリコンでも週間デジタルシングルチャートで見事1位を獲得しています。

2位にはback number「大不正解」が先週の55位からCDリリースにあわせて大きくランクアップ。映画「銀魂2 掟は破るためにこそある」主題歌。実売数2位、ラジオオンエア数3位、PCによるCD読取数では1位を獲得。Twitterつぶやき数35位、You Tube再生回数は23位と伸びませんでしたが、星野源がいなければ十分1位を狙えました。オリコンでは初動売上3万3千枚で3位初登場。前作「瞬き」の4万枚(5位)からダウンしています。

3位はロングヒットを続けるDA PUMP「U.S.A.」がランクイン。先週の4位からランクアップし、2週ぶりにベスト3返り咲きです。実売数6位、ラジオオンエア数86位、PCによるCD読取数5位、Twitterつぶやき数3位にランクインしている一方、You Tubeでは星野源を上回り今週も1位をキープ。まだまだ強さを見せつけました。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にはKinki Kids堂本剛のソロプロジェクトENDRECHERI「one more purple funk...-硬命 katana-」がランクイン。dTVオリジナルドラマ「銀魂2 -世にも奇妙な銀魂ちゃん-」主題歌。実売数3位、ラジオオンエア数36位、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数2位を記録。オリコンでは初動売上6万9千枚で1位獲得。堂本剛のシングルでのランクインは2013年に堂本剛名義でリリースした「瞬き」以来で、同作の初動9万5千枚(1位)よりもダウンしています。ちなみに今週の2位、back numberも同じ「銀魂」タイアップ曲。で、前作がどちらも「瞬き」・・・完全に偶然なんですけどね(^^;;

9位初登場は韓国の男性アイドルグループSNUPER「夏のMagic」。実売数7位、Twitterつぶやき数49位、ほかすべてランク圏外という結果になっています。K-POPというよりも典型的な爽やかなJ-POP寄りのアイドルポップ。オリコンでは初動2万枚で8位初登場。前作「Stand by me」の3万3千枚(3位)よりダウンしています。

今週の初登場曲は以上。次に今週はベスト10返り咲きが1曲ありました。それが10位にランクインした韓国の女性アイドルグループBLACKPINK「DDU-DU DDU-DU」。実売数10位、ラジオオンエア数50位、PCによるCD読取数26位、Twitterつぶやき数31位、You Tube再生回数12位。もともと配信での先行リリースで7月2日付チャートで7位を獲得しましたが、このたびCDでもリリース。先週の43位から大きく順位をあげ、9週ぶりにベスト10に返り咲いています。

また今週のロングヒット曲ですが、米津玄師「Lemon」は5位から8位にダウン。実売数12位とベスト10落ち。You Tube再生回数も3位と残念ながら星野源の後塵を拝む結果となりました。また先週久々にベスト10に返り咲いたDAOKO×米津玄師「打上花火」は残念ながら今週18位にダウン。ただYou Tube再生回数はまだ8位とベスト10をキープしており、まだまだ根強い人気は続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年8月28日 (火)

海と花火と音楽と

盆踊りだョ!全員集合

会場 内海海水浴場砂浜 日時 2018年8月17日(金)

お盆休みの1日。午後から暇となったので久しぶりに夏フェスらしきイベントに足を運んできました。「盆踊りだョ!全員集合」と題されたイベントは、地元名古屋のテレビ局メ~テレが主催し、最近では愛知ではすっかりおなじみとなったイベント、「森、道、広場」の実行委員会が強力したイベント。このイベントは8月17日、18日の2日間開催だったのですが、17日はちょうど日程的にもピッタリと合い、なかなかよさげなミュージシャンが参加していたため、足を運んできました。

Utsumi1

もっとも会場といってもこのように海水浴場の真ん中に櫓のようなステージが組んであるだけの会場。

Utsumi2_3

こんな感じで、特にこのイベントステージのために囲いがあったり、屋台が出ていたりするわけではありませんでした。

Utsumi3

ステージのすぐ横には気持ちよい砂浜と海が広がっています。

もっとも海水浴場なだけに、まわりに食べ物やアルコールを含めて飲み物を売っているところはたくさんあり、この日もビールや焼きそば、かき氷を片手にライブ参戦。ライブの合間には砂浜を歩いて海に浸って来たりもして、とても気持ち良く過ごしました。もっとも海水浴場なだけにいわゆる「パリピ」っぽい人が多くて、ちょっとおじさん、居心地悪い部分もありましたが(^^;;

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2018年8月27日 (月)

三浦大知しか歌えない傑作

Title:球体
Musician:三浦大知

もともとFolder5としてのデビュー当初からボーカリストとしての力量に高い評価を受けてきた三浦大知。ここ最近、ようやくその評価がお茶の間レベルにも浸透していき、アルバムも大ヒットを記録するようになりました。

もっともそんな中、ヒットしたここ最近のアルバムは正直言って内容的にはいまひとつ。流行りのEDMのサウンドをただ取り入れただけの平凡なポップスが目立ち、残念ながら三浦大知の実力を全く生かしていないと思われるようなアルバムが続いていました。

しかし、そんな中、ベスト盤を挟んでリリースされた最新アルバムがすごいことになっていました。今回のアルバム、タイトルからして漢字2文字といままでの彼のアルバムタイトルと大きく異なりますが、楽曲のタイトルもすべて日本語。また楽曲の中にも英語はつかわれておらず、しっかりと日本語でその言葉を紡ぐアルバムとなっています。

また今回プロデューサーとして安室奈美恵へのプロデュースワークなどでも評判のNao'ymtを全曲で起用。結果としてアルバム全体として統一感のある作品に仕上がっています。

楽曲はまずアンビエント色の強い「序詞」からスタート。いつものアルバムとは全く異なるタイプの曲からのスタートにまず驚かされます。続く「円環」はEDM風のナンバーとなっており、比較的いままでの三浦大知のイメージにもマッチする作風になっているのですが、「閾」はなんとドリーミーなエレクトロインストチューン。インターリュード的な立ち位置とはいえ、かなり挑戦的な作風に驚かされます。

アルバムの音楽性についていえば、ネオソウルや最近のアンビエントR&B、あるいはEDMというジャンルを取り込んだ作風となっており、最近のシーンの流れにマッチした作風と言えるでしょう。また彼のハイトーンボイスを生かした楽曲が多く、しっかりと彼のボーカリストとしての実力を反映されたアルバムになっています。ただその上で本作の大きな特徴となっているのは「和」の要素を多く取り入れた日本だからこそ作りえた日本流のR&Bに仕上がっていたという点でした。

例えば「淡水魚」。川の中でゆれるようなサウンドが特徴的ですが、幻想的なその音色はどこか和風。満たされない現実にがまんしている現状を淡水魚に例えた歌詞も詩的でどこか日本的なものを感じます。「飛行船」も伸びやかでどこか哀愁感あるメロディーに和風な空気を感じますし、「綴化」も琴を模したようなストリングスの音色に憂いを帯びたメロディーが和風なものを感じます。

和風といっても単純に和楽器を取り入れたり、民謡的なメロディーを取り入れているわけではありません。ただ英語をつかわない日本語のみの歌詞や、日本人の琴線に触れるようなメロディーラインやサウンドで「和」を実に見事に表現しており、これにまた三浦大知の歌声がピッタリとマッチしています。

またアルバム全体としても彼の歌をしっかりと聴かせるような曲が多く、特に終盤ではその傾向が強くみられます。「世界」で明るいサウンドの中、ゆっくりと希望を感じる歌を聴かせてくれたかと思えば、続く「朝が来るのではなく、夜が明けるだけ」もピアノで聴かせるナンバーなのですが、過去を悔いるような悲しい歌詞を静かに悲しく歌うナンバー。三浦大知のボーカリストとしての表現力が光ります。

そしてラストの「おかえり」は新しい始まりを感じさせる希望に満ちたストリングスとピアノの音色が明るいインストナンバー。ラストをあえてインストで締めくくるというのもまた、このアルバムのこだわりでしょうか。ただ非常に清らかな気持ちになるアルバムは幕を閉じます。

このように今時のR&Bシーンの音をしっかりと取り入れつつ、三浦大知だからこそ歌える楽曲のみがおさめられている傑作アルバムに仕上がっていました。全体的にミディアムテンポの聴かせるナンバーが多く、派手な作風はありませんが、聴けば聴くほどその魅力が伝わってくる奥行のあるアルバムになっていたと思います。正直、ここまでの傑作アルバムをつくってくるとは驚きの限り。彼にとっても間違いなく最高傑作ですし、また今年の年間ベストレベルのアルバムだと思います。このアルバムで確実に壁をひとつ乗り越えてきた彼。これからの活躍が楽しみです。

評価:★★★★★

三浦大知 過去の作品
D.M.
The Entertainer
FEVER
HIT
BEST


ほかに聴いたアルバム

ツンxデレ/神聖かまってちゃん

すぐ解散しそうな危うさを抱えつつも、なんとついに結成10周年を迎えてしまった神聖かまってちゃんのニューアルバム。確かにここ最近ではデビュー当初のようなエキセントリックな雰囲気は少々薄れ、バンドとして話題に上ることも少なくなってしまった感じもします。ただ楽曲的にはいい意味で安定感を増してきた感じ。前作「幼さを入院させて」でも歌詞とメロディーラインをしっかりと前に押し出した作品になっていましたが、今回のアルバムもインパクトあるメロディーラインと歌詞の世界をしっかりと前に押し出して、いい意味で「神聖かまってちゃん」として求められることを体現化したアルバムになっていました。特に今回のアルバムは夏をテーマとして郷愁感ある作風の曲が多く、「ラムネボーイ」「26才の夏休み」のようなどこか郷愁感ある風景を描きつつ、その中でどこか孤独を抱えた主人公の心境を描いた歌詞が絶品。歌詞の面でもメロディーラインの面でもさらに深化を感じさせるアルバムになっています。

評価:★★★★★

神聖かまってちゃん 過去の作品
友だちを殺してまで。
つまんね
みんな死ね

8月32日へ
楽しいね
英雄syndrome
ベストかまってちゃん
夏.インストール
幼さを入院させて

永遠の果てに~セルフカヴァー・ベストI~/徳永英明

徳永英明のセルフカヴァーアルバム。彼の過去のヒット曲「最後の言い訳」「壊れかけのRadio」などがリアレンジされセルフカバーされています。リアレンジされた結果、よりジャジーになったりアコースティックな色合いが濃くなったりした作品も多くなっていますが、ただ全体としては原曲のイメージを大きく変えたカバーはないため、ベスト盤的な感覚でも楽しめるアルバム。なによりも60歳近くなった彼が、20代、30代の頃の曲をカバーしているわけですが、高音域にほとんど衰えがない点に驚かされます。

もっとも懐古的な側面が強く出ているアルバムである点は否定できず、良くも悪くも昔のファンに向けてリリースされた保守的なアルバムといった感じになっています。まあ、原曲に沿ったアレンジといい、基本的に昔のファンも安心して聴けるアルバムだとは思うのですが、あくまでも後ろ向きな企画のような印象も。サブタイトルどおり、2作目3作目もリリースされそうですが・・・。

評価:★★★★

徳永英明 過去の作品
SINGLES BEST
SINGLES B-Side BEST

WE ALL
VOCALIST4
VOCALIST&BALLADE BEST
VOCALIST VINTAGE
STATEMENT
VOCALIST 6
ALL TIME BEST Presence
Concert Tour 2015 VOCALIST&SONGS 3 FINAL at ORIX THEATER
ALL TIME BEST VOCALIST
BATON

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2018年8月26日 (日)

ポップな歌の後ろに独特のグルーヴ感が

Title:THE POOL
Musician:Jazzanova

「ジャズ」と「ボサノヴァ」を融合させた、ある意味かなりストレートなバンド名が印象に残るJazzanova。1995年にドイツ・ベルリンで5名のDJ、プロデューサーにより結成されたバンドで、ジャズをキーワードにエレクトロサウンドと融合させたクラブ・ミュージックが大きな話題に。特に2002年にリリースされたデビューアルバム「In Between」は大きな話題となりました。

そんな彼らは2008年にアルバム「Of All The Things」をリリースした。しかしその後は2012年にはライブアルバムをリリースしたり、シングルリリースなどで継続的な活動はあったもののアルバムのリリースはなし。しかしそんな彼らはなんと10年ぶり、待望となるニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムは全12曲、それぞれ別々のミュージシャンがゲストとして参加している点が大きな特徴的。アルバムを通じて方向性としてはジャジーな雰囲気の漂う現代にアップデートされたJazzanova流ソウルミュージックという作風に仕上がっています。しかし、様々なゲストの参加により、Jazzanova流ソウルといってもその非常に広い音楽性の幅に、彼らの実力を感じさせてくれるアルバムとなっていました。

例えば2曲目「Rain Makes The River」ではレイチェル・サーマンニがゲストボーカルとして参加。マイケル・キワヌーカ、エルヴィス・コステロ、ロン・セクスミスらが絶賛した今、注目のシンガーのようで、その透明感あふれるボーカルが印象的。その「歌声」にまずは魅了される楽曲となっています。ベルリンを拠点として活動しているシンガーソングライター、ノア・スリーが参加した「Sincere」は軽快なディスコチューンに。80年代的な匂いもあるナンバーで、ポップで聴きやすいナンバーに仕上げています。

イギリス出身のジャズシンガー、ジェイミー・カラムが参加した「Let's Live Well」は哀愁感たっぷりに歌い上げるバラードナンバーが胸をうちますし、エドワード・バンゼットが参加した「I'm Still Here」もフォーキーな雰囲気の漂うメロディーが印象的。ただ、この曲はフォーキーなサウンドの中にスペーシーなエレクトロサウンドを紛れ込ませており、独特なサウンド構成が耳を惹きます。

そんな感じで全編、歌モノのナンバーが多い作品になっており、いい意味で非常に聴きやすいアルバムに仕上がっていました。歌モノもポップなナンバーが多く、ポップのアルバムとして聴く限り、初心者リスナーをこばみようなマニアックさは皆無。いい意味で幅広い層が聴きやすいアルバムに仕上がっていたと思います。

とはいえ、もちろん単純に歌を聴かせるだけのポップアルバムになった訳ではありません。例えばHIP HOPを取り入れた「No.9」ではミニマル的なサウンドでグルーヴィーなサウンドを心地よく聴かせてくれますし、「Heatwave」でも非常にカッコいいファンキーなサウンドを聴かせてくれます。全体的にソウルミュージックのテイストの強い独特のグルーヴ感が心地よく、サウンド面でも1曲1曲、音の感触が異なっており、バリエーション豊かなサウンド構成が楽しめるアルバムに仕上がっていました。

10年ぶり久々となるアルバムでしたが、その実力に全く衰えはなく、大満足な傑作アルバム。いわゆる「クラブ系」にカテゴライズされる彼らですが、ソウルミュージックが好きなら間違いなく気に入りそうなアルバムですし、ポップな歌モノも多いだけに幅広い層が楽しめそうなアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Essentials/Jack Johnson

日本でも高い人気を誇るサーフ・ミュージックの第一人者の日本独自企画によるベストアルバム。アコースティックなサウンドをベースとしたオーガニックな雰囲気漂うポップソングは刺激的か、と問われると正直な話、物足りなさを感じてしまうのですが、グッドミュージックという意味では文句なしの名曲揃い。全18曲というボリューム感、ほとんどがアコギで聴かせるという似たタイプの曲ばかり、にも関わらず飽きることなく聴けてしまうあたりがやはり彼の実力なのでしょう。

評価:★★★★★

Jack Johnson 過去の作品
SLEEP THROUGH THE STATIC
To The Sea
All The Light Above It Too

beerbongs&bentleys/Post Malone

おそらく今、アメリカで最も人気のあるミュージシャンと言えるのが白人ラッパー、Post Malone。最新アルバムである本作はビルボードで1位を獲得したのは当然のこと、1週間あたりのアルバム・ストリーミング記録を更新。さらにHot100のベスト20に9曲を同時にランクインさせ、ビートルズとJ.コールが保持していた複数曲のベスト20同時ランクイン数の記録を更新しています。先日のフジロックにも来日を果たし、日本においても注目度がかなり増しているミュージシャンになっています。

そんな彼のアルバムはジャンル的にはHIP HOP。サウンドは今流行りのトラップミュージックの要素を盛り込んだアルバムになっています。が、基本的にラップというよりも終始、ポップなメロディーが流れている「歌モノ」のアルバム。このメロディーラインもしっかりとフックが効いており、インパクト十分。そういう意味では良くも悪くも売れそうなアルバムになっていたと思います。

正直言うと、今の大人気に関しては聴いていて、そこまでか・・・と思う部分はなきにしもあらずなのですが、確かに最新のサウンドにわかりやすいメロディーという構成は売れそうといえば売れそうなタイプな感じも。HIP HOPリスナー層にもアピールできそうな楽曲なだけに、日本でも今後もっと人気が高まってくるかも。

評価:★★★★

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2018年8月25日 (土)

スリーピースバンドのカッコよさを実感

Title:No New World
Musician:MASS OF THE FERMENTING DREGS

もともとは女性3人組のガールズバンドとして活動していたものの、デビュー直前にメンバーの1人が脱退。その後もその力強いバンドサウンドに大きな注目を集めていたものの、2010年にはオリジナルメンバーのギタリスト石本知恵美が、さらにその後はメンバー脱退後に新加入していたドラマー吉野功が相次いで脱退し、2012年に残念ながらその活動を休止していたマスドレことMASS OF THE FERMENTING DREGS。しかしその後、2015年にはボーカルの宮本菜津子を中心に、ドラムに吉野功が復帰。さらに新メンバーとしてQomolangma Tomatoの小倉直也が参加し、ライブを中心に活動を再開していました。

そしてこのたび、待望のニューアルバムがリリース。実に8年ぶりとなるニューアルバムですが、8年というブランクを全く感じさせない勢いある傑作に仕上がっていました。まずは1曲目「New Order」からしてめちゃくちゃカッコいい!まずは分厚いギターサウンドが耳を惹きます。スリーピースバンドらしくギター、ドラム、ベースのみのシンプルなサウンドながらも迫力があり、バンドとしての底力をまずは感じさせるのですが、爽快感あるメロディーラインに、新たな一歩への決意を感じさせるような歌詞も強いインパクトになっています。

続く「あさひなぐ」もダイナミックなバンドサウンドが耳を惹きますし、さらに「だったらいいのにな」はメタリックなヘヴィーなギターリフからスタート。ズシリと重いバンドサウンドがとにかくカッコよく、バンドの実力を感じさせるナンバー。そしてそれに続く「YAH YAH YAH」は(某チャゲアスのナンバーじゃないよ)は1分に満たないインストナンバーなのですが、メンバー3人の息の合った迫力ある演奏が魅力的なナンバー。公式サイトでチャットモンチー橋本絵莉子が「ライブで10回は聴きたい」とコメントを寄せていましたが、そのコメントも納得。ライブで聴いたら気持ちいいだろうなぁ。

後半のタイトルチューン「No New World」はドリーミーなシンセが入りシンセちっくなミディアムテンポのナンバー。いままでとはちょっとタイプの異なるナンバーでちょっと気分転換となるのですが、続く「Hu Hu Hu」はポップなメロディーラインのギターロックながらも、こちらも重厚感あるバンドサウンドがズシリと響いてくるナンバーに。ノイジーなギターで聴かせるミディアムテンポのナンバー「Sugar」を挟み、ラストナンバー「スローモーションリプレイ」もインパクトあるポップなメロディーラインながらも、スリーピースの良さを存分に生かしたようなヘヴィーなバンドサウンドが迫力満点。ポップなメロディーと重厚感あるバンドサウンドの組み合わせがとにかく気持ちよい楽曲に仕上がっていました。

そんな訳でわずか8曲入りのナンバーながらもどの曲もマスドレの魅力がつまった傑作アルバムになっていました。また今回、いままでの作品以上にバンドサウンドを前面に押し出したのも大きな特徴。特に前作「ゼロコンマ、色とりどりの世界」ではポップなメロディーラインを前に押し出していたのですが、今回のアルバムはラストの「スローモーションリプレイ」などポップなメロディーラインを聴かせる曲もあるものの、基本的にポップなテイストは後ろに下がっています。

ただ、そんな点が気にならなくなるほどへヴィーなバンドサウンドがとにかくカッコいいアルバムに。この3人によるはじめてのアルバムなのですが、そんな事実が全く信じられないほど息の合ったプレイを聴かせてくれています。再結成からアルバムリリースまで2年以上の時間が経過したのですが、これだけ息の合ったプレイを聴かせるにはそれだけの時間が必要だった、ということでしょうか。これはライブもまた見てみたいなぁ。とにかく心からスリーピースバンドのカッコよさを実感できた傑作でした。

評価:★★★★★

MASS OF THE FERMENTING DREGS 過去の作品
MASS OF THE FERMENTING DREGS
ワールドイズユアーズ
ゼロコンマ、色とりどりの世界


ほかに聴いたアルバム

収穫祭!/町あかり&池尻ジャンクション

町あかりの最新アルバムは、カシオトーンを駆使したチープなサウンドが特徴的だった前作から一転、彼女のライブでのバックバンド、池尻ジャンクションをバックに従え、「町あかり&池尻ジャンクション」名義となるアルバム。そのためいままでのアルバムの中では最も分厚いサウンドを聴かせるアルバムになっており、良くも悪くもサウンドがチープという印象があった彼女のイメージを一新する内容となっています。

ただ正直言うと、どこか「B級」的な香りが漂う彼女の楽曲は分厚いバンドサウンドよりも前作のカシオトーンのようなチープなサウンドの方がなんとなく似合っているような印象も。今回は他のミュージシャンなどへの提供曲のセルフカバーがメインとなっており、そういう意味でも町あかりの持ち味も十分に発揮されていないようにも感じました。とはいえ彼女らしい昭和歌謡曲の雰囲気は十分アルバム全体に流れており、そういう意味では町あかりの魅力もしっかり感じされる作品にはなっているのも事実なのですが。

評価:★★★★

町あかり 過去の作品
ア、町あかり
あかりの恩返し
EXPO町あかり

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2018年8月24日 (金)

酩酊感あるサウンドが心地よい

Title:Mars Ice House II
Musician:ゆるふわギャング

「ゆるふわ」という言葉と「ギャング」という言葉の真逆のイメージ同士の言葉の組み合わせがユニークなHIP HOPグループ、ゆるふわギャング。前作「Mars Ice House」が話題となり同作ではじめて彼らの作品を聴きましたが、それに続く新作が本作。タイトル通り、前作に続く続編的なアルバムなのですが、前作とはまた異なる進化も感じさせるアルバムになっていました。

サウンド的には最近、話題となっている典型的なトラップミュージック。スネアの「チャチャチャ」という高音のビートが続き、そこにダークなエレクトロサウンドが重なるようなスタイル。Ryugo IshidaとSophieeという男女2人のラッパーによる実生活でも恋人同士という2人の息の合ったラップがそこに乗るスタイル。ラップは基本的にダウナーな雰囲気で、サウンドを含めて楽曲全体に流れる酩酊感が実に気持ちよさを感じさせる楽曲が続きます。

ここらへんは前作と同じ方向性なのですが、今回のアルバム、前作以上にサウンド面のバラエティーが増し、力の入った作品のように感じます。例えば「Palm Tree」ではトラップミュージックのリズムの中に終始スペーシーなサウンドが流れて心地よい酩酊感を楽しめますし、「ICY(Peppermint Acid)」ではラップにもエフェクトをかけまくり、楽曲全体としてサイケなトリップ感が楽しめるサウンドに仕上げています。

後半も「Antwood」ではノイジーなサウンドが破壊的な空気感を醸し出していますし、「Coolermachine」ではどこか中国風なシンセの音がユニーク。どの曲もそれぞれ個性的なサウンドを聴かせており、一言でトラップミュージックといっても楽曲の方向性は様々。最後まで非常に刺激的なサウンドを楽しめるアルバムに仕上がっていました。

一方で前作の大きな特徴だった北関東の郊外に住むヤンキー的な若者の日常を描いたようなリリックは今回は後退。基本的に前作と同様の方向性とはいえ、前作のような耳に残るようなインパクトあるフレーズはほとんどなく、その点はちょっと残念に感じました。ただ、個人的には前作では共感できなような歌詞も少なくなかったため、アルバム全体の印象としては今回インパクトあるフレーズがなかったという点は必ずしもマイナスには働いていないのですが・・・。

そんな訳で、終始酩酊感あふれるサウンドが非常に心地よい傑作アルバム。個人的にはそのサウンドにすっかりはまってしまいました。「ゆるふわギャング」というミュージシャン名ですが、ギャングスタ的な要素は本作ではほとんどありません。一方、刺激的なサウンドで「ゆるふわ」という感じでもないのですが・・・。独特な世界観が楽しめる気持ちの良いアルバムでした。

評価:★★★★★

ゆるふわギャング 過去の作品
Marc Ice House

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2018年8月23日 (木)

お盆最中のチャート

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週の集計対象週はお盆と重なり新譜は少な目。そのため、ロングヒット盤が目立ちました。

まず、まだロングヒット・・・までは行っていないのですが、ここ数週、大ヒットを記録しているサザンオールスターズのベスト盤。「海のOh,Yeah!!」は今週、ワンランクダウンして2位を記録。売上枚数は7万9千枚から5万4千枚にダウンしていますが、まだまだ強さを見せつけています。また、このアルバムと同時にランクインしてきた20年前のベスト盤「海のYeah!!」は6位から9位にダウン、売上枚数も6千枚から5千枚にダウンしているもののベスト10はキープ。3週連続サザンのアルバムが2枚同時ランクインとなっています。

7位には宇多田ヒカル「初恋」がランクイン。これで8週目のベスト10ランクインとなりました。売上枚数は先週の6千6百枚から6千3百枚と微減に留まっており、まだまだロングヒットが続きそう。また安室奈美恵のベスト盤「Finally」はなんと今週、9位から8位にランクアップ。売上枚数も5千枚から5千1百枚にアップしており、こちらも驚くほどの人気をキープしています。

さらに今週10位にはDJ和「ラブとポップ ~好きだった人を思い出す歌がある~mixed by DJ和」が先週の19位からランクアップし再びベスト10入り。5月14日付チャート以来、15週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。売上枚数も3千枚から4千枚にアップ。驚異的なロングヒットを続けています。

そんな中、1位を獲得したのがPerfume「Future Pop」。約2年4ヶ月ぶりのアルバムで、これでコンピレーションアルバムを含め7作連続の1位獲得となりました。初動売上は7万9千枚。前作「COSMIC EXPLORER」の12万2千枚(1位)からダウン。ここ数作、22万6千枚→16万5千枚→12万2千枚→7万9千枚と右肩下がりの状況が続いています。

3位初登場は浜崎あゆみ「TROUBLE」がランクイン。こちらは5曲入りのミニアルバム。初動売上2万4千枚は直近のオリジナルアルバム「M(A)DE IN JAPAN」の3万枚(2位)からダウン。売上枚数は一時期の人気から考えると見る影もありませんが、ただミニアルバムとしては前作の売上と比較すると健闘した方でしょうか。

5位にはアメリカの女性シンガーソングライターAriana Grande「Sweetener」がランクインしています。初動売上は1万1千枚。直近作は日本独自企画のベスト盤「THE BEST」でこちらの初動2万3千枚(2位)より大きくダウン。またオリジナルアルバムとして前作の「Dangerous Woman」の2万枚(2位)からもダウンしてしまいました。

最後、6位にはFischer's「僕らの色 みんなの色」がランクイン。7人組You Tuberによる初のアルバムだそうです。初動売上9千枚で見事ベスト10入りを果たしました。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年8月22日 (水)

「坂道」グループが1位3位

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はAKB系のいわゆる「坂道」グループが上位に2曲ランクインしています。

まず1位に欅坂46「アンビバレント」が先週の26位からCDリリースにあわせてランクイン。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数で1位を獲得。ただしラジオオンエア数は24位、You Tube再生回数は13位に留まっています。オリコンでは初動売上81万1千枚で1位獲得。前作「ガラスを割れ!」の83万3千枚(1位)よりダウンしています。

また先週1位を獲得した乃木坂46「ジコチューで行こう!」は今週2ランクダウンで3位にランクインしました。

この「坂道」グループに挟まれる形で2位初登場となったのはジャニーズWEST「スタートダッシュ」。テレビ東京系アニメ「キャプテン翼」オープニングテーマ。え?主題歌は「燃えてヒーロー」じゃないの?と思ったら、こちらはきちんとエンディングテーマとして起用されているみたいですね。安心しました。実売数2位、ラジオオンエア数10位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数19位を獲得。オリコンでは初動売上12万9千枚で同じく2位初登場。前作「プリンシパルの君へ」の14万8千枚(2位)よりダウン。ちなみに前作も欅坂46のシングルと同日発売でした。狙っているのか?偶然か?

続いて4位以下の初登場曲です。6位には家入レオ「もし君を許せたら」が先週16位からランクアップしベスト10入り。フジテレビ系ドラマ「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」主題歌。実売数6位、ラジオオンエア数91位、PCによるCD読取数12位を記録。CDリリースは8月1日で、オリコンシングルチャートでは先々週のチャートで最高位16位を記録しているのですが、それから2週かかり、主に配信系の売上が主導となりHot100では初のベスト10ヒットとなりました。

今週は、集計対象週がお盆休みということで初登場は以上3曲のみとなりました。一方、ロングヒット組ではまずDA PUMP「U.S.A.」は今週、残念ながら2位から4位にダウンしています。ただし、You Tube再生回数では変わらず1位をキープ。実売数は4位と上位につけており、まだまだロングヒットが続きそう。オリコンでもデジタルシングルランキングで2位につけており、配信系を中心に高い売上を維持しています。

そしてさらに強いのが米津玄師「Lemon」は4位から5位にランクダウンしたものの、実売数7位、PCによるCD読取数6位、さらにYou Tube再生回数2位とまだまだ上位につけておりロングヒットを続けていますし、今週、なんとDAOKO×米津玄師「打上花火」が先週の15位から10位にランクアップし、ベスト10返り咲き。7月23日付チャート以来5週ぶりのベスト10入りとなりました。この曲、最初にHot100でベスト10入りしたのが、なんと昨年の8月21日付チャート(!)。かれこれ1年間ヒットを続けているわけで、その驚異的な人気に驚かされます。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年8月21日 (火)

バンドのコアな部分が表に出たセルフプロデュース作

Title:High As Hope
Musician:Florence+The Machine

女性ボーカリスト、フローレンス・ウェルチを中心とするロックバンドFlorence+The Machine。デビューアルバム「Lungs」がイギリスのアルバムチャートで1位を記録。その後、3作連続イギリスのアルバムチャートでは1位を獲得するなど本国では絶大な支持を得ています。約3年ぶりとなる本作は残念ながら本国イギリスのチャートでは最高位2位に留まったようですが、アメリカビルボードチャートでは見事2位を獲得。全世界的に高い人気を得ているバンドとなっています。

そんな彼女たちの4枚目となるアルバムは、数多くのプロデューサーを迎えて制作されていたいままでの作品と異なり、フローレンス・ウェルチのセルフプロデュースとなる作品。個人的に彼女たちの作品を聴くのは前々作「CEREMONIALS」以来2作目となるのですが、その前々作は比較的ダイナミックなアレンジ、ちょっとネガティブな表現を使うと仰々しさを感じさせる作風でしたが、今回のアルバムはセルフ・プロデュースとなった影響でしょうか、サウンドは比較的抑え気味で、フローレンスのボーカルを前面に押し出して聴かせるアルバムになっていたように感じます。

例えば1曲目「June」も比較的シンプルなサウンドで力強い彼女のボーカルを聴かせつつのスタート。後半、サウンドは徐々にダイナミックに盛り上がってきますが、まずは彼女のボーカルが印象に残ります。特に中盤以降「Big God」もまずはピアノの音色のみで力強い彼女のボーカルを聴かせるスタートとなっていますし、「Grace」も後半はドラムスやコーラスラインでダイナミックにサウンドは変化していきますが、序盤は静かなピアノをバックに彼女の歌声を聴かせる構成になっています。

楽曲的にはソウル的な要素を加え、伸びやかに聴かせる力強いボーカルが大きな魅力になっています。以前聴いた「CEREMONIALS」ではビョークあたりに近い雰囲気を感じる「魔女系」なんて表現をしました。今回のアルバムもそんな神秘的な雰囲気は楽曲の随所に感じられます。ただ、上にも書いた通り、ちょっと仰々しさを感じるサウンドは今回は控えめ。あくまでもフローレンスの生の歌声に焦点をあてており、そういう意味では彼女のボーカリストとしての本質的な持ち味にスポットがあてられたアルバムになっていたと思います。

終盤の「The End Of Love」「No Choir」もピアノを中心とした静かなサウンドをバックに彼女の歌声を聴かせる楽曲で締めくくり。どちらも以前の彼女たちの楽曲と同様、神秘的なサウンドが流れており、それもまた大きな魅力となっているもののあくまでもサウンド的には控えめ。しっかりと彼女の歌を聴かせる構成となっています。

アルバムも4作目となりバンドとしての人気も確立。セルフプロデュースとなり、いい意味で「神秘的」「魔女系」なんてギミックに頼らず、フローレンスのボーカルと彼女たちのコアな部分のみを前面に押し出して勝負できるだけの自信をつけてきたアルバムと言えるのかもしれません。そして、その自信を裏付けるかのように、彼女のボーカルが実に心に響いてくる傑作アルバムに仕上がっていました。これだけ全世界的に人気を博していながら、日本ではなぜかいまひとつ盛り上がっていないのが不思議になってくるのですが・・・Adeleやビョークあたりが好きなら絶対はまるはず。お勧めです。

評価:★★★★★

Florence+The Machine 過去の作品
CEREMONIALS


ほかに聴いたアルバム

SCORPION/DRAKE

相変わらず高い人気を誇るアメリカのHIP HOPミュージシャンDRAKEの最新作。本作も当たり前のように全米1位を獲得しているほか、1日で最もストリーミングされたアルバムという記録を打ち立てるなど、その本気のほどを見せつけています。

そんな彼のアルバムは全25曲入りでCDでは2枚組というフルボリューム。正直言うと、最初の方は比較的ダークな雰囲気の作風の曲が多く、これまでの彼からすると若干聴きにくいな、という印象を受けたのですが、CDで言うとDisc2からすると歌モノの作品が増えてグッと聴きやすく、ポップな作風の曲が増えてきます。いい意味でDRAKEらしい作品が並んでおり、結果としてフルボリュームのアルバムでも最後まであっという間に聴くことが出来ました。その人気だけではなく楽曲自体でも変わらないDRAKEの実力と魅力を感じることが出来る傑作でした。

評価:★★★★★

DRAKE 過去の作品
Thank Me Later
TAKE CARE
Nothing Was The Same
If You're Reading This It's Too Late
VIEWS
More Life

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2018年8月20日 (月)

cero流ダンスミュージック

Title:POLY LIFE MULTI SOUL
Musician:cero

ここ最近のシティポップを巡るある種の「ブーム」ともいえる人気の中、「ブーム」に留まらない確固たる個性を確立しつつ、シーンを推進しているのが彼ら、cero。前作「Obscure Ride」はなんとオリコンチャートでベスト10入りを記録するなどヒットを記録しましたが、本作はなんと最高位4位を記録。前作同様、決して「わかりやすいポップなアルバム」といった感じではないだけにこの人気には驚かされます。

特に前作「Obscure Ride」は「今の時代のブラックミュージックのアルバム」という印象を受けたのですが、今回のアルバムはそこからさらに推し進めて、「今の時代のアルバム」といった表現で単純にカテゴライズされないような作品に仕上がっていたように思います。

前作同様、ジャズやHIP HOPの要素を色濃く取り入れつつも、音楽性の多彩さは前作を上回るように感じます。例えば「魚の骨 鳥の羽根」ではトライバルなサウンドを取り入れていますし、「溯行」はブラジル音楽の雰囲気を感じます。「夜になると鮭は」ではミニマルなサウンドを取り入れていますし、「TWNKL」ではダビーな要素を入れてきています。

さらに今回、初回盤に付属してきた同アルバムのインストを聴いたのですが、こちらのアルバムも実に素晴らしかった!この手のインストアルバムはよくありがちなのですが、正直言うと、アルバムの「補助的」な出来になっているのがほとんど。あくまでも「歌」が入ったアルバムが「主」である、という作品ばかりなのですが、今回のアルバムに関してはインスト版のみで十分作品として通用する出来栄えになっていました。

それだけ彼らのサウンドのクオリティーが高いということでしょうし、さらに特に今回のアルバム、彼らがそのサウンドに強い意気込みを持って作り上げていたということなのでしょう。ただし若干気になるのはそれだけちょっと「歌」の力は弱かったのかな、という点。「Double Exposure」のようなメロウな歌を聴かせる曲もあったのですが、正直なところメロディーラインのインパクトは少々薄いように感じます。

もっともそれは今回のアルバムのマイナス点、というよりもおそらく彼らが「歌モノ」のアルバムを志向したわけではなく、「歌」もあくまでもほかのサウンドと同列に位置しているようなアルバムを作り上げた、ということを意味するだけなのでしょう。もちろん、メロディーのインパクトは弱くても楽曲自体は十分なインパクトを持っていますし、また、明確な「歌モノ」でないアルバムがここまでヒットを記録するあたりにも驚きを感じてしまいます。

また序盤の「魚の骨 鳥の羽根」だけではなく、後半の「レテの子」もトライバルなリズムを軽快に聴かせてくれますし、「Waters」も彼ららしい独特のグルーヴ感を聴かせるダンスチューン。最後のタイトルチューン「Poly Life Multi Soul」も軽快でダンサナブルなナンバーになっていますし、全体的にcero流のダンスミュージックが随所に聴かれるアルバムに仕上がっています。もちろんこのダンスミュージックもわかりやすい四つ打ちのリズムではなく彼ららしい黒いグルーヴ感がとても気持ち良く楽しむことが出来る傑作揃いでした。

そんな訳で、現在のシティポップシーンを牽引しつつも、しっかりとceroとしての独自の世界観を前作以上により発揮できた傑作アルバムに仕上がっていました。若干取っつきにくい部分がありましたが、聴けば聴くほどその独自のグルーヴにはまってしまう傑作アルバム。インスト版も傑作でしたのでこちらも是非。

評価:★★★★★

cero 過去の作品
My Lost City
Obscure Ride


ほかに聴いたアルバム

WHITE/清水翔太

前々作「PROUD」以来、R&BやHIP HOP路線に回帰した清水翔太ですが、今回のアルバムも基本的にはその路線を踏襲。エレクトロサウンドを大幅に取り入れたHIP HOP的要素も強い今時なサウンド構成となっています。決して悪くはないのですが、前作同様、いまひとつインパクトが弱く、とりあえず今時のサウンドを入れてみました、的な無難な内容になっていた印象も。いいアルバムだとは思いますが、ちょっと物足りなさも感じてしまいました。

評価:★★★★

清水翔太 過去の作品
Umbrella
Journey
COLORS
NATURALLY
MELODY
ENCORE
ALL SINGLES BEST
PROUD
FLY

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2018年8月19日 (日)

今年もプチ夏フェス?

名古屋なんて、だいすき 夏の宴~Summer Music Live~

寺井尚子

会場 名古屋城 二之丸広場ステージ 日時 2018年8月8日(水) 18:30~

毎年、お盆前のこの時期に名古屋城で開催される「名古屋城夏祭り」。そのイベントの一環としてライブイベントが開催されています。昨年、氣志團のライブが行われ足を運んだのですが、ちょっとした夏フェスの雰囲気を味わえるような雰囲気でとても心地よく、今年は誰がライブをやるのかなぁ、と公式サイトをのぞいたところ、今年は寺井尚子のステージが行われる、ということもあり、さっそく足を運んでみました。

ちなみに今回のイベントは「名古屋なんて、だいすき 夏の宴~Summer Music Live~」と題され、寺井尚子以外のミュージシャンのステージも行われたようですが、時間の関係と正直、ほかのミュージシャンにはさほど惹かれなかったこともあり18時20分頃に会場に到着・・・が、なんと既にステージがはじまっていました。なんでも準備が早く終わったため10分程度開始が早まったとか・・・うーん、18時半スタートとアナウンスされている以上、それに合わせてくるファンもいるんだから、早くはじめるのはNGなんじゃないか?

Terainaoko

さて会場に到着したものの、昨年は観客席を囲むようにあった屋台が今年は1つのみ。それもアルコール販売もなく、かなり寂しい雰囲気に。全体的に客の入りも少な目で、天守閣が建替え工事中なだけにやはり名古屋城夏祭り自体の規模が縮小気味なのかなぁ。なんとか近くでビールを売っている屋台を見つけアルコールを確保し、また五平餅を売っている屋台も見つけたので五平餅とビールを片手に、ライブを楽しみます。

会場に着いた時は「シャレード」を披露していました。かなりアグレッシブな演奏で、ちょっと寂しい雰囲気とは全く皆無。いきなり彼女のバイオリンの演奏に惹きつけられます。基本的にこの日のステージは今年リリースしたアルバム「The StandardⅡ」と昨年リリースした「The Standard」からの選曲だったようで、続いては「蜜の味」をメロディアスに軽快に聴かせてくれ、さらに「デヴィルメイケア」を哀愁感たっぷりのラテン調に聴かせてくれました。

続いては聴きなじみある「デイドリームビリーバー」を。こちらはなじみあるフレーズをバイオリンで伸びやかに聴かせたかと思えば、その後は彼女なりのアレンジを大幅に加えて、完全に寺井尚子の曲として仕上げていました。「イッツ・オール・ライト・ウィズ・ミー」の後はメンバー紹介。スーツにネクタイ姿で演奏していて暑そうだな、と思ったドラマーが名古屋市瑞穂区出身らしく、大きな喝采を集めていました。

そして続いては「ボーイ・ネームド・チャーリー・ブラウン」。バラードナンバーでしんみり。そしてラストは「国境の南」で爽やかな演奏を。この時間帯になると陽もすっかりと沈んで夕闇の中、気持ちよい気分でまずは本編の幕が下ります。

その後はアンコールとなるわけですが、メンバー全員がステージから降りないうちに再びステージ上に戻り、早くも演奏スタート。アンコールは彼女のライブでもおなじみ(らしい)「Spain」で締めくくり。こちらも聴き馴染みあるナンバーで会場は盛り上がり、約45分の幕が下りました。

そんな訳で、昨年は屋台もたくさん出てまさに夏フェス気分だったステージだったのですが、今年は残念ながらそんな雰囲気はなくちょっとガッカリ。ただ、演奏自体はそんな雰囲気とは全く関係なく、非常にアグレッシブで素晴らしいステージ。また、名古屋は連日の灼熱地獄だったのですが、台風の影響か、この日の夜は心地よい風が吹いており、比較的涼しく、気持ちよい気分でライブを楽しむことが出来ました。

45分のライブとはいえ、寺井尚子の演奏をしっかりと聴くことが出来、とても楽しめたステージでした。なかなかお得感のあるステージ。また、こういうステージが行われたら、是非足を運びたいです。

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2018年8月18日 (土)

シンプルでポップなアルバム

Title:The Now Now
Musician:GORILLAZ

一時期はデーモン・アルバーンとジェイミー・ヒューレットが仲たがいし、その「バンド」としての行方も心配されたGORILLAZ。ただその後2人の関係も修復し、昨年は久々となるニューアルバム「Humanz」がリリースされました。その後、長い沈黙の期間を取り戻すかのように活動が活発化。前作からわずか1年2ヶ月で早くもニューアルバムがリリースされました。

前作「Humanz」は数多くの大物ゲストが参加。中にはかのノエル・ギャラガーが参加するなど大きな話題となりました。また楽曲としてもバリエーションが多く、エレクトロサウンドをメインにしつつ、HIP HOPやレゲエなどの要素も取り込んだ多彩な音楽性が大きな魅力のアルバムとなっていました。

そして今回のアルバムは、ある意味前作「Humanz」とは対照的なアルバムとなっていました。ゲストとして「Humility」にジャズギタリストのジョージ・ベンソン、「Hollywood」ではラッパーのスヌープ・ドッグにエレクトロミュージシャンのジェイミー・プリンシパルが参加していますが、ゲスト勢はこの程度。前作ではあまり目立たなかった2D(=デーモン・アルバーン)のボーカルが前面に押し出された作品となっています。

さらにバラエティー豊富だった前作とは対照的に、今回のアルバムは前作と同じくシンセのアレンジを主軸にしつつも、比較的シンプルなポップソングが並ぶ内容となっていました。1曲目の「Humility」から爽快な雰囲気のサウンドをバックにしたメロディアスなポップチューンになっていますし、続く「Tranz」も打ち込みのリズムが軽快な明るいポップチューン。中盤特に印象的だったのが「Idaho」で、アコギの美しいアルペジオが全編に流れる、牧歌的な空気を感じるしんみり聴かせる暖かいナンバーになっています。

後半も「Magic City」「One Percent」のようなサイケテイストも感じるドリーミーなアレンジのナンバーも目立つものの、これらの曲に関してもしっかりと「歌」が流れており、サウンドよりもメロディーラインを聴かせるような構成になっています。最後まで終始、メロディアスな歌を聴かせる構成になっていました。

サウンド的にもシンセの音色はどこか80年代的で懐かしさを感じさせるような音になっています。中盤「Lake Zurich」はこのアルバム唯一のインストナンバーになっているのですが、エレクトロサウンドが軽快なダンスチューン。どこかディスコテイストの懐かしさすら感じさせるポップチューンになっていました。

また今回のアルバム、GORILLAZのアルバムの特徴的だったHIP HOP的な要素がほとんどありません。唯一、スヌープ・ドッグが参加した「Hollywood」ではHIP HOP的な要素を感じられましたが、このアルバムの中では例外的。そうい意味でも歌を聴かせるポップなアルバムという点が明確になった作風と言えるでしょう。

正直言って、アルバムの中でキラー・チューンになりそうなインパクトあるポップソングもありませんし、一度聴いた感じだと地味にすら感じられるアルバムかもしれません。ただ、2度3度聴くと、知らず知らずに癖になるようなアルバムになっており、それもやはりデーモン・アルバーンのポップスメイカーとしての実力所以なのでしょう。シンプルなアルバムでしたが、それゆえにデーモンの実力が如実にあらわれた作品と言えるかもしれません。今回のアルバムも文句なしの傑作でした。

評価:★★★★★

GORILLAZ 過去の作品
D-Sides
Plastic Beach
THE FALL
The Singles Collection 2001-2011
Humanz

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2018年8月17日 (金)

またもや新たな作風で

Title:ガラパゴス
Musician:水曜日のカンパネラ

ほぼ毎年のようにアルバムをリリースし、なおかつ傑作を連発している水曜日のカンパネラ。今回も前作「SUPERMAN」からわずか1年4ヶ月という短さでのニューアルバムのリリースとなりました。

また彼女たちについて驚かさせているのは単純なリリース間隔の短さのみではありません。なによりも驚かされるのはこれだけ頻繁にアルバムをリリースしながらも、アルバム毎にそのスタイルを変化させているという点でしょう。特にここ数作はエレクトロサウンドを作品毎に進化させており、トラックメイカーのケンモチヒデフミの意欲的な挑戦が目立ちます。

そして今回のアルバムでも当たり前のように前作「SUPERMAN」からそのスタイルを大きく変化させていました。本作では前作以前と同様、エレクトロなサウンドにコムアイのラップがのるというスタイルには変化はありませんが、サウンド的にはどこかエスニックな雰囲気を漂わせつつ、ドリーミーに聴かせるような楽曲が多く収録されています。PVも作成された「かぐや姫」では、そのタイトルであるかぐや姫のイメージそのままに月世界を彷彿とさせるドリーミーな空気感が魅力的。続く「南方熊楠」もドリーミーなシンセのサウンドをバックに疾走感あるパーカッションのリズムが大きなインパクトに。コムアイのボーカルもサウンドの一部となって幻想的な雰囲気を醸し出すのに一役買っています。

その後も「マトリョーシカ」もミディアムテンポで幻想的なサウンドが大きな魅力。この曲ではMoodoidというフランスのバンドとコラボしており、そのため楽曲の中にフランス語の歌詞も登場。フランス語の歌詞がまた独特な雰囲気を醸し出しているほか、ラストにはコムアイのボーカルを逆再生で入れており、不思議な感覚をより強調しています。

今回のアルバムはそんな感じに、全体的には幻想的な雰囲気のサウンドが魅力的。プラス、どこかエキゾチックな空気感を感じる楽曲が目立ちます。ユーモラスな歌詞が目立った前作「SUPERMAN」から一転して今回のアルバムはコムアイのボーカルが比較的後ろに下がり、サウンドを主体としたナンバーが並んでいました。

そんなアルバムですがちょっと雰囲気が異なるのがラスト2曲。「愛しいものたちへ」はオオルタイチプロデュース+作詞作曲によるナンバーで、アコースティックなサウンドでコムアイの伸びやかなボーカルで聴かせる歌モノのナンバー。郷愁感も覚えるサウンドになっており、水カンとしてもかなり異色的な作風になっています。ラストの「キイロのうた」も映画「猫は抱くもの」の劇中歌なのですが、こちらはピアノの音色と幻想的なシンセの音色をバックに美しく聴かせるコムアイのボーカルが印象的な歌モノ。ただこちらはコムアイやケンモチヒデフミが作詞作曲を行っているだけに、基本的には今回のアルバムのコンセプトにもマッチしたドリーミーな色合いの濃い作風になっていました。

今回もまた大きく作風を変化してきた彼女たちですが、もちろん楽曲自体は相変わらずの傑作揃い。挑戦的な作風は相変わらずですし、コムアイのハイトーンボイスがアルバム全体を貫かれているため、ラスト2曲についても作風が微妙に異なるのですが、アルバムの中で違和感はありません。これだけアルバムを頻発していながらも勢いは全く衰えておらず、その底知れぬ才能にあらためて驚かされる傑作でした。

ただ今回のアルバムで気になった点がひとつ。今回、CDで購入したのですが、歌詞カードもついておらず、「ガラパゴス」というタイトルがプリントアウトされた赤い透明のプラスチックケースに、コムアイのプリクラのような写真が貼ってあるだけ・・・。おそらく完全にCDで売る気はないんだろうなぁ・・・。さすがにそれなりのお金を出すんだから、せめて歌詞カードくらい、と思ってしまうのですが・・・おそらく近いうちにCDをリリースせずにLPとダウンロードのみという販売スタイルに移行しそうな雰囲気を感じました。

評価:★★★★★

さて、そんな彼女たちが音楽を担当した映画のサントラ盤が配信限定でリリースされました。

Title:猫は抱くもの(オリジナル・サウンドトラック)
Musician:水曜日のカンパネラ

映画サントラとはいえ、水曜日のカンパネラが楽曲を手掛けたんだからさぞかし・・・と期待したのですが、残念ながら水カンらしさを感じるような作品は少なく、純粋に映画の雰囲気に沿ったBGM的な作品が並んでいました。ただ、ラストに収録された「マヨイガのうた」は「ガラパゴス」にも収録されておらず、このアルバムだけで聴けるナンバー。こちらは水カンらしいエレクトロアレンジの軽快なトラックにコムアイのハイトーンのボーカルがのるナンバー。幻想的な作風はアルバム「ガラパゴス」の方向性にもマッチしており、アルバムに収録されてもよかったのに・・・とも思うのですが、この1曲を聴くだけでも損はないかも、と思えるだけの名曲。ただ、配信サイトならこの曲だけ聴くことが出来るので、わざわざアルバム単位で購入したり聴いたりする価値は、映画を見た方以外は低いかも。

評価:★★★

水曜日のカンパネラ 過去の作品
私を鬼ヶ島へ連れてって
ジパング
UMA
SUPERMAN


ほかに聴いたアルバム

THE BLUE HEARTS TRIBUTE HIPHOP ALBUM「終わらない歌」

おそらくブルーハーツというミュージシャンは、もっともトリビュートアルバムがリリースされているミュージシャンではないでしょうか。以前から様々なミュージシャンが参加したトリビュートアルバムが数多くリリースされています。ただ、その多くが-特に最近のアルバムになればなるほど-やっつけ的な内容が多く、正直言ってうんざりするほど今一つな出来のトリビュートアルバムが少なくありません。

そんな中リリースされた今回のトリビュートアルバム。HIP HOPのミュージシャンが参加したトリビュートアルバム。HIP HOPとブルハの結びつきがいまひとつ不明なので不安感も覚えるトリビュートアルバムだったのですが、これが予想外に素晴らしい出来のアルバムになっていました。PUNPEEややけのはら、田我流など、今のHIP HOPシーンで注目をあつめるミュージシャンが参加した本作。カバーというよりも原曲をサンプリングしたHIP HOPの「新曲」的な出来になっているのですが、原曲の魅力はしっかり残しつつ、HIP HOPとして再構築しており、それぞれのミュージシャンの曲にしっかりと仕上がっています。今時のHIP HOPシーンの流れもしっかりと反映されており、そういう意味でもブルーハーツの音楽と今の日本のHIP HOPがガッツリと四つを組んだトリビュートアルバムに。参加ミュージシャンのファンなら文句なしに聴いてほしい1枚。ブルハのファンは・・・HIP HOPが苦手という方も多そうですが、これが今のHIP HOPの現状ということを知ったうえで、是非とも聴いてほしいトリビュートアルバムです。

評価:★★★★★

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2018年8月16日 (木)

2週連続でサザン強し!

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

さすがに2週連続1位獲得です。

今週1位はサザンオールスターズのベストアルバム「海のOh,Yeah!!」。これで2週連続の1位獲得。売上枚数は7万9千枚と先週の32万5千枚を大きく下回っていますし、今週、ほかに強力盤がいなかった点も2週連続1位の大きな要因でしたが、それでもこの結果には相変わらずのサザンの強さを感じます。また、先週7位にランクアップしてきた1998年にリリースされたベスト盤「海のYeah!!」は今週6位にランクアップ。売上枚数はこちらも8千枚から6千枚にダウンしているものの2週連続、サザンのアルバムが2枚同時にベスト10にランクインした結果となっています。

さて今週は売上対象週がお盆前ということも影響したのか、初登場盤が4枚のみと少な目のチャートとなりました。ただなぜか同じタイプのアルバムがまとめてランクインしてくる結果となっています。

まず今週2位にランクインしてきたのが三代目J Soul Brothersのボーカル登坂広臣がHIROOMI TOSAKA名義でリリースしたアルバム「FULL MOON」がランクイン。こちらも先週ランクインした今市隆二と同様、三代目J Soul Brothersのアルバム「FUTURE」の一部としてソロアルバムをリリースしたことがありましたが単独でのリリースはこれが初。初動売上5万4千枚で2位獲得となりました。

今週はこのほかにEXILE「STAR OF WISH」が8位に、RYUJI IMAICHI「LIGHT>DARKNESS」が10位にランクイン。売上枚数的にはどちらも1万3千枚(5位)→6千枚、1万3千枚(2位)→4千枚と大きくダウンしているものの、結果としてEXILE系のアルバムがベスト10圏内に3枚並ぶ結果となりました。

3位には男性アイドルグループDa-iCE「BET」がランクイン。初動売上3万8千枚は前作「NEXT PHASE」の4万6千枚(4位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位に韓国のアイドルグループSUPER JUNIORのメンバーによる派生ユニットSUPER JUNIOR-D&E「STYLE」がランクインしています。初動売上は2万7千枚。前作「Present」の6万2千枚(2位)からダウンしています。

そしてこのK-POPの男性アイドルグループのアルバムも今週2作まとめてランクイン。今週5位にSEVENTEEN「YOU MAKE MY DAY」が先週の18位からランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これは9月に開催される握手会に参加できるエントリーカード付のアルバムが8月7日よりリリース開始になったことがベスト10返り咲きの大きな要因のようです。

今週、返り咲き組はもう1枚。9位に安室奈美恵「Finally」が先週の13位からランクアップ。7月2日付チャート以来7週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。ただし売上枚数5千枚は先週の6千枚からダウン。低水準のランキングに助けられた形のベスト10返り咲きになっています。もっともいまだにこれだけ売れ続けていることが驚きなのですが・・・。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年8月15日 (水)

ロングヒット作が盛り返し

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はチャート対象週がお盆前ということで強力曲が少なかった影響か、ここ最近、ちょっと勢いが落ちてきていたロングヒット曲が巻き返してきました。

まずDA PUMP「U.S.A.」が4位から2位にランクアップ。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)が6位から3位にランクアップ。You Tube再生回数は相変わらずの1位獲得で3週ぶりの2位返り咲きとなっています。

また先週9位までランクダウンしてここまでかと思われた米津玄師「Lemon」は今週4位にランクアップ。特に実売数が15位から8位、Twitterつぶやき数も15位から6位にアップしており、You Tube再生回数2位とあわせて総合順位のランクアップを押し上げる結果となりました。

そんな中、1位を獲得したのは乃木坂46「ジコチューで行こう!」。先週の12位からCDリリースと共にランクアップし1位を獲得。実売数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数で1位、ラジオオンエア数9位、You Tube再生回数26位を獲得。ちなみにオリコンチャートでは初動売上98万8千枚で1位獲得。前作「シンクロニシティ」の111万6千枚からダウンしています。

3位初登場は韓国の男性アイドルグループUP10TION「CHASER」が初登場でランクイン。実売数2位、Twitterつぶやき数15位を獲得。オリコンでは初動売上3万5千枚で2位初登場。前作「WILD LOVE」の2万9千枚(3位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位にあいみょん「マリーゴールド」が先週の28位からCDリリースにあわせてランクアップしベスト10入り。あいみょんは最近注目を集めている女性シンガーソングライター。ちょっと奇抜な名前とは裏腹にメロディーラインはちょっと懐かしさを感じる90年代のJ-POP風で、歌詞は好きな子をマリーゴールドに例える詩的な歌詞が印象に残ります。実売数9位、PCによるCD読取数23位、Twitterつぶやき数49位を記録しているほか、ラジオオンエア数では見事1位を記録し、チャートを引き上げています。確かに楽曲的には万人にアピールできそうな「グッドミュージック」で、ラジオ受けしそうなタイプに感じます。ただしオリコンシングルチャートでは初動売上3千枚で26位に留まりました。前作「満月の夜」ならの2千枚(31位)を上回りましたが、CDの売上は伸びていません。ただし、デジタルシングルランキングでは5位に入ってきており、ネット配信中心のヒットになっている模様。ここ最近、楽曲自体が支持される場合はもっぱらCDの売上よりもネット配信の売上が先行するケースが目立ちますが、この曲もそのパターンのようです。

6位初登場はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ超特急「Jesus」が初登場でランクイン。テレビ朝日系ドラマ「ヒモメン」主題歌。実売数5位、PCによるCD読取数27位、Twitterつぶやき数10位を記録。オリコンでは初動売上3万4千枚で3位初登場。前作「a kind of love」の9万8千枚(2位)から大幅ダウンとなっています。

9位には輿水幸子(竹達彩奈),多田李衣菜(青木瑠璃子),藤原肇(鈴木みのり),水本ゆかり(藤田茜),森久保乃々(高橋花林)「いとしーさー」がランクイン。アイドル育成しミューレションゲーム「アイドルマスター」から派生したアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ劇場」のエンディングテーマ。この手のキャラソンで珍しく沖縄民謡調を取り入れた楽曲。この手の曲はサビは結局普通のアイドルポップというパターンが多いのですが、一応はサビまで沖縄民謡の雰囲気を残したまま展開しています。実売数6位、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数29位を獲得。オリコンでは同曲が収録された「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS! いとしーさー」が初動2万6千枚で4位を獲得。シンデレラガールズシリーズでは直近作閃光☆HANABI団「THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION 10 閃光☆HANABI団」の1万5千枚(8位)からはアップ。同じ「CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS!」シリーズでは前作「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS! Snow*Love」の1万7千枚(6位)からもアップしています。

最後10位にはMISIA「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」が先週の23位からランクアップしてベスト10入り。TBS系ドラマ「義母と娘のブルース」主題歌。CDリリースは8月22日を予定しており、その先行配信分のみでランクインとなりました。今回の曲でMISIAはタイトル通り、GReeeNのHIDEをフューチャー。作詞作曲もGReeeeNが手掛けています。うーん、MISIAといえばデビュー当初は「時代の最先端を行くクラブ系の女性シンガー」みたいな立ち位置でデビューしたのですが、GReeeeNとコラボするところまで来てしまったんですか・・・。MISIAのボーカルでなんとかMISIAの曲っぽくは仕上がっているのですが、歌詞のあまりに何も言っていない薄っぺらい内容に愕然。ここらへん、今週ランクインしているあいみょんの歌詞と比較するとその差が歴然かと。実売数4位のみでのベスト10入り。オリコンではデジタルシングルランキングで1位を獲得しており、ドラマも話題になっているだけにヒットを記録しそうな予感はあるのですが・・・うーん・・・。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年8月14日 (火)

ラストアルバムでありながら・・・

Title:誕生
Musician:チャットモンチー

昨年11月、非常にショッキングなニュースが飛び込んできました。チャットモンチー解散。2005年のデビュー以来、女の子だけのロックバンドとして高い注目を集め、かつ高い人気を博してきた彼女たち。途中、メンバーの脱退や、結婚・出産などの出来事がありつつ活動を続けてきましたが、デビューから13年目である今年、残念ながらその活動に幕を下ろしました。

そんな彼女たちのラストアルバムが本作。そしてタイトルが「誕生」・・・最後のアルバムにつけるタイトルとしてはあまりにもユニークです。ただ彼女たちは今回のチャットモンチー解散の理由について、インタビューなどでチャットモンチーとしてやれることはやりつくした、チャットモンチーという殻を抜け出して新たな一歩に進みたい、という話をしていました。そういう意味では今回のアルバムに「誕生」と名付けたのは、チャットモンチーという殻を割って、新たな一歩を踏み出すための最初のアルバムという意味があったのかもしれません。

実際驚かされるのは今回のアルバム、ラストアルバムにも関わらずいままでのチャットモンチーとは違うスタイルに挑戦しています。2016年のライブでは「チャットモンチー・メカ」と称したメンバー2人と打ち込みのみによるライブを行っていましたが、今回のアルバムも1曲目「CHATMONCHY MECHA」ではいきなりエレクトロサウンドのインストチューンからスタート。続く「たったさっきから3000年までの話」でも大々的にエレクトロサウンドを導入したナンバー。その後も打ち込みを取り入れた曲が続き、ロック色が強かったいままでのチャットモンチーからは一風変わった作風になっています。

最後のアルバムがあえていままでのチャットモンチーらしくないアルバムを作ってきたあたりに彼女たちのあくなき挑戦心を感じさせます。実際、女の子オンリーのバンドというチャットモンチーのスタイル自体、今となっては珍しくなくなりましたがデビューした2005年当時は非常に珍しく、まさに挑戦的と言えましたし、メンバー脱退後は新しいメンバーを加えず2人だけでアルバムを作ったりライブツアーを行ったりと、そのポップな作風とは異なる挑戦的なスタイルを多く見せていました。

そういう意味ではこのラストアルバムでエレクトロサウンドを導入するという挑戦を行うあたり、チャットモンチーらしいと言えるのかもしれません。もっとも今回のアルバム、ラストらしい試みも少なくなく、例えば「砂鉄」ではメジャーデビュー当時のメンバーである高橋久美子が作詞を手掛けており、デビュー当時からのファンにとってはうれしい「3人組チャットモンチー」が曲の中で復活しています。

また彼女たちにとってラストのナンバーとなった「びろうど」もある意味ファンへのメッセージとこれからの決意を歌ったようなラストらしいナンバー。ちなみにボーカルには4才になる橋本絵莉子の息子も参加しています。

ただ、そんなラストアルバムだったのですが、正直な感想としてアルバムの出来としては残念ながら決して良くはありませんでした。エレクトロサウンドも目新しいものではありませんでしたし、メロディーラインのインパクトもいまひとつ。解散が決まりながらもアルバム1枚をリリースしてくれるのはファンとしてはうれしいものの、3年ぶりのアルバムでありながら7曲入りの事実上ミニアルバムな構成も物足りなさを感じます。正直言ってしまえば、確かにチャットモンチーとしてのモチベーションは低くなっているんだな、ということを感じてしまったアルバムでした。

そんな訳で、ラストアルバムで新たな挑戦という点では斬新なスタイルではあったものの、一方、チャットモンチーとしてやりつくした感を覚えてしまうという点では悪い意味でラストアルバムらしい作品と言えるかもしれません。確かに「チャットモンチーとしてやりつくした」というメンバーの解散理由もよくわかってしまうような気もします。チャットモンチーの解散という事実は非常に残念なのですが、ただ一方、メンバーが新たな一歩を進めるという意味では決してネガティブなことではないのかもしれません。えっちゃんとあっこのこれからの活躍に心から期待したいところです。

評価:★★★★

チャットモンチー 過去の作品
生命力
告白
表情
Awa Come
YOU MORE
チャットモンチーBEST~2005-2011~
変身
共鳴


ほかに聴いたアルバム

植物男子ベランダー ENDING SONGS/大橋トリオ

今年4月から7月にNHK総合で放送したドラマ「植物男子ベランダー」。このドラマのエンディングを担当していたのが大橋トリオ。毎回、エンディングテーマが変わる構成だったようで、そのエンディングテーマをまとめたのが配信限定でリリースされた本作です。基本的に大橋トリオの代表曲の中から、おそらくよりドラマにマッチしたオーガニックな雰囲気の曲をまとめた企画盤で、暖かい雰囲気の楽曲が魅力的。彼の曲は良くも悪くも優等生的な部分が強いのですが、こうやって並べて聴くと、やはり魅力的な名曲が多いなぁ、と感じさせてくれます。基本的に既発表曲ばかりですが、入門盤としても最適なアルバムでした。

評価:★★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO

「天命の城」オリジナル・サウンドトラック/坂本龍一

今年6月に日本でも公開された韓国映画「天命の城」。その劇中音楽を坂本龍一が担当。はじめて韓国映画の音楽を担当するということでも話題となりました。映画は1936年に起こった「丙子の役」を舞台とした歴史スペクタクルのようですが、その映画に合わせるかのような、全体的にダークな雰囲気が覆いつつも、スケール感あるダイナミックなサウンドが目立ちます。基本的にいかにも映画音楽的な内容なので、映画を見ていないと厳しいものはありますし、特に挑戦的な作風の曲もありませんでしたので、熱心なファンか、映画を楽しんだ方はどうぞ。

評価:★★★

坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984

ASYNC-REMODELS
Year Book 1985-1989

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2018年8月13日 (月)

歌手宇多田ヒカルの才能を強く感じる傑作

Title:初恋
Musician:宇多田ヒカル

宇多田ヒカルについてはここ最近、明らかに歌手としての「ステージ」が変わった、そう感じます。久々の新作となった前作「Fantome」から声質があきらかに変わり、大人の女性になったことを強く感じました。ただ一方、大人な声質になったけども表現力の面で物足りなさも感じたのも事実でした。しかし、今回のアルバムに関してはあきらかに表現力の面でもグッと大人びた印象を受けます。ひとことで言ってしまえば「すごみが増した」といったところでしょうか。サウンド的には洋楽テイストの強いR&Bなのですが、ボーカルで言えば歌謡曲的な「情念」すら感じる部分もありました。

アルバムの出だしの「Play A Love Song」からそのハイトーンボイスで優しく聴かせる歌声にまずゾクゾクっとさせられますが、序盤ではタイトルチューンでもある「初恋」が秀逸。サウンド的にはシンプルなピアノやストリングスをバックに歌い上げる楽曲なのですが、恋する切なさを静かに歌う彼女の歌声は切なさも感じられ、胸をうちます。

基本的には今回のアルバム、そんな彼女の歌を前面に押し出して聴かせるようなスタイルのアルバムになっていました。全体的にリズムやサウンドを聴かせるというよりもシンプルに彼女の歌に主軸を置いたような構成になっており、そのため彼女の歌の持つ力がよりわかりやすい形でアルバムに収録されていたように感じます。

後半でも「残り香」のように伸びやかなボーカルを聴かせるナンバー、「夕凪」のようなピアノやストリングスで郷愁感を出しつつ、そんなサウンドが作り出す雰囲気に沿った歌を聴かせるナンバーなど聴かせどころはたくさん。最後を締めくくる「嫉妬されるべき人生」も静かながら力強い歌声を聴かせてアルバムを幕を閉じます。

さてそんな今回のアルバム。サウンド的にはピアノやストリングスを軸としたシンプルなサウンドで上にも書いた通り、基本的には歌を生かすようなサウンドになっていました。そのためサウンドの側面からは決して目新しいといった感じはありません。ただ、そんな中、「Too Proud」ではHIP HOP的なトラックを用いており、男性ラッパーがゲストに参加。「残り香」でも最近流行りのトラップミュージック的な高音のスネアが短く早いリズムを流すリズムトラックを入れてきたりと、特に後半では今風のHIP HOPの要素を入れてきてしっかりと今の時代にアップデートしてきています。ここらへん、歌を中心としたアルバムとはいえサウンド的にはさりげなく今時の音をしっかりと取り込んできている点、彼女のミュージシャンとしての視線はしっかりと今という時代を見据えているんだな、ということを感じさせます。

そんな訳で冒頭にも書いた通り、歌手宇多田ヒカルとして大きく一歩前へ踏み出した傑作アルバムに仕上がっていました。もう本当にミュージシャンとして立っているステージが変わったな、ということを強く感じさせます。宇多田ヒカルのすごさをただただ感じた1枚でした。

評価:★★★★★

宇多田ヒカル 過去の作品
HEAT STATION
This Is The One(Utada)
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2
Fantome


ほかに聴いたアルバム

SHISHAMO 5/SHISHAMO

チャットモンチーなき後(?)のガールズギターロック界を担うべき3ピースバンドSHISHAMOのニューアルバム。基本的に明るくポップなギターロックに女性の本音を描いたような歌詞が魅力的。良くも悪くも非常にシンプルなギターロックというスタイルなのですが、以前の作品に比べてポップスさが増したような印象もあります。いい意味で売れているバンドらしく、よりポピュラリティーが広がりつつある印象を受けるアルバムでした。

評価:★★★★

SHISHAMO 過去の作品
SHISHAMO 3
SHISHAMO 4

天体/Polaris

もともとはLab LIFeとして活動していたオオヤユウスケとFishmansの柏原譲によるユニットPolaris。一時期は活動休止状態でしたが、ここにきて活動を活発化。フルアルバムとしては3年4ヵ月ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。とはいっても基本的にはこれまでの彼らのスタイルと変わらず、ダビーな雰囲気で横ノリのリズムが心地よい浮遊感あるポップチューンがメイン。終始、夢見心地な気分になる心地よいポップチューンが魅力的な作品でした。

評価:★★★★★

Polaris 過去の作品
MUSIC
走る

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2018年8月12日 (日)

ブルース界最後のリビング・レジェンド

Title:THE BLUES IS ALIVE AND WELL
Musician:BUDDY GUY

ここ数年、非常に残念ながらブルース全盛期を知る最後の世代のレジェンドたちが鬼籍に入るというニュースが続いています。2013年にはボビー・ブランドが鬼籍に入り、2015年にはB.B.KINGもついにあの世に旅立ちました。また、ブルースではなくロックンロールですが、昨年はチャック・ベリーも亡くなっています。

そんな中、最後に残ったリビング・レジェンドといえるのが彼、BUDDY GUY。御年82才となる彼ですが、いまだに2、3年に1枚のペースでアルバムをリリースし続けており、バリバリ現役の姿を見せ続けています。

本作はそんな彼の約3年ぶりとなるニューアルバム。タイトルからして「THE BLUES IS ALIVE AND WELL」と、まさに彼自身、最後のブルース・レジェンドとしての立場を引き受けるかのようなアルバムタイトルになっています。また今回のアルバムはなんといってもゲスト勢が豪華。「Cognac」ではジェフ・ベックとキース・リチャーズが、「You Did The Crime」ではミック・ジャガーがゲストとして参加しています。このとんでもない豪華な顔ぶれがゲストとして参加するあたり、彼の今の音楽シーンの中での存在感の大きさがわかります。

そしてそんな立場を背負った彼がリリースした最新作は、いつも以上に気合いが入りまくっている作品になっていました。基本的にスタイルは良くも悪くも以前から大きな変化がありません。楽曲的にはシカゴブルースの王道を行くような路線。今回のアルバムでも特段の目新しさはありません。

ただ、「Whiskey For Sale」では非常に力強いギターとシャウト気味なボーカルを聴かせ、ファンキーなナンバーに仕上げていますし、「Old Fashioned」の力強いギターリフも印象的。ホーンセッションも入って賑やかなナンバーに仕上がっています。ラスト前の「End Of The Line」でも力強いギターサウンドを聴かせますし、ボーナストラックである「In This Day And Age」でもギターでグイグイと押し込んでくるナンバーで、ギタリストとして全く衰えを感じさせないパワフルなプレイを聴かせてくれます。

ジェフ・ベックとキース・リチャーズが参加している「Cognac」ではさすがに2人の天才ギタリストが参加しているだけあって、表現力あふれる力強いギターが実に魅力的ですし、ミック・ジャガーがボーカルではなくハーモニカで参加している「You Did The Crime」ではそのハーモニカの音色をバックに力強い歌声でバラードを歌い上げています。

正直言ってボーカルはちょっと安定感が欠ける部分もあり、寄る年波を感じてしまう部分は否定できません。ただ、ギタープレイはいまなお年齢を感じさせない現役感がありますし、ボーカルにしても声量は十分。アルバム全体を通じて、82歳という年齢を感じさせない若々しさがあります。ここ最近は無難にまとめたようなアルバムが続いていたのですが、今回のアルバムはタイトルからもそうですが、ブルース界を背負って立つという意気込みを感じさせる勢いを取り戻したかのようなアルバムに仕上がっていました。しかし、彼はまだまだ元気に現役を続けそうですね。次の作品もその次の作品も、まだまだ傑作を期待できそうです。

評価:★★★★★

Buddy Guy 過去の作品
LIVING PROOF
Live at Legends
RHYTHM&BLUES


ほかに聴いたアルバム

HEAVEN&EARTH/Kamasi Washington

今をときめくケンドリック・ラマーやサンダーキャットの作品でも話題となったアメリカのジャズ・サックス奏者、カマシ・ワシントン。「新世代ジャズの象徴」みたいな紹介のされ方をしていますので、どちらかというとエレクトロサウンドなどを入れて、「クラブ系」の色合いが強いサウンド・・・と予想して聴いたのですが、サウンド的にはAORやフュージョンなどの色合いが強い感じ。哀愁感を帯びたメロディーもアルバムに終始流れており、むしろオーソドックスなフュージョン系ジャズという印象を強く受けました。ちょっと期待していた音とは違った感じでしたが・・・これはこれで2枚組のフルボリュームな内容を楽しめた作品でした。

評価:★★★★

永井“ホトケ"隆のブルースパワー・ラジオ・アワー ~10th アニバーサリー

以前にも紹介しました日本を代表するブルースミュージシャン永井"ホトケ"隆がパーソナリティーとなってコミュニティーFMを中心に放送している日本唯一のブルースのラジオ番組「ブルースパワー」。3年前に7周年を記念したコンピレーションアルバムがリリースされましたが、本作はその第2弾。タイトル通り、番組は見事10周年を迎え、それを記念して本作がリリースされました。

コンピレーションのスタイルとしては前作と同様。BUDDY GUYやLIGHTNIN' HOPKINS、B.B.KINGやMAGIC SAMなどブルースのレジェンドたちの曲を集め、その曲の合間にラジオ番組よろしく永井"ホトケ"隆による曲紹介が入るスタイル。まさにブルースの入門盤としてうってつけな1枚で、ブルースに興味があるけどどこから入ったらいいかわからない・・・という方に是非ともおすすめしたいコンピになっています。

ただ、前作同様、なぜかロバート・ジョンソンとマディー・ウォーターズは未収録。ここらへん、権利の関係なのかなぁ。ちょっと残念な感じも。まあ、それを差し引いても文句なしに素晴らしいコンピレーションなのは間違いありません。入門盤としてはもちろんですが、ブルースをいろいろと聴いている方にも、永井"ホトケ"隆のブルースにかける思いを曲の合間に聴け、ブルースの魅力がより強く感じることが出来る魅力的なコンピになっていました。

評価:★★★★★

永井“ホトケ”隆のブルースパワー・ラジオ・アワー

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2018年8月11日 (土)

EPシリーズに続く5年ぶりの新作

Title:Bad Witch
Musician:NINE INCH NAILS

NINE INCH NAILS5年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました!・・・とはいっても、2016年にEP盤「Not The Actual Events」が、2017年にもEP盤「Add Violence」がリリースされていますので、そんなに久しぶりといった感触はありません。特に今回のアルバムも全6曲30分という短さ。前作「Add Violence」リリース時もEP盤のシリーズは3作ある、というアナウンスがされていましたので、実質的にEP盤第3弾的な位置づけのアルバムといった感じになるのでしょうか。

そんな彼らの5年前のアルバム「Hesitation Marks」はエレクトロ色が強く、彼らとしては「軽い」というイメージのあるアルバムでした。ただ、その後リリースされた2枚のEP盤はグッと彼らの本来の持ち味であるインダストリアルの色合いが強いアルバムにシフトしました。そして続く今回のアルバムに関しても、初期の彼らを彷彿とさせるようなインダストリアルメタルの色合いが強く出たアルバムになっていたと思います。

まず1曲目「Shit Mirror」はノイジーなギターにシャウトするボーカルが重なった、疾走感あるナンバーで、インダストリアルというよりもパンク的な色合いの強い作品。まずは気分的にかなり高揚感のある楽曲からはじまります。続く「Ahead Of Ourselves」もテンポよいリズミカルな打ち込みからスタートするナンバー。途中、ヘヴィーなシャウトはあるものの、リズミカルで聴きやすいナンバーとなっています。

ここらへんはある意味、「つかみ」といった感じでしょうか。グッとインダストリアル色が強くなるのが3曲目「Play The Goddamned Part」。出だしからして不穏でメタリックなサウンドがまず耳を惹きます。かなり不気味な雰囲気で淡々と続いていくのですが、序盤から流れていたフリーキーなサックスが後半では全面に押し寄せ、最後までダークで不穏な空気感が続いていくナンバーになっています。

続く「God Break Down The Door」もフリーキーなサウンドと複雑なリズムのドラムスが終始耳を惹くナンバー。不気味なメロディーラインも妙に耳に残ります。さらに「I'm Not From This World」もヘヴィーでメタリックなサウンドで不気味な雰囲気が淡々と続くナンバー。静かなインダストリアルサウンドが非常に緊迫感ある雰囲気を作り出しています。

そんなインダストリアル色の強く不気味で緊迫感ある中盤からラストの「Over And Out」は最後を締めくくる軽快なエレクトロナンバー。いままでの雰囲気から力が抜けたような感じの楽曲になっているのですが、ところどころ、メタリックな雰囲気を残しており、聴き終わった後、なんとも言えない気持ちになって終わります。

昨年、そして一昨年にリリースされたEP盤も30分弱の短さにNINの魅力が凝縮された内容でしたが、今回のアルバムもその延長戦上のような、30分という短さの中で彼らの魅力が凝縮されているようなアルバムになっていました。ただ、そのEP盤2枚に比べてもよりインダストリアル色が強くなっており、ヘヴィーなサウンドの中に感じられる緊迫感が強い魅力に。ポピュラリティーという側面からはちょっと低めかもしれませんが、NINの良さを十分すぎるほど感じられる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

NINE INCH NAILS 過去の作品
GhostI-IV
THE SLIP
Hesitation Marks
Not The Actual Events
Add Violence


ほかに聴いたアルバム

OIL OF EVERY PEARL'S UN-INSIDES/SOPHIE

イギリスはグラスゴー出身の女性ミュージシャン、サミュエル・ロングによるソロプロジェクトによる初となるフルアルバム。もともとプロデュースワークでも大きな話題を呼んでおり、過去にはマドンナの曲のプロデュースを手掛けたほか、日本でも安室奈美恵の曲のプロデュースを手掛けて話題を呼んだこともありました。

本作は1曲目「It's Okay To Cry」ではスケール感あるエレクトロサウンドで伸びやかに聴かせるポップチューンを聴かせ、北欧的なちょっと幻想的な雰囲気のあるポップミュージシャンなのかと思いきや、2曲目以降は破壊的なエレクトロサウンドやノイズなどで楽曲をメタメタに切り刻むような作風の曲が続き、ある意味、非常に実験的でパンキッシュな作風が目立ちます。ただ、意外とポップな作風が楽曲を流れている曲も多く、ラストの「Whole New World/Pretend World」もデジタルビートのデジロック風の作品・・・とベタな表現が出来るようなロッキンでポップなナンバーになっていたりします。

1曲目のスタートから2曲目以降の展開にちょっとビックリさせられますが、独特なエレクトロサウンドの魅力をしっかり楽しめる作品。実験的な作風でありつつも、意外とポップで聴きやすい、そう感じるアルバムでした。

評価:★★★★★

Lush/Snail Mail

2年前、16才の時にリリースしたEP「Habit」が各種メディアで大絶賛を集め、一躍注目のミュージシャンとなったSnail Mailによるデビューアルバム。基本的にはシンプルなローファイ気味のギターロックといった感じで、女性のソロロックミュージシャンということもあってイメージ的にはコートニー・バーネットと近い部分を感じます。楽曲的にド派手さはないのですが、シンプルなだけにしっかりとしたメロディーラインを聴かせてくれています。これからの活躍も楽しみな新人ミュージシャンです。

評価:★★★★★

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2018年8月10日 (金)

W杯テーマ曲が話題に

Title:THE ASHTRAY
Musician:Suchmos

ジャズやソウルのサウンドを取り入れた独特のグルーヴ感で、音楽ファンを中心に人気上昇中のバンドSuchmos。昨年リリースしたアルバム「THE KIDS」はチャート2位にランクインするなど大ヒットを記録しましたが、今年、そんな彼らをお茶の間レベルに巻き込んで話題となった「騒動」がありました。

それが本作にも収録されている「VOLT-AGE」を巡る騒ぎ。この曲、今年のワールドカップのNHK中継テーマソングに起用されました。NHKのワールドカップのテーマ曲といえばSuperflyの「タマシイレボリューション」や椎名林檎の「NIPPON」など、露骨に高揚感のある曲が起用されてきました。ところが本作はわかりやすい高揚感あるサビがあるわけではなく、むしろ「盛り上がり」という観点からは抑制的なサウンドであるために賛否両論の意見が起こりました。

ソウル風の黒いグルーヴ感にダイナミックでロッキンなギターがのる楽曲は文句なしにカッコいいと思うのですが、Suchmosらしい楽曲でJ-POP的なわかりやすさはありません。そのため否定的な意見の中でもSuchmosが悪いわけではなく彼らを起用したNHKが悪いという意見が目立つのですが、ただ、よくよく考えると今回のワールドカップ中継のテーマ曲、NHKとしてはあえてこのような抑制的なテーマ曲を選んだのではないか、とすら思います。

サッカーという競技は世界的な盛り上がりを見せるスポーツである反面、フーリガンの存在など時として暴動に結びついてしまう事例が少なくありません。日本ですら、ワールドカップの中での渋谷での盛り上がりの中、痴漢が発生したり多くのゴミが放置されたりと問題となる事例が少なくありません。

そんな中、テレビ中継のテーマソングも時としてそんな熱狂を煽るような方向性を取りがち。NHKのワールドカップ中継でも4年前のブラジルW杯の時のテーマ曲、椎名林檎の「NIPPON」は露骨な日本びいきで煽りの強い歌詞が賛否両論を呼び起こしました。

しかし今回のSuchmosの曲は、例えば歌詞の中で「血を流さぬように 歌おうぜメロディ 自由のメロディ」のように、あきらかにワールドカップで発生しがちな熱狂の暴走を抑えようとする歌詞が入っています。ある意味、今回の曲、時として行き過ぎになりがちなワールドカップの熱狂をあえて抑制しようとしたNHK側の強い意図があったのではないでしょうか。今回のSuchmosの曲をあえて選んだということからもそんなNHK側の意思を感じます。

今回のアルバムは、そんな「VOLT-AGE」や、同じくタイアップ曲の「808」を冒頭に並べた全7曲のミニアルバム。あまりシングルを切らない彼ら。「VOLT-AGE」もあれだけの大型タイアップでありながらもシングルリリースされていませんが、そんな中、本作はタイアップ曲を中心としたシングル代わりのミニアルバムといった感じでしょうか。

リズミカルなダンスチューンが心地よい「808」や「VOLT-AGE」のように、彼らにしてはインパクトの強い曲が並んだあとの3曲目以降はさらなるSuchmosらしさを発揮している曲が並びます。基本的にソウルやファンク、ジャズの要素が加わった、彼ららしいグルーヴ感が心地よい楽曲の連続。ジャジーでAORテイストも強い「FRUITS」にエレピが入った爽やかなサウンドに分厚いバンドサウンドも心地よい「YOU'VE GOT THE WORLD」。軽快でファンキーなポップナンバー「FUNNY GOLD」は後半の曲の中ではもっとも取っつきやすさを感じます。

ミディアムチューンの「ONE DAY IN AVENUE」はバンドサウンドも入り、スケール感を覚えるナンバー。この曲がある意味後半のピークと言えるでしょう。そしてラスト「ENDROLL」はタイトル通りのアウトロ。静かにジャジーに聴かせるインストナンバーでほどよい余韻を残しつつ、アルバムは幕を下ろします。

7曲入りのミニアルバムながらもしっかりとSuchmosの魅力を聴かせることが出来る傑作アルバム。文句なしの名曲揃いのミニアルバムでした。ブレイク後も全くそのスタイルを変えることなく活動を続ける彼ら。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

Suchmos 過去の作品
THE KIDS


ほかに聴いたアルバム

25th L'Anniversary LIVE/L'Arc~en~Ciel

ここ最近、事実上、活動休止状態となっているL'Arc~en~Ciel。本作はそんな中、25周年記念のライブということで数少ないラルクの活動となった2017年の東京ドームライブの模様を収めたライブアルバム。25周年の記念的なライブということもあり、ベスト盤的な選曲が魅力的。音響の悪さには定評のある東京ドームでのライブなだけに、音質面ではあまり期待できない内容ですが、純粋に「ベスト盤」として楽しめる内容。特にDisc2の「HONEY」から「READY STEADY GO」あたりの流れは文句なしにカッコよく、ラルクの魅力を再認識します。

ただちょっと気になったんですが、途中、収録されているMC。観客に対する呼びかけが「会いたかったんだろ!」・・・ってのが(^^;;いや、この手の観客に対する呼びかけって、普通「会いたかったぞ~!」だと思うんですが。はっきりいって、このナルシスティックな自信、ホストっぽい・・・というか、本人たちが嫌っている典型的な「ヴィジュアル系」だよなぁ、なんて思ってしまいました。まあどうでもいい話といえばどうでもいい話なんですが、気になってしまって・・・。

評価:★★★★★

L'Arc~en~Ciel 過去の作品
KISS
QUADRINITY~MEMBER'S BEST SELECTIONS~
TWENTY 1991-1996
TWENTY 1997-1999
TWNETY 2000-2010

BUTTERFLY

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2018年8月 9日 (木)

やはりサザン強し!

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

まず貫録の1位獲得です。

今週1位はデビュー40周年を記念してリリースされたサザンオールスターズのベストアルバム「海のOh,Yeah!!」が獲得しました。ちょうど20年前、デビュー20周年を記念してリリースされたベストアルバム「海のYeah!!」以来となるベストアルバムで、「海のYeah!!」以降にリリースされた楽曲が収録されています。ちなみにタイトルの読み方は「うみのおやー」・・・要するに「生みの親」だそうで(^^;;ユーモラスなタイトルもサザンらしいですね。

初動売上は32万5千枚。直近のオリジナルアルバム「葡萄」の30万枚(1位)からはアップ。20年前にリリースされたベスト盤「海のYeah!!」の100万4千枚(1位)からはさすがに大幅ダウン・・・もうこちらはCDを取り巻く環境が激変していますしね、仕方ありません。

ちなみに今回、このベスト盤リリースにあわせてその「海のYeah!!」が8千枚を売り上げ、なんと7位にランクアップ。2000年9月4日付チャート以来、実に17年11ヶ月ぶりにベスト10に返り咲いています。あらためてサザンの根強い人気を感じさせる今週のチャートでした。

続く2位初登場はRYUJI IMAICHI「LIGHT>DARKNESS」が獲得。三代目J Soul Brothersの今市隆二によるソロアルバム。三代目J Soul Brothersの「FUTURE」のDisc2としてソロ作はリリースしていましたが単独でのアルバムリリースは本作が初。初動売上1万3千枚でこの位置にランクインしています。

3位は赤西仁「A la carte」がランクイン。ご存じジャニーズを脱退したKAT-TUNの元メンバーですね。既発表曲をアレンジし直した「リアレンジアルバム」だそうです。初動売上2万枚。前作「Blessed」の3万1千枚(4位)からはダウンしていますが、いわゆる「リミックスアルバム」としては健闘している結果と言えるでしょう。ジャニーズを退社してすっかりテレビ的にはご無沙汰になってしまいましたが、「干させる」ことの多いジャニーズ退社組としてはかなり貢献している印象があります。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にハロプロ系アイドルグループJuice=Juice「Juice=Juice#2 -¡Una más!-」がランクインしてきています。初動売上1万5千枚。前作「First Squeeze!」の1万3千枚(5位)からは若干のアップとなります。

6位初登場は浜田麻里「Gracia」。今年、デビュー35周年を迎えた彼女ですが、なんと1996年にリリースされた「Persona」以来のベスト10入り。初動売上1万1千枚は前作「Mission」の9千枚(11位)よりアップ。デビュー以来、根強い人気を保っている彼女ですが、ここに来て、その人気が再燃してきている傾向にあるようです。

8位にはクレイジーケンバンド「GOING TO A GO-GO」がランクイン。こちらはデビュー20周年。一時期はほぼ毎年のようにオリジナルアルバムをリリースしていた彼らですが、直近作「香港的士 -Hong Kong Taxi-」はカバーやセルフカバーを含む企画盤的な作品だったので、純然たるオリジナルとしては約3年ぶりとちょっと久々となりました。初動売上は8千枚。直近作はベストアルバム「CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST ALBUM 愛の世界」の8千枚(15位)で、こちらからは横バイ。「香港的士 -Hong Kong Taxi-」も初動8千枚(4位)でしたのでこちらからも横バイ。3年前のオリジナルアルバム「もうすっかりあれなんだよね」の9千枚(3位)からは微減。良くも悪くも安定した売り上げが続いています。

最後10位には女性声優上坂すみれ「ノーフューチャーバカンス」がランクイン。初動売上7千枚は前作「20世紀の逆襲」(10位)から横バイとなっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に。

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2018年8月 8日 (水)

珍しくキャラソン系が上位に

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot100、まずはジャニーズ系が1位獲得です。

今週1位を獲得したのはHey!Say!JUMP「COSMIC☆HUMAN」が初登場で獲得。日テレ系ドラマ「トーキョーエイリアンブラザーズ」主題歌。ラジオオンエア数は91位に留まりましたが、CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数でいずれも1位を獲得しています。オリコンでは初動22万1千枚で1位獲得。前作「マエヲムケ」の24万4千枚(1位)よりダウン。

さて今週の2位3位は実売数以外のチャートがなかなか上位に食い込まないためHot100ではチャートをあがってこないアニメのキャラソン系が珍しく上位に並んでいます。2位にはQUARTET NIGHT「FLY TO THE FUTURE」が初登場でランクイン。劇場アニメ「うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム」挿入歌で、同映画に登場するキャラクターによるキャラソン。実売数2位、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で5位を獲得し、見事ベスト3入り。オリコンでは初動売上14万2千枚で2位獲得。前作「God’s S.T.A.R.」の10万7千枚(1位)からアップ。

3位にはAqours「Thank you,FRIENDS!!」が初登場でランクイン。実売数及びPCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数16位を記録。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」から登場したアニメキャラによるグループ。オリコンでは初動売上9万8千枚で3位獲得。前作「ホップ・ステップ・ワーイ!」の2万7千枚(4位)より大幅アップしています。

続いて4位以下の初登場曲です。5位には韓国の男性アイドルグループSHINee「Sunny Side」が先週の63位からCD発売にあわせてランクアップしベスト10入り。実売数4位、PCによるCD読取数8位、Twitterつぶやき数12位を記録しています。オリコンでは初動7万7千枚で4位初登場。前作「Winter Wonderland」の8万8千枚(2位)よりダウン。

6位に初登場したのはスターダストプロモーションの男性アイドルグループSUPER★DRAGON「SWEET DEVIL」。ハードコア風のアレンジにサビはアイドルポップという組み合わせの曲。実売数5位、Twitterつぶやき数7位を獲得した一方、ラジオオンエア数36位、PCによるCD読取数45位に留まっています。オリコンでは初動売上7万4千枚で5位獲得。前作「Monster!」の4万3千枚(3位)からアップ。

8位は女性ボーカルグループLittle Glee Monster「世界はあなたに笑いかけている」が先週の34位からCDリリースにあわせてランクアップ。コカ・コーラの年間イメージソング。最初はアカペラとボイスパーカッションからスタートしておりボーカリストとしての実力をしっかりと聴かせるナンバーになっています。実売数7位、ラジオオンエア数10位、PCによるCD読取数18位、Twitterつぶやき数63位、You Tube再生回数95位を記録。オリコンでは初動売上4万1千枚で6位初登場。前作「ギュッと」の3万1千枚(6位)よりアップ。

初登場組最後は10位にMrs.GREEN APPLE「青と夏」が先週の33位よりCDリリースにあわせてランクアップしベスト10入り。映画「青夏 きみに恋した30日」主題歌。実売数は13位、Twitterつぶやき数51位に留まりましたが、PCによるCD読取数11位、さらにラジオオンエア数で2位を獲得し、見事ベスト10入りです。オリコンでは初動売上9千枚で14位初登場。前作「Love me,Love you」の8千枚(19位)より若干のアップとなっています。

今週の初登場曲は以上。ロングヒット組ではまずDA PUMP「U.S.A.」は3位から4位にランクダウン。残念ながらベスト3から外れてしまいました。ただ、You Tube再生回数は変わらず1位をキープしており、まだまだヒットは続きそう。米津玄師「Lemon」は7位から9位にダウン。こちらは今週、実売数は10位から15位までダウンしてしまっています。ただYou Tube再生回数がここに来て3位から2位にアップしており、こちらもまだまだヒットは続きそう。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート

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2018年8月 7日 (火)

息の合った夫婦デゥオを聴かせる

Title:EVERYTHING IS LOVE
Musician:The Carters

7月、突然ストリーミングにてリリースされたThe Cartersというミュージシャンのアルバム。当初からこのリリースがかなり話題になっていたので「誰?」と思ったのですが、実はこれ、かのBeyonceとJAY-Z夫妻によるユニット。「カーター」というのはBeyonceとJAY-Zの苗字だそうで、「カーター一家」といった感じでしょうか。超大物同士のコラボに騒然となりました。(なのですが全米アルバムチャート2位だったというのは、大物同士のコラボが必ずしも大ヒットにならないという傾向は日米同様のようです)

まずやはり目立つのはBeyonceのボーカル。1曲目「SUMMER」からまずはBeyonceの力強いボーカルが気持ちよいソウルテイストの強い曲からスタート。「713」では力強いボーカルに加えてラップまで披露していますし、なによりも魅力的なのが「FRIENDS」。終始彼女の悲しげなボーカルで歌われる哀愁感たっぷりのメロディーラインが魅力的。決して力強く歌い上げるナンバーではないのですが、確実に歌の魅力が伝わってくるナンバーになっています。

そんな訳でアルバム全体としてはまずはBeyonceのボーカルがが魅力的なアルバムになっているのですが、ただJAY-Zだって決して負けてはいません。どの曲でもBeyonceのボーカルの中でしっかりと彼のラップにも主張が感じられます。Beyonceのボーカルが主でJAY-Zのラップが従といった曲の構成にはなっておらず、イメージとしてはBeyonceとJAY-Zが夫婦でデゥオをしているといった感じの構成になっていましたし、浮気騒ぎとかいろいろとありましたがそこはさすがに夫婦。息の合った「デゥオ」を聴かせてくれています。

そこらへんが一番顕著だったのはラストの「LOVE HAPPY」。タイトルからして明るい雰囲気なのですが、全体的にダークな色合いが濃い作品の中でも比較的、力の抜けた明るい雰囲気を感じさせるナンバー。ここでは完全に息の合った2人の掛け合いを聴かせてくれます。

特にこの曲はラストに「We came and we conquerd, now we're happy in love」という歌詞で締めくくられており、要するに「私たちは困難を乗り越えて、今、幸せだよ」と歌われています。まあ、こうやって2人で組んでアルバムを出そうというのですから、今、2人は上手くいっているのでしょう。上に書いたように暗い雰囲気も感じるアルバムですが、最後の最後は明るい雰囲気で、どこか爽やかさの残る聴後感を残すアルバムになっていました。

サウンド的には全体的に重低音にシンプルなリズムトラックという、決して目新しい感じはしないのですが、今風なサウンド。「NICE」「BLACK EFFECT」など、最近話題のトラップミュージックの影響を強く感じさせる曲もあります。一方、Beyonceのボーカルの影響もあってか、昔ながらのソウルフィーリングも強く感じさせる部分もあり、そういう意味では最新のHIP HOPを取り入れつつ、ソウルミュージック的な魅力もしっかりと感じさせるアルバムになっていたと思います。非常にバランスの良さも感じます。

Beyonceといえば、直近のアルバム「Lemonade」も大傑作でしたが、その勢いを引き継いだかのような、おそらく今年を代表する1枚になりそうな傑作アルバムに仕上がっていました。いろいろな意味でうらやましい夫婦のおふたり。これからも末永くいい夫婦でいてくださいね。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Nasir/NAS

NASの新作は全8曲入りという比較的短めのアルバム。リズムは比較的リズミカルでテンポ良いものが多く、また、メロウでメロディアスな楽曲が多いのも特徴的。目新しさや刺激のようなものはちょっとなかったのは残念な部分はあるものの、8曲という短さもあって、全体的に非常に聴きやすいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

NAS 過去の作品
Untitled
Distant Relatives(Nas&Damian Marley)
Life Is Good

KOD/J.Cole

過去リリースされた4枚のアルバムがすべて全米チャート1位を獲得。このアルバムも当然のようにチャート1位を獲得するなど、おそらく今、もっともアメリカで人気のあるHIP HOPミュージシャンのひとり、J.Cole。シンプルなトラックがほどよく今風なサウンドを取り込みつつ、全体的に軽快で聴きやすいラップが特徴的。良い意味で確かに多くのリスナー層の支持を受けそう・・・という印象を受けます。あまりアメリカのHIP HOPを聴かないリスナー層でも素直に楽しめそうなアルバムでした。

評価:★★★★

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2018年8月 6日 (月)

松任谷由実のコアな部分

Title:ユーミンからの、恋のうた。
Musician:松任谷由実

2012年にデビュー40周年を記念し、3枚組のオールタイムベスト「日本の恋と、ユーミンと。」をリリースした彼女。このベスト盤は大ヒットを記録し、トータルセールスで100万枚を突破しました。ユーミン健在を見せつけたベスト盤だったのですが、それからわずか5年。今度はデビュー45周年をリリースし、新たなベスト盤がリリースされました。今回のアルバムは、5年前のベストアルバムに収録されなかった曲から彼女が選んだ楽曲だそうで、3枚組フルボリュームでのベスト盤をリリースした後でも、まだこんなにたくさんの「名曲」が残っていることにまず驚かされます。

ただ今回のアルバムに収録されている曲はほとんどがアルバムオンリーの収録曲。誰もが知っているような日本ポップス史上に残るスタンダードナンバーの連続だった前作とはある意味対照的。シングル曲はわずか2曲で、そのうち1曲はまだ彼女がブレイクする前の曲。おそらく唯一ファンでなくても知られているような曲は「輪舞曲」くらいではないでしょうか。ある意味、知る人ぞ知る的な曲が並んでいました。

そんなこともあって、ある意味バブル期のイメージも強く、派手な印象が先に立ちがちなユーミンなのですが、今回のベスト盤に収録されている曲に関しては、むしろ「地味」という印象すら強く受ける内容になっていました。

ただそれだけに変な装飾がない分、松任谷由実の本来の魅力である歌詞とメロディーラインの良さが光る曲が並んでいた印象を受けます。例えば歌詞でいえば「瞳を閉じて」のようなシンプルな歌詞だけにその裏にある物語性を感じさせる歌詞や「ただわけもなく」のような目に浮かぶ風景描写が見事な歌詞が実に魅力的です。メロディーラインで言えば「雨の街を」の物悲しげで叙情的なメロディーは鳥肌がたつほど。数少ないシングル曲「輪舞曲」もラテンなメロディーラインはしっかりと耳に残ります。

そして今回のベスト盤の中で一番強く印象に残ったのが「ツバメのように」という曲。失恋して飛び降り自殺をした若い女性について歌った曲なのですが、そんな女性の最期を「ツバメ」に例えるなどあまり悲壮感を表に出さないことにより、逆に聴く者にとっては切なさを強く感じさせるようなナンバーになっています。

実はこの曲、歌詞には元ネタがあるみたいで、こちらのサイトで詳しく書いてありました。ただ元ネタを知った上でも歌詞の内容的にはユーミンの方が強い印象を抱かせる構成になっており、「パクリ」というよりもむしろ、「このネタを使うなら私の方がもっと上手くできる」というユーミンのある種の自負すら感じさせられます。

そんな訳で、彼女の有名な楽曲とはまた異なる、というよりもむしろ本質的なユーミンの魅力を感じさせるベスト盤。3枚組のボリューム感ある内容で、かつ有名曲がほとんどありませんが、一気に楽しむことが出来るアルバムだったのはさすがの一言。あらためて松任谷由実というミュージシャンの才能を感じることが出来るアルバムでした。

評価:★★★★★

松任谷由実 過去の作品
そしてもう一度夢見るだろう
Road Show
日本の恋と、ユーミンと。
POP CLASSICO
宇宙図書館


ほかに聴いたアルバム

今夜だけ俺を/菅原卓郎

9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎による初のソロアルバム。「平成最後に放つオルタナ歌謡曲集」をコンセプトにしたアルバムで、作詞はいしわたり淳司、9mm Parabellum Bulletのギタリスト滝善充が作曲とプロデュースを手掛け、本人はまさに「歌謡曲歌手」に徹したコンセプチュアルなアルバムに仕上がっています。

もともと9mm自体、メロディーに歌謡曲からの影響を強く感じられましたが、今回はその方向性をもっと歌謡曲寄りにシフトした形。「Baby どうかしてるぜ」などはまさに昭和のアイドル歌謡曲が強いテイストになっていますし、「今夜だけ俺を」「ボタンにかけた指先が」は歌謡ファンクのテイストが強い曲に。ただ、最近、この手の「昭和歌謡そのまんま」な歌手が増えてきている中、菅原卓郎のみの独自性はちょっと薄かった印象も。今後、このコンセプトを進めていく中に、彼らしさを確立していくことを期待したいのですが。

評価:★★★★

BAD HOP HOUSE/BAD HOP

BAD HOPの新作は8曲入りのEP。ゆっくりグルーヴィーなエレクトロサウンドのトラックにけだるい雰囲気を醸し出しているエフェクトかかったボーカルのラップというスタイルは以前と変わらず。仲間とのツアーをそのまま綴った「Mobb Life Tour」やおそらく人気が出てきた彼らにたかってくる外部の人間を皮肉った「Don't Touch My Cash」など、仲間との絆をつづったようなラップも相変わらず。いい意味でBAD HOPらしさをしっかりと確立しており、なによりもサウンドもラップもカッコよく耳に残るのが大きな特徴。まだまだ彼らの勢いは続きそうです。

評価:★★★★★

BAD HOP 過去の作品
BAD HOP 1DAY
Mobb Life

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2018年8月 5日 (日)

末期がんを乗り越えて

Title:Blow Your Mind
Musician:Wilko Johnson

70年代のロンドンのパブロックシーンをけん引。その後のパンクロックムーブメントにもつながる活動を見せたDr.Feelgood。今回紹介するのは、そのオリジナルメンバーでありギタリストのウィルコ・ジョンソンの新作。新作としてはロジャー・ダルトリーと組んで話題となった2014年の「Going Back Home」以来、また淳前たる新曲のみで構成されたアルバムとしては、なんと1988年の「Barbed Wire Blues」以来、実に30年ぶりとなるアルバムとなるそうです。

ウィルコ・ジョンソンといえば2013年。末期がんを患っていることが公表。その時点では延命治療を行わないことを表明しており、ファンにとっては非常にショッキングなニュースとなりました。ところがその後もコンスタントに活動を続け、なんと最終的にはがんを克服。気が付けば末期がん公表から5年。待望のニューアルバムがリリースされました。

楽曲はベテランの彼らしい、いわば渋みのあるようなブルースロックが主体。特にブルースロック、というよりはむしろブルースの色合いが濃い楽曲が多く収録されています。例えば「Marijuana」なども軽快なブルースハープとギターを聴かせる正統派なブルースナンバーですし、「Low Down」もこれでもかというほど哀愁感を帯びたブルースギターをバックに静かに語るようなボーカルが特徴的で、かなり痺れます。「Lament」はインストナンバーなのですが、こちらもむせび泣くようなブルースハープとブルースギターの音色が心に響いてきます。

御年71歳の彼。そのボーカルはさすがの年のせいか、若干不安定に感じる部分もあります。ただ、その年齢なりの不安定さも含めて、酸いも甘いもかみ分けたような渋みのあるボーカルがブルージーな楽曲にもピッタリとマッチ。まさにこのボーカルと合わせて楽曲の世界観をしっかりとつくりこんでいます。

特に今回は、がん告知からの5年間を歌詞のテーマとした曲が多く、「Mrijuana」や「Take It Easy」などはまさにがん告知をテーマとした曲だとか。それだけに歌詞のテーマ的にも「ブルース」のイメージにピッタリとマッチしているようにも思えます。

ただもっともそんなダウナーな雰囲気の曲ばかりではなく、例えば「That's The Way I Love You」はブルージーながらも軽快でダンサナブルなロックンロールチューン。「I Love The Way You Do」なども軽快で楽しいロックンロールナンバーに仕上がっています。そういうこともあり、アルバム全体としてはがんをテーマにしていたりブルージーだったりするのもも、決して必要以上にダウナーになることなく、ブルースを主体としたカッコよく渋みのあるロックンロールを楽しめるアルバムになっていたと思います。

末期がん公表の時は私もショックを受けましたが、非常に良い意味で予想に反して、まだまだ元気な姿を見せてくれている彼。これはまだまだ「お迎え」なんて話はもっともっと先の話になりそうですね。次のアルバムも期待しています。

評価:★★★★★

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2018年8月 4日 (土)

2018年上半期 邦楽ベスト5

昨日に引き続き、今日は邦楽の上半期ベスト5です。すいません、今年の1位2位はいずれもまだここでは未紹介のアルバムになってしまいました・・・。

5位 Human/yahyel

聴いた当時の感想はこちら

海外のビートミュージックからダイレクトに影響を受けた音楽性から賛否ある彼らですが、そういう前提を置いたとしても文句なしにカッコいい本作。よく比較されるジェイムス・ブレイクに比べるとソウル色が弱くなり、より硬質なエレクトロサウンドの色合いが強くなるのですが、そのどこか冷たさを感じさせるサウンドを含めて、邦楽離れしたサウンドに圧倒的なカッコよさを感じさせる傑作でした。

4位 the CITY/サニーデイ・サービス

聴いた当時の感想はこちら

「DANCE TO YOU」「Popcorn Ballads」と傑作をリリースし続けているサニーデイ・サービスですが、またもや傑作アルバムをリリースしてきました。今回はアルバム全体としてHIP HOPの色合いが強く、なおかつノイズやエレクトロの要素を強く入れた挑戦的な作品が多く収録されています。ポップという側面では前々作、前作から薄れてしまったのですが、次のサニーデイの一歩を感じさせる意欲的な傑作でした。

3位 ロックブッダ/国府達矢

聴いた当時の感想はこちら

以前はMANGAHEAD名義でも活動していたロックミュージシャンが15年の沈黙を破ってリリースしたアルバム。ロックなサウンドと「和」なサウンドが絶妙なバランスで融合されたサウンドが独自性あり素晴らしい傑作。そんなロックと和のバランスを保ちつつ、様々なサウンドに挑戦。なおかつポピュラリティーもしっかりと保った傑作アルバムに仕上がっています。これだけ才能を持ったミュージシャンが15年もアルバムをリリースできなかったとは・・・これを機に、新作をどんどん聴きたいのですが・・・。

2位 ガラパゴス/水曜日のカンパネラ

毎年のようにアルバムをリリースしながらも、毎回、傑作アルバムをリリースし続けている水曜日のカンパネラ。ユーモラス路線に回帰した感のある前作「SUPERMAN」からわずか1年4ヶ月。早くもリリースされた新作は前作までのサウンドとは異なる、また新たなサウンドを構築。今回の作品では全体的にどこかドリーミーな雰囲気のエレクトロサウンドを全面に押し出した作風。どこかエスニックな雰囲気のサウンドや、そのドリーミーなサウンドにマッチしたコムアイの歌声も大きな魅力に。さらなる進化を感じされる傑作でした。

1位 初恋/宇多田ヒカル

ここに来て、あきらかに宇多田ヒカルのレベルが一段階あがったような印象を受けます。特にそのボーカル。もともと定評のあった彼女のボーカルですが、ここ最近の作品では一種の「すごみ」を感じます。今回のアルバムはまさにそんな彼女のボーカルを全面に押し出した作品だったのですが、かつてのような「先駆的なR&B」というよりはボーカルの迫力を感じる「歌」が並ぶ作品でした。もっとも一方では今風のHIP HOP的な要素も取り入れており、しっかりと今の時代にアップデート。あらためてすごいミュージシャンだな、と感じさせる文句なしの傑作アルバムでした。

 

というわけで、今年の上半期1位は宇多田ヒカルのニューアルバム。ただ正直、洋楽と同様、ずば抜けた傑作というのはなかったような印象を受ける上半期。もっとも一方では傑作アルバムはかなりの豊作で、他にもベスト盤候補として・・・

Galaxy of the Tank-top/ヤバイTシャツ屋さん
Resources/Takaryu
enigma/MONKEY MAJIK
梵唄-bonbai-/BRAHMAN
わがまマニア/CHAI
デザインあ 2/Cornelius
愛をあるだけ、すべて/KIRINJI
WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE/STRUGGLE FOR PRIDE
Modernluv/TAMTAM
Wake Up/エレファントカシマシ
THE ASHTRAY/Suchmos

というわけで、どのアルバムもベスト5に並んでいても不思議ではない傑作アルバムばかり。この勢いは下半期も続くのでしょうか。楽しみです。

さて、あらためてベスト5を並べると

1位 初恋/宇多田ヒカル
2位 ガラパゴス/水曜日のカンパネラ
3位 ロックブッダ/国府達矢
4位 the CITY/サニーデイ・サービス
5位 Human/yahyel

また下期もたくさんの傑作に出会えますように。

2007年 年間1 
2008年 年間1  上半期
2009年 年間1  上半期
2010年 年間1  上半期
2011年 年間1  上半期
2012年 年間1  上半期
2013年 年間1  上半期
2014年 年間1  上半期
2015年 年間1  上半期
2016年 年間1  上半期
2017年 年間1  上半期

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2018年8月 3日 (金)

2018年上半期 洋楽ベスト5

恒例の上半期私的洋楽ベストアルバム。Spotify導入後、洋楽アルバムを聴く枚数が急増したため、今年から邦楽同様、上期5枚、通年で10枚のベストアルバムを選出することにしました。

5位 In Your Own Sweet Time/The Fratellis

聴いた当時の感想はこちら

2006年にリリースした「Costello Music」でいきなり大ブレイクした彼ら。底抜けに楽しくポップな音楽が魅力的だったのですが、その後はその方向性を巡って迷走。2009年に活動を停止してしまいました。しかし、活動再開後は再びデビュー当初のような底抜けに楽しいポップなアルバムをリリースし続け、そしてリリースされた本作は、とにかくポップな楽しさを前面に押し出したアルバムになっていました。文字通り、無条件で楽しめるポップのアルバム。とにかく最初から最後まで楽しい傑作アルバムでした。

4位 Black Panther: The Album

聴いた当時の感想はこちら

映画「ブラック・パンサー」にインスパイアされる形で多くのミュージシャンが楽曲を提供した企画盤。もっともKendrick Lamarプロデュースにより彼が多くの曲に参加しており、実質的にはケンドリックの新譜的な意味も強く、話題となりました。ただ一方では歌モノを多く取り入れてHIP HOPというよりもポップな側面も多く、さらに南アフリカのミュージシャンが数多く参加することにより、アフリカ的な要素が強く加わったアルバムになっています。ケンドリックの実力をしっかり反映しつつ、彼のアルバムとは異なる魅力が加わった傑作でした。

3位 EVERYTHING IS LOVE/The Carters

現時点でアルバムレビュー未了なのですが・・・先日、突如リリースされて話題となったBeyonceとJAY-Zの夫婦によるユニット、The Carters。ソウルフルなBeyonceのボーカルにJAY-Zのラップがからむスタイル。トリップミュージックなど今時の音を入れつつ、Beyonceのボーカルから感じられるソウルフィーリングが実に心地よいナンバーになっています。実力者同士の夫婦である彼ら。両者の才能がガッチリと組み合わさった傑作です。

2位 Resistance Is Futile/MANIC STREET PREACHERS

聴いた当時の感想はこちら

日本人にとっては非常に印象の強いジャケット写真になっているマニックスの新作。マニックスといえば非常にインパクトのあるポップなメロディーを書くシンプルなギターロックバンドというイメージですが、本作はまさにその方向性をさらに推し進めたアルバムに。とにかく爽快感あるメロディーラインのインパクトが最初から最後まですさまじく、一気に楽しめるアルバムになっていました。

1位 Get With The Times/BEKON

聴いた当時の感想はこちら

ケンドリック・ラマーの「DAMN.」に全面的に参加し大きな話題となったプロデューサーによるデビュー作。どこかレトロな雰囲気の漂うジャケット写真がまず目を惹くのですが、楽曲自体もレトロな雰囲気が漂いつつ、全体的にメロウさを感じるサウンドにとろけてしまうような出来になっています。一方ではHIP HOP的な要素を加えつつ、今風な要素を加えるなど、人気プロデューサーらしい懐の深さも感じます。聴いていて気持ちよくなる傑作でした。

そんな訳で今年上半期の私的ベストアルバム、いかがでしたでしょうか。各種メディアでも上期ベストアルバムの紹介がされていますが、正直なところ、ここの1位2位はあまりベストアルバムとして取り上げられていません・・・。ま、正直なところマニックスに関してはその理由はわかるような気もします。ただ、BEKONのアルバムに関してはもっと評価が高くてもいいと思うんですけどね。そのとろけるようなサウンドがたまりません!

ほかのベスト盤候補としては・・・

Drank/Thundercat
Little Dark Age/MGMT
Blood/Rhye
7/Beach House
Tell Me How You Really Feel/Courtney Barnett
Dirty Computer/Janelle Monae
Snares Like A Haircut/No Age
Ye/Kanye West
Love Is Dead/CHVRCHES

あたりでしょうか。ただ正直言うと、上期に関してはどれももちろん名盤なのですが、飛びぬけた傑作はなかったかな、というのも正直な感想です。

さてあらためてベスト5を並べてみます。

1位 Get With The Times/BEKON
2位 Resistance Is Futile/MANIC STREET PREACHERS
3位 EVERYTHING IS LOVE/The Carters
4位 Black Panther: The Album
5位 In Your Own Sweet Time/The Fratellis

下期もまた多くの傑作に出会えますように。

それでは、明日は邦楽のベスト5!

2007年 年間
2008年 年間 上半期
2009年 年間 上半期
2010年 年間 上半期
2011年 年間 上半期
2012年 年間 上半期
2013年 年間 上半期
2014年 年間 上半期
2015年 年間 上半期
2016年 年間 上半期
2017年 年間 上半期

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2018年8月 2日 (木)

約3年ぶりのアルバムが1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週は久々となるニューアルバムが1位獲得です。

1位初登場はEXILEのニューアルバム「STAR OF WISH」が獲得。約3年ぶりとなるニューアルバムとなります。初動売上は14万5千枚。直近作はベスト盤の「EXTREME BEST」で、こちらの初動17万8千枚(2位)からはダウン。またオリジナルアルバムとしての前作「19 -Road to AMAZING WORLD-」の20万4千枚(1位)よりもダウンしています。

2位には先週4位に初登場してきた韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「YOU MAY DREAM」がランクアップしてベスト3入りを果たしました。ただ売上枚数1万8千枚は先週の3万5千枚からダウン。新譜が少な目の週だったため、相対的に順位を押し上げた模様です。

3位も韓国の男性アイドルグループMYNAME「KISEKI」が獲得。初動売上1万6千枚は前作「MYNAME is」の2万枚(4位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まずは4位に斉藤和義「歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017」がランクインしています。デビュー25周年を記念してリリースされたベスト盤。ちょうど10年前のデビュー15周年の時にもベストアルバム「歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007」をリリースしていますが、それに続く形で2008年以降にリリースされたシングルを集めたベスト盤。初動売上1万6千枚。ベスト盤の前作「歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007」の3万3千枚(4位)からはダウン。また直近作のオリジナルアルバム「Toys Blood Music」の1万9千枚(1位)よりもダウン。思ったほど固定ファン層以外を確保できなかったようで、思ったより厳しい売上になっています。

5位初登場は刀剣男士 formation of つはもの「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~つはものどもがゆめのあと~」。ゲーム「刀剣乱舞」から派生したミュージカルの出演俳優による、刀剣男士 formation of つはもの名義としては初となるアルバム。初動売上は1万6千枚。刀剣男士関連のアルバムですと、刀剣男士 formation of 三百年名義によるアルバム「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~三百年の子守唄~」の初動1万8千枚(4位)から若干のダウン。

最後9位には韓国の男性アイドルグループMONSTA XのメンバーのMINHYUK(ミニョク)によるソロデビューアルバム「夏の日記(Summar Diary)」がランクイン。初動売上9千枚で見事ベスト10入りしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年8月 1日 (水)

日韓トップアイドル対決

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は日本と韓国のトップアイドルが1位を争いました。

1位を獲得したのは嵐「夏疾風」。先週の96位からCDリリースにあわせて一気に1位獲得となりました。テレビ朝日系「熱闘甲子園」テーマソング。作詞作曲はゆずの北川悠仁。甲子園の応援歌にイメージ的にピッタリな、ゆずらしい爽やかなナンバーになっています。CD販売数・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数2位、ラジオオンエア数33位を獲得。オリコンでは初動売上47万枚で1位獲得。前作「Find The Answer」の39万5千枚(1位)からアップしています。

一方2位は韓国の男性アイドルグループ東方神起「Road」が獲得。こちらも先週の69位からCDリリースにあわせて一気にランクアップ。実売数2位、PCによるCD読取数5位、Twitterつぶやき数1位を獲得しています。オリコンでは初動売上8万6千枚で2位初登場。前作「Rebot」の12万3千枚(2位)よりダウン。

3位はまだまだ強い、DA PUMP「U.S.A.」が先週の3位からワンランクダウンながらもベスト3をキープ。You Tubeは相変わらず1位をキープ。実売数3位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数10位といずれも上位にランクインしています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位に坂本真綾「逆光」が初登場でランクイン。スマホ向けゲーム「Fate/Grand Order」第2部主題歌。作曲は元東京事変の伊澤一葉が手掛けたダイナミックなナンバーになっています。オリコンでは初動2万枚で初登場4位。シングルのベスト10入りは2015年の「幸せについて私が知っている5つの方法」以来4作ぶり。前作「ハロー、ハロー」の5千枚よりも大幅にアップしています。

5位はBUMP OF CHICKEN「望遠のマーチ」が初登場でランクイン。ゲーム「妖怪ウォッチワールド」のCMソングで配信限定のシングルとなります。実売数5位、ラジオオンエア数4位、Twitterつぶやき数78位を獲得。ちなみにオリコンチャートではデジタルシングルチャートで見事1位を獲得しています。

6位にはRosalia「R」が初登場でランクイン。漫画「BanG Dream!」から派生したプロジェクトにより登場したアニメキャラによるロックバンド。ただ楽曲的にはハイトーンのシンセが入ったトランスの雰囲気の強いナンバーに。実売数及びPCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数8位を獲得。オリコンでは初動売上3万2千枚で初登場3位。前作「Opera of the wasteland」の2万3千枚(5位)からアップしています。

9位にはサザンオールスターズ「壮年JUMP」が先週の40位からランクアップしてベスト10入り。配信限定のシングルで「三ツ矢サイダー」CMソング。ユーモラスたっぷりなタイトルもサザンらしいのですが、楽曲もどこか哀愁感とコミカルな感じが同居したサザンらしい曲に仕上がっています。もともと8月1日にリリース予定のベスト盤「海のOh,Yeah!!」の収録曲でしたが、評判のよさから急遽、シングルカットが決まったそうです。ちなみにオリコンではデジタルシングルチャートで4位に初登場しています。

最後10位には韓国の男性アイドルグループBOYFRIEND「CALL ME」が10位に初登場。実売数7位、Twitterつぶやき数45位にランクインしたものの、ほかは圏外という結果に。オリコンでは初動売上1万6千枚で7位初登場。前作「Try my wings」の1万9千枚(7位)からダウンしています。

続いてはロングヒット組ですが、今週、米津玄師「Lemon」は5位から7位にダウン。実売数10位、PCによるCD読取数3位を獲得していますが、You Tube再生回数は2位から3位にダウンしてしまいました。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日に!

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