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2018年6月16日 (土)

全カバー曲を網羅!

Title:EIICHI OHTAKI Song Book III 大瀧詠一作品集Vol.3「夢で逢えたら」(1976~2018)

ある意味、とんでもないアルバムがリリースされました。大瀧詠一の代表曲であり、日本ポップスのスタンダードナンバーとも言える「夢で逢えたら」。もともとは1976年に吉田美奈子がアルバム「FLAPPER」の中で歌ったのが「オリジナル」なのですが、その後、数多くのミュージシャンがこの楽曲を取り上げカバーし、歌われ継いでいます。今回は現在確認できるカバー86曲を網羅。4枚組のアルバムに収録したアルバムになっています。おととしにアルバム全曲が「GET WILD」というアルバムがリリースされ話題になりましたが、こちらはCD4枚計314分、すべて「夢で逢えたら」。まさに聴き終わった後も曲が夢に出てきそうなアルバムになっています。

この「夢で逢えたら」という曲、オリジナルは決して大ヒットした曲ではないのですが、なぜこれだけのカバーがあり、歌い継がれているのか、このアルバムを聴きながらまず感じた点はここでした。そして聴きながら思い当たったのが次の5つの理由でした。

① 曲がとてもシンプルでわかりやすい

楽曲は基本的にAメロ→サビの繰り返し。途中に大サビやセリフも入ってくるのですが、インパクトあるサビが繰り返される内容でとてもわかりやすい楽曲になっており、これが多くのリスナーに親しまれる大きな要因に感じました。

② 歌詞のテーマが普遍的

好きな人に夢で逢いたいというテーマは、万葉集の昔から片想いの定番中の定番。だからこそ多くのリスナーがこの歌詞に惹かれるのでしょう。

③ 歌詞が男性でも女性でも共通して歌える

②にもつながるのですが、「好きな人に夢で逢いたい」という歌詞は男性が歌っても女性が歌っても違和感がありません。そういう意味で男女問わずカバーしやすい歌詞と言えるでしょう。

④ セリフを改変しやすい

オリジナルは途中にセリフが入っているのですが、このセリフが改変しやすく、オリジナリティーを出しやすいのがカバーしやすい大きな要因のように感じます。またセリフ自体を省略した曲も少なくありませんでした。

⑤ オリジナルがヒットしていない

失礼ながら吉田美奈子によるオリジナルは決して大ヒットは記録していません。ただ、その分、オリジナル曲のイメージが薄くなり、その分、カバーしやすくなったのではないでしょうか。

さてそんな「夢で逢えたら」ですが、カバーしているミュージシャンは実に多岐にわたります。もともとはオリジナルに沿った女性シンガーによるカバーが多かったのですが、1996年にラッツ&スターがカバーするとグッと男性ボーカルも増えてきます。そのほかにも香西かおりのような演歌歌手やNICO Touches the Wallsのようなロックバンド、Rankin Taxiのようなレゲエシンガーや、Darlene Loveのような海外勢も登場します。

ほかにもオルゴールによるカバーや航空自衛隊 航空中央音楽隊による演奏。さらには京急の駅のメロディーまで収録されているあたり、全カバーを網羅したアルバムらしいところでしょうか。最近ではゲーム「アイドルマスター」のキャラソンとしてもカバーされており、まさに時代、ジャンルを問わない楽曲の人気の高さをうかがわせます。

ただ、どの曲も基本的にはメロディーと歌を大切にしているカバーとなっており、原曲から大きく逸脱したようなカバーはありません。シンプルな曲なだけに、逆に原曲から逸脱しにくいということもあるのでしょうが、それだけメロディーも歌詞も魅力的ということが言えるのでしょう。

また今回の全カバー網羅により気が付いたのが、年代的に最近のカバーが加速度的に増している点でした。年代ごとにまとめると

70年代・・・3曲
80年代・・・11曲
90年代・・・12曲
2000年代・・・19曲
2010年代・・・41曲

96年のラッツ&スターによるカバーが大ヒットを記録したことがひとつのきっかけにはなっているのでしょうが、それを差し引いてもここ10年くらいで激増しています。もちろん、それだけ時代を超えた名曲ということが言えるのでしょうが、一方でここ最近、音楽業界全体に元気がなく、過去の曲に頼らざるを得ない事情も垣間見れてしまいました。

さて、そんな様々なタイプの「夢で逢えたら」が網羅された本作。その中で印象に残った曲・・・と言われると、個人的によかったのは岩崎宏美による1981年のカバーかなぁ。伸びやかにしんみり聴かせるカバーなのですが、表現力に富んだ歌声が耳に残る内容となっており、より心に響くカバーになっていました。

さすがに5時間以上に続く「夢で逢えたら」攻勢にお腹いっぱいになるのですが、この企画の素晴らしさと実現させたスタッフの努力に敬意を表して下記の評価に。ちなみにこの曲と並んでカバーの定番中の定番といえば「君の瞳に恋してる」なんですが、こちらもどなたか、全カバー網羅のアルバムとか企画してくれないかなぁ(笑)。

評価:★★★★★

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