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2018年6月 5日 (火)

突き抜けたポップチューンが魅力

Title:MODE MOOD MODE
Musician:UNISON SQUARE GARDEN

底抜けにポップなメロディーラインで人気上昇中のギターポップバンドUNISON SQUARE GARDEN。飛びぬけてキャッチーなメロディーラインが強いインパクトを持つ彼らですが、それだけに数多くのタイアップを確保して、その知名度も急上昇中です。そしてそんな彼らの新作は、彼らの今の状況を反映させた勢いのあるポップチューンが並んだアルバムとなりました。

もともと彼らはあくまでも「ポップバンド」でありルーツレスなJ-POP的な色合いが濃く、「ロックバンド」としては物足りなさを感じる点が多いバンドでしたが、今回のアルバムではそんな「ロック」に挑戦するかのようなヘヴィーなバンドサウンドの曲がまずは目立ちます。冒頭を飾る「Own Civilization」などまさにダイナミックなギターリフが展開されるロックテイストの強いナンバーですし、「MIDNIGHT JUNGLE」もヘヴィーなギターサウンドが耳につくナンバー。ロックという側面が強い印象を残します。

ただ、このロックな方向性はアルバムの中ではあくまでも余興的な感じ。今回のアルバム、むしろいままでのアルバム以上に突き抜けてポップなメロディーラインの安定感が増したように感じます。ドラマ主題歌となった「Silent Libre Mirage」などのメロディーのインパクトの強さや、「フィクションフリーククライシス」のようにファンキーなAメロから展開していくポップなサビのインパクトなど、完全にUNISON SQUARE GARDENとして求められるメロディーを余裕にこなしていく姿がここには感じられます。

前作「Dr.Izzy」でもある種の余裕を感じられ、ポップバンドとして一皮むけたように感じた彼らでしたが、今回のアルバムではその余裕が楽曲に良いように反映されたように感じます。基本的に疾走感あるギターロックが多く、楽曲のインパクトとしてリズムの勢いに頼っている部分もあるのですが、「夢が覚めたら(at that river)」のようにミディアムチューンでもそのメロディーの良さをしっかりと発揮しており、メロディーメイカーとしての成長は確実に感じさせてくれます。

ラストの「君の瞳に恋してない」もスカ調のリズムで軽快に締めくくり。おなじみカバーの大定番「君の瞳に恋してる」のパロディー調のタイトルも非常にユニークで、このタイトル自体にもインパクトを感じます。歌詞にもユーモアセンスを感じる彼ららしい締めくくりといえるでしょう。

斎藤宏介のボーカルはハイトーンでインパクトはあるものの、悪く言えば「キンキン声」なだけに好き嫌いがわかれそうですが、今回の作品ではそのハイトーンボーカルも上手くメロディーラインにマッチさせており、ほとんど気になりません。そういう意味でもしっかりUNISON SQUARE GARDENとしてどのようなポップチューンが似合っているのか、バンドとしてしっかりと認識してきた、と言えるのかもしれません。

よく勢いのあるミュージシャンは、その勢いの頂点だからこそ作れるような傑作アルバムをリリースしてくるのですが、本作はおそらく彼らにとってそんな1枚だったように思います。今後、このアルバムの勢いをどれだけ維持できるかに、これからの彼らの行く末がかかってきそう。次回作がどうなるか、いろいろな意味で楽しみです。

評価:★★★★★

UNISON SQUARE GARDEN 過去の作品
CIDER ROAD
Catcher In The Sky
DUGOUT ACCIDENT
Dr.Izzy


ほかに聴いたアルバム

PERMAFROST/スーパーカー

90年代から2000年代にかけて一世を風靡したギターロックバンド、スーパーカー。デビュー時はシューゲイザーサウンド直系のホワイトノイズを存分に聴かせた楽曲が評判を呼び、さらに2000年に「Futurama」からは、当時としてはまだギターロックバンドが取り入れるのが珍しかったエレクトロサウンドを積極的に取り入れて、大きな驚きを与えました。

本作はそんな彼らがデビュー20周年を記念してリリースしたオールタイムベスト。ノイジーなギターサウンドやドリーミーなエレクトロサウンドは20年近くたった今でも魅力的。逆に言えば音楽シーンの中で音楽的に今に至るまでそれほど大きな変革がない点も気にかかるのですが・・・ただ、ドラムの使い方などはやはり今聴くとちょっと時代を感じられるのも事実。そういう意味では音楽的にも少しづつですが進歩しているんでしょうが。

むしろ20年近くたった今聴くと、メロディーラインの良さが再認識させられます。強いインパクトはなく、比較的淡々と展開していくのですが、妙に耳に残る強度のあるメロディーラインが魅力的。リアルタイムでももちろん彼らのメロディーも評価されていたのですが、それよりもむしろサウンド面に注目のいくことが多かった彼らですが、今聴くと、メロディーに大きな魅力を持っていたんだな、ということに気が付かされましたベスト盤でした。

評価:★★★★★

スーパーカー 過去の作品
RE:SUPERCAR 1
RE:SUPERCAR 2

PEACHTREE/遊佐未森

遊佐未森デビュー30周年を記念してリリースされたベストアルバム。正直、5年前の25周年の時もベスト盤をリリースしており、さらに2010年にもシングル集をリリースしているなど、少々ベスト盤リリース過多な感じがするのですが、今回は「ターニングポイントになった曲」をテーマに選曲した企画盤的な要素も強いアルバムに。そのため、ほとんどが2000年代以降の曲になっており、「瞳水晶」や「地図をください」など初期の代表曲は収録されていません。

ただ、彼女の大きな魅力である幻想的なボーカルとサウンドは時代を経ても全く色あせておらず、1997年の「タペストリー」や1988年の「川」がここ最近の曲と並んでも、まったく違和感がありません。エバーグリーンという表現がピッタリな、時代性に左右されない彼女の曲の魅力がはっきりとわかるベスト盤でした。

ちなみに最後には彼女が手掛けた「国立市立国立第八小学校校歌」が収録。こちら、校歌ですが、遊佐未森らしい優しいメロディーラインが魅力的で、校歌にありがちな似たようなメロディーで覚えにくい感じがほとんどありません。母校の校歌がこういう曲なのはうらやましいな・・・。

評価:★★★★★

遊佐未森 過去の作品
銀河手帖
Do-Re-Mimo~the singles collection~
淡雪
VIOLETTA THE BEST OF 25 YEARS
せせらぎ

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アルバムレビュー(邦楽)2018年」カテゴリの記事

コメント

頂点を極めた男たちの余裕すら感じさせますね、ユニゾンは。

投稿: ひかりびっと | 2018年7月 1日 (日) 08時41分

>ひかりびっとさん
ご感想ありがとうございました。

投稿: ゆういち | 2018年7月23日 (月) 23時12分

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