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2018年6月 2日 (土)

いつものせっちゃん節だが・・・

Title:Toys Blood Music
Musician:斉藤和義

今年デビュー25周年を迎えたせっちゃんの約2年半ぶりとなるニューアルバム。ここ数年、すっかり人気ミュージシャンの仲間入りを果たした彼ですが、今回のアルバムではなんとオリコンアルバムチャートで1位を獲得。シングル、アルバム通じて自身のキャリア初の1位獲得となりました。

今回のアルバムも相変わらずのせっちゃん節ともいえる安定したクオリティーのポップミュージックを聴くことが出来ます。特に歌詞が印象的な曲が多く、自分の今の姿に不満を感じる人たちを歌った「マディウォーター」はアラフィフ世代の心の叫びを歌った歌詞が、10歳程度年下の私にとっても心に響いてきますし、現在の世の中を皮肉的に歌う「オモチャの国」もユニークに感じます。

ただ一方で「いつも最後にはどうにかなるさ」と歌う「青空ばかり」や心配事を「問題ない」と言い切る、そのまんまなタイトル「問題ない」のような、ある意味アラフィフ世代らしい吹っ切れた感じもする前向きソングもユニークで彼らしい応援歌を聴かせてくれますし、またギターアルペジオで切なく聴かせるラブソング「世界中の海の水」は逆に世代を超えた恋心をストレートに感じるナンバーで、そのメロディーを含めて強い印象に残ります。

また今回、アルバムの中で少々異質に感じられたのがラスト。最後を締める「Good Night Story」はフュージョン風のギターインストに。そのサウンドの面を含めて、少々異質なナンバーで締めくくられています。

ただ今回のアルバム、この最後の曲もそうなのですが、全体的にちょっと異質感があったのがサウンド面。ドラムマシンやリズムマシン、アナログシンセサイザーを駆使したサウンドとなっていました。そのため、例えば「マディウォーター」も打ち込みのリズムを取り入れたリミックスバージョンが収録されていましたし、「青空ばかり」の打ち込みのリズムが目立つサウンドに。「問題ない」も全面的にシンセを取り入れたダンサナブルなナンバーになっています。

そんな打ち込みやシンセによるサウンドが目立つ本作なのですが、正直言うと全体的にはこのサウンドが彼の歌詞やメロディーとはちょっと合っていなかったかな、という印象を受けます。斉藤和義といえばブルージーなギターをかき鳴らし、メロや歌詞をしっかりと聴かせるスタイルが特徴的なのですが、そんな方向性の楽曲に、無機質さを感じさせるドラムマシーンやシンセはちょっと違和感を残してしまう出来になっていました。

今回、このアルバム全体の方向性にあわなかったためか、先行シングル(配信を含む)やCMソングなどとして発表済の曲は初回盤のボーナスディスクにまとめて収録されています。基本的にシングル曲がメインということもあるのですが、全体的な出来はこちらのボーナスディスクの方が圧倒的によかった・・・。特に「遺伝」など、歌詞を含めてまんま60年代フォークのような楽曲になっており、非常に印象に残る名曲に仕上がっています。そのため斉藤和義のミュージシャンとしての勢いは、全く衰えていないことを感じるのですが、アルバム本体の方はその良さを上手く反映されていないように感じました。

もっとも、あえて打ち込みやシンセを取り入れた作品に仕上げているだけに、デビュー25年を迎えて積極的な挑戦を続ける彼の姿勢には強く感心させられますし、その姿勢こそが、今なお人気ミュージシャンとして一線で活躍を続ける理由なのでしょう。それだけにこのアルバムも「彼らしい」と言えるのかもしれませんが・・・。悪いアルバムではないのですが、絶賛するには違和感が残る1枚でした。

評価:★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21


ほかに聴いたアルバム

エスカパレード/Official髭男dism

同アルバムに収録されている先行シングル「ノーダウト」がフジテレビ系月9ドラマ主題歌に起用されるなど、今、もっとも注目度の高いバンドのひとつ、Official髭男dism。ソウルやブラックミュージックの要素をほどよく加えたポップミュージックを聴かせてくれるバンドで、洋楽テイストも強く、ある意味「音楽的な偏差値が高い」バンドといった印象を受ける反面、ほどよくベタにまとめたメロディーもインパクトを持っており、確かに注目度の高さも納得できます。

ただ一方では楽曲としての完成度が高く、良くも悪くも隙のない楽曲という印象も強く、ちょっと無難にまとまりすぎているかな、という印象も受けました。個人的にはもうちょっとソウル、R&B寄りに走ってしまった方がおもしろいかも、とも思うのですが。ただ、今後の活動も注目していきたいバンド。タイミングがあえばシングル単位で一気にブレイクしそうな予感もします。

評価:★★★★

ENSEMBLE/Mrs.GREEN APPLE

Mrs.GREEN APPLEの3枚目となるアルバム。もともとポップな要素が強く、陽性度の高いバンドでしたが、本作はストリングスやピアノ、エレクトロサウンドなどを積極的に取り入れ、分厚くなったサウンドが特徴的。今まで以上に楽曲が明るく楽しくなっており、ある意味、「振り切れた」感を覚えました。いままで3枚のアルバムの中では一番出来がよかったかも。この「振り切れた」感が今後も続けばおもしろいのですが。

評価:★★★★

Mrs.GREEN APPLE 過去の作品
TWELVE
Mrs.GREEN APPLE
はじめてのMrs.GREEN APPLE

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