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2018年7月10日 (火)

内省的な作風が印象的

Title:Ye
Musician:Kanye West

今、いろいろな意味でアメリカを最も騒がしているミュージシャン、Kanye West。先日もアメリカのトランプ大統領を支持するツイートを行い、賛否両論入り混じる大きな話題となりました。日本でも先日、RADWIMPSの「HINOMARU」をめぐる騒動があったばかりですが、カニエがトランプ支持という投稿をするのを日本で考えれば宇多田ヒカルとかミスチルの桜井とかB'zの稲葉とかそのレベルのミュージシャンが「安倍総理支持」とツイートしたと仮定すれば、確かに賛否入り混じる騒動になりそうな感じも・・・。もっとも彼の場合、アメリカにおける黒人差別という歴史と差別的な発言すら行うトランプ大統領という背景があるだけに、余計にその発言が反響を生み出しているのでしょうが。

そんな騒動の渦中にリリースされたのが今回のニューアルバム。カニエのアルバムといえば、以前、CDではアルバムを発表しないと表明したり、前作「The Life Of Pablo」では当初、自らが共同オーナーをつとめるストリーミングサービスTIDALのみで発表したりとこちらもいろいろな意味で世間を騒がしてきました。そして今回の作品はわずか7曲入り23分というミニアルバムのようなアルバム。今回も配信先行でのリリースとなりましたが、ただCDでのリリースも予定されているようです。

まず今回のアルバムで大きな特徴的なのは、アルバム全体として非常に内省的な内容になっているという点でした。まず冒頭を飾る「I Thought I About Killing You」からして、ストリングス主導のちょっと悲し気なトラックに、ラップはどちらかというとポエトリーリーディング的なもの。さらに今回、この曲のラストに自ら双極性障害であるという告白が大きな衝撃を与えています。

さらにこの曲をはじめ、全体的に美しいメロディーラインが耳を惹く曲が多く、例えば「Wouldn't Leave」も美しいボーカルトラックが強い印象に。この曲は妻のキムへの愛情を歌ったナンバーだそうで、そんな歌詞を反映するかのような実に美しい曲に仕上がっています。「Ghost Town」もメロディアスな歌が中心となった歌モノ。分厚くノイジーなトラックも耳に残るダイナミックなナンバーに仕上がっています。

ラストを飾る「Violet Crimes」は暴力的な犯罪というタイトルとは裏腹に、自分の娘2人に対する愛情を歌ったナンバー。こちらもピアノを中心とした美しいトラックに歌うようなラップに女性ボーカルによる歌も印象に残ります。いろいろと騒動を起こしているカニエ・ウェストもいっちょ前にパパさんなんだなぁ、ということでほほえましくすら感じてしまいます。

そんな訳で、歌詞自体も非常に内省的にまとめあげられており、メロディーやトラックもそれに合わせるようにメロディアスな雰囲気にまとまっている今回のアルバム。衝撃的な告白はあるものの、全体的に等身大の人間としてのカニエ・ウェストを描いており、受け止めやすい内容になっていたと思います。また全体的にメロディアスでポップな内容にまとまっていたため、HIP HOPリスナー以外にとっても十分楽しめる、いい意味で「ポップ」なアルバムになっていたと思います。23分という短さもいい意味で聴きやすい内容に仕上がっていた作品。良くも悪くも話題に上る彼ですが・・・やはりミュージシャンとしては一流であることを感じることが出来た傑作でした。

評価:★★★★★

KANYE WEST 過去の作品
GRADUATION
808s&Heartbreak
MY BEAUTIFUL DARK TWISTED FANTASY
YEEZUS
The Life Of Pablo

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