よりJ-POP色は強くなったけど
Title:旅に出る準備
Musician:Czecho No Republic
約1年8ヶ月ぶりのニューアルバムとなるCzecho No Republicの新作。前作「DREAMS」では、メロディーラインのインパクトもグッと増した爽快なポップチューンが大きな魅力となった作品になっていましたが、今回のニューアルバムはその前作以上にポピュラリティーの増したアルバムに仕上がっていました。
まずやはり彼らのポップチューンの最大の特徴かつ大きな魅力は武井優心とタカハシマイという男女のツインボーカル体制を、本作では実にうまく利用している点ではないでしょうか。トランシーなシンセが心地よいダンスチューン「テレパシー」をはじめ、80年代のシンセポップの雰囲気が爽快な「ザナドゥ」、ハイテンポで爽快なギターロックチューン「チキンレース」、シティポップ風の「シュガーボーイ」など、バリエーションあるポップチューンの中で男女デゥオを実に効果的に用いてきています。
またそんな中でも話題となったのが「タイムトラベリング」で、こちらはSKY-HIがゲストとしてラップを披露するナンバー。こちらも男女2人のデゥオが実に爽快なギターロックナンバー。SKY-HIのラップも、しっかりと目立ちつつも、ポップなメロディーラインの中にほどよいバランスの「調味料」的な役割に徹しているのも特徴的でした。
「愛を」みたいなタカハシマイが主導を取っているナンバーや、逆に「Spring」のような武井優心がメインとなるようなナンバーでも、それぞれお互いが上手くコーラスを取っており、こここらへんのバランス感覚も絶妙。実に効果的なポップチューンに仕上がっています。
楽曲的にはシンセのサウンドを多用しつつ、80年代や90年代的なテイストを色濃くいれたポップチューンが印象的。前作よりも洋楽テイストはちょっと薄れ、J-POPな色合いが濃くなったように思うのですが、ただそこはベタな感じに陥っていないのは、しっかりとした音楽的な素養が支えているからでしょうか。前作以上に良い意味でインパクトが増したアルバムに仕上がっていました。
前作が一皮むけたようなアルバムに感じたのですが、今回の作品はその印象が間違いではなかったことを確信できた作品。そういう意味ではいつブレイクしてもおかしくないバンドだとは思うのですが・・・これからの活躍が楽しみです。
評価:★★★★★
Czecho No Republic 過去の作品
MANTLE
Santa Fe
DREAMS
ほかに聴いたアルバム
分離派の夏/小袋成彬
宇多田ヒカルプロデュースということで大きな話題となった小袋成彬(「おぶくろ」と呼ぶらしいです)のデビュー作。楽曲的にはFrank OceanやD'Angeloの「Black Messiah」以降の、今時のR&B路線といった感じ。ハイトーンボイスとシンプルな打ち込みメインのサウンドが印象的な作風になっています。パッと聴いた感じは、確かに歌声を含めて強いインパクトを受けますし、特に宇多田ヒカルに相当ダメ出しされたという歌詞は、そぎ落とされ、かつ楽曲のリズムともマッチする言葉の選択はさすがと感じさせます。ただ一方、サウンド面はFrank OceanやD'Angeloに比べるとムダな音が多く、整理が出来ていない感を覚えますし、なによりも似たような曲が多く、最後は飽きが来てしまうあたり、正直言って、メロディーラインに若干物足りなさを感じます。さらに意味不明なのは1曲目6曲目に入っていた語り。いわば小袋成彬について第三者が語るスタイルなのですが、無駄に理屈っぽすぎて全く共感を覚えず、はっきりいってアルバムの流れの中で邪魔なだけでした。
正直言って、宇多田ヒカルプロデュースという話題性で無理に持ち上げようとしているハイプ的な部分を感じる一方で、上で感じた不満点の多くがプロデュースワークで改善できそうな部分も多く、そういう意味では宇多田ヒカルのプロデューサーとしての能力にちょっと疑問を感じてしまう部分も・・・。特に宇多田ヒカルをフューチャーしたデビューシングル「Lonely One」はサウンド面を含めて出来がよかっただけに(宇多田ヒカルのボーカルに依る部分も大きいものの)、もうちょっとなんとかならなかったのか、とも感じさせます。とりあえず次のアルバムに期待、とは思える程度の才は感じられたのですが・・・現状は「ハイプ」という言葉が先行してしまうようなアルバムでした。
評価:★★★
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コメント
Czecho No Republicの「旅に出る準備」はどこか懐かしさを感じさせつつもイマドキの新しさをもちゃんと取り入れている丁寧さが素晴らしかったです。
投稿: ひかりびっと | 2018年7月 3日 (火) 16時39分
>ひかりびっとさん
ご感想ありがとうございました。
投稿: ゆういち | 2018年7月23日 (月) 23時13分