結成35年。超ベテランバンドの軌跡。
Title:GREATEST HITS VOL.1
Musician:The Flaming Lips
結成から35年。サイケデリックなサウンドとキュートなメロディーラインで根強い支持を誇るバンド、The Flaming Lips。その彼らの初となるオールタイムベストがリリースされました。CDでは3枚組となり、全52曲3時間40分強というかなりボリューミーな内容がまずは目をひく今回のベスト盤。さすが30年以上のキャリアを誇る超ベテランバンドなだけあります。
楽曲はワーナー移籍後のもの。1992年にリリースされたアルバム「Hit to Death in the Future Head」以降の曲が収録されています。CDのうち1枚目2枚目は、その「Hit to Death in the Future Head」から最新アルバム「Oczy Mlody」までの曲がリリース順に収録され、彼らの歩みがわかる構成に。そして3枚目のCDにはレア音源や未発表曲などの楽曲が収録されています。
The Flaming Lipsといえばアルバム毎にいろいろなタイプの楽曲を聴かせてくれているバンドなのですが、ベスト盤を聴くと、まさにバラエティーあふれる楽曲が並んでおり、彼らの音楽性の広さを強く感じる内容になっていました。1曲目を飾る「Talkin' 'Bout The Smiling Deathporn Immortality Blues (Everyone Wants To Live Forever)」はギターノイズが楽曲を埋め尽くす、まさにシューゲイザー系直系の楽曲からスタート。初期の作品に関しては、まさにそんなシューゲイザー系からの影響を受けたような楽曲が並んでいます。
ただそんな雰囲気が徐々に変わってくるのが「Brainville」あたりから。サイケな作風のアレンジにはなっているものの、アコギに鈴の音色も鳴り響く明るい雰囲気のポップテイストの強い楽曲で、ビートルズからの影響も強く感じる本作は、初期のギターロック路線からの新たな方向性を感じさせる曲調となっています。
その後もソウルのテイストを加えてきた「Riding To Work In The Year 2025」、アコースティックなテイストながらもリズムは打ち込みというアンバランスさがユニークな「Yoshimi Battles The Pink Robots Pt.1」、ビートルズ直系のポップな作風が耳を惹く「The Yeah Yeah Yeah Song」、60年代テイストを感じるちょっとレトロな雰囲気の「Silver Trembling Hands」、さらに最近の曲では「Always There In Our Hearts」や「How??」のようにエレクトロなサウンドも取り入れています。
3枚目のレア音源でもこのバラエティー性は顕著。「Jets (Cupid's Kiss Vs The Psyche Of Death)」はブルージーなギターを聴かせてくれますし、「If I Only Had A Brain」のようなまるでキッズソングのような曲も。さらにラストは「Silent Night / Lord, Can You Hear Me」(「きよしこの夜」ですね)という日本人にもおなじみのクリスマスソングで締めくくるという展開もユニークです。
ただそんなバラエティーあふれる作風が特徴な彼らですが、基本的にはどの曲もエフェクトをかけまくったサウンドでサイケな雰囲気を醸し出しつつ、メロディーは非常にキュートでポップで耳を惹くというのが共通項。このサイケだけどとてもポップという方向性は「Frogs」など初期の作品でも既に確立されており、例えば「Waitin’ For A Superman (Is It Getting Heavy?)」や「Do You Realize??」など美しいメロディーラインがとにかく魅力的という曲がこのアルバムの中でも多く収録されています。
このバラエティー富んだ作風とポップでキュートなメロディーラインという大きな要素のため、今回のアルバム、4時間近くにも及ぶボリューミーな内容ながらも最後までほとんどだれることなく、一気に聴ききれてしまう内容になっていました。そのサイケでドリーミーなサウンドにキュートなメロディーという実に甘美的な雰囲気を味わえるアルバムで、しっかりとThe Flaming Lipsの魅力が伝わってきたベストアルバムだったと思います。
The Flaming Lipsといえばゴム製の骸骨にUSBをつけてEPとしてリリースしたり、さらには本物の骸骨の中に24時間にも及ぶ楽曲をおさめてリリースしたりと、特に最近では奇抜な行動が目立つバンドなだけに、少々とっかかりずらいという印象を受ける方もいるかもしれません。実際、グラミー賞を受賞した「Yoshimi Battles the Pink Robots」やその後のオリジナルアルバムではそれなりのヒットを記録したものの、アメリカビルボードでベスト10入りしているオリジナルアルバムは2009年の「Embryonic」のみと、どちらかというとやはり「音楽ファン受けが強いバンド」という印象も否めません。ただこのベスト盤を聴けば、確かに癖の強さがある部分もありますが、決して聴きにくいバンドではなく、むしろポップなメロディーラインは幅広い層でもアピールできる魅力のあるバンドであることに気が付くのではないでしょうか。さすがに3枚組3時間40分強というボリュームは彼らへの入り口としては少々お勧めしにくい部分もあるのですが・・・興味があればぜひともチェックしてほしい、そんなベスト盤です。
評価:★★★★★
THE FLAMING LIPS 過去の作品
EMBRYONIC
The Dark Side Of The Moon
THE FLAMING LIPS AND HEADY FWENDS(ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち)
THE TERROR
With a Little Help From My Fwends
Oczy Mlody
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