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2018年6月15日 (金)

一世を風靡した落語家のベストアルバム

Title:ザ・月亭可朝ベスト+新曲
Musician:月亭可朝

1960年代から70年代にかけて一世を風靡した落語家、月亭可朝。今年3月、80歳にして惜しまれつつこの世を去りました。月亭可朝といえば、なんといっても知られるのが1969年にリリースして80万枚という大ヒットを記録した「嘆きのボイン」「ボインはぁ~赤ちゃんが吸うためにあるんやでぇ~、お父ちゃんのもんとちがうのんやでぇ~」という印象的なフレーズからスタートするこの曲は、おそらくリアルタイムで聴いていた世代でなくても知っている方も多いのではないでしょうか。かく言う私もこの曲が流行ったのは生まれる遥か昔な訳ですが、どこで覚えたのかこの曲はしっかりと知っていた訳で。

この曲を含めてギター漫談が大きな評判を呼び、数多くのコミックソングを作詞作曲してきた彼。本作はタイトル通り、そんな月亭可朝の代表曲を集めたベストアルバムです。ただ、逝去後リリースされた追悼盤という訳ではなく、このアルバムのリリースは彼が亡くなる以前の昨年の11月。期せずして彼の最後の作品となってしまいました。

中盤には「さよならのブルース」みたいな正統派歌謡曲も収録されていたりするのですが、基本的には同じようなフレーズに語り気味の歌で展開されるギター漫談のコミックソングがメイン。正直言ってしまうと時代を感じさせる部分があるのも事実で、デビュー作である「出てきた男」なんかは今の時代だったらちょっとリリースするのは厳しいかもしれないかも。また、一方ではギター漫談だけではなく「ミスター・チョンボ」は接待麻雀をテーマにしたファンクチューンになっており、ちょっと場末のキャバレー的な雰囲気や、時代を先行したようなラップ的なボーカルも収録されていたりして、レアグルーヴ的なユニークな作風になっています。

また前述の「出てきた男」や「嘆きのボイン」もそうですが、明るくて楽しいエロ小唄が目立つ内容で、ある意味18禁ながらも(笑)、大人がクスッと笑えるような楽しいコミックソングが並んでいます。歌詞の内容については上に書いた通り、昭和を強く感じさせるものが多いのですが、それもまたこのアルバムの大きな魅力のように感じました。

ちなみにタイトル通り、33年ぶりとなる新曲「寝るに寝られん子守唄」が収録されていますが、これまた単なる子守唄かと思えば、かなりドギツイ歌詞が展開している「大人」な歌詞が魅力的。晩年までそのセンスが全く衰えていなかったことを感じます。

またこのアルバム、パラダイス・ガラージとしての活躍でも知られる豊田道倫がプロデュースを手掛けていることでも大きな話題に。今回「嘆きのボイン2017」「シャッシャッ借金小唄(借金のタンゴ2017)」としてかつての代表曲のセルフカバーも収録されていますが、サウンドは今風にアップデート。ただあきらかに老けたボーカルとちょっとマッチしていなかったようにも思いました。

最後には「芸能生活を振り返る」というテーマでのトークも収録。月亭可朝の芸能生活を総括する内容になっていますが、ある意味、彼の最期を予期していたかのようなアルバムになっていました。個人的に彼の全盛期は知らず、正直、思い入れみたいなものはないのですが、それでも十分楽しめた1枚でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

DANCE TO THE POPCORN CITY/サニーデイ・サービス

ここ最近「DANCE TO YOU」「Popcorn Ballads」「the CITY」と立て続けに傑作アルバムをリリース。第2の全盛期か?と思うほど勢いのあるサニーデイ・サービス。その傑作3作のタイトルを並べたような今回のアルバムはライブアルバム。例のごとく、配信+LPのみというリリース形態となっています。

ライブアレンジについて、ポップなメロは残しているもののギターサウンドを前面に入れたサイケなサウンドになっています。原曲の良さはもちろん残っているものの、特に「DANCE TO YOU」や「Popcorn Ballads」の世界をイメージすると「あれっ?」と思ってしまう部分も。それはそれでライブアレンジのおもしろさとは思うのですが、CD音源が素晴らしかっただけにちょっともったいなさも感じる部分もありました。

評価:★★★★

サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

Popcorn Ballads
Popcorn Ballads(完全版)
the CITY

RED JACKET/the Mirraz

Redjacket

2017年にはミニアルバムを含めてこれで5作目のアルバムをリリースしたthe Mirraz。ちょっと乱発しすぎでは?と思ってしまうのですが、本作も基本的にはthe Mirrazらしい、早口のボーカルで疾走感あるギターロック。一時期のEDM路線から離れてギターロック路線に回帰してきた彼らですが、今回はよりハードなギター色を前に出して、ロックの色合いが濃いアルバムになっています。「るーざー」「China Dream」のような楽しい歌詞も健在で、さすがに乱発気味のためマンネリ的な部分もなきにしもあらずなのですが、良くも悪くもthe Mirrazらしいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
言いたいことはなくなった
選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ
夏を好きになるための6の法則
OPPOTUNITY
しるぶぷれっ!!!
BEST!BEST!BEST!
そして、愛してるE.P.

ぼなぺてぃっ!!!
Mr.KingKong
バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロとMoon Song Baby
ヤグルマギク

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