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2018年6月13日 (水)

話題の「愛国ソング」ネタもアルヨ!

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

とりえずはまず、どちらかというと悪い意味で話題のこちらの曲から。7位RADWIMPS「カタルシスト」。先週の20位からランクアップしベスト10入りしてきました。フジテレビ系「2018 FIFA WORLD CUPロシア大会」テーマソング。CD販売・ストリーミング・ダウンロード数(以下「実売数」)及びラジオオンエア数7位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数30位。オリコンでは初動売上2万6千枚で5位初登場。前作「Mountain Top」の1万1千枚(10位)からアップしています。

さて、話題になったのはこの曲ではなくシングルのカップリングだった「HINOMARU」という曲のこと。ちなみにHot100では27位にランクインしているのですが、愛国的な内容もさることながらも、歌詞が軍歌を彷彿とさせるような内容で物議をかもしています。この曲に関しては思うこともいろいろあり、私なりの感想をまとめてみましたが、ヒットチャートとは関係ないので、「続きはこちら」以降で。駄文ですが、興味がある方はどうぞ・・・。なお、同曲はTwitterでも相当話題になったのですが、Twitterつぶやき数は9位にとどまっています。どういう集計のやり方をしたかは不明なのですが、あれだけ話題になっても9位なんだ・・・。

さて1位に戻ります。今週1位はジャニーズ系。Sexy Zone「イノセントデイズ」が初登場でランクイン。日テレ系ドラマ「Missデビル 人事の悪魔・椿眞子」挿入歌。実売数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数がそれぞれ1位ながらもラジオオンエア数は圏外という結果に。オリコンでは初動売上14万8千枚で1位初登場。前作「ぎゅっと」の11万8千枚(1位)からアップしています。

2位はAKB48「Teacher Teacher」が先週の1位からワンランクダウンしてこの位置に。そして3位にはDA PUMP「U.S.A.」が先週の81位からランクアップしベスト10入りしています。3年半ぶりとなる新作はちょっとベタさも感じるユーロビートのナンバーですが、楽曲はタイトル通りのアメリカ讃歌。それもかなりベタベタな内容になっており、はっきりいって笑えますが、妙に耳に残るナンバーに。もともと人気コンピ盤「スーパー・ユーロビート」に収録されていた曲のカバーだそうですが、「ダサい」雰囲気が逆にうけている模様。RADWIMPSもこういうノリで日本讃歌を歌えば、誰も批判しなかったんでしょうけどね。実売数5位、ラジオオンエア数6位、PCによるCD読取数30位、Twitterつぶやき数及びYou Tube再生回数2位と、漏れなく上位にランクイン。オリコンでは初動1万2千枚の9位に留まっていますが、デジタルシングルチャートでは2位に入ってきており、配信中心のヒットになっています。初動売上は前作「New Position」の3千枚(11位)から大幅にアップ。彼らにとっては2004年の「胸焦がす...」以来、8作ぶりのベスト10ヒットとなっています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位に私立恵比寿中学「でかどんどん」が初登場でランクイン。実売数3位、PCによるCD読取数16位、Twitterつぶやき数17位を記録。最初のAメロが山本リンダの「どうにもとまらない」を彷彿とさせます。オリコンでは初動6万3千枚で3位初登場。前作「シンガロン・シンガロン」の7万1千枚(2位)からダウンしています。

初登場組最後。6位にキム・ヒョンジュン「Take my hand」がランクイン。韓国のアイドルグループSS501のリーダーでもある彼のソロシングル。実売数4位、Twitterつぶやき数10位を記録しています。歌い上げるようなスケール感あるスタジアムロック仕様のナンバー。オリコンでは初動売上4万4千枚で前作「風車 <re:wind>」の3万1千枚(3位)からダウンしています。

さてロングヒット組。米津玄師「Lemon」ですが、今週は先週から同順位の5位をキープ。実売数6位、PCによるCD読取数3位、You Tube再生回数1位もそれぞれ先週から同順位をキープしており、まだまだ強さを感じます。ただ「LOSER」のほうは今週は13位にダウン。残念ながらベスト10からダウンしています。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日に!

そんな訳で、RADWIMPS「HINOMARU」の話題は「続きを読む」のあとに。

愛国心をまるで軍歌のような歌詞にのせて高らかに歌い上げて、賛否両論大きな話題となったRADWIMPS「HINOMARU」。まず歌詞はこちらになります。

RADWIMPS「HINOMARU」

もっとも、この曲に関しては既にネット上で語りつくされた感もあるのですが・・・

RADWIMPS衝撃の愛国ソング「HINOMARU」を徹底解剖する
RADWIMPSの新曲「HINOMARU」が波紋 「日出づる国の御名のもとに」

ただ、今回の議論で当たり前の前提の部分があまり語られていないような気もします。それはなぜこの手の「愛国ソング」が問題かという点。当たり前なのですが、ミュージシャンが「愛国ソング」を歌うこと自体に全く問題はありません。差別的な内容があったり犯罪を奨励したりしたら問題でしょうが、そうでない限り、ミュージシャンはどんな歌を歌っても構いません。

ただ愛国心を歌にする場合はあるリスクが生じます。それは①国=政府=現政権と捉えられ、政治的なプロパガンダとなったり、政権に反対する人たちへの批判につながる危険がある点。②外国人に対する排外主義にむすびつきやすい点。そういうリスクがあるからこそ、RADWIMPSにような若い世代に影響のある人気ミュージシャンが「愛国ソング」を歌うと批判が生じるわけです。

実際、今回の「HINOMARU」についても批判する人に対して「日本がそんなに嫌いか、だったら日本から出ていけ」的な論調も見受けられるのですが、まさに論調が出ること自体がこの手の「愛国ソング」の持つ危険性なわけで。自分と異なる意見を排除しようとする考え方は、左側右側関係なく、行きつくところは崩壊に結びつくのは古今東西あらゆる事例が証明しています。だからこそ、この手の「愛国ソング」に批判が生じるのは至極当然な訳です。

また今回の「HINOMARU」に関しては、ひとつ疑問に思うことがあります。作詞をした野田洋次郎はTwitter上で「まっすぐに皆さんにとどきますように」と綴っています。じゃあなぜ「御霊」「日出づる国の 御名の下に」「たとえこの身が滅ぶとも 幾えに千代に さぁ咲き誇れ」などといった軍歌を彷彿とし、右翼的とも捉えられかねないキーワードをわざわざ使う必要性があるのでしょうか?別にこのようなキーワードを使わなくても、日本を賛美する歌を作るのは可能です。リスナーにまっすぐ届けたいのなら、右翼的なイメージがつきかねない言葉は、むしろ最大限に避けるべきはずです。

そんな、「愛国的」というわかりやすいアイコンを使っているこの曲を聴いて個人的に思い出したものがありました。数年前にNHKで放送されて話題となった「居酒屋甲子園」の話。「愛」や「希望」などといったポジティブな言葉を多用して従業員にやる気をおこさせるスタイルは「ポエム化」「やりがい搾取」などと言われ、批判の声もあがりました。

本来、給料や職場環境で従業員のやる気を起こさせなければならないにも関わらず、「愛」だの「希望」だのを語る抽象的な「ポエム」という表面的な言葉で従業員を鼓舞しているやり方は、ある意味、「御霊」だの「日出づる国」だの抽象的な言葉で「愛国心」を鼓舞しようとしているこの曲と重なります。

そういう観点からこの曲の歌詞をあらためて見ると、「愛国ソング」であるにも関わらず、本来語るべき、日本のどういう部分が素晴らしいのか、ほとんど語られていません。極端な話、「HINOMARU」を「星条旗」にかけて、「御霊」を「スピリッツ」とでも変えれば、そのままアメリカ賛美の曲になりそうな感じ。この抽象的な表現で塗り固められ、中身がないという点、「ポエム化」との共通点を感じてしまいそうです。

おそらく本人は日本を誇りたいんでしょうが、普段から深く日本について考えたことなかったので、いざ歌詞を書く段階になり、いかにも「愛国的」な抽象的な言葉を並べるしかなかったんでしょうね。上で紹介したコラムでも「愛国ソング」としての出来の悪さが指摘されていますが、「愛国ソング」でありながら、逆に国としての勢いがなくなり、具体的に誇るものがなくなりつつある今の日本の悲しい現状が浮き彫りにされているような印象すら受けてしまいます。

そんな薄っぺらい考えのもとで綴られた歌詞だからこそ、すぐに謝罪文が発表されたというのもある意味納得感もあります。

「HINOMARU」の歌詞を謝罪。RADWIMPS・野田洋次郎さん「傷ついた人達、すみませんでした」

ただねぇ。これ、批判していた人たちって、ほとんどの人が傷ついたわけでもなければ、謝罪を求めていた訳じゃないんだよね(一部、謝罪させようとする人がいたみたいですが、そういう一部の悪目立ちしている人をことさら取り上げて、批判している人たちと同一視するのは、そもそも議論として論外)。この謝罪に至った流れについて「表現の自由」云々言っている人もいますが、「表現の自由」というのはすなわち、自由にものを言った結果生じる批判を受け入れる責任も含まれるわけで、「表現の自由」を取り上げて、今回の「HINOMARU」を非難した人たちを批判している人は、そもそも「表現の自由」について全く理解していません。まあ、「批判」に対する責任の取り方としては「謝罪する」という方法もありなんでしょうが、ある意味、完全に「逃げている」んですよね。非常にみっともない幕の引き方に感じます。

ほかにもいろいろと感じる部分はあるのですが、とりあえずはこのくらいで・・・。いろいろな意味で「薄っぺらさ」を感じてしまう今回の騒動でした。

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コメント

こんにちわ。いつも楽しく拝見しております。

「HINOMARU」についてのご意見、賛否分かれがちなテーマに堂々と意見を述べられている文章を読めるのはありがたいことです。
私としてはとても腑に落ちました。

RADWIMPSの歌詞といえば、言葉遊びというかダブルミーニングというか、とにかく凝った言い回しの多いイメージだったので(古いですがおしゃかさまとかマニュフェストとか)、
今回の歌詞についておっしゃるとおり、ぼんやりした、抽象的な、いかにもありがちなものになってしまっているところが引っかかってしまいますね。
何が伝えたかったのか……

投稿: SLTファン | 2018年6月14日 (木) 11時19分

愛国心、右翼的なことが危険というのは非常に思想的な偏りを感じるし怖いと思いました。
国を出ていけなんで言う人は謝罪を求める人以上に極一部だと思うのですがそれは論外にはならないのですね。
野田さんの考え、謝罪の意図を自分に都合よく想像して論じてしまうのは稚拙で「薄っぺらい」考えではないでしょうか?

投稿: | 2018年6月15日 (金) 22時33分

>SLTファンさん
ご意見ありがとうございます。
そうなんですよね、RADWIMPSといえば歌詞が非常に凝っているミュージシャンだと思っていたのですが、今回の件については言葉選びといい言い回しといい、少々型にはまった表現で非常に稚拙に感じます。そういう意味でもなんで彼があんな表現を使ったのか今でも非常に疑問に感じています。国を愛する気持ちを歌うにしても言い方があると思いますし、逆に普段、「愛国心」に警戒心を持っている人に対しても伝わる表現があると思います。それこそがミュージシャンとしての腕の見せ所だと思うのですが。

>匿名さん
まずはじめに。意見を述べる時はハンドルネームくらいは名乗るべきだと思います。それが最低限の礼儀だと思いますし、まずそれをできない方はこちらとしても結局、自分の意見に自信がない言い捨ての書き込みなんだなと思わざるを得ません。
その上で反論させていただきますと、まず
>愛国心、右翼的なことが危険というのは非常に思想的な偏りを感じるし怖いと思いました。
といいまずが、まず私はコラムの中で愛国心を持つことがいけないとは書いていません。その上で愛国心を鼓舞することによってなぜ危険が生じる可能性があるのか理由を述べています。その意見に疑問を持つのなら、私が危険だと感じる部分にきちんと反論してください。「非常に思想的な偏りを感じるし怖い」というのはあきらかに論議のすり替えです。
念のため書いておきますが、私は愛国心を鼓舞するのがいけないとも思いません。それによって生じるリスクをきちんとケアすれば、全く問題ないと思っています。
また、思想的な偏りが怖いと感じるのならば、右翼的なことは思想的な偏りではないのでしょうか?思想的な偏りが怖い=右翼的なことは危険と同義ですよね。文章の中で矛盾しています。
また私は思想的な偏りについては全く問題ないと思います。問題なのは思想的な偏りの結果、自分と異なる意見を聴かないことだと思います。そもそも本当に中立的な意見というのは稀で(特に政治的な要因がからむと)、むしろ自分が偏っていないと思うことこそが危険だと思います。繰り返しますが、危険なのは思想が偏っていることでなく、自分が中立だと思い込み、自分と異なる意見を一切聴かないことが危険なのです。
>国を出ていけなんで言う人は謝罪を求める人以上に極一部
なにを根拠に「極一部」とおっしゃられるのでしょうか。今回の件に限らず、国の方針に反対意見を述べた人に対して「日本が嫌いなら出ていけ」という意見は今のネット上でありふれています。もし「そういう意見はほとんど見たことがない」というのでしたら、それはいくらなんでも現状に目を閉ざしすぎです。
ちなみに私は今回の件で野田洋次郎に謝罪を求める意見は問題外だと思いますし、私もそれこそ非常に危険な意見だと思っています。
>野田さんの考え、謝罪の意図を自分に都合よく想像して論じてしまう
私はコラムの中でこの歌詞がどう問題なのか論じています。それが「都合がよい」というのならば、どのような点が都合がよいのかきちんと指摘してください。
繰り返しになりますが、今回のコラムで、なぜ愛国心を鼓舞することにリスクがあるか、また今回の歌詞の疑問点を具体的に記載しています。もしそれが納得いかないのであればそれについて反論してください。納得のいく反論であれば、きちんと答えるつもりです。よろしくお願いします。

投稿: ゆういち | 2018年6月15日 (金) 23時07分

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