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2018年7月

2018年7月31日 (火)

神様のお気に入り!

Title:God's Favorite Customer
Musician:Father John Misty

前作「Pure Comedy」が大きな評価を受けた元Fleet Foxesのドラマー、J.Tillmanのソロプロジェクト、Father John Misty。本作はFather John Misty名義となる4作目のアルバム。まずタイトルがなかなかユニークでどこか皮肉めいています。邦題をつけると「神様のお気に入り!」となりそう・・・これだと皮肉めいた雰囲気が消えてしまいますが・・・。

ただ肝心の楽曲は絶妙なメロディーセンスが冴え、非常に丁寧につくられたサウンドをバックに魅力的に聴かせるポップスが主軸となっています。まず序盤、耳に残るのが先行シングルでもあり自らの本名を冠した題が印象的な「Mr.Tillman」。アコギを加えたバンドサウンドの中、ピアノの奏でるフレーズがまず美しく印象に残りますし、そのピアノにあわせるように歌われるメロディーラインもどこか切なさが感じられる、耳に残るフレーズとなっています。

続く「Just Dumb Enough To Try」もピアノをバックにフォーキーに聴かせるナンバー。こちらもピアノをバックに丁寧に歌われるメロディーに切なさとある種の郷愁感を覚えさせる楽曲になっています。

その後も基本的にピアノやアコースティックギターを主軸にしっかりとメロディーラインを聴かせるポップスが主軸。シンプルながらもどこか懐かしさを感じさせるサウンドは60年代のビートルズのテイストも感じさせます。決して目新しくはないのですが、とにかくメロディーラインの良さに惹きつけられるポップソングが並んでいます。

そして後半の聴かせどころはやはりタイトルチューンの「God's Favorite Customer」でしょう。アコースティックなサウンドをバックに、フォーキーな雰囲気で切なく淡々と歌うナンバー。もともと彼自身、牧師を目指していた過去を持つそうで、そんな「神様のお気に入り」だった彼が、神様から距離を置いていくに至った思いを歌ったナンバーだとか。メロディーやサウンドからも彼の思いを感じ取ることの出来るこのナンバーはまさに後半のハイライトとなっています。

終盤の「The Songwriter」もピアノをバックにしんみりと聴かせるバラードナンバー。そしてラストを締めくくる「We're Only People(And There's Not Much Anyone Can Do About That)」などもまさに70年代のフォークロックを彷彿とさせるような聴かせるナンバーに。最初から最後まで60年代や70年代の匂いを醸し出しながら、丁寧に聴かせる歌が魅力的な作品に仕上がっていました。

そんな訳で、比較的淡々と進んでいくアルバムで決して派手さはありません。また目新しさという観点からも薄味かもしれません。ただ間違いなく美しいメロディーラインが耳を惹き、終わった後、満足感あふれる気持ちになるアルバムだったと思います。いい意味で比較的広い層にアピールできるようなポピュラリティーあるアルバム。今回も前作に続いて傑作に仕上がっていました。

評価:★★★★★

Father John Misty 過去の作品
Pure Comedy

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2018年7月30日 (月)

ジャケットは「ソフトロック」風

Title:Age Of
Musician:Oneohtrix Point Never

今回紹介するのはOneohtrix Point Neverというミュージシャン。ニューヨークはブルックリンを拠点に活動するダニエル・ロパティンというミュージシャンによるソロプロジェクトだそうです。某音楽専門誌で紹介されており、今回気になって聴いてみたのですが、完全に音を聴くのも今回ははじめて。どんなミュージシャンかわからないまま、アルバムを聴いてみました。

まず目を惹くのはジャケット写真。清純そうな女性3人が並び斜め上を見上げているそのジャケットは、いかにも70年代あたりのフォークソング、あるいはその後のソフトロックあたりを彷彿とさせます。それだけに最初は「歌モノか?」と想像しつつ聴いてみました。

そして聴き始めたアルバム。最初に飛び込んできたのはチェンバロの音色。メロディアスに、少々中東風な雰囲気を醸し出しつつ楽曲は進んでいくのですが基本的にはインスト路線。さらに途中から微妙にサウンドに歪みが生じだして「あれ?」と思わせます。

続く「Babylon」は男性ボーカルでしんみりと聴かせる歌モノ。こちらも少々エスニックな雰囲気が流れつつ、メロはしっかりと聴かせるのですが、こちらもボーカルにはエフェクトがかけられており、サウンドにはノイズも流れたりして、若干サイケな雰囲気を感じます。

さらに「実験的な作風」と言えるのが3曲目「Manifold」。ピアノの音色を美しく聴かせつつ、エレクトロのサウンドを重ねるインスト路線なのですが、バックにはエフェクトをかけてゆがませたボーカルがサンプリングされているなど「ポップ」な雰囲気とは程遠いサウンドがほどこされており、一種異様な雰囲気を感じさせる曲になっています。

その後もエレクトロサウンドをベースにしつつノイズやアンビエントなどの影響が強い曲が目立ちます。特に中盤以降「We'll Take It」「Same」「Still Stuff That Doesn't Happen」などメタリックなサウンドがインパクトを持った曲も並びました。

ただアルバム全体を流れるのはどこか東洋風、エスニックな感じ。1曲目のタイトルチューン「Age Of」もそうでしたが、シンセによるインストチューン「Toys2」もどこか東洋風な雰囲気を感じますし、「RayCats」なども実験的なエレクトロチューンながらも琴の音色を思わせるようなストリングスが流れ、和風な雰囲気すら感じます。東洋風といっても、どちらかというと西洋人が見た東洋で、中東も中国も日本もごちゃまぜになったような「東洋風」なのですが、独特なエスニックな雰囲気が大きな魅力でした。

また「実験的」という形容詞が似合いアルバムではあるのですが、全体的にどこかメロディアスでポップに聴かせる感があるのも大きな魅力。数少ない歌モノの「Babylon」もそうですし、「Black Snow」などもメロディーは実にポップで魅力的な作風になっていますし、「Last Known Image of a Song」なども笛の音や鈴の音、シンセ、ストリングスやパーカッションの音などが入り混じるインストですが、目立ったメロディーはないもののどこか郷愁感があり、ポピュラティーすら感じさせる楽曲になっていました。

そんな訳でアルバム全体的に実験的な作風が目立つものの、意外と聴きやすくポップという印象すら受けるアルバムになっています。ジャケット写真で「ソフトロックのアルバムか?」と誤解して聴いた方も、意外と気に入る・・・かも???

評価:★★★★★

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2018年7月29日 (日)

バンドKIRINJIの3枚目

Title:愛をあるだけ、すべて
Musician:KIRINJI

堀込泰行脱退後、6人組バンドとなったKIRINJI。ただ、参加メンバーがそれぞれ個々でも活躍しているスーパーグループのようなグループだっただけに永続的に続くのか少々心配だったのですが、その不安は一部的中してしまい、昨年、残念ながらメンバーのひとり、コトリンゴが脱退してしまいました。

ただその後ももちろんKIRINJIとしての活動はコンスタントに進み、このたび約1年10か月ぶりとなるニューアルバムが無事リリース。これでKIRINJIとなってから3枚目のアルバムとなりました。

さてそんなKIRINJIですが、前作「ネオ」では堀込高樹以外のメンバーが積極的に参加。非常にバリエーション豊富なアルバムに仕上がり、バンドKIRINJIとしての新たな一歩を強く感じさせる作品に仕上がっていました。そしてその後リリースされたニューアルバムもそんな前作の方向性を踏襲。堀込高樹以外のバンドメンバーもボーカルとして積極的に参加する内容となっており、バンドKIRINJIならではのバラエティーあふれる内容になっていました。

まず序盤の「AIの逃避行」では、80年代テイストを感じる打ち込みのディスコチューン。女性ラップグループのCharisma.comが参加しており、楽曲に彩りを与えています。「After the Party」は弓木英梨乃のボーカル曲。メロウなシティポップ風のナンバーは、ある意味堀込高樹の得意路線なのですが、女性ボーカル曲になることにより雰囲気がグッと変わります。

「悪夢を見るチーズ」もこのタイトルからしてユニークですが、ファンキーなリズムに千ヶ崎学がボーカルをとることによりアルバムの中でひとつのインパクトとなっています。終盤もエレクトロによるインストナンバー「ペーパープレーン」を挟み、ラストの「silver girl」では軽快なエレクトロポップながらもスティールパンが絡み、独特なさわやかさを感じるナンバー。この曲では、堀込高樹がオートチューンを用いてボーカルをとっており、スティールパンの音色とあわせてどこか南国風な雰囲気を感じるナンバーに仕上がっています。オートチューンのボーカルというのもまた、新たな試みといっていいでしょう。

一方ではもちろん昔からの「キリンジらしさ」を感じる曲もあり、その典型例が「非ゼロ和ゲーム」。経済学のゲーム理論で用いる専門用語からタイトルがとられていますが、歌詞にはちょっと合わなそうな硬派な言葉を取り入れてくるあたり、堀込高樹らしい感じ。ちなみにこの意味を曲の中で詳しく解説するのではなく「調べろ」「ぐぐれよ」とリスナーを突き放しているのも彼らしい感じでしょうか。メロディー自体も昔ながらも「キリンジ」らしいシティポップナンバーになっています。

ちなみに「ゼロ和ゲーム」とはプレイヤーの参加者のすべての取り分を合計するとゼロになるゲームのこと。典型例は麻雀ですね。卓を囲んだ4人の得点を合計すると必ずゼロになります。要するに誰から勝った場合、必ずほかのだれかが負けているような状況のこと。「非ゼロ和ゲーム」とはその逆。誰か1人の勝ちがほかの人の負けになるわけではなく、全員が勝利できるようなゲームのこと。歌詞の中に出てくる「一枚のピザ 皆でシェアすれば だれも泣かない」というのはちょっと違うような気もするのですが、誰もが利益を得れるような、そんな状況のことを「非ゼロ和」と言います。

そんな感じで前作から引き続き、バンドとしてのKIRINJIの今後の方向性を強く示されたような作品になっています。おそらく今後も彼らの作品は今回の作品のように、メンバーそれぞれが参加しているバラエティーに富んだ作風になるのでしょうね。ただちょっと気になるのは、2年近くのインターバルを経た新作でありながらも全9曲入りとちょっと曲数が少なめだったこと。メンバーそれぞれ忙しかったからでしょうか。ちょっと気になってしまいました。

ただバンドとなってオリジナルアルバムはこれで3作目。当初は正直なところ、どこまで続けることができるのかなぁ、といぶかしく思っていた部分もあったのですが、今後もコンスタントにKIRINJIとしての活動は続きそうですね。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

キリンジ(KIRINJI) 過去の作品
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
7-seven-
BUOYANCY
SONGBOOK
SUPERVIEW
Ten
フリーソウル・キリンジ
11
EXTRA11
ネオ

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2018年7月28日 (土)

バンドとしての到達点

Title:Wake Up
Musician:エレファントカシマシ

エレカシの楽曲といえば、いつもヘヴィー路線とポップ路線を行ったり来たりする、そんな印象があります。特に所属するレコード会社によって、その方向性が左右さるのが顕著にみて取れます。デビュー当初に所属していたEPIC時代はまさにヘヴィー路線一直線。メロディーにもポピュラリティーがあまりありません。ただ続くポニーキャニオン時代は一気にポップ寄りにシフト。ご存知「今宵の月のように」でブレイクを果たします。一方EM時代については迷走路線。ヘヴィーな路線に行ったかと思えば、ポップに回帰するなど、少々迷走気味なのが目立ちました。そして今所属しているユニバーサルについては、当初、ポップ路線にシフトしたかと思えば、最近ではヘヴィー路線に回帰した楽曲も目立つようになり、徐々に本来の意味でのエレカシらしさを取り戻しつつあります。

事実、前作「RAINBOW」ではそんな彼らのポップス路線とヘヴィー路線を上手く融合して、ここ最近のアルバムでは最高傑作といえるような作品に仕上がっていました。そしてそれに続く本作も、ヘヴィー路線とポップ路線をさらに上手く融合させ、ある意味、エレファントカシマシとしてはひとつの到達点に達したと思えるような傑作に仕上がっていました。

本作はいきなりタイトルチューンの「Wake Up」からスタートするのですが、まさにタイトル通り、リスナーをガツンと目覚めさせるよなヘヴィー路線のナンバー。続く「Easy Go」もヘヴィーなギターサウンドで疾走感あふれるパンキッシュな作風に仕上がっています。その後も「RESTART」などヘヴィーなバンドサウンドを聴かせる曲が目立っており、彼らの本質ともいえるヘヴィー路線をしっかりと聴かせるアルバムに仕上がっています。

ただ一方で気が付かされるのは、このようなヘヴィーなナンバーに関してもしっかりとメロディアスなメロディーラインがバックに流れており、意外とポップに聴けてしまう点でした。以前の彼ら、特にデビュー当初の彼らに関しては、ヘヴィーなサウンドが前に立ち、メロディーに関しては少々ポピュラリティーに欠けるような印象がありました。しかし今回のアルバムに収録している作品については、そんな彼らのヘヴィー路線とポップ路線が上手く融合され、ヘヴィーな作品でも意外とポップな感覚で聴けてしまう曲が並んでいました。

いままでポップ路線とヘヴィー路線の狭間で揺れていた彼らですが、前作「RAINBOW」もそうですが、ここに来てようやく両者の融合を果たすことが出来たように感じます。そういう意味では今回の作品はエレファントカシマシというバンドのひとつの到達点とも言えるかもしれません。また、それだけ今の彼らには勢いを感じます。前作「RAINBOW」もそんな彼らの勢いが全面にあらわれた作品でしたが、続く本作も楽曲全体から勢いを感じる傑作に仕上がっていました。

またそんな勢いに裏付けられたからでしょうか、とにかく本作では前向きな歌詞が目立ちました。タイトル曲「Wake Up」も

「勇気をもって立ち上がることが そうさ明日をオレたちを
風と切り開いてゆくのさ Wake Up Wake Up」

(「Wake Up」より 作詞 宮本浩次)

と非常にストレートに前向きな歌詞ですし、例えば「夢を追う旅人」でも

「さあ行こうぜ まだ見ぬ明日へ 友よ 夢を追う旅人よ」
(「夢を追う旅人」より 作詞 宮本浩次)

と非常に歌詞は前向き。もともとこれらの曲に限らず、エレカシの曲には力強く前を向いていく歌詞が多かったのですが、今回は特にその傾向が強く、それはそれだけバンドが前を向いて進んでいこうという勢いがあるから、という印象を受けました。

デビュー30年目にしてまさに頂点に立ちつつあるエレファントカシマシ。これだけのベテランバンドがこれだけ勢いにのっているという事実はある意味驚きなのですが、まだまだこれからの活躍も期待できそう。今後の彼らがますます楽しみになってくる傑作です。

評価:★★★★★

エレファントカシマシ 過去の作品
STARTING OVER
昇れる太陽
エレカシ自選作品集EPIC 創世記
エレカシ自選作品集PONY CANYON 浪漫記
エレカシ自選作品集EMI 胎動記

悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~
MASTERPIECE
THE BEST 2007-2012 俺たちの明日
the fighting men's chronicle special THE ELEPHANT KASHIMASHI LIVE BEST BOUT
RAINBOW
All Time Best Album THE FIGHTING MAN

そしてそんな彼らのデビュー30周年を記念して、トリビュートアルバムがリリースされました。

Title:エレファントカシマシ カヴァーアルバム3 ~A Tribute To The Elephant Kashimashi~

まずジャケットがなかなかいいですね。酔っ払いだらけの通勤電車の中、おそらくエレカシを聴いている男の人がまっすぐに力強く前を見つめているスタイルというのは、まさにエレカシの音楽性にもマッチしています。ちなみにこのジャケットを描いたのは「すごいよ!!マサルさん」や「ピューと吹く!ジャガー」でおなじみのうすた京介・・・って、こんな絵も描けるんだ!ちょっとビックリ。

タイトル通り、第3弾となるカバーアルバム。この手のアルバムが3作続くというのは少々異例なのですが、それだけエレカシが多くのミュージシャンに愛されているということなのでしょう。今回のアルバムではオリジナルラヴの田島貴男やスカパラ、斉藤和義や、ちょっと異例なところだとLittle Glee Monsterのmanakaが参加しています。

今回参加したどのミュージシャンも、しっかりとしたボーカルでエレカシの曲をカバーしており、大外れという曲はなかったのですが・・・ただ、基本的に原曲準拠のカバーで、目新しさはなく、無難という一言になってしまいます。まあ、安心して聴けるカバーではあるのですが、おもしろみはないかな。そういう意味ではちょっと残念に感じました。

ただそんな中でも田島貴男の「今宵の月のように」はホーンを入れて彼らしい爽快なカバーになっていましたし、斉藤和義の「かけだす男」も斉藤和義カラーをしっかり出して、すっかりせっちゃんの曲に仕上がっていました。ラストの村越"HARRY"弘明の「ファイティングマン」も基本的に原曲準拠ながらも彼のしゃがれ声が曲にピッタリとマッチし、しっかりと魅力的なカバーに仕上がっていました。

そんな魅力的なカバーもありましたが、アルバム全体としては無難な出来のカバーに。まあ悪いアルバムではないので、エレカシのファンや参加ミュージシャンのファンならば、それなりに楽しめるアルバムだったと思います。

評価:★★★★

エレファントカシマシ カヴァーアルバム2~A Tribute to The Elephant Kashimashi~

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2018年7月27日 (金)

話題のアルバムから12年ぶり!

Title:WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE
Musician:STRUGGLE FOR PRIDE

圧巻ともいえるノイズサウンドで埋め尽くされたハードコアなサウンドが特徴のロックバンド、STRUGGLE FOR PRIDE。今や伝説とも言えるロックフェス、Raw Lifeへの出演でも注目を集めたほか、2006年にリリースされたアルバム「YOU BARK WE BITE」も大きな話題となりました。

しかし、その後は活動も停滞。時折その名前を聴くことはありましたが音源はリリースされず、ファンをやきもきさせていました。そして12年の月日を経て、待ちに待ったニューアルバムがついにリリース。ファンを歓喜させました。

実は私もそんな歓喜したリスナーの一人。12年前のアルバム「YOU BARK WE BITE」は偶然、某CDショップの店頭で試聴したのですが、その音の世界で圧巻し、その場で衝動買い。そして楽曲にいきなり魅了されてしまいました。それだけに久々となる今回のアルバムももちろん即買い。私にとっても待ちに待った作品でした。

そんな12年ぶりとなるアルバムですが、彼らの楽曲の方向性に基本的な変化はありません。アルバムはいきなり激しいギターノイズの嵐からスタートし、途中からそれにへヴィーなドラミングが加わります。そんなリスナーの鼓膜をつんざくようなダイナミックなサウンドが大きな魅力なのですが、一方、そんなノイズの後ろでしっかりと「メロディー」が鳴っているだけに実は意外と聴きやすさという側面を感じるのも彼らの大きな魅力。例えば「FALSEHOOD」はへヴィーなギターノイズを取り去れば、そこにはパンクロックのメロディーが流れてくることは聴いているだけで容易に想像できます。

前作「YOU BARK WE BITE」はそんな迫力あるノイズサウンドで終始押し切ったアルバムに仕上がっていましたが、今回のアルバムの特徴として彼らの曲の合間にDJ HIGHSCHOOLやトラックメイカーのBUSHMIND、DRUNK BIRDS、FEBBという盟友たちの曲が合間に収録されており、一種のオムニバスアルバムのような雰囲気すらあります。特にこれらの曲はSFBとはタイプが大きくことなり、DJ HIGHSCHOOLやBUSHMINDはHIP HOP的なエレクトロサウンド。DRUNK BIRDSはなんとフォークソング(!)でアコースティックでしんみり聴かせる歌モノ。FEBBはラップとスタイルが大きく異なります。

正直言って、ここらへんの曲に関しては最初は大きく戸惑いました。アルバムの流れの中で明らかに分断されているようにも感じましたし、そのためアルバムの統一感もちょっと欠けるような部分があったのも否めません。ただ、ノイズ一辺倒となりがちなSFBのアルバムの中でちょうどよいインパクトとなっており、またもちろん楽曲の出来も文句なしの内容でしたので、2度3度聴くうちに徐々に違和感もなくなってきました。

またSFBの楽曲自体も前作以上にバリエーションを感じます。前作も激しいノイズの中でなんとボーカルにカヒミ・カリイが参加。彼女のウィスパーボイスと強烈なノイズという真逆の組み合わせがユニークだったのですが、彼女は今回も参加。ただ今回はスカ風のリズムの静かな楽曲の中でのボーカルとして参加しており、強烈なノイズとの組み合わせはありませんでした。

「NOTHING TAKES THE PLACE OF YOU」では元スカパラの杉村ルイがボーカルで参加。こちらもノイズではなくガレージ風なバンドサウンドでちょっとくすんだ雰囲気の中、静かに聴かせる歌モノになっています。ノイズと歌モノの組み合わせという意味ではEGO-WRAPPIN'中納良恵が参加した「MAKE A RAINBOW」がまさにそれ。ベニー・シングスというポップミュージシャンのカバーなだけに彼女の歌は非常にポップなのですが、そこに強烈なギターノイズを乗っけるというアンバランスさがユニークなナンバーになっていました。

さらに今回、Disc2として昨年12月にON AIR WEST SHIBUYAで行われたライブの模様を収録したライブ盤がついています。こちら、先日亡くなったラッパーのECDが最後に参加したライブだったとか・・・彼の声もしっかりと残されている貴重な音源なのですが、ライブの方も迫力満点。彼らのライブは一度も見たことないのですが、一度是非見たくなってしまいました。

そんな訳で12年ぶりの新作となりましたが、今回もまさに大満足の傑作アルバム。そのギターノイズに終始圧巻させられるアルバムになっていました。ほかのミュージシャンの参加もあり、アルバム全体の統一感にはちょっと欠ける部分もあるのですが、全50分の内容にSFBのノイズだけだとさすがに胸やけしそうなので、そういう意味ではちょうどよい「箸休め」的な展開とも言えたのかも。音源がリリースされず「伝説のバンド」的な扱いになりかけていた彼らですが、しっかりと現役感を見せることが出来たアルバム。その内容も文句なしです。

評価:★★★★★

Title:YOU BARK,YOU BITE
Musician:STRUGGLE FOR PRIDE

そんな彼らの2006年にリリースした1stアルバムがリイシュー。長らく廃盤になっていたようで「幻の1st」とも言われていたようです。今回、オリジナルリリース時は無音となっていた80年代関西ハードコア・シーンの重鎮MOBSの「NO MORE HEROES」のカバーを新たに収録されています(オリジナルでは無音カバーとなっていた理由がいまひとつ不明だったのですが・・・おそらく許諾が取れなかったためと思われますが・・・)。

上にも書いた通り、本作を私はリアルタイムで聴いてすっかりはまってしまいました。その当時も同サイトで感想を書いていました。駄文ですが、元のサイトが既に閉鎖されてしまいましたので、その感想を再掲します。

先日、CD屋へ行ったら、「アンダーグラウンドシーンでの最重要バンド」というPOPが出ていて、かなりプッシュされていました。このバンドについては、ほとんど初耳だったのですが、どうも気になってしまい、また、それ以上に、最近気に入っているMSCの漢が参加しているということで半分、衝動買い的に購入してしまいました。ところが、これが大正解!!もう、この作品、まさに鳥肌モノの1枚でした。

冒頭、カヒミ・カリイの朗読からスタート。彼女の、あのか弱いウイスパーボイスが淡々と続くのか、と思いきや、突如、ギターの轟音ノイズが入ってきます。そして、そのまま2曲目へと突入。この「BLOCKPAIN」では、冒頭、漢の攻撃的、暴力的なラップがノイズに重なるように入っており、耳へのある種パンチのように、衝撃を受けることとなります。その後も、ただただギターのノイズの連続。しかし、それが8曲目「MOBS」でピタっととまります。この曲、ただただ無音。しかし、いままでの耳をつんざくような曲の直後に入っているこの「無音」がなんともいえずに不気味で、無音でありながらも、しっかりとアルバムの中の1つの曲として、私たちになんともいえない衝撃を与えてくれます。音がないということが、逆にこれほど雄弁に彼らの主張を伝えてくるとは・・・まさに驚きの瞬間でした。

彼らの音楽は、いわゆるノイズミュージック。私自身、実はノイズミュージックに関しては、決して好きなジャンルではありません。にも関わらず、彼らの曲に関しては、すっかりとはまってしまいました。それは、彼らの楽曲が、ただただ轟音を流しているだけではなく、その背後には、しっかりとバンドサウンドがひとつのグルーヴを作り出しており、そして、さらに彼らの楽曲には、ギターノイズの洪水ながらも、一方では、どこか単純な音の洪水にとどまらないビートを感じることも出来、ノイズとはいえ、既存のノイズ系のミュージシャンとは全く異なる個性を感じることが出来たからではないでしょうか。

全く新しい音楽に出会えたような、衝撃的なアルバムでした。正直、とっつきにくいジャンルだと思うし、はまる人ははまるけど、はまらない人は・・・という感じだと思います。ただ、もし興味を持ったら、是非一度聴いてみてください。「アンダーグラウンドシーンでの最重要バンド」というあおり文句が嘘ではないことがわかります。ちょっと遅ればせながら、すごいバンドに出会ってしまいました。これからも注目していきたいところです。

当時の感想にも書いた通り、「MOBS」の無音カバー、ノイズ続きのアルバムの中で無音であることがちょうどよいインパクトになっていたと思っていただけに、実は実際のカバーを入れた今回のリイシューよりもオリジナルの方がよかったかも、とすら思っています。本来の意図とは少々異なるのかもしれませんが。

ただ、上でも書いた通り、個人的にはまさに衝撃的だったアルバム。その衝撃は久しぶりに聴いたこのリイシューでもほとんど変わりませんでした。長らく廃盤の状態だったようですが、今回のリイシューで一気に手に取りやすくなったようですので、これを機に是非!まさに衝撃の走る傑作です。

評価:★★★★★

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2018年7月26日 (木)

アイドルとしては珍しい久々のアルバム

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週は実に4年ぶりとなるニューアルバムが1位獲得です。

今週の1位はKAT-TUN「CAST」が獲得。6人組としてデビューしたはずなのについに3人組となってしまったKAT-TUNのニューアルバム。途中ベスト盤のリリースはあったものの、オリジナルアルバムとしては4年ぶりと、アイドルとしては珍しい長いスパンでのリリースとなりました。初動売上は12万8千枚。直近のベストアルバム「10TH ANNIVERSARY BEST “10Ks”」の16万7千枚(1位)からはダウンとなりましたが、オリジナルアルバムとしては前作となる「come Here」の7万5千枚(1位)からは大幅増となりました。

2位初登場はUVERworldのベストアルバム「ALL TIME BEST」。2009年にリリースしたベストアルバム「Neo SOUND BEST」以来2枚目となるベストアルバム。初動売上は7万9千枚。直近のオリジナルアルバム「TYCOON」の8万2千枚(2位)よりダウン。またベスト盤としての前作「Neo SOUND BEST」の10万枚(3位)からも大きくダウンしています。

3位にはFling Posse・麻天狼「Fling Posse VS 麻天狼」がランクイン。男性声優キャラによるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」からのキャラソンでBattle Seasonの第2弾だそうです。初動売上は5万5千枚。同シリーズの前作Buster Bros!!!・MAD TRIGGER CREW「Buster Bros!!! VS MAD TRIGGER CREW」の1万3千枚より大幅にアップしました。

続いて4位以下の初登場です。4位には韓国のアイドルグループSEVENTEENの韓国リリースのミニアルバム「YOU MAY DREAM」がランクイン。初動売上は3万5千枚。直近の国内盤「WE MAKE YOU」の12万7千枚(2位)からはさすがに大きくダウンしています。

7位初登場は「SPLATOON2 ORIGINAL SOUNDTRACK -Octotune-」。Nintendo Switch用ゲームソフト任天堂「SPLATOON2」のサントラ盤。初動売上1万9千枚。同じ「SPLATOON2」のサントラ盤としての前作「Splatoon2 ORIGINAL SOUNDTRACK -Splatune2-」の1万8千枚(4位)から微増。

8位には男性アイドルグループLead「MILESTONE」がランクイン。初動売上1万2千枚は前作「THE SHOW CASE」の2万3千枚(2位)からダウン。

最後、9位10位にはチェッカーズとしてのデビュー35周年、ソロデビュー25周年を記念してリリースされた藤井フミヤの2枚組のベストアルバム「FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST “25/35" R盤」「FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST “25/35" L盤」がそれぞれランクインしています。ベスト盤としては10年前の「FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST "15/25"」以来となります。初動売上はそれぞれ1万1千枚。直近作はオリジナルアルバムの「大人ロック」でこちらの1万6千枚(6位)よりダウン。ベスト盤としての前作「FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST "15/25"」の2万2千枚(8位)からもダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年7月25日 (水)

突然の1位は誰?・・・と思いきや

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

いきなり1位に見知らぬ名前のミュージシャンが入ってきたかと思いきや・・・

今週1位に初登場でランクインしてきたのはKEN☆Tackey「逆転ラバーズ」。誰?(・・・といっても上のジャケ写を見れば一目瞭然でしょうが)と思いきや、こちらはV6三宅健と滝沢秀明による新ユニット。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数3位、ラジオオンエア数20位を記録しています。オリコンでも初動売上10万4千枚で見事1位を獲得しています。ちなみにサビの歌詞「Can touch it! Can touch it! Can take it!」は明らかに「KEN☆Tackey」と聴こえるように歌っていますが、結果として「倦怠期!倦怠期!倦怠期!」って歌えるように聴こえちゃってます(^^;;

2位は先週に引き続きDA PUMP「U.S.A.」が獲得。実売数3位、ラジオオンエア数24位、PCによるCD読取数5位、Twitterつぶやき数8位そしてYou Tube再生回数は変わらず1位を獲得。正直なところ、そろそろ1位をとらせてあげたい気が。ちなみにオリコンでは週間シングルチャートでは20位に留まっていますが、デジタルシングルチャートでは見事1位を獲得しています。

3位はハロプロ系女性アイドルグループつばきファクトリー「デートの日は二度くらいシャワーして出かけたい」が初登場でランクイン。実売数2位、PCによるCD読取数38位、Twitterつぶやき数86位。オリコンでは初動売上5万8千枚で2位初登場。前作「低音火傷」の初動6万8千枚(3位)よりダウン。

続いて4位以下の初登場曲です。4位はEXILEの事務所LDH所属のTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「HARD HIT」が初登場でランクイン。TBS夏サカス2018テーマソング。実売数4位、ラジオオンエア数14位、PCによるCD読取数21位、Twitterつぶやき数42位。へヴィーなHIP HOP風のトラックでラップも入って・・・かと思8位えばメロウな歌パートが完全にJ-POPなのがある意味、売れ線らしい感じ。オリコンでは初動5万1千枚で3位初登場。前作「Fandango」の2万9千枚(2位)よりアップ。

7位は[ALEXANDROS]「Mosquito Bite」が先週の41位からCDリリースにあわせてランクアップしベスト10入り。映画「BLEACH」主題歌。ギターリフ主導で英語詞メインの洋楽テイストも強いかなりカッコいいロックチューンになっています。実売数9位、ラジオオンエア数3位、PCによるCD読取数7位、Tiwtterつぶやき数61位。オリコンでは初動1万5千枚で7位初登場。前作「KABUTO」の1万3千枚(8位)から若干のアップとなりました。

8位にはゆずの配信限定シングル「うたエール」がランクイン。実売数7位、ラジオオンエア数5位、Twitterつぶやき数28位。「ゆず2018プロジェクト with 日本生命」として2018人の「新メンバー」と共に録音されたシングルで、もともとは2月に配信限定シングルとしてリリース。この時は最高位16位に留まりましたが、その後、7月の豪雨で広島公演が中止となったことがきっかけに、収益金を被災地及び支援団体に寄付することを目的として「弾き語りバージョン」を再リリース。その結果、この曲が再びランクアップし、見事ベスト10入りを果たしました。ちなみにオリコンのデジタルシングルチャートでも初登場2位を記録しています。

初登場曲は以上。続いてロングヒット曲ですが、先週3位の米津玄師「Lemon」は3位から5位にダウン。ただ、You Tube再生回数は変わらず2位をキープしており、まだまだロングヒットは続きそう。一方、先週7位だったDAOKO×米津玄師「打上花火」は今週、残念ながら11位にランクダウンしています。ただ実売数13位、You Tube再生回数6位と上位をキープしてり、来週以降の再ランクインも可能性としてあるかも?

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年7月24日 (火)

宇宙人も登場する?ユニークな歌詞が魅力

Title:Tokyo Mermaid
Musician:KOKIA

今年、デビュー20周年を迎え、先日は初となるオールタイムベストをリリースしたKOKIA。そのベストアルバムに続いて待望となるニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバム、まずなかなかユニークなのはその歌詞。1曲目、いきなり「お化けが怖いなんて」という、童謡を彷彿とさせるようなタイトルの曲からスタートします。ただ、その歌詞の内容は死んでしまった恋人に対して「お化けでいいから会いたい」と歌う、なかなかへヴィーな内容の歌詞。ただ、そんな内容の歌詞でも、「お化け」という表現を用いているのでどこかユーモラスで必要以上に重い歌詞にはなっていません。

「天気がいい ビール飲もう」もタイトル通り、天気がいい昼間に仕事をさぼってビールを飲もうという、かなりほっこりとした雰囲気の曲。おそらく誰もが共感できそうなシンプルな題材で非常にユニークな歌詞になっています。また「FURUATO~故郷~」などはタイトル通りのふるさとに対する想いを歌ったナンバーでアコースティックでしんみり聴かせるサウンドと伸びやかな彼女の歌声で心に染みるようなナンバーになっています。

また今回は結構ぶっとんじゃった歌詞も少なくなく、例えば「Nipponjin」なんて曲が登場。すわ、今流行り(?)の愛国ソングか?確かに「日本人としての誇りを持とう」的なテーマ性なのですが、自虐的な歌詞も登場する彼女ならではの「日本人論」になっています。また、さらにぶっとんでるのは「Aliens~宇宙人わかりました~」などは宇宙人との遭遇というテーマとなっており、かなりユニーク。若干、KOKIA、何があったの?なんて思ったりもしちゃいますが(笑)。

ただ、全体的なテーマ性が今回は比較的身近な素材となっており、彼女の曲でよく見受けられたような愛や平和的な、良く言えば普遍性のある壮大なテーマ、悪く言えば仰々しいテーマ設定は今回はあまりありません。

また、仰々しいといえば今回の彼女の楽曲、サウンド的にもアコギやピアノ、シンプルなストリングスを主軸とした比較的シンプルなもの。こちらも彼女らしい分厚くスケール感のあるサウンド、少々悪く言えば仰々しさを感じるサウンドはほとんど見受けられませんでした。

ただ、サウンド的には比較的シンプルでありながらも、楽曲の雰囲気としてはいつものKOKIAらしいファンタジックな雰囲気をきちんと醸し出していました。それはサウンド的にもシンプルながらもどこかファンタジックな雰囲気を感じさせるアレンジになっていたという点も大きいでしょうし、彼女のボーカルもまた、完全にそのスタイルが完成されており、無理にサウンドを分厚くしなくてもしっかりと彼女の世界観を確立できるということを証明したアルバムになっていたように感じます。

歌詞にしてもサウンドにしてもいままでのKOKIAから少々スタイルを変えてきた部分があるので賛否両論があるみたいですが、個人的にはここ最近の彼女のスタイルにはマンネリ気味な部分も感じていたところもあり、ここ最近のアルバムの中では一番の出来だったと思います。デビュー20年を迎え、あらたな一歩ともいえる今回のアルバム。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

KOKIA 過去の作品
The VOICE
KOKIA∞AKIKO~balance~
Coquillage~The Best Collection II~
REAL WORLD
Musique a la Carte
moment
pieces
心ばかり
Where to go my love?
I Found You
EVOLVE to LOVE-20 years Anniversary BEST-


ほかに聴いたアルバム

For You/Crystal Kay

LDH移籍第2弾となる約2年半ぶりのCrystal Kayのニューアルバム。LDH移籍第1弾となった前作と同様、1曲1曲を取り上げれば決して悪くないものの、全体的に無難で、Crystal Kayらしさがあまり出ていない曲が並んでおり、アルバム全体としてはかなり印象の薄い内容になっています。特に中盤から後半にかけてバラードナンバーが続く構成になっており、確かに彼女の歌の上手さを生かそうとした結果なのかもしれませんが、それにしてはかなり安直な感じ・・・。「よく出来たアルバム」かもしれませんが、いまひとつ彼女の良さが感じられない作品でした。

評価:★★★

Crystal Kay 過去の作品
Shining
Color Change!
BEST of CRYSTAL KAY
THE BEST REMIXES of CK
FLASH
Spin The Music
VIVID
Shine

Lacrima/HUSKING BEE

途中、ミニアルバム「Stay In Touch」を挟み、フルアルバムとしてはメジャー復帰後2枚目となる新作。彼ららしいメロディアスでポップな楽曲が並び、パンキッシュな曲からポップテイストの強い曲、「Living Life」のよな哀愁感漂うナンバーまでバラエティー豊富。目新しさはないのですが、HUSKING BEEの魅力はしっかりと出しており、安心して聴ける良作に仕上がっていました。

評価:★★★★

HUSKING BEE 過去の作品
Suolo
Stay In Touch

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2018年7月23日 (月)

ほどよいバランスのとれたアルバムだけど。

Title:GOOD MAN
Musician:Ne-Yo

アメリカのR&B系シンガーソングライターNe-Yoの約3年半ぶりとなるニューアルバム。Ne-Yoといえば比較的にシンプルなグッドメロディーを書くシンガーソングライターという印象のあるミュージシャン。毎回、積極的に今風のサウンド、といった感じの曲ではないものの、日本人にとっても琴線に触れそうなメロディーラインが魅力的なアルバムをリリースしています。

今回のアルバムでも、「NIGHTS LIKE THESE」ではラテン系のシンガー、ロメオ・サントスをゲストに迎え、ラテン風な哀愁感も漂うメロディーラインが心に残りますし、彼と同じくR&B系のシンガーソングライターであるエリック・ベリンジャーを迎えた「HOTBOX」も悲しげなメロディーラインが心に響きます。

後半の「WITHOUT U」もラテン風なサウンドで切なさを感じるメロディーラインが魅力的ですし、「OCEAN SURE」もエレクトロサウンドをバックにゆっくり歌い上げるNe-Yoのボーカルでスケール感を覚えるメロディアスなナンバーに仕上がっています。

サウンド的には上にも書いた通り、ラテンフレーバーの曲が適度に配されているほか、「1 MORE SHOT」「PUSH BACK」のようなトライバルな楽曲もあれば、「U DESERVE」のようなジャジーな楽曲、「BREATHE」のようなダウナーなエレクトロチューンなど彼らしいR&Bという主軸に沿いつつ、ほどよいバリエーションのある楽曲が並んでいます。

サウンド的には決して今の流行を追っているわけではありませんが、それだけにある意味安心して聴けるナンバーが並んでいるといった印象も。ほぼよいバリエーションのある楽興のタイプといい、良くも悪くも優等生的かな、といった感じもします。もし、洋楽の初心者がR&B系のアルバムを聴きたい、という場合には最初に聴くにはもってこいといったアルバムと言えるかもしれません。

ただ、今回のアルバム、全体的にインパクトは薄め。1曲1曲の出来は決して悪くはないのですが、アルバム全体を聴いた後に、いまひとつ印象に残るような曲もありません。「R&B回帰」という方向性がはっきりしていた前作と比べると今回の作品、アルバム全体を通しても柱もいまひとつはっきりしませんし、正直なところ、全体的にかなり薄味という印象を受けてしまいました。

楽曲も一番インパクトがあり印象に残ったのが、むしろボーナストラックである「POUR ME UP」「WON'T BE OFTEN」「RESET THE NIGHT」の3曲だったという悲しい事実も・・・。正直言うと、前作「Non-Fiction」の出来もあまりよくなく、その結果か本作もビルボードでアルバムチャート33位という、いままでデビュー以来全作ベスト10入りを果たしていた彼にとっては大惨敗な結果に。今回のアルバムも決して出来はよくなかったので、どうもスランプ気味のような・・・。ちょっと今後が気になってしまうアルバムでした。

評価:★★★

NE-YO 過去の作品
Because Of You
NE-YO:THE COLLECTION
LIBRA SCALE

R.E.D
Non-Fiction

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2018年7月22日 (日)

これは「事件」だ

Title:MOROHA BEST~十年再録~
Musician:MOROHA

今回紹介するMOROHAというミュージシャンをはじめて知ったのは2010年に実施した夏フェス、サマーソニックへの出場権をかけたコンテスト「出れんの!?サマソニ」で「曽我部恵一賞」を受賞したことがきっかけでした。「MOROHA、本当にヤバい。事件だと思います」と絶賛されたコメントも話題となりましたが、それ以上にこのコンテストの審査方法を強烈に批判したコメントも当時、大きな話題を呼びました。(ちなみにそのコメントはいまでもWeb上で読むことが出来ます→こちら

その後、東日本大震災の被災者を支援するチャリティーアルバム「Play for JAPAN」に参加した曲も気に入り、ずっと気にしていたミュージシャンだったのですが、いままでアルバムを聴く機会がありませんでした。しかし、そんな彼らが結成10年目にしてメジャーデビュー。そのメジャーデビュー作としてインディーズ時代の曲を再録したベストアルバムがリリースされたので、ようやくこのたび、はじめて彼らのアルバムを聴いてみました。

さてこのMOROHAというミュージシャン、MCのアフロとギターのUKからなる2人組のHIP HOPユニットです。ただHIP HOPユニットといっても彼らの奏でる音楽はおそらく一般的にイメージされるHIP HOPとは少々異なると言えるでしょう。トラックはUKの奏でるアコースティックギターの音色のみ。それも激しくかき鳴らすトラックもあれば、アルペジオで静かに聴かせるトラックもあり、基本的には非常にメロディアスで哀愁感も漂うサウンド。このギターの音色だけでまず胸をうちます。

さらにアフロのラップも非常に独特。まずそのハイトーンボイスが耳につきますが、なによりもインパクトあるのがそのラップのスタイル。日本語をしっかりと一言一言かみしめるようい綴るスタイルは、韻こそ踏んでいますがラップというよりもポエトリーリーディングに近いもの。トラックといいラップのスタイルといい、今のHIP HOPシーンからあきらかに逸脱しているスタイルであり、非常に強いインパクトと個性を持ったスタイルとなっています。

そしてなによりもアフロが書くリリックの強いインパクトが耳に残ります。彼が書く歌詞は非常にリアリティーがあり、胸をうちます。少々説教臭い、あるいは理屈っぽい部分が賛否ありそうな部分はあるものの、非常にリアルな視点からの描写が胸に突き刺さる歌詞が印象的。例えば「勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ」。この中で「勝てなきゃ皆やめてくじゃないか 勝てなきゃ皆消えてくじゃないか」というフレーズが飛び出してきます。ともすれば「勝ち負けなんかじゃないんだよ」的なフレーズがJ-POPシーンでは少なくありませんが、そんな中、あまりにリアルなこの表現にまずは胸が突き刺さります。

またインパクトあるフレーズをきちんと曲の中に配しており、そういう点でも歌詞がきちんと耳に残る曲を書いてきています。例えば「一文銭」のサビ

「諦めに向かう地図を破れば
右も左も後ろさえ前だお前が
人生につけた名前は妥協や惰性じゃなかったはずだ」

(「一文銭」より 作詞 アフロ)

と、かなりメッセージ性の強い歌詞になっていますが、「右も左も後ろさえ前だ」というフレーズが強く印象に残ります。こういう印象に残るようなフレーズが曲の随所に出てきており、聴き終わった後、歌詞がしっかりと胸に残ります。

とにかくアルバムを通じて強烈なメッセージが次々と飛び出す歌詞で、「何かをしながらBGM的にアルバムを聴く」ということが出来ない作品になっており、その歌詞を聴きこんでしまいます。彼らの登場を「事件」と称した曽我部恵一の気持ちも十分すぎるほどわかります。HIP HOPというスタイルですが、HIP HOPを普段聴かないような方にこそ聴いてほしいようなアルバム(逆にHIP HOP的なものを求めると、期待はずれになる危険性も・・・)。本当に胸に突き刺さるすごい曲の連続です。

ただ・・・その上でちょっと気になる部分がひとつ。それは今回のベスト盤を聴くと、歌詞のパターンが主に2つだけであり、聴いていて似たようなテーマ性の歌詞が多かった点が気になりました。そのパターンとは「ミュージシャンとしての決意を歌った歌詞」と「自分を支える愛する人へのメッセージを綴った歌詞」の2つ。おそらくいずれも自らが経験したことを歌詞にしているのでしょうし、だからこそアフロの書く歌詞にはリアリティーがあるのでしょう。しかし結果としてアルバムを聴いていて、若干「似たようなタイプの歌詞が多いな」という印象を受けてしまいましたし、彼らがこれだけ個性とインパクトを持ちながらいまひとつブレイクしない理由って、案外こういう点だったりするのかもしれません。

そういう気になった点はあったものの、このベスト盤を聴く限りにおいてはなによりも歌詞のインパクトの強さがまずは先に立ちます。色々な意味で癖はあるので好き嫌いは別れるかもしれませんが、そういう点を含め、全音楽ファンがまずは聴いてほしいアルバム。おそらく好き嫌いは別としてそのインパクトと個性に異を唱える方はいないでしょう。ひとこと、すごいアルバムです。

評価:★★★★★

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2018年7月21日 (土)

URC、ベルベットレコードのサウンドが今、ここに

Title:生活
Musician:半田健人

もともとは俳優として活躍し、「仮面ライダー」への出演で大きな話題となった半田健人。ただ最近では、歌謡曲に対する深い造詣が大きな評判となり、ミュージシャンとしてリリースしたアルバムも話題に。ここ最近ではむしろ俳優としてよりもミュージシャンとしての評判を良く聞くようになりました。

彼のアルバムは前作「HOMEMADE」ではじめて聴いたのですが、彼の音楽、特に歌謡曲に対する造詣の深さを強く感じるアルバムになっていました。ただ、内容的には歌謡曲のパロディーそのまま。半田健人のミュージシャンとしての目新しさはほとんど感じることが出来ず、そういう意味では歌謡曲を模倣したアルバムとしては非常によく出来たアルバムと感じた反面、オリジナリティーという側面で言えば、物足りなさをかなり感じてしまったアルバムになっていました。

ただ今回のアルバムに関しては、ミュージシャンとしてのオリジナリティーというよりも、むしろ彼の音楽的な造詣の深さをより生かせるような方向性を取ってきました。今回のアルバムは明確にURCやベルベットレコードといったレコード会社からリリースされた60年代から70年代のフォークソングのパロディー。そういう意味では前作以上に吹っ切れています。

そして、これが本当によくできています。1曲目「座蒲団」は高田渡のカバーなのですが、朴訥な歌い方はまさに60年代フォークそのもの。「生活」なんかもカントリー調のサウンドにタイトル通り身近な生活を題材とした歌詞もフォークそのもの。歌詞の語尾が「~からで」「~なのです」と語り掛けるように終わる方法も60年代フォークにありがち。おそらくカントリー調のサウンドを含めて高田渡を意識したと思われるのですが、実によく出来た60年代フォークのパロディーになっています。

ほかにも「鼻毛粉砕計画II」もタイトル通り非常にユニークなナンバーなのですが、ただこの手の題材も60年代フォーク風。サウンドもアコギとバイオリンのシンプルなもので完全に四畳半フォークの世界を作り上げています。ラストを飾る「居酒屋」も完全にフォークソング。アコギでしんみりと聴かせるメロディーもさることながら、場末の居酒屋の風景描写も完全にフォークの世界です。

フォークソングだけではなく、例えば「一日」はフォークというよりもむしろニューミュージック風。歌い方を含め、松山千春あたりを彷彿とさせます。「青春挽歌」も同じくピアノでしんみり聴かせるニューミュージックな作品。ここらへんも彼の音楽的な素養の深さを強く感じます。

ある意味、歌謡曲のパロディーという路線を貫いた点は大正解。彼の音楽、特に昔の日本の歌謡曲、フォークソングに対する深い愛情を強く感じますし、また、その知識量にも感心させられます。ただ、若干気になるのは歌詞のインパクトがかなり薄くなっていまっている点。このアルバムでカバーした高田渡でいえば、さすがに「自衛隊に入ろう」みたいな曲は彼のイメージからしても難しいのかもしれませんが、例えば「ブラザー軒」みたいな風景の描写があり物語性があり、そしてその歌詞の背景について考えさせられるような歌詞も残念ながらありません。そのため、フォークソングのパロディーでありながら歌詞という側面では薄味に感じられました。

前作同様、オリジナリティーという点ではかなり薄いですし、2010年代の今だからこそ加えられるような解釈もほとんどありません。ただ、おそらく彼が音楽でやりたいことはそういった「オリジナリティーあふれる新しい音楽」ではなく、こういう昔ながらの音楽を今に伝えるような役目なのでしょう。そういう意味では非常に成功しているアルバムだったと思います。2018年を代表するようなアルバム・・・といった感じではありませんが、彼の音楽に対する愛情がきちんと伝わった1枚でした。

評価:★★★★

半田健人 過去の作品
HOMEMADE


ほかに聴いたアルバム

NOBODY KNOWS/中田裕二

ソロになってからすっかり歌謡曲路線が板についてきた彼。前作「thickness」でもバラエティー豊かなジャンルを取り入れてきましたが、今回はその傾向がさらに顕著に。キャバレーロック風な「マレダロ」、打ち込みのダンスチューン「CITY SLIDE」、ラテン風の「むせかえる夜」にフォーキーな「オールウェイズ」と、特に終盤、様々なバリエーションの曲が並んでいました。全体的には楽曲の安定感も出てきており、安心して聴けるアルバムになっていました。

評価:★★★★

中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
BACK TO MELLOW
LIBERTY
thickness

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2018年7月20日 (金)

バンドメンバーが大きく変化

Title:君のために生きていくね
Musician:踊ってばかりの国

約3年ぶりとなる踊ってばかりの国、久々となるニューアルバム。前作からちょっと時間があいてしまいましたが、その間、バンドとしても大きな変化がありました。バンドのうちメンバー2人が脱退。一方、3人のメンバーが新規加入して5人組バンドとなった彼ら。結局、オリジナルメンバーはボーカルの下津光史ひとりとなってしまいました。

ただ、バンドの構成は大きく変わった彼らですが、楽曲のスタイルはほとんど変わりありません。サイケデリックなサウンドと横ノリのリズム、さらにボーカル下津光史の粘度ある独特のボーカルスタイルで独自の世界観を築き上げている彼ら。一方でメロディーラインは歌謡曲の雰囲気すらあるフォーキーで暖かみのあるメロディーライン。このスタイルは本作でも変わりありません。

彼らは以前からシニカルで社会派の歌詞を良く書いてきました。2014年にリリースされたセルフタイトルのアルバム「踊ってばかりの国」と、その後リリースされたEP「サイケデリアレディ」では特にその傾向の強く作品が多く見受けられました。ただ、その後リリースされた前作「SONGS」では一転、社会派な歌詞は鳴りを潜め、むしろ「歌」を聴かせるアルバムに仕上げてきていました。

今回のアルバムに関しても社会派な歌詞はほとんどありません。一見すると「自由を頂戴」あたり、「社会派」という印象を受けそうなタイトルですが、おそらく彼氏に拘束されている女性の歌。「社会派」ではありませんが、ちょっと怖い歌詞が印象に残ります。「プロテストソング」もそのものズバリの「社会派」ソング・・・かと思えば、都会の中で生きる人を歌った曲。基本的に本作は前々作のようなメッセージソングは見受けられません。

むしろ今回のアルバムで目立ったのはラブソング。特に「シャクナゲ」などはとても切なくメロディアスに聴かせるラブソングに仕上がっており印象に残ります。また、前作同様、サイケなサウンドを押し出すというよりも比較的シンプルに歌を聴かせる曲が多かったのも特徴的。「サイクリングロード」はタイトル通り爽快なポップチューンに仕上がっていましたし、「in the day」も疾走感ありメロディアスなギターロックチューンに仕上がっていました。

また今回、新メンバーとして2人のギタリストが加入。結果、ギターボーカルの下津光史を加えてギターが3人となった影響でしょうか、ギターサウンドを前に押し出した、よりロックな楽曲も目立ちます。「メロディ」はガレージロック風のサウンドに仕上げていますし、「Surfer song」はブルースロック風。さらに「NO ESPer」はメタリックなサウンドでダイナミックに展開する楽曲に仕上がっていました。

もちろん彼ららしいサイケで横ノリのグルーヴ感はしっかりアルバム全体として感じることが出来ましたし、そういう意味では踊ってばかりの国らしさは強く感じることが出来るアルバムだったと思います。ただ、社会派な方向性があったり、「歌を聴かせる」という明確なコンセプトがあったりしたここ最近のアルバムに比べると、アルバム全体としてに核となる部分が弱く、若干、散漫に感じる部分もありました。そういう意味では傑作続きだったここ最近の作品に比べると、少々弱い部分があったかな。もちろん、独特なグルーヴ感で魅力的なアルバムであることには間違いないと思いますが・・・。

評価:★★★★

踊ってばかりの国 過去の作品
グッバイ、ガールフレンド
世界が見たい
SEBULBA
FLOWER
踊ってばかりの国
サイケデリアレディ
SONGS


ほかに聴いたアルバム

Familia/sumika

ここ最近、人気上昇中のギターロックバンド、sumika。特に本作でいえば「Answer」「MAGIC」のようなホーンセッションを取り入れた賑やかで非常に楽しいミュージカルのようなポップチューンが魅力的。とにかく陽性の度合いが高いバンドで、純粋にウキウキするようなポップチューンが多くならびます。ただその一方、ギターロック色の強いナンバーに関しては良くありがちで平凡なポップチューンが多く、退屈に感じる部分も。正直、アルバムの中で曲の出来不出来が大きく、非常に残念に感じました。この手のバンドは勢いにのればとんでもない傑作をリリースできそうな予感もするのですが・・・。

評価:★★★★

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2018年7月19日 (木)

今週はK-POP

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週の1位はK-POPの男性アイドルが獲得。

今週、1位を獲得したのはJUNHO(From 2PM) 「想像」。アイドルグループ2PMのJUNHOによるソロアルバム。初動売上4万枚は前作「Winter Sleep」の2万8千枚(3位)からアップしています。

2位には女性シンガーソングライターmiwaの初となるベストアルバム「miwa THE BEST」がランクイン。初動売上2万8千枚。直近作はオリジナルアルバム「SPLASH☆WORLD」で、こちらの初動売上3万1千枚(5位)からダウンしています。ベスト盤の初動売上がオリジナルアルバムよりダウンするというのは、それだけ固定ファン層以外に人気が波及していないということになるので、少々厳しいという印象を受ける結果になっています。

3位は宇多田ヒカル「初恋」が先週の2位からワンランクダウンでベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に韓国の女性アイドルグループTWICE「Summer Nights:2nd Special Album」がランクイン。「スペシャルアルバム」という言い方をしていますが、今年4月に韓国でリリースされたミニアルバム「What Is Love?」に新曲3曲を追加して再リリースされたアコギな1枚。初動売上2万6千枚はその前作となる「What is Love?」の2万8千枚(2位)より若干のダウン。

5位は男性シンガー三浦大知のニューアルバム「球体」がランクイン。Nao'ymtプロデュースによる本作はタイトルをはじめとしてほとんどの曲が漢字2文字のタイトルが並ぶコンセプチャルな作品。初動売上1万7千枚。直近作はベストアルバム「BEST」でこちらの6万7千枚(1位)からはダウン。またオリジナルアルバムとしての前作「HIT」の2万1千枚(4位)からもダウンしています。

6位には女性声優雨宮天「The Only BLUE」が入ってきました。初動売上1万枚は前作「Various BLUE」(7位)から横バイ。

7位初登場はロックバンドフレデリック「飄々とエモーション」。7曲入りのミニアルバム。メジャーからリリースされたミニアルバムはこれが5枚目となります。初動売上6千枚は前作「TOGENKYO」(10位)から横バイ。

8位にはlynch.「XIII」がランクイン。名古屋出身のロックバンドで、ベスト10入りはアルバムシングル通じて初。初動売上6千枚は前作「SINNERS-no one can fake my blood-」の3千枚(26位)からアップ。

最後9位には大森靖子「クソカワPARTY」がランクイン。初動売上5千枚は前作「MUTEKI」の4千枚(16位)からアップしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年7月18日 (水)

今週も強いロングヒット系

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もロングヒット系の活躍が目立つチャートに。ただ1位はジャニーズ系から。

まず1位初登場はKis-My-Ft2「L.O.V.E.」。「ウナコーワクール」CMソング。CD販売・ダウンロード・スクリーミング数(以下「実売数」)、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数でいずれも1位獲得。ただラジオオンエア数では圏外となっています。オリコンではこの曲を含むシングル「LOVE」が初動売上17万5千枚で1位獲得。前作「赤い果実」の18万4千枚(1位)からダウンしています。

さて、今週も2位以下ではロングヒット系の楽曲が目立ちます。2位には最近すっかり話題のDA PUMP「U.S.A.」が先週の2位をキープ。実売数2位、PCによるCD読取数4位のほか、ラジオオンエア数は15位、Twitterつぶやき数16位を記録。さらにYou Tube再生回数は1位をキープしており、さらなるロングヒットが期待されます。

そして3位には米津玄師「Lemon」がこちらも先週から変わらず3位をキープ。実売数ではいまだに4位を記録しているほか、PCによるCD読取数も3位、You TUbe再生回数2位と高い順位を維持しています。さらに米津玄師は今週、DAOKO×米津玄師「打上花火」も先週と変わらず7位をキープ。残念ながら「LOSER」は12位にランクダウンしてしまいましたが、2曲同時ランクインとなっています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にスターダストプロモーション系の男性アイドルグループDISH//「Starting Over」がランクイン。どこかミスチルっぽい雰囲気もあるスケール感ある楽曲。実売数3位、ただしラジオオンエア数25位、PCによるCD読取数28位、Twitterつぶやき数67位といずれも伸び悩みこの位置に。ちなみにオリコンでは初動売上4万4千枚で初登場2位。前作「勝手にMY SOUL」の2万6千枚(4位)からアップしています。

5位初登場はTWICE「Dance The Night Away」。7月12日にリリースされたアルバム「Summer Nights」収録曲で、配信オンリーでのベスト10入り。彼女たちらしい軽快で爽やかなエレクトロポップになっています。実売数6位、Twitterつぶやき数3位、You Tube再生回数5位を記録しています。

6位には山下達郎「ミライのテーマ」が先週の52位からランクアップしてベスト10入り。映画「未来のミライ」オープニングテーマ。ジュブナイルっぽい雰囲気の楽曲は彼のお得意分野。実売数は37位にとどまり、PCによるCD読取数17位、Twitterつぶやき数90位でしたが、ラジオオンエア数で見事1位を獲得し、この順位に。ちなみにオリコンでは初動9千枚で12位初登場。前作「REBORN」の8千枚(6位)よりアップしています。

8位はPoppin'Party「二重の虹(ダブルレインボウ)」が初登場。BanG Dream!というアニメキャラによるバンドプロジェクトから登場したユニット。実売数7位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数24位を記録。オリコンでは初動売上1万2千枚で4位初登場。前作「CiRCLING」の1万9千枚(7位)よりダウンしています。

最後9位にはBank Band with Salyu「MESSAGE-メッセージ-」が初登場でランクイン。Bank Bandは小林武史やミスチルの桜井和寿を中心に、環境保護や自然エネルギー促進事業などを検討しているプロジェクト・個人・団体へ低金利で融資を行う非営利法人ap bankの活動資金を集めるために結成されたバンド。今年、7月14日から16日に静岡・掛川で「ap bank fes.」が開催されましたが、それに伴いリリースされた配信限定のシングルとなります。実売数5位、ラジオオンエア数46位で総合順位でベスト10入りしてきました。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年7月17日 (火)

都会的なサウンドとトライバルなサウンドを融合

Title:Modernluv
Musician:TAMTAM

毎回、独特な雰囲気が魅力的なアルバムを作りだし、大きな話題となるレゲエダブバンド、TAMTAM。そんな彼らの約1年9ヶ月ぶりとなるアルバムがリリースされました。特にダブを取り入れたグルーヴィーなサウンドが大きな魅力の彼女たちですが、今回のアルバムもタイトルチューンにもなっている1曲目「Mondernluv」はイントロ的なダビーなインストチューン。まずは浮遊感ある独特のグルーヴ感がとても心地よいスタートとなっています。

ただ今回のアルバムはレゲエやダブ的な要素は強くなく、むしろソウルやAORの要素が強いアルバムになっていました。2曲目「Esp」ではGOKU GREEN改めGOODMOODGOKUがゲストとして参加しているのですが、彼のメロウなボーカルがあわさったシティポップな作風。「Sorry Lonely Wednesday」もメロウな空気感が心地よいAORナンバー。こちらも入江陽やYuta Fukaiがゲストとして参加しています。ラストを飾る「Night Owl」も一昔前のフュージョン風な雰囲気を感じつつもメロウなボーカルが心地よいシティポップチューンに仕上がっています。

そんな全体的にソウル、シティポップのテイストが強い今回のアルバム。昨今、シティポップのバンドが多くブレイクし話題となっていますので、そんなシーンに対してのTAMTAMからの回答とみることも出来るかもしれません。ただもちろん単純にシティポップの要素を取り入れた訳ではなく、その中でしっかりとTAMTAMらしい色は出してきています。例えば「Dejavu」などは疾走感あるリズムの中、グルーヴィーなサウンドを展開していますし、「Nyhavn」などもドリーミーでダビーなサウンドはまさにTAMTAMらしいといえるサイケなナンバー。独特な雰囲気が非常に心地よい世界観を作り出しています。

ほかにもハンドクラップも入った「Finevies」「Deadisiland」などトライバルなリズムが入った楽曲も目立ちます。これらの曲に関してもTAMTAMらしい独特なリズム感が楽しむことが出来、シティポップバンドとは一風変わった雰囲気を醸し出していました。

アルバム全体としてはソウルやAORの要素の強いメロウなサウンドを醸し出しつつも、サイケやトライバルな要素を強く感じるサウンドは、都会的な要素とトライバル的な要素を上手く融合させたTAMTAMらしい独特な世界を作り上げていたアルバムになっていると思います。レゲエ的な要素はかなり薄いものの、しっかりといままでのTAMTAMに通じるサウンドを作り上げている傑作アルバム。またもやこのサウンドの世界に深くはまってしまいそうです。

評価:★★★★★

TAMTAM 過去の作品
For Bored Dancers

Strange Tomorrow
Newpoesy


ほかに聴いたアルバム

ALL TIME BEST mixed by MIGHTY CROWN/RIZE

デビュー20周年を迎えたRIZEの代表曲をMIGHTY CROWNによる編集が行われたDJ Mix盤。要するに彼らの代表曲が、1曲あたり2分程度のおいしいところ取りでメドレー形式で続くアルバム。彼らの曲をきちんと聴きたいと思っているような方には物足りなさを感じるかもしれませんが、とりあえずの入門盤としては最適な内容かも。RIZEの「カッコいい」部分がきちんと抽出されているアルバムになっていました。

評価:★★★★

RIZE 過去の作品
K.O.
EXPERIENCE
FET BEST
THUNDERBOLT~帰ってきたサンダーボルト~

夢で逢えたら/シリア・ポール

1977年にナイアガラ・レーベルからリリースされた女性シンガーによるアルバムの復刻版。シリア・ポールはもともとラジオ番組のパーソナリティーなどで人気を博していたタレントだったようですが、大瀧詠一プロデュースとなるアルバムで再デビュー。スマッシュヒットを記録したようですが、大ブレイクとまではいかず、本作も一部のマニア的には注目を集めていたものの、どちらかというと「知る人ぞ知る」的なアルバムだったようです。

本作で収録されている「夢で逢えたら」はご存じの通り、ジャパニーズポップスシーンでのスタンダードナンバーとなっていますが、彼女が歌うバージョンはナイアガラでの初リリースということで「オリジナル」のひとつの扱いとされているようです。同作を含め、まさにナイアガラレーベルらしい洋楽テイストあふれる爽やかなポップチューンが並ぶ本作。ハワイアンやチャチャ、キューバ音楽などのワールドミュージックからの要素も強く感じられ、国際色豊かな作風は今聴いても全く古さを感じさせません。

Disc2の方には当時のライブ音源も収録。今からすると「ライブ」というよりも「歌謡ショー」的な雰囲気になっているのが70年代ならでは、といった感じもしますが、それを含めて当時の雰囲気を味わえる内容となっています。今聴いても魅力的なポップスアルバム。大瀧詠一やナイアガラサウンドが好きなら必聴の1枚です。

評価:★★★★★

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2018年7月16日 (月)

数多くのミュージシャンへ影響を与えたガールズバンド

Title:CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~

2005年にメジャーデビュー。3枚目となるシングル「シャングリラ」が大ヒットを記録し、一躍人気バンドの仲間入りを果たし、その後も根強い人気を誇ったガールズバンド、チャットモンチー。ただご存じのように今年7月の解散(完結)を発表し、その活動に幕を下ろします。そんな彼女たちへのトリビュートアルバムがリリースされました。

チャットモンチーの音楽シーンに対して与えた影響というのは、まず何よりも女の子だけでもバンドが出来るということを形で示した点が大きいように感じます。いままでの日本の音楽シーンではレベッカにしろLINDBERGにしろジュディマリにしろ、ボーカルは女の子だけどもそのほかのメンバーは男というスタイルのバンドが圧倒的に多かったですし、プリンセスプリンセスのようなヒットを飛ばした女の子オンリーのバンドもありましたが、ポップス寄りだったためか、正直、その後のフォロワーはほとんどあらわれませんでした。

しかし、チャットモンチーの登場以降、女の子オンリーのバンドがグッと増えたように思います。今回のトリビュートに参加しているねごとなんかもまさにチャットモンチーのフォロワー的なガールズバンドですし、最近ではSHISHAMOなどもブレイクを果たしています。SCANDALやSilent Sirenみたいなアイドル寄りのバンドも目立ちますが、チャットモンチーのブレイク以降、ガールズバンドが増えたというのは何よりも彼女たちがロックバンドとしてもカッコよかったというのが大きな要因なのではないでしょうか。

今回のトリビュートアルバムでも、そんなシーンに対するチャットモンチーの影響を示すかのように多くのバンドが参加しています。前述のねごとが「シャングリラ」をカバーしているほか、ここでも何度か紹介している管理人がいま一押しのガールズバンド、CHAIも「Make Up! Make Up!」で参加。さらに今回、一般公募でも参加を募り、ペペッターズ、月の満ちかけというインディーバンドも参加しています。

チャットモンチーといえば、女の子の心境をストレートに歌った歌詞が大きな魅力的。それだけに今回のトリビュートでもガールズバンド、あるいは女性ボーカルのバンドのカバーが一番しっくりきたように感じます。ねごとやCHAIもそうですが、ほかにもHomecomingsやHump Back、集団行動やきのこ帝国などがそんなガールズバンド、あるいは女性ボーカルによるバンド。ある意味「無難なカバー」といった印象でしたが、ただチャットモンチーらしさをいい意味でしっかりと残したカバーだったと思います。

ただ逆に強いインパクトを残したカバーはむしろ男性勢で、まずは冒頭を飾る忘れらんねえよの「ハナノユメ」。バンド結成のきっかけとなった曲だそうで、さらに彼らの代表曲「CからはじまるABC」では歌詞の中でチャットモンチーが登場するくらい大きな影響を受けているバンド。がなり声と分厚いサウンドでのパンクのカバーに仕上げており、チャットモンチーの曲を忘れらんねえよのスタイルに無理やり引きずり込んだようなカバーになっていますが、とにかく熱いそのボーカルからはチャットモンチーへの愛情が最も伝わってくるカバーとなっていました。

またグループ魂の「恋愛スピリッツ」のカバーもユニーク。まあ、彼らは多くのトリビュートアルバムに参加していて、そのカバーのスタイルはある意味全く同じなのですが、今回は曲の途中にコントが、それもチャットモンチーご本人出演で登場するスタイル。結構ブラックなネタでユニークな内容になっています。

さらに強いインパクトだったのがラストのギターウルフ「東京ハチミツオーケストラ」。原曲はチャットモンチーらしい可愛らしいギターロックなのを無理やりギターウルフらしい強烈なガレージロックでカバー。あまりの変貌ぶりは賛否両論ありそうですが、間違いなく強いインパクトのあるカバーになっていました。

そんなインパクトあるカバーがありつつも、ただアルバム全体としては正直言うと、良くも悪くも無難な感じがして、イメージを大きく逸脱したり、彼女たちの曲をつかって実験をするようなインパクトあるカバーは少なかったかな。比較的若手のバンドが多く、チャットモンチーがラスト前のトリビュートということで若干遠慮してしまったのでしょうか。ファンにとっては安心して聴けるのですが、もうちょっと意外性あるカバーも欲しかったかもしれません。ただ、チャットモンチーの魅力はきちんと伝わるカバーに仕上がっていたと思います。チャットモンチーのファンはもちろん、参加しているファンにとっても楽しんで聴けるトリビュートアルバムだと思います。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

週刊少年ジャンプ50th Anniversary BEST ANIME MIX vol.2

創刊50周年を迎えた人気漫画週刊誌「週刊少年ジャンプ」のテレビアニメの主題歌や挿入歌などを集めたノンストップミックスアルバム第2弾。正直、第1弾に比べると最近のアニソンの割合が多くなり、アラフォー世代にとって懐かしいと感じる曲は少なくなってしまうのがちょっと残念。最近の曲に関しても良くも悪くもいかにもJ-POPな曲が多く、インパクトはあるものの平凡な曲が多かったかも。とはいえ「うしろゆびさされ組」やらドラゴンボールの「魔訶不思議アドベンチャー!」やら、高橋ひろの「アンバランスなKissをして」やら小比類巻かほるの「City Hunter ~愛よ消えないで~」やら懐かしい曲もチラホラ収録されており、やはりそれなりに楽しんで聴くことが出来ました。

ただ前作同様、50周年の企画盤なのに70年代以前のアニメ主題歌が皆無なのはちょっと残念。第3弾まで予定されているようですが、オールタイムのミックスにするよりも年代別に分けた方がリスナー層も分けられてよかったのでは?またWANDの「世界が終るまでは・・・」をはじめスラムダンクの主題歌は収録されていないんですね。ビーイング系はこの手のコンピへの参加を拒否したということでしょうか。ただ、Vol.1でFEEL SO BADが参加していたので、完全拒否という訳ではないと思うのですが・・・。

評価:★★★★

週刊少年ジャンプ50th Anniversary BEST ANIME MIX vol.1

Telepathy/SPECIAL OTHERS ACOUSTIC

インストバンドSPECIAL OTHERSのアコースティック編成、SPECIAL OTHERS ACOUSTIC名義による2枚目のアルバム。軽快なサウンドのポップスが多く、いい意味での聴きやすさを感じる一方、アコースティック編成らしい暖かいサウンドにほっとするようなインストナンバーが並んでいます。目新しさはないものの、しっかりと心に響いてくるアルバムです。

評価:★★★★★

SPECIAL OTHERS 過去の作品
QUEST
PB
THE GUIDE
SPECIAL OTHERS
Have a Nice Day
Live at 日本武道館 130629~SPE SUMMIT 2013~
LIGHT(SPECIAL OTHERS ACOUSTIC)
WINDOW
SPECIAL OTHERS II

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2018年7月15日 (日)

結成35年。超ベテランバンドの軌跡。

Title:GREATEST HITS VOL.1
Musician:The Flaming Lips

結成から35年。サイケデリックなサウンドとキュートなメロディーラインで根強い支持を誇るバンド、The Flaming Lips。その彼らの初となるオールタイムベストがリリースされました。CDでは3枚組となり、全52曲3時間40分強というかなりボリューミーな内容がまずは目をひく今回のベスト盤。さすが30年以上のキャリアを誇る超ベテランバンドなだけあります。

楽曲はワーナー移籍後のもの。1992年にリリースされたアルバム「Hit to Death in the Future Head」以降の曲が収録されています。CDのうち1枚目2枚目は、その「Hit to Death in the Future Head」から最新アルバム「Oczy Mlody」までの曲がリリース順に収録され、彼らの歩みがわかる構成に。そして3枚目のCDにはレア音源や未発表曲などの楽曲が収録されています。

The Flaming Lipsといえばアルバム毎にいろいろなタイプの楽曲を聴かせてくれているバンドなのですが、ベスト盤を聴くと、まさにバラエティーあふれる楽曲が並んでおり、彼らの音楽性の広さを強く感じる内容になっていました。1曲目を飾る「Talkin' 'Bout The Smiling Deathporn Immortality Blues (Everyone Wants To Live Forever)」はギターノイズが楽曲を埋め尽くす、まさにシューゲイザー系直系の楽曲からスタート。初期の作品に関しては、まさにそんなシューゲイザー系からの影響を受けたような楽曲が並んでいます。

ただそんな雰囲気が徐々に変わってくるのが「Brainville」あたりから。サイケな作風のアレンジにはなっているものの、アコギに鈴の音色も鳴り響く明るい雰囲気のポップテイストの強い楽曲で、ビートルズからの影響も強く感じる本作は、初期のギターロック路線からの新たな方向性を感じさせる曲調となっています。

その後もソウルのテイストを加えてきた「Riding To Work In The Year 2025」、アコースティックなテイストながらもリズムは打ち込みというアンバランスさがユニークな「Yoshimi Battles The Pink Robots Pt.1」、ビートルズ直系のポップな作風が耳を惹く「The Yeah Yeah Yeah Song」、60年代テイストを感じるちょっとレトロな雰囲気の「Silver Trembling Hands」、さらに最近の曲では「Always There In Our Hearts」「How??」のようにエレクトロなサウンドも取り入れています。

3枚目のレア音源でもこのバラエティー性は顕著。「Jets (Cupid's Kiss Vs The Psyche Of Death)」はブルージーなギターを聴かせてくれますし、「If I Only Had A Brain」のようなまるでキッズソングのような曲も。さらにラストは「Silent Night / Lord, Can You Hear Me」(「きよしこの夜」ですね)という日本人にもおなじみのクリスマスソングで締めくくるという展開もユニークです。

ただそんなバラエティーあふれる作風が特徴な彼らですが、基本的にはどの曲もエフェクトをかけまくったサウンドでサイケな雰囲気を醸し出しつつ、メロディーは非常にキュートでポップで耳を惹くというのが共通項。このサイケだけどとてもポップという方向性は「Frogs」など初期の作品でも既に確立されており、例えば「Waitin’ For A Superman (Is It Getting Heavy?)」「Do You Realize??」など美しいメロディーラインがとにかく魅力的という曲がこのアルバムの中でも多く収録されています。

このバラエティー富んだ作風とポップでキュートなメロディーラインという大きな要素のため、今回のアルバム、4時間近くにも及ぶボリューミーな内容ながらも最後までほとんどだれることなく、一気に聴ききれてしまう内容になっていました。そのサイケでドリーミーなサウンドにキュートなメロディーという実に甘美的な雰囲気を味わえるアルバムで、しっかりとThe Flaming Lipsの魅力が伝わってきたベストアルバムだったと思います。

The Flaming Lipsといえばゴム製の骸骨にUSBをつけてEPとしてリリースしたり、さらには本物の骸骨の中に24時間にも及ぶ楽曲をおさめてリリースしたりと、特に最近では奇抜な行動が目立つバンドなだけに、少々とっかかりずらいという印象を受ける方もいるかもしれません。実際、グラミー賞を受賞した「Yoshimi Battles the Pink Robots」やその後のオリジナルアルバムではそれなりのヒットを記録したものの、アメリカビルボードでベスト10入りしているオリジナルアルバムは2009年の「Embryonic」のみと、どちらかというとやはり「音楽ファン受けが強いバンド」という印象も否めません。ただこのベスト盤を聴けば、確かに癖の強さがある部分もありますが、決して聴きにくいバンドではなく、むしろポップなメロディーラインは幅広い層でもアピールできる魅力のあるバンドであることに気が付くのではないでしょうか。さすがに3枚組3時間40分強というボリュームは彼らへの入り口としては少々お勧めしにくい部分もあるのですが・・・興味があればぜひともチェックしてほしい、そんなベスト盤です。

評価:★★★★★

THE FLAMING LIPS 過去の作品
EMBRYONIC
The Dark Side Of The Moon
THE FLAMING LIPS AND HEADY FWENDS(ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち)
THE TERROR
With a Little Help From My Fwends
Oczy Mlody

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2018年7月14日 (土)

2人だけのステージ

チャラン・ポ・ランタン ホールツアー2018 ”唄とアコーディオンの姉妹劇場 ~ページをめくって~”

会場 名古屋市芸術創造センター 日時 2018年7月6日(木)

アコーディオンの陽気なメロディーにのって、ジンタやバルカン音楽、サーカス風の音楽など楽しい音楽を奏でるももと小春の2人組デゥオ、チャラン・ポ・ランタン。以前からライブがいかにも楽しそうで、是非ともライブに行きたいミュージシャンの一組だったのですが、このたび、ようやくライブに足を運ぶことが出来ました。

この日のライブは名古屋市芸術創造センターというそこそこの規模の会場。ただ、残念ながら満員という訳にはいかず後ろの方には空席も・・・。客層は意外と年齢層が高く、アラサーから40代50代もチラホラ。確かに「若者に受けそう」なミュージシャンではないのですが、ちょっと意外でした。

さて今回のライブは「唄とアコーディオンの姉妹劇場」ということでももと小春の姉妹2人のみのステージ。ステージはそのためほぼベアのステージに2人のステージドリンクを置いた小さな机が2つと照明が並んでいるだけ。非常にシンプルなステージとなっていました。

そして2人だけではじまったステージはいきなり1曲目から新曲!それも静かに聴かせる楽曲からスタートし、静かにライブは幕をあげました。続く「嘘にキス」も哀愁たっぷりに聴かせる楽曲。序盤は静かにスタートしたライブでしたが、正直、2人だけのライブ。音も歌声とアコーディオンのみというカラオケ音源もないステージで、広い会場の中、少々寂しい雰囲気すら感じてしまったスタートでした。

ただ続いて新曲でツアータイトルにもなった「ページをめくって」でようやくアップテンポの曲になり会場が徐々に暖まります。続くMCでは姉妹で息の合ったコントのようなユーモラスなトークを展開し、そのまま同じく新曲の「juu-juu」へ。こちらも軽快でポップなナンバーで会場は盛り上がりつつ、一気に代表曲の「71億ピースのパズルゲーム」「雄叫び」で一気に盛り上がります。

中盤自称もっともリズム感がないボーカリストというももがタンバリンに挑戦し、上手くリズミカルなタンバリンを鳴らしながら「ストロベリームーン」を可愛らしく歌っていました。その後は「ダンス・ダンス」から軽快な「あの子のジンタ」へ。続くMCでは小春がひとりで。チャラン・ポ・ランタンに憧れてアコーディオンを始める人も最近は少なくないみたいで、「そういうのうれしいよね」という話をしていました。そしてこの話からの流れで「憧れになりたくて」に流れ込みました。

次の曲がはじまる前に小春が一度ステージから去ります。ここでももはステージの下に落ちていたチラシのような紙を拾い上げて、そこに書かれている文章を読むように朗読。そしてそのまま「私の宇宙」を歌います。小春がステージに戻ってくると、いままでとは異なるアコーディオンが。おそらく電子アコーディオンだと思うのですが、甲高い、ビブラフォンのような音色のするアコーディオンをバックにしんみりと歌い上げいます。

「美しさと若さ」「サーカス・サーカス」と続いてライブは終盤戦へ。「この先のシナリオはあなた次第」では観客を立たせてライブを盛り上げます。さらに「メビウスの行き止まり」でライブはさらに最高潮へ。しかしラストはグッと雰囲気がかわり、ももと小春は交互にステージから一度去ります。この日のステージ衣装は人形のようなかわいらしい服装だったのですが、そのいままでの衣装にケープをまとい登場します。ラストはまた朗読からスタート。その朗読からそのまま歌に入るのですが、この曲は初耳。ひょっとしたら新曲でしょうか?しんみりと聴かせるナンバーで、最後は二人背中合わせのまま歌うと、上から雪が舞い降りてきました。美しい雰囲気のまま2人はそのままステージを去り、本編は終了となります。

もちろんそのままアンコールへ。アンコールはツアーTシャツを着たいままでとはうってかわってシンプルな服装で登場。最初はMCをかねてツアーグッズ紹介。そしてまたもや新曲へ。小学館の図鑑NEOのCMソングで「ガリレオ」というこれまた軽快なナンバー。そしてラストは彼女たちの代表曲「進め、たまに逃げても」「ムスターファ」「最後の晩餐」をメドレー形式で一気に披露します。会場のテンションは最高潮のまま、ライブは幕を下ろします。約2時間10分のステージでした。

さて、この日は「姉妹劇場」ということで前述の通り、ステージは彼女たち2人のみ。演奏もアコーディオンのみの演奏で、カラオケの演奏すら入っていない、本当に2人のみのステージでした。正直言うと最初は、広いステージで2人だけの演奏で、ちょっと寂しさすら感じられ、不安も覚えたのですが、ライブが進むにつれてそんな違和感は徐々になくなり、最後は広いステージの上でも全く寂しさを感じさせない2人の存在感を覚えたステージでした。

ステージもかなり凝っていて、シンプルなステージなのですが、後ろの壁に照明で2人の壁を映し出したり、白い布をステージ中央にかかげることにより、ステージの中に「部屋」のような空間を作り出したりと、シンプルながらも工夫を凝らしたライブで、ステージがちょっとした「劇」の空間のようになっていました。

正直なところライブを見終わった後でも、次はライブハウスのようなもっと小さい会場で、かつバンド編成でのライブを見てみたいな、とも思ったのですが、2人のステージももちろんとても楽しく、最初は心配していたステージでしたが、終わった後は非常に満足して会場を後にすることが出来ました。

もものボーカルも予想していたよりも表現力豊富で上手く、また小春のアコーディオンの演奏も非常にアグレッシブな演奏を聴かせてくれ、ライブバンドとしての実力も強く認識することが出来ました。また2人の息の合ったMCもとてもユニークで楽しかった!一度見てみたかった彼女たちのステージですが、期待どおりの素晴らしいライブでした。次は是非ライブ編成で!

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2018年7月13日 (金)

インパクトあるユニークなフレーズで20年

Title:マシンガンズにしやがれ!!
Musician:SEX MACHINEGUNS

デビュー当初から高い技術力を誇った演奏をバックに聴かせる本格的なメタルサウンドと、そんなメタルサウンドにまったくマッチしていないコミカルな歌詞が大きな話題となったSEX MACHINEGUNS。特に1999年にリリースされた「みかんのうた」は、本格的なメタルでありながらもリーダーANCHANGの故郷、愛媛県の名産品みかんへの讃歌を高らかに歌い上げるという曲で、サビの「みかんみかんみかん!」というあまりにもストレートなシャウトはある種の衝撃を与えました。

そんな彼らもメジャーデビューから早くも20年(!)。ただ、途中活動休止の時期もあり、かなりメンバーの変遷も激しいバンドだったりします。結果としてメジャーデビュー時のオリジナルメンバーで残っているのはリーダーのANCHANGのみ(ギターのSUSSYは現在、サポートメンバーとして復帰しているようですが)。事実上、ANCHANGのワンマンバンド的な活動となっていますが、それでも20年間、続いたというのは素晴らしい事実だと思います。

今回はそんなメジャーデビュー20年を記念してリリースされたオールタイムベスト。まずタイトルとジャケットが印象的・・・というか、おそらくいつかはやりたかったんだろうなぁ、これ。言うまでもなくSEX MACHINEGUNSというバンド名自体、パンクバンドSex Pistolsのパロディーなのですが、その彼らの唯一のオリジナルアルバム「勝手にしやがれ!」のタイトルとジャケット写真をそのままパロったのが今回のアルバム。ある意味このパロディー、誰もが考えつきそうなのですが、20年のベストで満を持してといった感じでしょうか。

さてマシンガンズといえば上にも書いたとおり、本格的なメタルサウンドに、それとミスマッチしたユニークな歌詞が特徴的。特に「みかんのうた」で見られるようなとにかくインパクトがあってユニークなワンフレーズをサビでシャウトするというスタイルをよく取り入れているのですが、そのスタイルはデビュー当初から最近の曲に至るまで基本的に変化はありません。

今回のアルバムに関してはほぼ発表順に並んだ内容になっています。途中、特にDisc1の終盤あたり「そこに、あなたが...」のような真面目路線にシフトしようとした曲もありましたが、最近になればなるほどむしろ初期の作品を彷彿とさせるユーモラスな歌詞の曲が多くなってきます。往年のテレビドラマ「西部警察」について歌った「ダイヤモンド軍団」やらタイトル通りの「エグイ食い込み」など、へヴィーなメタルのサウンドとは反するようなユニークな歌詞が魅力的。特に歌詞の展開や物語性で笑わせるというよりも、インパクトあるフレーズで一気に押し切るといった歌詞が多く、それだけに一度聴くと忘れられないような曲が少なくありません。

一方では「情熱の炎」や、今回新曲として収録されている「SAMURAI WARRIOR」のような男らしく熱い内容の歌詞の曲も実は少なくなく、ここらへんはある意味メタルのイメージと一致しているといっていいかもしれません。メタルのイメージとのギャップを楽しむ曲とメタルのイメージに沿ったような曲を同じように楽しめるのも彼らの大きな魅力かもしれません。

ただ楽曲のスタイルも歌詞の方向性もデビュー当初から大きな変化はなく、そういう意味では彼らの曲は「大いなるマンネリ」。もっともデビュー20年を迎えた最近のナンバーでもまだまだ十分インパクトあるフレーズを書いてきていますし、そういう意味では無理にマンネリ路線からの脱却を狙うよりも今後もこの方向性のほうがいいように感じます。また今回、デビュー当初の曲から最近の曲まで通して聴いても、まったく違和感なく、ここ最近の曲もデビュー当初の曲に負けていないインパクトある曲が多いということを再認識しました。正直、一時期に比べて売り上げの側面では落ち込んでしまっている彼らですが、もうちょっと売上的に持ち直してもいいような。へヴィーメタルとはいえ歌詞的にも非常に聴きやすい曲が並んでいるだけに、メタルリスナー以外にも是非とも聴いてほしいベスト盤です。

評価:★★★★★

SEX MACHINEGUNS 過去の作品
キャメロン
SMG
LOVE GAMES

METAL MONSTER


ほかに聴いたアルバム

KICK UP!! E.P./Shiggy Jr.

同じくミニアルバムの前作「SHUFFLE!!E.P.」からわずか半年ぶりのリリースとなった本作。今回もアニメ「斉木楠雄のΨ難」のオープニングテーマに起用された「お手上げサイキクス」など、ノリノリでインパクトあるディスコチューンを中心としたアルバムに仕上がっています。楽曲的には十分なインパクトもあり、わずか5曲のミニアルバムとはいえそれなりにバリエーションを入れてきている魅力的なアルバムに仕上がっています。個人的にはもうちょっと売れてもいいバンドだと思うのですが・・・。次はフルアルバムを聴きたいところ。

評価:★★★★

Shiggy Jr. 過去の作品
ALL ABOUT POP

SHUFFLE!!E.P. 

山崎×映画/山崎まさよし

Yamasakieiga

山崎まさよしの過去の楽曲のうち、映画で使用された曲だけ集めた配信限定の企画盤。彼の代表曲「One more time,One more chance」が映画「50回目のファーストキス」の挿入歌に使用されたことから企画されたそうです。もっとも「映画に使用された」という共通点のみで楽曲的にはほとんど共通項はなく、「代表曲を網羅」といった感じでもないので、わざわざ聴くにはちょっと微妙な企画盤のような感じもするのですが・・・もちろん収録されている曲は基本的に彼らしい暖かみを感じる名曲ばかりですが。

評価:★★★

山崎まさよし 過去の作品
COVER ALL-YO!
COVER ALL-HO!

IN MY HOUSE
HOBO'S MUSIC
Concert at SUNTORY HALL
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[STANDARDS]
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[SOLO ACOUSTICS]

FLOWERS
HARVEST ~LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾 2014~
ROSE PERIOD ~the BEST 2005-2015~
UNDER THE ROSE ~B-sides & Rarities 2005-2015~
FM802 LIVE CLASSICS

LIFE

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2018年7月12日 (木)

人気の「歌い手」グループが初の1位

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

ニコニコ動画を中心に人気の「歌い手」グループが初の1位獲得です。

まず今週1位を獲得したのは動画投稿サイトニコニコ動画の人気コーナー「歌ってみた」への投稿で人気を博した「歌い手」によるグループ、浦島坂田船「V-enus」が1位獲得。本作がシングルアルバム通じて初の1位獲得。初動売上5万5千枚は前作「Four the C」の2万9千枚(4位)からアップしています。

2位は先週1位の宇多田ヒカル「初恋」がワンランクダウンながらもこの順位をキープ。3位には韓国の女性アイドルグループRed Velvet「#Cookie Jar」がランクイン。本作が日本でのデビュー作。初動売上2万6千枚でいきなりのベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下の初登場盤です。5位にはさだまさし「Reborn~生まれたてのさだまさし~」がランクイン。レコードデビュー45周年を迎えるクレープから数えて彼の45枚目となるアルバム。ナオト・インティライミやレキシなども参加して話題となっています。初動売上1万1千枚は前作「惠百福 たくさんのしあわせ」の8千枚(9位)からアップ。

6位には「STORMBLOOD:FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack」がランクイン。タイトル通り、「FINAL FANTASY XIV」のサントラ盤。初動売上1万1千枚。「FF XIV」関連だと直近作、祖堅正慶「Eorzean Symphony: FINAL FANTASY XIV Orchestral Album」1万3千枚(7位)よりダウン。

7位初登場は徳永英明「永遠の果てに~セルフカヴァー・ベストⅠ~」。タイトル通り、初となるセルフカバーアルバム。「壊れかけのRadio」「レイニーブルー」「夢を信じて」など往年のヒット曲が数多くセルフカバー曲として収録されています。初動売上は9千枚。直近作はオリジナルアルバム「BATON」で同作の初動1万4千枚(8位)からはダウンしています。

初登場ラスト8位には神崎エルザ starring ReoNa「ELZA」がランクイン。テレビアニメ「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」の登場人物によるアルバム。初動売上9千枚でベスト10入りです。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年7月11日 (水)

ロングヒットが目立つ

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず1位はAKB48系が獲得。

まず1位はSKE48「いきなりパンチライン」。彼女たちとしては珍しいラテン調のナンバー。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で3位、ラジオオンエア数82位という結果に。オリコンでは初動売上24万枚で1位獲得。前作「無意識の色」の27万8千枚(1位)からダウンしています。

2位はDA PUMP「U.S.A.」が先週の4位からランクアップし、自己最高位を獲得。実売数で2位を獲得しているほか、ラジオオンエア数18位、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数5位といずれも上位をキープしているのですが、特に強いのがYou Tube再生回数の1位。確かに、この曲、You Tubeでついつい何度も見てしまいます・・・。オリコンのCDシングルランキングでは23位に留まっていますが、デジタルシングルチャートでは2位を獲得しており、典型的なデジタル主導のヒットとなっています。

3位は米津玄師「Lemon」が先週と変わらず3位をキープ。実売数4位のほか、PCによるCD読取数及びYou Tube再生回数が2位を獲得しており、まだまだロングヒットが続きそうです。

この2位、3位ともにロングヒットのナンバーなのですが、今週はほかにもロングヒットが目立ちました。

なんといっても米津玄師。「LOSER」が先週の10位から5位にランクアップしたほか、なんとDAOKO×米津玄師「打上花火」が先週の11位から7位にランクアップ。2月19日付チャート以来21週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。全体的にほかに強力盤がなかったことがロングヒット曲を押し上げた要因になっていると思われますが、「打上花火」は実売数で5位、You Tube再生回数では6位を獲得。特にYou Tube再生回数は20位以内を常にキープしており、驚異的なロングヒットの大きな要因となっています。

続いて4位以下・・・ですが、今週は実は初登場曲がありませんでした。ベスト10圏外からの返り咲きは上記「打上花火」ともう1曲。4位にHKT48「早送りカレンダー」が先週のベスト100圏外からランクアップし、5月21日付チャート以来8週ぶりに返り咲いています。これは例のごとく握手券付の「劇場盤」の通販販売数が加味された影響。オリコンチャートでも2位にランクアップしています。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年7月10日 (火)

内省的な作風が印象的

Title:Ye
Musician:Kanye West

今、いろいろな意味でアメリカを最も騒がしているミュージシャン、Kanye West。先日もアメリカのトランプ大統領を支持するツイートを行い、賛否両論入り混じる大きな話題となりました。日本でも先日、RADWIMPSの「HINOMARU」をめぐる騒動があったばかりですが、カニエがトランプ支持という投稿をするのを日本で考えれば宇多田ヒカルとかミスチルの桜井とかB'zの稲葉とかそのレベルのミュージシャンが「安倍総理支持」とツイートしたと仮定すれば、確かに賛否入り混じる騒動になりそうな感じも・・・。もっとも彼の場合、アメリカにおける黒人差別という歴史と差別的な発言すら行うトランプ大統領という背景があるだけに、余計にその発言が反響を生み出しているのでしょうが。

そんな騒動の渦中にリリースされたのが今回のニューアルバム。カニエのアルバムといえば、以前、CDではアルバムを発表しないと表明したり、前作「The Life Of Pablo」では当初、自らが共同オーナーをつとめるストリーミングサービスTIDALのみで発表したりとこちらもいろいろな意味で世間を騒がしてきました。そして今回の作品はわずか7曲入り23分というミニアルバムのようなアルバム。今回も配信先行でのリリースとなりましたが、ただCDでのリリースも予定されているようです。

まず今回のアルバムで大きな特徴的なのは、アルバム全体として非常に内省的な内容になっているという点でした。まず冒頭を飾る「I Thought I About Killing You」からして、ストリングス主導のちょっと悲し気なトラックに、ラップはどちらかというとポエトリーリーディング的なもの。さらに今回、この曲のラストに自ら双極性障害であるという告白が大きな衝撃を与えています。

さらにこの曲をはじめ、全体的に美しいメロディーラインが耳を惹く曲が多く、例えば「Wouldn't Leave」も美しいボーカルトラックが強い印象に。この曲は妻のキムへの愛情を歌ったナンバーだそうで、そんな歌詞を反映するかのような実に美しい曲に仕上がっています。「Ghost Town」もメロディアスな歌が中心となった歌モノ。分厚くノイジーなトラックも耳に残るダイナミックなナンバーに仕上がっています。

ラストを飾る「Violet Crimes」は暴力的な犯罪というタイトルとは裏腹に、自分の娘2人に対する愛情を歌ったナンバー。こちらもピアノを中心とした美しいトラックに歌うようなラップに女性ボーカルによる歌も印象に残ります。いろいろと騒動を起こしているカニエ・ウェストもいっちょ前にパパさんなんだなぁ、ということでほほえましくすら感じてしまいます。

そんな訳で、歌詞自体も非常に内省的にまとめあげられており、メロディーやトラックもそれに合わせるようにメロディアスな雰囲気にまとまっている今回のアルバム。衝撃的な告白はあるものの、全体的に等身大の人間としてのカニエ・ウェストを描いており、受け止めやすい内容になっていたと思います。また全体的にメロディアスでポップな内容にまとまっていたため、HIP HOPリスナー以外にとっても十分楽しめる、いい意味で「ポップ」なアルバムになっていたと思います。23分という短さもいい意味で聴きやすい内容に仕上がっていた作品。良くも悪くも話題に上る彼ですが・・・やはりミュージシャンとしては一流であることを感じることが出来た傑作でした。

評価:★★★★★

KANYE WEST 過去の作品
GRADUATION
808s&Heartbreak
MY BEAUTIFUL DARK TWISTED FANTASY
YEEZUS
The Life Of Pablo

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2018年7月 9日 (月)

エレクトロサウンドで今風にアップデート

Title:SAFARI
Musician:土岐麻子

途中、ベスト盤のリリースを挟みつつ、約1年4ヶ月ぶりとなった土岐麻子の新作。前のオリジナルアルバム「PINK」ではサウンドプロデューサーとしてトオミヨウを起用し、エレクトロサウンド色が強くなった作風が大きな特徴となっていました。今回のアルバムも基本的にその作風を踏襲し、前作同様にエレクトロサウンドの色合いが濃いアルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムはテーマとして「サファリ体験をイメージし、『人の心の内側に息づく“野性”』や『街の裏側に潜む“生”』などを描いた作品」となっているそうで、そんなアルバムを象徴する作品が1曲目の「Black Savanna」。都会をジャングルに模して描きつつ、その中で生きる自分の孤独さを歌ったような内容になっており、まさに「SAFARI」というタイトルに沿ったような歌詞に。都会を「コンクリートジャングル」と表現する方法は少々陳腐ではあるかもしれませんが、まさにそんな「コンクリートジャングル」を描いたようなアルバムになっています。

サウンド的にも、少々トライバルな雰囲気を醸し出しつつ、スペーシーなエレクトロサウンドになっている作品に。このクラブ系の色合いが強いエレクトロサウンドという方向性も今作は非常に顕著になっており、「FANTASY」「Flame」など、強いビートを強調しつつ、リバースを生かしたエレクトロサウンドが印象的な楽曲を作り出しています。

もともと彼女の楽曲にはジャズやソウルの要素が強く含まれているのですが、特に昨今のジャズシーンではクラブ系サウンドに大きく寄ったミュージシャンも少なくありません。そういう意味でも彼女の楽曲は、ある意味、昨今のジャズシーンやシティーポップの動向に寄り添ったような方向性と言えるでしょう。実際にその試みは見事に成功していたように感じますし、しっかりと「今」を感じさせるアルバムに仕上がっていました。

その上に前作以上にバリエーションの多様さが増した本作。大橋トリオと組んだ「CAN'T STOP」ではエレクトロサウンドにアコギのサウンドを加えたアップテンポなポップスになっており、エレクトロとアコースティックが同居したインパクトあるポップソングに仕上がっていましたし、「SUNNY SIDE」もスウィング風のリズムが軽快で楽しいポップスに。アニメ「グラゼニ」のエンディングテーマにも起用された「SHADOW MONSTER」も軽快なディスコポップに仕上がっており、いい意味でタイアップ曲らしい耳に残るポップソングに仕上がっていました。

本編ラストの「名前」はピアノでしんみり聴かせるバラードナンバーで締めくくり。非常にきれいな形でアルバムは締めくくられます。前作「PINK」もなかなかの良作でしたが、今回のアルバムではより土岐麻子とトオミヨウのタッグが上手くいっていたように感じました。個人的には彼女のアルバムのうち、ここ数作の中では一番の傑作アルバム。このコンビ、次回作も続けるのでしょうか。まだまだこれからも楽しみです。

評価:★★★★★

土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~
Bittersweet
PINK
HIGHLIGHT-The Very Best of Toki Asako-


ほかに聴いたアルバム

Takeshi Kobayashi meets Very Special Music Bloods/小林武史

ご存じミスチルやレミオロメンなどのプロデューサーとして知られる小林武史が、ここ最近、プロデュースを行った作品を収録したオムニバスアルバム。「初CD化が多数」という売り文句ですが、昔と違って「初CD化」といってもはじめて音源としてリリースされるという訳ではなく、配信限定でリリースされた曲がはじめてCDになった、という意味。そういう意味ではレア度は低めながらも、ミスチル桜井やback number、YEN TOWN BAND、クリープハイプ、Salyuなど豪華なメンバーがズラリと参加したアルバムになっています。

ここ最近の小林武史は、ストリングスを多用した大味なアレンジが多く、正直言って本作もさほど期待していなかったのですが、意外とエレクトロサウンドも多様していたり、彼の本来の持ち味だったはずのメロディーラインをしっかりと前に押し出した作品も多く、そういう意味ではいい意味で小林武史らしさがきちんと出ていた作品になっていました。もちろん曲によっては、いかにも彼らしいストリングスアレンジが入っていたり、ベタなスケール感で大味な印象を受ける作品もありましたが、概してメロディアスなポップソングを素直に楽しめる作品に。参加ミュージシャンのファンなら素直に楽しめるアルバムだったと思います。

評価:★★★★

小林武史 過去の作品
WORKS1

アスター/KANA-BOON

KANA-BOONの新作は、「夏」をテーマとした5曲入りのミニアルバム。まあ基本的にはいつも通りの爽快でアップテンポなギターロックがメイン。それなりにメロディーもサウンドもインパクトあるものの、良くも悪くもいつも通りな感じ。ファンなら安心して楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★

KANA-BOON 過去の作品
DOPPEL
TIME
Origin
NAMiDA
KBB vol.1

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2018年7月 8日 (日)

J-POPリスナー層にも訴求しそうなポップス

Title:Love Is Dead
Musician:CHVRCHES

かわいらしい女性ボーカルと軽快なポップソングが魅力的で本国イギリスやスコットランドでも高い人気を誇る女性ボーカル+男性2名という3ピースバンドCHVRCHES(チャーチズ)。前作から約2年8ヶ月。待望の3rdアルバムがリリースされました。

彼女たちの音楽の大きな特徴はメロディーが非常にわかりやすく軽快な、どこか80年代も彷彿とさせるシンセポップと、かわいらしい女性ボーカル。基本的に1枚目も2枚目も、そんな彼女たちの特徴をそのまま生かした素直なポップソングが並んでいましたが、3作目となる本作もそんな彼女たちの基本路線をきちんと踏襲した、実に彼女たちらしいポップソングが並んでいました。

また彼女たちの楽曲は、洋楽としては珍しくわかりやすいサビを持ったJ-POP的な構造の曲が多く見受けられるのも特徴的。本作でいえば1曲目「Graffiti」もわかりやすくインパクトあるサビを持っていますし、「Graves」などはまさしくテンポよいリズムとサビにむかって盛り上がっていき、わかりやすいサビが展開する楽曲構造などはまさしくJ-POP的。ここらへん、かわいらしい女性ボーカルとあわさって、普段、洋楽を聴かないようなリスナー層にも訴求しやすいポップスだと思っています。そういう意味ではもっと日本でも売れてもいいタイプのミュージシャンだと思っているのですが・・・。

また「Heaven/Hell」やある種のスケール感を感じるラストソングの「Wonderland」のシンセサウンドなど、80年代の匂いを感じるシンセの使い方にどこかノスタルジックな雰囲気も感じます。ここらへんも彼女たちの音楽がいい意味で聴きやすさを感じさせる大きな要因でしょう。

今回のアルバムでちょっと異色的だったのが「My Enemy」でThe Nationalのマット・バーニンガーが参加していること。マットのボーカルが渋さを感じさせるナンバーになっており、アルバムの中でもひとつのインパクトとなっています。また「God's Plan」でもいつものように男性ボーカル曲を入れてきて、アルバムの中でのバリエーションを持たせています。この曲はよりエレクトロ色が強く、ダンサナブルなテクノ風のナンバーに仕上げており、ここらへんのバリエーションの持たせ方もいつも通りといった感じでした。

そんな訳でアルバムの内容としては1枚目、2枚目と大きな変化はありません。ただ、彼女たちみたいな軽快なポップソングが魅力的なミュージシャンは変にスタイルを変えてくるよりも、本作のようにあくまでもポップであることを追及したアルバムの方が良いのかもしれません。実際、3作目となる本作でもメロディーのポップスさもあり、マンネリな雰囲気を全く感じることなく魅力的なポップアルバムに仕上がっていました。上にも書いた通り、J-POPリスナー層でも違和感なく楽しめるポップスだと思うだけに、普段洋楽を聴かないような方も、是非ともチェックしてみてほしいのですが・・・。日本でももっともっと人気が高まってほしいなぁ。

評価:★★★★★

Chvrches 過去の作品
The Bones Of What You Believe
Every Open Eye

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2018年7月 7日 (土)

戦後日本のポップス史を代表する作曲家による自選集

今の日本のポップスシーンにおいてもっとも重要な作曲家は誰か、と問われた時に筒美京平の名前を出して異論と唱える方は少ないのではないでしょうか。1967年に「バラ色の雲」でヒットを飛ばして以降、数えきれないほどのヒット曲を世に送り出し、総売上枚数7560万枚はかの小室哲哉を上回り、歴代1位を記録しています。さすがにここ数年はかつてほどのヒット曲の量産は行っていないものの、いまなおコンスタントに作曲は続けています。

そんな彼の1967年のブレイクから50年の記念ということで3組の自選作品集をリリースしました。

Title:筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス AOR歌謡

Title:筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス シティ・ポップス編

Title:筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス アイドル・クラシックス

このうち「AOR歌謡」と「シティ・ポップス」に関しては正直言って違いは少々あいまい。あえていえば「AOR歌謡」はAORと名乗りつつも、ムード歌謡や演歌の領域に入るような楽曲も並んでいます。

さてこの自選作品集、それぞれ40曲が収録され、全120曲という大ボリューム。その量にも関わらず誰もが知っているようなヒット曲の連続で、筒美京平の作家としてのすさまじさがわかります。

そしてその曲調なのですが、実にいろいろなジャンルがあってバラバラ。例えば「AOR歌謡」に収録されている五木ひろしの「かもめ町 みなと町」はド演歌ですし、かと思えば小沢健二の「強い気持ち・強い愛」などは当時、「渋谷系」と称されていたこじゃれた洋楽テイストの強いポップチューンに。C-C-B「Romanticが止まらない」のような80年代の王道を行くようなエレクトロポップがあったかと思えば、SHOW-YAの「その後で殺したい」のようなロックナンバーもあったり、さらには「サザエさん」みたいなアニメソングまであったりします。

例えば同じ一世を風靡した作曲家でも、小室哲哉だとか織田哲郎だとか、いずれもその作家の手癖がついており曲を聴いただけで彼らの曲だとわかる楽曲が少なくありません。しかし、彼の場合は楽曲を聴いていてもそんな印象は皆無。完全に裏方に徹しており、そういう意味では徹底して「プロ」だということがわかります。

ただ、そんな中であえて筒美京平らしさを探ろうとすると、ちょっと抽象的な言い方になるのですが、メロディーラインは「エッジの利いた」というよりもどこか丸みを帯びた優しさを感じさせます。強烈なインパクトのあるサビで聴かせるというよりは、楽曲全体のメロディー構成できちんと聴かせてくれるような印象。インパクトあるワンフレーズに安直に頼らない、ある意味腰の落ち着いた楽曲づくりを感じます。

また、特に「AOR歌謡」に収録されている曲のように、ムード歌謡色や演歌色の強い楽曲に関しても、どこかバタ臭さというか洋楽からの影響が垣間見れるのも彼の大きな特徴に感じます。彼は90年代に前述のオザケンやピチカート・ファイヴのような渋谷系と呼ばれる洋楽テイストの強い、その時代の先頭を行っていたようなミュージシャンたちからリスペクトを受け、彼らへの楽曲提供を行っているのですが、それも彼のつくる楽曲が単なる「昔ながらの歌謡曲」ではなく、しっかりと広く海外からの影響も受けている点、渋谷系にもつながるものを感じたのでしょう。

ちなみに今回、3組のアルバムをリリースしたのですが、このうち実は一番おもしろかったのが「アイドル・クラシックス」。なにげにその時代時代を感じさせる楽曲が並んでおり、ほぼリリース順の並びになっているのですが、日本歌謡史をアイドルへの楽曲を通じて垣間見ることが出来るような内容になっています。

さらに今回、「自選作品集」という建付けになっているため、かなりメジャーな曲でも本作からはずれた曲がありました。例えば近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」などはおそらく誰もが知っている大ヒット曲でありながらも今回のアルバムには収録されていませんし、NOKKOの「人魚」も未収録となっています。収録できない大人の事情がある曲もあるのかもしれませんが、こういうヒット曲も彼にとってはベストといえる出来ではなかったということでしょうか。興味深く感じます。

とにかく日本の歌謡史を彩るヒット曲の連続で、非常にボリューミーな内容ながらも最後までまったくダレルことなく楽しめたオムニバスアルバムでした。あらためて筒美京平という作曲家の偉大さを感じる作品。かなりボリュームある内容ですが、ポップス好きはまずチェックしておきたいオムニバスです。

評価:いずれも★★★★★

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2018年7月 6日 (金)

3人のみで作り上げたアルバム

Title:僕の心に街ができて
Musician:空気公団

空気公団約1年10ヶ月ぶりとなるニューアルバム。前作「ダブル」は多彩なゲストが参加したアルバムでしたが、今回のアルバムはメンバーの3人だけですべてつくりあげたアルバムだとか。アルバムのジャケット写真も、前作はメンバー3人にそれぞれの分身が加わって、まるで6人組バンドかのようなユニークな、彼女たちにとってはある意味「攻め」のジャケットになっていたのですが、今回のアルバムはシンプルな絵をジャケットとして用いており、そういう意味でも前作とは対照的なアルバムになっています。

肝心なアルバムの内容的にも、前作とは対照的なアルバムに仕上がっていました。前作はインパクトあるメロディーラインを主軸にもってきた、わかりやすい「ポップ」のアルバムでした。インパクトあるジャケットといい多彩なゲストといい、良くも悪くもある程度「売れること」を意識したアルバムだったと言えるかもしれません。

対して本作に関してはメンバー3人のみで作り上げたということもあり、前作ほどのバリエーションもなければ、わかりやすいインパクトあるメロディーラインもありません。リズムトラックが雨の音のように聴こえる「雨のリズムに乗って」のように打ち込みを入れてきた曲があったり、「こうして僕は僕らになった」のようにバンドサウンドにサイケロックを取り込んだような作品はありますが、アルバム全体としてはシンプルなピアノの音色を主軸としたメロディアスで暖かみのあるポップソングが並んでいます。

その結果、アルバム全体としては正直、少々地味という印象は否めません。ただ、薄いエレピも入り、暖かい雰囲気の曲に仕上がっている「いま、それこそが」やピアノや薄く入ったホーンセッションが爽快な「静かな部屋」、ピアノのアルペジオで爽やかに聴かせる「君は光の中に住んでいる」など、シンプルな中にキラリと光るメロを聴かせ、知らず知らずに心に染みいってくる、空気公団らしい楽曲が並んでいます。

前作もインパクトがあり内容的にはもちろん傑作だったものの、少々大味になってしまい空気公団らしい繊細さに欠けた印象がありました。しかし、今回はその逆。アルバム全体としてのインパクトは薄いものの、メロディーやサウンドに空気公団らしい繊細さが戻ってきた作品になったと思います。

そういう意味で実に空気公団らしいアルバムに仕上がった本作。その分、若干目新しさに欠けたという点がマイナスになってしまう部分なのですが・・・それを補って余りある、ほっと心に染みるメロディーをしっかりと聴かせてくれたアルバムになっていました。空気公団の良さがしっかりとつまった1枚でした。

評価:★★★★★

空気公団 過去の作品
空気公団作品集
メロディ
ぼくらの空気公団
春愁秋思
LIVE春愁秋思
夜はそのまなざしの先に流れる
くうきにみつる(くうきにみつる)
音街巡旅I
こんにちは、はじまり。
ダブル


ほかに聴いたアルバム

Future Soundtrack/ストレイテナー

途中、トリビュートアルバムのリリースなどはあったものの、オリジナルアルバムとしては2年ぶりとなる新作。前作「COLD DISC」はロック色よりもポップス色の強いアルバムになっていましたが、本作もその傾向が続いています。全体的にバンドサウンドは少なく、メロディアスなミディアムテンポのポップチューンが並ぶアルバムに。正直、もうちょっとガツンとくるロッキンなナンバーを聴きたいな、とも思う反面、しっかりと聴かせるメロディーラインはインパクトも十分で、メロディーメイカーとしての実力もきちんと感じられました。全体的に地味目な印象はあるものの、後に確実に残るもののある1枚です。

評価:★★★★

ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
21st CENTURY ROCK BAND
Resplendent
Behind The Scene
Behind The Tokyo
COLD DISC

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2018年7月 5日 (木)

デビュー作以来7作連続1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

まずは予想通りの1位獲得です。

まずは1位。宇多田ヒカル「初恋」。約1年9ヶ月ぶりとなる新譜が見事1位獲得。これでデビュー作以来、7作連続の1位獲得となりました。初動売上は20万3千枚。前作「Fantome」の25万2千枚からはダウンしてしまいましたが、まだまだ強さを感じさせます。

2位には韓国の男性アイドルグループWanna One「1÷x=1 (Undivided)」が4万1千枚を売り上げランクアップし初のベスト10入り。これは7月に東京と大阪で行われるイベントに参加するための購入枚数が大幅に加算された影響のようです。

そして3位4位には、並んでランクインしてきました小室哲哉「TETSUYA KOMURO ARCHIVES "T"」「TETSUYA KOMURO ARCHIVES "K"」。引退を表明した小室哲哉の代表曲を収録した作品集で、それぞれ4枚組、計8枚のCDに彼の作品全100曲が収録された、まさに小室哲哉の仕事を総括するような作品となっています。初動売上はそれぞれ3万4千枚と3万3千枚。大ヒットした超有名曲から、知る人ぞ知る的まで収録されており、あらためて彼が引退するという事実が非常に残念に感じてしまいます。是非近いうちに「引退」を撤退してまた音楽シーンに戻ってきてほしいのですが・・・。

5位初登場は動画サイトでの投稿から人気を博したシンガー天月-あまつき-「それはきっと恋でした。」。初動売上3万枚は前作「箱庭ドラマチック」の1万枚(8位)よりアップ。

6位には「バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクション Vol.1」がランクイン。アニメやゲームなどによるメディアミックスプロジェクトBanG Dream!から派生したゲームバンドリ! ガールズバンドパーティ!のキャラクターソング。初動売上2万3千枚。バンドリ!がらみだと、同作に参加した声優によるユニットRoselia「Anfang」以来のアルバムで、同作の初動2万5千枚(2位)より若干のダウン。

7位初登場は女性シンガー大原櫻子「Enjoy」。これが3枚目となるアルバム。初動売上1万9千枚は前作「V」の2万8千枚(3位)よりダウン。今回のアルバム、作曲や編曲に小名川高弘という作家がメインで参加しているのですが、誰かと思えば元CHARCOAL FILTER(!)のギタリスト。いたなぁ、CHARCOAL FILTER。しかし、元Sound Scheduleの大石昌良といい、元Stereo Fabrication of Youthの江口亮といい、90年代後半から2000年代初頭あたりにデビューしたもののいまひとつ売れなかったギターロックバンドのメンバーが、作家などの裏方として活躍するケースが目立つような・・・。

8位にはみやかわくん「STAR LAND」がランクイン。こちらも動画サイトへの動画投稿などで人気を博した男性ボーカリスト。初動売上1万7千枚は前作「On Your Mark」の5千枚(25位)から大幅アップし初のベスト10入り。

9位は紅月「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ 紅月」がランクイン。女性向け男性アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!」からのキャラクターソング。初動売上1万6千枚。同シリーズの前作Knights「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ Knights」の4万6千枚(4位)からダウン。

最後10位にはロックバンドSUPER BEAVER「歓声前夜」がランクイン。初動売上1万5千枚は前作「真ん中のこと」の1万枚(6位)からアップしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年7月 4日 (水)

今週も日韓男性アイドル対決

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に引き続き、今週も1位2位に日韓の男性アイドルグループが並びました。

まず1位を獲得したのはNEWS「BLUE」。日テレ系ロシアサッカーワールドカップ中継テーマソング。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数でいずれも1位、ラジオオンエア数25位。先週の29位からCDリリースにあわせてランクアップ。オリコンでは初動売上16万4千枚で1位獲得。前作「LPS」の13万枚(1位)よりアップしています。

NEWSといえば4年前のブラジルサッカーワールドカップでも日テレ系サッカー中継のテーマソング「ONE-for the win-」を歌っていました。この4年前のテーマソングでは日本だけではなく歌詞の中で出場国の名前が歌い上げられており、サッカーを通じて世界全体でつながろうという内容のテーマとなっていました。しかし今回の曲はサビに露骨に「ニッポン」コールを入れてくるなど、日本のみをテーマとした応援歌となっています。この曲自体は露骨に愛国心を煽ったような曲ではなく、良くも悪くも話題となったRADWIMPSの「HINOMARU」のようにとやかく言うような曲ではないかもしれませんが、この4年間の歌詞の方向性の変化は非常に気になります。

2位初登場は元東方神起のジェジュン「Sign」が先週の30位からCDリリースにあわせてランクアップ。これがソロとしては初のシングルとなります。実売数及びTwitterつぶやき数2位、PCによるCD読取数9位を獲得。オリコンでは初動8万4千枚で2位を獲得しています。

3位には米津玄師「Lemon」が先週の4位からランクアップ。5月21日付チャート以来、7週ぶりのベスト3返り咲きとなっています。米津玄師は今週「LOSER」も先週の11位から10位にアップし、6月11日付チャート以来、4週ぶりにベスト10に返り咲いているほか、さらにDAOKO×米津玄師「打上花火」も惜しくもベスト10入りはのがしたものの11位にランクアップしており、米津玄師の曲の躍進が目立ちました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、5位に女性アイドルグループBiSH「Life is beautiful」がランクイン。先週の63位からCDリリースにあわせてベスト10入り。実売数3位、ラジオオンエア数2位、PCによるCD読取数20位、Twitterつぶやき数53位を獲得。オリコンでは初動3万9千枚で3位初登場。前作「PAiNT it BLACK」の3万8千枚(1位)から微増。

9位にはAqours「ホップ・ステップ・ワーイ!」が初登場でランクイン。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」に登場するアイドルグループによる新作。オリコンでは同作が収録されている「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours CLUB CD SET 2018」が初動2万7千枚で4位初登場。前作「WATER BLUE NEW WORLD」の3万3千枚(4位)からダウンしています。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2018年7月 3日 (火)

戦後最大のポップアルバム

Title:ribbon-30th Anniversary Edition-
Musician:渡辺美里

1988年にリリースされ、彼女最大のヒット作となったアルバム「ribbon」。おととし、一昨々年とデビューアルバム「eyes」、2ndアルバム「Lovin'you」の30周年記念盤をリリースしてきた彼女でしたが、大方の予想通り、ついに今年、彼女の代表作とも言える「ribbon」の30周年記念盤をリリースしてきました。

これは「Lovin'you」の30周年記念盤の時にもちらっと書いたのですが、渡辺美里の代表作と言われた時、おそらく「Lovin'you」を挙げるファンと本作を挙げるファンに分かれるのではないでしょうか。それだけファンの人気も高い本作ですが、その内容に関していえば、ある意味「Lovin'you」と対照的とも言えるような作品にしあがっています。

ティーンエイジャーという大人と子供の間という微妙な年代の心の叫びを綴った「ribbon」に対して、本作に描かれているのは主に20代の若者の恋愛を中心とした素直な声。ティーンエイジャーらしい焦燥感が描かれた「Lovin'you」に比べると、比較的明るく素直なポップソングが並んでいます。

また「Lovin'you」では渡辺美里を含めて小室哲哉、岡村靖幸など参加しているミュージシャンもデビュー間もないミュージシャンが多く、デビュー直後のミュージシャンらしいある種の緊張感が感じられた一方、本作がリリースされた頃は、渡辺美里も既にシンガーとしての地位を確立し、小室哲哉も前年に「Get Wild」が大ヒットし、一躍人気ミュージシャンの仲間入りを果たしているなど、渡辺美里を含めて参加ミュージシャン全員が脂ののりまくっていた頃。「Lovin'you」のような若さゆえのヒリヒリとした空気感はないものの、脂がのりまくっている時期らしい勢いとある種の余裕を感じさせる楽曲が並んでいます。

ある意味「ロック」のテイストが強かった「Lovin'you」と比べると、本作の方向性はあくまでもポップ。10代の心の叫びを詰め込んだという意味も含めて、ロックミュージシャン渡辺美里が表現されたのが「Lovin'you」だったのに対して、「ribbon」は彼女をポップシンガーとして見た場合、間違いなく最高傑作だと言えると思います。

このアルバムに収録されている曲はいずれも彼女の代表作と言えるだけの傑作が並んでおり、特に小室哲哉作曲の「Believe」「悲しいね」は彼の全キャリア通じても上位に食い込んでくる傑作だと思います。彼らしい転調は見受けられるものの、後の彼の作品に見受けられるような「小室哲哉らしい」手癖のついたメロディーはなく、マイナーコード主体の悲しげなメロディーラインは勢いではなくしっかりとメロディーの展開で聴かせる名曲。彼のメロディーメイカーとしての才能をしっかりと感じることが出来ます。

また渡辺美里の書く歌詞もまさに絶品。特に「さくらの花の咲くころに」では「右上がりの丸い文字」「因数分解」「砂ぼこり からっぽのフィールド」など学生時代を彷彿とさせる単語が次々と登場し、学生時代の風景が目に浮かんできます。高校を卒業して20年以上たった今でもこの曲を聴くと学生自体にタイムスリップさせられるような、非常に切ない気持ちになる傑作に仕上がっています。

渡辺美里のボーカルに関しても当時22歳とは思えないほど、完成され、かつ「貫録」という言葉すら浮かんでくるほどの歌唱力を見せつけています。まさにあらゆる観点からもっとも勢いのあるミュージシャンたちが作り上げた最高傑作アルバム。当時の彼女の勢いから考えると、これだけの傑作アルバムが生まれるのは、ある意味「当然」とも言えたのかもしれません。当時の本作のキャッチコピーは「戦後最大のポップアルバム」だったのですが、その言葉に偽りのない、J-POP史に残る傑作アルバムだと思います。

そんなアルバムの30周年記念盤ということで、是非ファンでなくてもこれを機に本作を聴いてほしいところなのですが・・・ただ、30周年記念盤としてはちょっと残念な面も。まずボーナスディスク。当時アルバム未収録となっていたシングルのカップリング曲やシングル「君の弱さ」が収録。これはこれで良かったのですが、ただ、もうちょっとデモ音源とかライブ音源とかバージョン違いとか、レア音源とかなかったのかなぁ。

さらに物足りなかったのが初回盤についてくるDVDで、わずか18分という収録時間の短さ。彼女の曲がつかわれた当時の貴重なCMやテレビスポットなどそれなりに見どころはあるものの、通常盤プラス3,000円以上という内容にしてはかなり物足りなさを感じました。ライブ映像とかPVとか(当時はさほどPVは普及していなかったのかなぁ?)もっと収録すべき映像はあると思うのですが・・・。

そんな訳で30周年記念盤としては不満な点も少なくない企画でしたが、アルバム自体は今聴いても文句なしの傑作なのは間違いありません。通常盤で十分だと思うので、これを機に是非とも全音楽ファンがチェックしてほしい傑作アルバムだと思います。

評価:★★★★★

渡辺美里 過去の作品
Dear My Songs
Song is Beautiful
Serendipity
My Favorite Songs~うたの木シネマ~
美里うたGolden BEST
Live Love Life 2013 at 日比谷野音~美里祭り 春のハッピーアワー~

オーディナリー・ライフ
eyes-30th Anniversary Edition-
Lovin'you -30th Anniversary Edition-


ほかに聴いたアルバム

自由の岸辺/佐野元春&THE HOBO KING BAND

佐野元春のニューアルバムは2011年にリリースされた「月と専制君主」に続くともいえるセルフカバーアルバム。その「月と専制君主」と同じバンドメンバーにより演奏された楽曲は、かなり分厚いサウンドがほどこされており、しっかしと「今」の音として響いてくる内容に。アルバム全体の流れとしても違和感なく、純粋な新作的な感覚でも十分に楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★

佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
BLOOD MOON
MANIJU

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2018年7月 2日 (月)

ジャンルを越えた絶品カバー

Title:アダムとイヴの林檎

デビュー直後から彼女を知っている身としてはもうデビューから20周年なのか・・・とまず感慨を抱いてしまいました。デビュー20周年企画としてリリースされた椎名林檎トリビュートアルバム。今回のトリビュートアルバム、「世代を越える・ジャンルを越える・国境を越える
関係を越える」
という4つのテーマ設定が行われており、単純なカバーに留まらない、かなり意欲的なトリビュート企画となっています。

そんな意欲的な企画なだけに参加しているミュージシャンもかなり豪華。「世代を越える」としては、やはり上の世代の井上陽水、下の世代の私立恵比寿中学。「ジャンルを越える」としてはHIP HOPのRhymesterやソウルのAI、「国境を越える」としてはなんとMIKAが参加。「関係を越える」としてはスピッツの草野マサムネ、ミスチルの鈴木英哉、アジカンの喜多建介、雨のパレードの是永亮祐が組んだtheウラシマ'Sなどのミュージシャンたちが参加しています。

その中でも特に絶品だったのが宇多田ヒカルの「丸ノ内サディスティック」。色っぽさと大人の魅力を感じる宇多田ヒカルのボーカルにゾクゾクとさせられるカバー。ここ最近、彼女のボーカルは磨きがかかっています。ただこの曲、最近彼女がプロデュースを手掛ける小袋成彬とのデゥオになっているのですが、彼のボーカルがあきらかに宇多田ヒカルの差が大きく、そこが非常に残念なことに・・・正直、宇多田ヒカルのみのボーカルで聴きたかったな・・・。

ただ、宇多田ヒカルに限らず、今回のアルバムは実に絶品のカバーが並んでいます。この手のトリビュートアルバムは数多くリリースされていますが、これほどクオリティーが高いカバーが並んだアルバムは珍しいかも。正統派ギターロックなカバーのtheウラシマ'S「正しい街」も草野マサムネのボーカルが耳を惹きますし、レキシの「幸福論」も実に楽しいファンキーなダンスチューンに仕上げています。「国境を越える」カバーになっているMIKAの「シドと白昼夢」もボッサなアレンジが楽しいポップチューン。こちらは同時にジャンルも越えたカバーに仕上げていました。

さらに今回のアルバムで耳を惹いたのがAIの「罪と罰」。彼女のソウルフルなボーカルが実に見事なカバー。今回、この曲や上の宇多田ヒカルやレキシのカバー、さらにはRhymesterや三浦大知によるカバーもそうですが、ブラックミュージックとの相性の良さを感じるカバーが多く、今回のアルバムで椎名林檎の曲の中に含まれる「ソウル」な要素を強く感じることが出来ました。

井上陽水の「カーネーション」も素晴らしい出来。完全に井上陽水の世界に染まっていますが、あの独特な色気を感じる世界観と椎名林檎の世界観が見事にマッチしており、井上陽水の良さと椎名林檎の良さをしっかりと兼ね備えたカバーに仕上げています。

藤原さくら、田島貴男のカバーもボーカリストとしての実力を十分に発揮した名カバーに仕上がっていますし、最後を締めくくる松たか子の「ありきたいな女」もストリングスを用いたドラマチックなアレンジの中で伸びやかな彼女のボーカルが見事にマッチしています。

ちょっと残念だったのが私立恵比寿中学の「自由への道連れ」とLiSAの「NIPPON」の2曲。完全にカラオケの平凡なカバー。ただこの2曲に関しても「ひどいカバー」というほどではなく、むしろ他がすごすぎるという方が正確な表現かも。それだけ絶品のカバーが並ぶアルバムになっていました。

この手のトリビュートアルバムは名曲も多い反面、はずれも少なくないというのが相場なのですが、これだけ絶品なカバーが揃ったアルバムも珍しいように思います。特にどのミュージシャンも原曲通りではなく、椎名林檎の曲をそれぞれのスタイルでアレンジしているのですが、そのアレンジがどれもきちんと原曲の良さを損ねずに、それぞれのミュージシャンの個性を引き出しているという点も驚きでした。もちろん、これだけ素晴らしいカバーが揃っているのは椎名林檎の曲自体が魅力的だった、という点は間違いないでしょう。椎名林檎ファンならずとも参加ミュージシャンのファンならチェックしておきたい傑作アルバムです。

評価:★★★★★

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2018年7月 1日 (日)

大充実のブルースボックス盤

Title:DOWN HOME BLUES-CHICAGO

今日、紹介するのは豪華5枚組のブルースのボックス盤。Winnerworldというイギリスのレコード会社からリリースされたコンピレーションアルバムで、「BLUES&SOUL RECORDS」誌に大きく紹介されており興味を持ち、5枚組ながらも5千円弱という安さもあり、思い切って買ってしまいました。

タイトル通り、1940年代、50年のシカゴブルースを収録したコンピレーションアルバムなのですが、まずそのボリューム感がすごい。全5枚組のCDに収録されているのは41ミュージシャン134曲。レーベルもRCAビクターやコロンビア、チェスといった有名どころから新興のインディーレーベルまでレコード会社の垣根を越えてそろえてあります。また曲順もおおむね録音年代順になっており、コンピレーションを聴きすすめていく中でシカゴブルースの流れを知ることが出来ます。

またこのコンピアルバムではMuddy WatersやHowlin' Wolf、Little WalterにElmore Jamesなどなどの有名どころはきちんと抑えられており、そういう意味ではブルース初心者層にもアピールできる一方で、80曲以上がシングルとして発売されなかった曲やシングルの別テイク。Muddy WatersやHowlin' Wolfなどのメジャー勢に関しても著名なヒット曲はあえて入れていなかったりと、なにげに選曲に関してはマニアックな部分も多く、マニア層へのアピールも十分。そういう意味では実にバランスの取れた選曲と言えるかもしれません。

さてこの134曲という大ボリュームのアルバムをお腹いっぱいになりながら聴き進めていったのですが、一言で「シカゴブルース」といってもそのバリエーションの広さをまず感じました。いかにもブルースらしい聴かせるナンバーがあるかと思えば、スウィング風の曲やムーディーなナンバー、軽快なブギウギやロックンロール風の曲、ダンサナブルなナンバーやインストチューンなど様々。シカゴブルースの世界の懐の深さを感じます。

このコンピではブルース好きなら誰もが知っているようなミュージシャンから知る人ぞ知る的なミュージシャンまで様々揃っているのですが、当たり前かもしれませんが著名なミュージシャンは聴いていてすぐわかる強い個性を持っていることをあらためて感じました。Howlin' Wolfの独特のだみ声やElmore Jamesの強烈なギターサウンドはいわずもがな、Muddy Watersのボーカルってあんな色っぽかったんだ、とあらためて認識させられたり、Little Waterの個性的なハープの音色にあらためて気が付かされたり、様々な曲の中と並べて聴くからこそあらためてわかるような発見も少なくありませんでした。

また、そんなメジャーどころ以外で個人的に印象に残ったのが、Disc3に収録されているBlue Smittyの「Crying」。独特のトレモロ奏法が強い印象を残します。また、同じDisc3のHomesick Jamesというユニークな名前のシンガーによる「Homesick」も印象的。かなりパワフルなボーカルが印象に残りますし、軽快なピアノとノイジーなギターの演奏も楽しげで印象に残ります。ちなみにかのElmore Jamesの従兄弟だそうです。

さらに本作、CDの内容もすごいのですが、同封のブックレットもすごい!88ページにも及ぶ読み応えのある内容なのですが、ミュージシャンの紹介がギッシリ。さらに収録曲のセッションミュージシャンに関する情報も記載されており、リスナーにとっては非常にありがたい内容に。さらに当時の貴重な写真も数多く載っており、CDを読みながらこのブックレットを読むだけでブルースファンにとっては至福の時間が訪れること間違いなしです!(あ、ちなみに輸入盤オンリーなので英語のみです・・・念のため)

そんな満足度100%の非常に充実したコンピレーションアルバム。ブルースが好きならとりあえずは聴いてみて損のないアルバムだと思います。非常に幸せな時間が味わえるボックス盤でした。

評価:★★★★★

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