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2018年7月28日 (土)

バンドとしての到達点

Title:Wake Up
Musician:エレファントカシマシ

エレカシの楽曲といえば、いつもヘヴィー路線とポップ路線を行ったり来たりする、そんな印象があります。特に所属するレコード会社によって、その方向性が左右さるのが顕著にみて取れます。デビュー当初に所属していたEPIC時代はまさにヘヴィー路線一直線。メロディーにもポピュラリティーがあまりありません。ただ続くポニーキャニオン時代は一気にポップ寄りにシフト。ご存知「今宵の月のように」でブレイクを果たします。一方EM時代については迷走路線。ヘヴィーな路線に行ったかと思えば、ポップに回帰するなど、少々迷走気味なのが目立ちました。そして今所属しているユニバーサルについては、当初、ポップ路線にシフトしたかと思えば、最近ではヘヴィー路線に回帰した楽曲も目立つようになり、徐々に本来の意味でのエレカシらしさを取り戻しつつあります。

事実、前作「RAINBOW」ではそんな彼らのポップス路線とヘヴィー路線を上手く融合して、ここ最近のアルバムでは最高傑作といえるような作品に仕上がっていました。そしてそれに続く本作も、ヘヴィー路線とポップ路線をさらに上手く融合させ、ある意味、エレファントカシマシとしてはひとつの到達点に達したと思えるような傑作に仕上がっていました。

本作はいきなりタイトルチューンの「Wake Up」からスタートするのですが、まさにタイトル通り、リスナーをガツンと目覚めさせるよなヘヴィー路線のナンバー。続く「Easy Go」もヘヴィーなギターサウンドで疾走感あふれるパンキッシュな作風に仕上がっています。その後も「RESTART」などヘヴィーなバンドサウンドを聴かせる曲が目立っており、彼らの本質ともいえるヘヴィー路線をしっかりと聴かせるアルバムに仕上がっています。

ただ一方で気が付かされるのは、このようなヘヴィーなナンバーに関してもしっかりとメロディアスなメロディーラインがバックに流れており、意外とポップに聴けてしまう点でした。以前の彼ら、特にデビュー当初の彼らに関しては、ヘヴィーなサウンドが前に立ち、メロディーに関しては少々ポピュラリティーに欠けるような印象がありました。しかし今回のアルバムに収録している作品については、そんな彼らのヘヴィー路線とポップ路線が上手く融合され、ヘヴィーな作品でも意外とポップな感覚で聴けてしまう曲が並んでいました。

いままでポップ路線とヘヴィー路線の狭間で揺れていた彼らですが、前作「RAINBOW」もそうですが、ここに来てようやく両者の融合を果たすことが出来たように感じます。そういう意味では今回の作品はエレファントカシマシというバンドのひとつの到達点とも言えるかもしれません。また、それだけ今の彼らには勢いを感じます。前作「RAINBOW」もそんな彼らの勢いが全面にあらわれた作品でしたが、続く本作も楽曲全体から勢いを感じる傑作に仕上がっていました。

またそんな勢いに裏付けられたからでしょうか、とにかく本作では前向きな歌詞が目立ちました。タイトル曲「Wake Up」も

「勇気をもって立ち上がることが そうさ明日をオレたちを
風と切り開いてゆくのさ Wake Up Wake Up」

(「Wake Up」より 作詞 宮本浩次)

と非常にストレートに前向きな歌詞ですし、例えば「夢を追う旅人」でも

「さあ行こうぜ まだ見ぬ明日へ 友よ 夢を追う旅人よ」
(「夢を追う旅人」より 作詞 宮本浩次)

と非常に歌詞は前向き。もともとこれらの曲に限らず、エレカシの曲には力強く前を向いていく歌詞が多かったのですが、今回は特にその傾向が強く、それはそれだけバンドが前を向いて進んでいこうという勢いがあるから、という印象を受けました。

デビュー30年目にしてまさに頂点に立ちつつあるエレファントカシマシ。これだけのベテランバンドがこれだけ勢いにのっているという事実はある意味驚きなのですが、まだまだこれからの活躍も期待できそう。今後の彼らがますます楽しみになってくる傑作です。

評価:★★★★★

エレファントカシマシ 過去の作品
STARTING OVER
昇れる太陽
エレカシ自選作品集EPIC 創世記
エレカシ自選作品集PONY CANYON 浪漫記
エレカシ自選作品集EMI 胎動記

悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~
MASTERPIECE
THE BEST 2007-2012 俺たちの明日
the fighting men's chronicle special THE ELEPHANT KASHIMASHI LIVE BEST BOUT
RAINBOW
All Time Best Album THE FIGHTING MAN

そしてそんな彼らのデビュー30周年を記念して、トリビュートアルバムがリリースされました。

Title:エレファントカシマシ カヴァーアルバム3 ~A Tribute To The Elephant Kashimashi~

まずジャケットがなかなかいいですね。酔っ払いだらけの通勤電車の中、おそらくエレカシを聴いている男の人がまっすぐに力強く前を見つめているスタイルというのは、まさにエレカシの音楽性にもマッチしています。ちなみにこのジャケットを描いたのは「すごいよ!!マサルさん」や「ピューと吹く!ジャガー」でおなじみのうすた京介・・・って、こんな絵も描けるんだ!ちょっとビックリ。

タイトル通り、第3弾となるカバーアルバム。この手のアルバムが3作続くというのは少々異例なのですが、それだけエレカシが多くのミュージシャンに愛されているということなのでしょう。今回のアルバムではオリジナルラヴの田島貴男やスカパラ、斉藤和義や、ちょっと異例なところだとLittle Glee Monsterのmanakaが参加しています。

今回参加したどのミュージシャンも、しっかりとしたボーカルでエレカシの曲をカバーしており、大外れという曲はなかったのですが・・・ただ、基本的に原曲準拠のカバーで、目新しさはなく、無難という一言になってしまいます。まあ、安心して聴けるカバーではあるのですが、おもしろみはないかな。そういう意味ではちょっと残念に感じました。

ただそんな中でも田島貴男の「今宵の月のように」はホーンを入れて彼らしい爽快なカバーになっていましたし、斉藤和義の「かけだす男」も斉藤和義カラーをしっかり出して、すっかりせっちゃんの曲に仕上がっていました。ラストの村越"HARRY"弘明の「ファイティングマン」も基本的に原曲準拠ながらも彼のしゃがれ声が曲にピッタリとマッチし、しっかりと魅力的なカバーに仕上がっていました。

そんな魅力的なカバーもありましたが、アルバム全体としては無難な出来のカバーに。まあ悪いアルバムではないので、エレカシのファンや参加ミュージシャンのファンならば、それなりに楽しめるアルバムだったと思います。

評価:★★★★

エレファントカシマシ カヴァーアルバム2~A Tribute to The Elephant Kashimashi~

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