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2018年6月

2018年6月30日 (土)

様々なサウンドを取り入れて

Title:Knock Knock
Musician:DJ Koze

ドイツ/ハンブルグを拠点とするDJ/プロデューサーのDJ Kozeが約5年ぶりにリリースしたニューアルバム。前作「Amygdala」は2013年のミュージックマガジン誌ハウス/テクノ/ブレイクビーツ部門の年間ベストアルバムに選出されていたため聴いてみて、その内容を一気に気に入ったのですが、今回5年ぶりとなるアルバムの評価も上々のようで、再び彼のアルバムを聴いてみました。

その前作「Amygdala」は聴いていて心地よくなるようなポップなサウンドといろいろなジャンルを取り合わせたようなごった煮的な楽曲が魅力的でした。今回のアルバムに関してもまた、様々なジャンルを取り入れたようなごった煮的な方向性が大きな魅力になっていました。

例えば「Music on My Teeth」はレトロな雰囲気のポップチューンが大きな魅力となっていますし、「This Is My Rock」は(タイトルに反して)ネチッとした雰囲気のソウルナンバーに仕上がっています。「Pick Up」はリズミカルなミニマルハウスのナンバーになっていますし、Lambchopのフロントマン、Kurt Wagnerを迎えた「Muddy Funster」はドリーミーなななーに仕上げられています。

全体的にはちょっと懐かしい雰囲気もある「Illumination」「Scratch That」のようなソウルなナンバーが目立ったような感じが。今回はほかにもArrested DevelopmentのラッパーであるSpeechやRóisín Murphyなどのゲストシンガー勢も豊富で、歌モノも目立つため、アルバム全体としてはポップという印象も強く受けました。

ただ一方で、インストチューンの「Club der Ewigkeiten」「Bonfire」などは、テクノチューンらしいリズミカルなエレクトロサウンドを入れつつも、様々な音を楽曲の中に取り入れて複雑に展開していきます。

歌モノの楽曲に関しても基本的には楽曲イメージに沿ったサウンドを繰り広げつつも1曲1曲個性的なサウンドを繰り広げており、リスナーを飽きさせません。例えば「Planet Hase」はタイトル通り、どこかスペーシーなサウンドが心地よさを感じますし、最後の「Drone Me Up,Flashy」では女性ボーカルをサンプリングしてコーラスとして用い、神秘的なサウンドを作り上げています。

バラエティー豊富なサウンドなだけに一言で語るのが難しいアルバムでしたが、それだけに聴き飽きないサウンドの奥深さも感じるアルバムに仕上がっていました。前作に引き続き傑作のアルバム。前作同様、聴いていてとても心地よくなれる作品でした。

評価:★★★★★

DJ Koze 過去の作品
Amygdala

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2018年6月29日 (金)

シンプルなタイトルの7枚目

Title:7
Musician:Beach House

毎作、アルバムが大きな話題となるアメリカのインディーロックバンドのニューアルバム。前作「Thank Your Lucky Stars」は前々作「Depression Cherry」からわずか2ヶ月のインターバルでのリリースとなりましたが、本作は前作から約2年半ぶりの新作となりちょっと久々の新譜となります。とはいえ、昨今アルバムリリースにもっと長い時間をかけるバンドはざらにいるので、決して特別長いスパンでのリリース、といった感じではありませんが。

さて今回のアルバム、「7」というタイトルは純粋に彼らにとって7枚目のアルバムだから、という意味。非常にシンプルなタイトルのつけ方ですが、アルバムの内容自体もBeach Houseらしさを素直に表現した、シンプルに彼ららしい、と言えるアルバムに仕上がっていました。

Beach Houseの最大の魅力といえばノイジーなギターがとても心地よい夢のようなポップミュージック。ここにボーカル、ヴィクトリア・ルグランのウィスパー気味のボーカルがのり、とても心地よい世界を作り出しています。今回のアルバムでも1曲目「Dark Spring」から、ヴィクトリアともう1人のメンバー、アレックス・スカリーのツインボーカルによる、非常のドリーミーなポップソングからスタート。リスナーを夢の世界へと連れ込んでくれます。

続く「Pay No Mind」はへヴィーなノイズが流れ、さらに「Lemon Glow」はドリーミーながらももっとサイケ色の強いサウンドが特徴的ながらも、どちらもヴィクトリアによるメロディアスな歌がしっかりと流れており、いい意味で聴きやすい内容に。そして「L'lnconnue」はどこかおごそかで神秘的な雰囲気が魅力的なナンバーに。Enya・・・とまではいきませんが、教会音楽的な雰囲気が一種独特なナンバーに仕上がっています。

その後も「Drunk In LA」「Woo」のようにメロディーがとにかく美しいナンバーが流れてきたり、「Black Car」のようにエレクトロ色の強いナンバーがあったりとそれなりにバラエティーを持たせつつアルバムは展開していきますが、基本的にノイジーなギターやシンセを取り入れた分厚いサウンドで聴かせるドリームポップが並びます。どの曲も、ヴィクトリアのウィスパー気味なボーカルで、幻想的な雰囲気と同時に、どこか神秘的な雰囲気すら感じるポップソングが大きな魅力。最初から最後までそのドリーミーな世界が展開されるアルバムになっていました。

最初から最後まで終始サウンドの気持ちよさに酔いしれる傑作アルバム。シンプルなタイトルのアルバムだからこそ、非常にシンプルにBeach Houseの魅力を感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

Beach House 過去の作品
Bloom
Depression Cherry
Thank Your Lucky Stars

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2018年6月28日 (木)

女性アイドルグループが目立つ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週のアルバムチャートは女性アイドルグループの初登場が目立ちました。

まずは1位初登場、けやき坂46「走りだす瞬間」が獲得。こちら欅坂46の下部グループになるそうで、これがデビューアルバムだそうです。初動売上15万4千枚での1位獲得となりました。

4位にはライジングプロダクション所属の女性アイドルグループフェアリーズ「JUKEBOX」が獲得。アルバムとしては2作目にして初のベスト10ヒットとなりました。ただし初動売上9千枚は前作「Fairies」の1万1千枚(14位)からダウンしています。

10位には女性アイドルHIPHOPグループlyrical school「WORLD'S END」がランクイン。こちらもアルバムとしては初のベスト10ヒット。初動売上は3千枚を記録しています。

さて、上位から続けます。2位初登場はジャズやソウルの要素の強いロックサウンドで注目を集めるバンド、Suchmosのミニアルバム「THE ASHTRAY」が獲得しています。NHKワールドカップ中継のテーマソング「VOLT-AGE」も収録されている本作。ただミニアルバムであるという影響か、初動売上3万2千枚は前作「THE KIDS」の7万4千枚(2位)から大幅ダウンしています。

3位には女性ロックバンドSHISHAMO「SHISHAMO 5」がランクイン。タイトル通り5作目となるアルバムで、ベスト3入りはシングルアルバム通じて初。ただし初動売上1万1千枚は前作「SHISHAMO 4」の1万3千枚(8位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず6位に女性シンガーソングライターMACO「BEST LOVE MACO」がランクイン。タイトル通り、彼女初となるベストアルバム。初動売上6千枚は直近のオリジナルアルバム「メトロノーム」の4千枚(11位)からアップしています。

最後8位には女性シンガー加藤ミリヤ「Femme Fatale」がランクイン。初動売上は4千枚。直近作はミニアルバム「I HATE YOU E.P.」でこちらの1千枚(37位)よりは大きくアップしましたが、前作「Utopia」の9千枚(5位)から半減以下という厳しい結果に。ここ最近、2万9千枚→1万4千枚→9千枚→4千枚と新譜を出すたびに初動売上が激減するという状況が続いています。

今週の初登場盤は以上。さてロングヒット組では先週、ベスト10に返り咲きした安室奈美恵「Finally」は今週もベスト10をキープし9位にランクイン。売上枚数は先週の5千枚から4千枚に減少していますが、驚異的なロングヒットを続けています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年6月27日 (水)

日韓男性アイドルグループ対決

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は1位2位と日韓の男性アイドルグループが並びました。

まず1位を獲得したのが韓国の男性アイドルグループGOT7「THE New Era」。CD販売・ダウンロード・スクリーミング数(以下「実売数」)は2位に留まったのですが、PCによるCD読取数22位のほか、Twitterつぶやき数3位の影響で総合順位で1位に輝きました。

一方、実売数で1位を獲得したのが2位初登場MAG!C☆PRINCE「SUMMER LOVE」。名古屋を中心に活動する男性アイドルグループです。ただ実売数以外は軒並み圏外という結果となり、総合順位では2位に留まっています。

オリコンでは1位がMAG!C☆PRINCE、2位はGOT7というビルボードとは逆の順位に。MAG!C☆PRINCEは初動8万4千枚で初の1位獲得となりましたが、前作「Best My Friend」の9万2千枚(3位)からはダウン。GOT7は初動5万5千枚。前作「MY SWAGGER」の3万4千枚(3位)からはアップしています。

3位にはDA PUMP「U.S.A」が先週の5位からランクアップし、2週ぶりにベスト3返り咲き。実売数3位、ラジオオンエア数8位、PCによるCD読取数14位、Twitterつぶやき数8位と軒並み上位に食い込んでいますが、特にYou Tube再生回数は2週連続で1位をキープ。You Tube再生回数で1位を獲得する曲はロングヒット曲が多く、この曲も今後のロングヒットが期待できそうです。

続いて4位以下の初登場曲です。6位に俳優DEAN FUJIOKAのデビューシングル「Echo」がランクイン。フジテレビ系ドラマ「モンテ・クリスト伯」主題歌。イギリス発祥で話題のBass Music、WAVEに触発された楽曲だそうで、ピアノを中心とした美しいクラブ系のサウンドが特徴的。実売数6位、ラジオオンエア数9位のほか、PCによるCD読取数26位、Twitterつぶやき数22位、You Tube再生回数68位でベスト10入り。ちなみにオリコンでは初動1万4千枚で5位に初登場しています。

7位には韓国の女性アイドルグループBLACKPINK「DDU-DU DDU-DU」が先週の27位からランクアップ。6月15日にリリースされた配信オンリーのアルバム「SQUARE EP」収録の楽曲。実売数10位、Twitterつぶやき数19位のほか、You Tube再生回数では2位を記録し、上位ランクインの要因となっています。

8位にランクインしてきたのがSuchmos「VOLT-AGE」。NHKのロシアワールドカップ中継主題歌。今週のアルバムチャートでも上位ランクインが予想されるミニアルバム「THE ASHTRAY」収録曲。実売数は29位に留まり、Twitterつぶやき数でも64位でしたが、ラジオオンエア数では見事1位を獲得。ベスト10ヒットを記録しました。

初登場組ラストは10位に男性声優斉藤壮馬「デート」が初登場でランクイン。実売数13位、PCによるCD読取数21位にとどまりましたがTwitterつぶやき数で4位を獲得。総合順位でベスト10入りを記録しています。オリコンでは初動売上1万3千枚で7位にランクイン。前作「夜明けはまだ」の1万8千枚(7位)からはダウンしています。

ロングヒット組では米津玄師「Lemon」が先週からかわらず4位をキープしています。実売数は先週の5位から4位にアップ。PCによるCD読取数も先週から変わらず2位を記録しています。ただYou Tube再生回数が2位から3位にダウンしているのがちょっと気になるところ。ただまだまだロングヒットは続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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2018年6月26日 (火)

奇抜なファッションが話題の実力派サックスプレイヤー

Title:SAXONIC
Musician:ユッコ・ミラー

今回紹介するのは、今、一部で話題となっている女性サックスプレイヤー、ユッコ・ミラー(日本人です、念のため)。このジャケット写真に写っている彼女もジャズ・サックスプレイヤーとしては異質とも思える派手なルックスですが、ギャル的なルックスに「萌え系」なキャラ設定と奇抜なファッションという飛び道具系のキャラクターでありながらもサックスプレイヤーとしての腕前は一流。キャンディー・ダルファーやグレン・ミラーのツアーにゲストとして参加するなどの実績も兼ね備えています。

もともと彼女について知ったのは昨年11月に足を運んだ岡崎でのジャズフェス、「岡崎ジャズストリート」でのこと。彼女のステージの時間帯に、ほかに見たいミュージシャンがいなかったこともあり、その奇抜なキャラに興味半分にステージに足を運んだのですが、予想以上にカッコいいサックスプレイにすっかりと惹きつけられてしまいました。

そんな訳で今回リリースされた彼女のメジャー2枚目のアルバムを、音源としてははじめて聴いてみました。今回のアルバムで話題になったのはあのピコ太郎が参加している点。彼とのコラボ曲「ボンノバンニベンガボーン」はピコ太郎のネタ曲に彼女が参加しているスタイル。ジャズという枠組みを飛び越えたユニークなナンバーながらも、正直言って、いまさらピコ太郎??という印象を受けるほか、こちら完全に下ネタ(^^;;そういう意味ではマスを狙ったのかもしれませんが、正直言って好き嫌いはわかれそう。ただ、この曲の中に入ってくる彼女のサックスプレイは文句なしにカッコいいです。

ただ、このピコ太郎とのコラボもそうなのですが、今回のアルバムに関しては完全に「売れること」を狙ったような作品に感じてしまいました。今回、カバー曲が4曲含まれているのですが、うち3曲はアデルの「Hello」にダーティ・ループスの「Hit Me」、さらにジャミロクワイの「Virtual Insanity」とジャズというよりも完全にポップスの範疇の曲。それも日本でもおなじみなナンバーであり、正直言って、かなりベタベタな選曲に感じます。

そして肝心の内容についても・・・こちらは完全にあまり良くない意味でイージーリスニングといった感じ。ジャズというよりもポップステイストが強く、ジャズリスナーではない層にも聴きやすいといえば聴きやすいのですが、サックスプレイに関してもこれといったオリジナルティーもカッコよさも感じられず、平凡という印象を受けてしまいました。

特にこれらの曲がそう思うのは、ラストに聴かせてくれるカバー「Some Skunk Funk」がカッコよかったから。こちらはアメリカのジャズミュージシャン、ザ・ブレッカー・ブラザーズのカバーなのですが、ファンキーなサウンドがカッコいいナンバーで、おそらく「売り」抜きにしたらこちらの方向性をやりたかったのかな、と感じてしまいます。

ピコ太郎とのコラボ曲「ボンノバンニベンガボーン」の中のサックスプレイもカッコよかったですし、アルバムの随所にユッコ・ミラーのサックスプレイヤーとしての実力と魅力を感じさせるプレイも見受けられたのですが、全体的には正直言って平凡さを感じてしまうアルバムになっていました。確かに、ギャル系の奇抜なファッションが特徴的な彼女は、そのキャラクター的にジャズというカテゴリーを超えてブレイクする要素を持ったミュージシャンだと思いますが、そのブレイクを急ぎすぎていないかなぁ、という印象も受けました。

そういう意味では非常に残念に感じたアルバム。それでも彼女が実力あるミュージシャンということは先日見たライブとあわせて十分にわかっただけに、無理に「売り」に走らなくても、彼女のやりたいことを続ければ徐々に売上はついてくるんじゃないかなぁ。次のアルバムに期待です。

評価:★★★


ほかに聴いたアルバム

YOU/阿部真央

前作「Babe.」では母となった彼女が、母親としての視点で歌った歌を主軸に置いたアルバムになっていましたが、今回のアルバムは再び、女性の感情をそのまま吐露したインパクトあるラブソングがメインに。ただ「27歳の私と出がらし男」のように彼女らしいユーモラスたっぷりにダメ男を皮肉った歌詞もあるのですが、全体的な大人の雰囲気を感じる、ちょっとエロさすら感じる歌詞が魅力的に。楽曲的にもいつものギターロック路線をメインに、ちょっと大人なAOR路線を混ぜてきている感じがします。大人な雰囲気のアルバムとなった本作。また彼女が新たな一歩を踏み出したような感もある新作でした。

評価:★★★★

阿部真央 過去の作品
ポっぷ
シングルコレクション19-24
おっぱじめ
Babe.

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2018年6月25日 (月)

ポップなメロディーがより印象的に

Title:Tell Me How You Really Feel
Musician:Courtney Barnett

デビューアルバムである前作「Sometimes I Sit and Think, and Sometimes I Just Sit」が話題となり、グラミー賞の最優秀新人賞にもノミネートされたオーストラリアの女性シンガーソングライター、コートニー・バーネット。昨年はKurt Vileとのコラボアルバムをリリースしましたが、純然たるソロ名義のアルバムとしては話題となったデビューアルバム以降、約3年2ヶ月ぶりとなる待望のニューアルバムがリリースされました。

彼女の特徴はSONIC YOUTHやPIXIESあたりを彷彿とさせる80年代のローファイ気味なインディーギターロック。ノイジーなギターが淡々と鳴り響くダウナーなサウンドが癖になるのですが、メロディーラインがポップなのも魅力的(まあ、これは80年代のインディーギターロックにも共通する部分ですが)。こういってしまうと若干「偏見」が入っているかもしれませんが、ポップなメロディーラインにはどこかキュートさも加わっており、女性らしい可愛らしさも感じます。

今回のアルバムに関しても基本的にそんな前作の特徴を踏襲したアルバム。全10曲、ノイジーなギターサウンドが鳴り響き、基本的には前作からの大きな違いはありません。アルバムは最初「Hopefulessness」で非常に静かな雰囲気の中からスタート。そして続く「City Looks Pretty」はポップなメロディーラインがとても心地よいナンバー。ポップなメロの中に加わる歪んだギターサウンドがいかにもな感じですが、これがとても心地よく感じます。

「Charity」はギターのイントロがいかにもインディーギターロックらしくてちょっとうれしくなってきますし、「Need a Little Time」は一転、しんみりしたメロディーラインが魅力的な曲に仕上がっています。

その後も比較的ポップな曲調が目立つ楽曲が多いのも特徴的で、軽快なメロディーラインの「Nameless, Faceless」「Crippling Self-Doubt and a General Lack of Confidence」や、ミディアムテンポのナンバーで歌をしっかりと聴かせる「Walkin' on Eggshells」やラストを締める「Sunday Roast」など、ローファイ気味なサウンドは変わらずながらも、前作よりも歌やメロディーの輪郭がはっきりしたポップチューンが多かったように思いました。

一方、ロック的な観点からかっこよかったのが「I'm Not Your Mother, I'm Not Your Bitch」。なんかタイトルからしてなにを歌いたいのかすぐわかるような内容なのですが(^^;;ダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドにシャウト気味なボーカルでいかにもロッキンな楽曲。ロックミュージシャンとしてのかっこよさを強く感じるナンバーになっています。

全10曲入り37分という短さも大きな魅力で、似たようなタイプの曲が多いものの、そんなことを気にせずに最後まで一気に聴けてしまう勢いのあるアルバムでした。前作同様の傑作アルバムにすっかりはまってしまった1枚。ちなみにクレジットを見て気がついたんですが、ギターとバックボーカルに元PIXIESのキム・ディール姉御が参加されているんですね。確かに、キム・ディールに通じるところが大きそうですからねぇ。うれしい驚きです。

2枚目にして彼女が話題となったデビュー作の一発屋ではなく、実力あるミュージシャンだということを確信できた傑作アルバム。イギリスのアルバムチャートでは見事ベスト10入りを記録しており、人気上昇中であることが実感できます。これからの活躍も楽しみ。ギターロック好きはマストな1枚です。

評価:★★★★★

Courtney Barnett 過去の作品
Sometimes I Sit & Think & Sometimes I Just Sit
Lotta Sea Lice(Courtney Barnett&Kurt Vile)

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2018年6月24日 (日)

ソロデビュー25周年

Title:mile stone
Musician:宇都宮隆

ソロデビュー25周年を迎える宇都宮隆の、約5年半ぶりとなるニューアルバム。
またTMNが活動をしていた1992年から数えて25年目ということになるのですが、ソロ活動開始をリアルタイムで知っているだけに、もう25年になるのか・・・と遠い目をして思ってしまいます。

久々となる今回のアルバムは25年目の節目となるアルバムということでかなり力を入れているみたいで、つんく♂や尾崎亜美を作家陣に迎えた豪華なラインナップが魅力のアルバムとなっていました。

ただ・・・そんな力を入れたアルバムなのですが、アルバム全体としては非常にムード歌謡風のアルバムに仕上がっていました。つんく♂の「未来へ」はハードロック調のアレンジながらも、つんく♂らしい歌謡ロック的な作品。尾崎亜美が提供した「境界線を引いたのは僕だ」もギターのアルペジオとピアノが美しい楽曲なのですが、哀愁感たっぷりのメロディーの歌謡曲な楽曲になっています。

ほかにもカバー曲が収録されているのですが岩崎宏美の「思秋期」と山本リンダの「どうにもとまらない」というバリバリの歌謡曲。2015年から歌謡曲のカバーライブを実施しているようですが、その流れということなのでしょう。アルバム全体としてはまさに歌謡曲なアルバムになっていました。

歌謡曲という路線ももちろん悪くはないのですが、あの未来感あふれるデジタルロックのボーカリストだった宇都宮隆が歌謡曲かぁ・・・そりゃあ、彼ももう還暦(!)だから、そうやっておとなしくまとまっちゃうよね・・・と時代の流れを感じてしまいます。

そんな「歌謡曲」な楽曲は出来は悪くないのですが、ありふれた感は否めず、宇都宮隆の新機軸としてはいささか物足りなさを感じてしまいます。今回、またも「GET WILD」のセルフカバー「GET WILD PANDEMIC」が収録されているのですが、彼のボーカルはどうしてもこういう疾走感あるロックチューンのほうが似合うように思ってしまいます。

ちなみに今回、彼の代表曲を集めたベスト盤がついたCD2枚組のセットと、アルバム+DVDの2枚組セット、さらにはすべてがセットされた限定版がリリースされましたが、今回聴いたのはベスト盤とのセットの方。ただこちらのベスト盤、なぜか大ヒットした「少年」や「discovery」が収録されておらず、ちょっと物足りない選曲に感じてしまいます。

25周年の記念アルバムとしては収録曲はたった6曲入りのミニアルバムだったし、いろいろな意味で残念さを感じるアルバムになっていました。前作「TRILOGY」が予想以上にいいアルバムだったので残念。正直なところ、次はもっとロックなアルバムを期待したいところなのですが・・・。

評価:★★★

宇都宮隆 過去の作品
TRILOGY


ほかに聴いたアルバム

a flood of circle/a flood of circle

ギターに新メンバー、アオキテツを加えて4人組となったa flood of circle。今回の作品はセルフタイトルになりましたが、セルフタイトルは2007年にリリースしたデビュー作以来2作目。新メンバーが加入して、新たなバンドに生まれ変わったという彼らの意気込みを感じます。

もっともスタイルとしては以前から変わらず、アップテンポなリズムにヘヴィーなガレージロック。シャウト気味のボーカルががなり立てるスタイル。一方で歌は意外とメロディアスでポップにまとめており、同じく端正で聴きやすさもあるボーカルとあわさって、基本的には聴きやすさを感じます。ミクスチャーロック風にスタートする「Where Is My Freedom」やサイケ感ある「Rising」、ラップを取り入れた「One Way Blues」などバラエティーある作風も目立つ反面、アルバム全体としてはちょっとインパクトは薄れてしまった感も。

評価:★★★★

a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-
NEW TRIBE

一大事/ポルカドットスティングレイ

人気上昇中の女性ボーカル+男性3名による4人組ロックバンド。ボーカルの雰囲気と歌い方に椎名林檎からの強い影響を受けるため、楽曲的な個性がちょっと薄くなってしまっているのは残念ですが、ファンキーな「パンドラボックス」やブルージーなギターを聴かせる「リスミー」などバンドサウンドには大きな魅力が。ただ全体的にはもうちょっと楽曲のバリエーションも欲しいし、椎名林檎の影が見えてしまう作風も改善してほしい感じも。いいアルバムでありながらも、あと少しで「傑作」になり損ねている作品が続いている感があり、残念ですが・・・。

評価:★★★★

ポルカドットスティングレイ 過去の作品
大正義
全知全能

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2018年6月23日 (土)

作風をガラリと変えた問題作

Title:Tranquility Base Hotel & Casin
Musician:Arctic Monkeys

よくアルバムの中には発売当初賛否両論となる「問題作」というものが少なくありません。古くはThe Beach Boysの「Pet Sounds」なんかがそんなアルバムでしたし、The Rolling Stonesの「Their Satanic Majesties Request」などもそんなアルバムのひとつでしょうか。前作から作風がガラッと変わってしまったアルバムは、時として「問題作」となり、良くも悪くも大きな話題となります。

約4年8か月ぶりとなるArctic Monkeysのニューアルバムである本作は、まさしくそんな問題作と言える作品でした。まず1曲目「Star Treatment」からして、まずムーディーに歌い上げるAlex Turnerのボーカルが目立つナンバー。Arctic Monkeysといえばガレージロック色の強いバンドですが、この曲調はロックというよりもむしろオールドスタイルなムード歌謡曲に近い雰囲気となっていました。

その後も彼ららしいゴリゴリのギターサウンドを求めて聴き進めていくのですが、続く「One Point Perspective」も同じようなムーディーな作品。さらに続く「American Sports」では美しいピアノの調べがムーディーな雰囲気をかきたてる、ライブハウスというよりはコンサートホールや、ホテルのディナーショーで歌われそうな、そんな雰囲気の楽曲になっています。

「Golden Trunks」「Science Fiction」あたりでようやくノイジーなギターも入ってくるのですが、ムーディーな曲調でサウンドよりも歌を聴かせるというスタイルは最後まで変わらず。正直言って、最初はかなりこのアルバムの作風には戸惑ってしまいました。

ただ、よくよく聴いていくと、この歌は実に心に響いてくるようなメロディーラインを持っていることに気が付かされます。特に「Golden Trunks」などハイトーンボイスで歌われる美しい歌声と美メロが印象に残りますし、ラストを飾る「The Ultracheese」はちょっと切ない雰囲気のメロディーが実に絶品。将来的にスタンダードナンバーになる可能性を秘めた、インパクトある名曲に仕上がっていたと思います。

サウンドに関しては正直言って、エッジの効いたバンドサウンドを聴かせるわけではありません。ただ、ボーカルとのバランスにおいてほどよいバランスをもって歌を引き立たせています。「She Looks Like Fun」などは、このアルバムとしては珍しくヘヴィーなバンドサウンドを聴かせるナンバーなのですが、こちらにしてもボーカル部分をしっかり引き立てており、かつピアノパートとの絡みも絶妙。そういう意味ではアレンジに関してよく練られているものを感じます。

正直言って好みのわかれる、まさに賛否両論となるアルバムだったと思います。ただ、よくよく考えると前作「AM」もヘヴィーなギターリフをゴリゴリと前に押し出したナンバーだったものの、哀愁感あるメロディーが目立つ、実に「渋い」アルバムでした。そう考えると、基本的に本作は前作の延長線上にあるアルバムともいえるかもしれません。

この方向が今後どうなるかわかりませんし、個人的にも次回作はゴリゴリのギターロックを聴きたいな、という印象も受けます。ただこのアルバムに関してはArctic Monkeysの新たな可能性を感じる傑作アルバムだったと思います。特にメロディーの側面で彼らの魅力を最大限に引き出したアルバムに仕上がっていたと思います。最初は違和感を覚えるかもしれませんが・・・是非何度か聴いてメロディーの良さを味わってほしい、そう思う新作でした。

評価:★★★★★

ARCTIC MONKEYS 過去の作品
Humbug
SUCK IT AND SEE
AM

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2018年6月22日 (金)

作家陣を入れ替えて新たな一歩を

Title:TIME
Musician:家入レオ

昨年はデビュー5周年を迎え、ベスト盤やアルバム「WE」をリリースするなど積極的な活動が目立った彼女。そんな前作「WE」から約1年8か月。早くもニューアルバムがリリースとなりました。

前作「WE」ではデビュー以来、彼女の楽曲を手掛けてきた西尾芳彦の手から離れ、メインライターとしてSuperflyの活躍でもおなじみの多保孝一を起用し、新たな一歩を踏み出しました。さらに今回のアルバムでは西尾芳彦の手から完全に離れ、ポルノグラフィティやいきものがかりのプロデュースで知られる本間昭光や、元Galileo Galileiの尾崎雄貴を作家陣して起用。さらなる新たな展開を見せています。

さらに前作まで、基本的には西尾芳彦や多保孝一との共作だった家入レオ作曲作品ですが、今回は他の作家との共作ではなく、自ら作詞作曲を手掛けた曲が3曲収録。特に「だってネコだから」は猫の視点から歌った切なくも可愛らしいラブソングになっており印象的。そういえば彼女って完全に猫目ですよね・・・(^^;;

ただ、作家陣を入れ替えても家入レオとしての方向性にあまりブレは感じません。よくも悪くもJ-POP的。例えば「Relax」のようなシンセにより音を分厚くしてダイナミックに聴かせる手法などはいかにもJ-POP。「ファンタジー」なども疾走感あるギターロックなのですが、哀愁感あるメロディーラインにハードロックライクなバンドサウンドは、80年代的なものを彷彿とさせます。

また「TOKYO」ではスカ風のリズムを取り入れてきたり、「ありきたりですが」ではフォーキーなサウンドに仕上げてきたりと、良く言えばバラエティー豊富な、悪く言えば少々散漫さも感じる方向性も実にJ-POP的なものを感じます。

以前の彼女の楽曲も90年代のJ-POPに慣れ親しんだアラフォー世代にとっては懐かしさを感じる曲調で安心して聴けるのも彼女の大きな特徴。そんな方向性は本作でもほとんど変わっていません。また初期の彼女は「中2病」的な要素はほとんどなくなりました(あえていえば「ファンタジー」あたりにはその要素が残っているかな?)。そういう意味では自然体の彼女がより表に出てきた作品になっていたと思います。

デビュー当初の楽曲が持っていた、一度聴くと忘れられないようなワンフレーズのようなものは残念ながら本作でも見受けられませんでしたが、作家陣を入れ替えても十分な満足いく作品をリリースできたという意味では大きな意義のある作品だったと思います。今後、さらに彼女が作詞作曲を手掛ける作品が増え、シンガーソングライターとして独り立ちできれば、さらにその可能性は広がりそう。5周年の年を超えて、今後の可能性も感じる1枚でした。

評価:★★★★

家入レオ 過去の作品
LEO
a boy
20
WE
5th Anniversary Best

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2018年6月21日 (木)

ちょっと意外な1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

シングルアルバム通じて自身初の1位獲得です。

今週1位を獲得したのはTHE ORAL CIGARETTES「Kisses and Kills」。最近、人気上昇中のロックバンドで、直近作「UNOFFICIAL」では初のベスト3ヒットを記録しています。そんな彼らですが、それでも1位獲得はちょっと意外な印象。初動売上は2万5千枚と、強力盤がなく全体的な売上水準も低かった週のチャートではありましたが、それでも彼らの今の人気の高まりを感じさせる結果に。前作の初動売上2万1千枚(3位)からもアップしています。

2位は三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「FUTURE」がワンランクダウンでこの位置に。3位にはヴィジュアル系ロックバンドthe GazettE「NINTH」がランクイン。こちらはタイトル通り、9作目となるオリジナルアルバム。初動売上1万7千枚。直近作はベスト盤「TRACES VOL.2」で、こちらの8千枚(8位)からはアップ。オリジナルとしては前作「DOGMA」の1万8千枚(3位)からは微減となっています。

続いては4位以下の初登場盤です。まずは4位に湘南乃風「湘南乃風~一五一会~」がランクインしています。約3年ぶりとなるニューアルバム。デビュー15周年を迎えた彼ら。「一五一会」というタイトルは、その「15周年」にちだんだタイトルのようです。初動売上は1万3千枚。直近作はMIXアルバム「湘南乃風~湘南爆音BREAKS! II~mixed by Monster Rion」で、こちらの1万1千枚(11位)よりはアップ。前作「湘南乃風~COME AGAIN~」の3万5千枚(3位)よりは大幅ダウンとなってしまいました。

6位にはBLACK M!LK「THE LOCK」がランクイン。スターダストプロモーションの男性アイドルグループM!LKが、M!LKとはまったく逆のコンセプトを持って活動する変名ユニット。初動売上は1万枚。M!LKのアルバム「王様の牛乳」の2万6千枚(3位)からは大幅ダウンしています。

7位初登場は吉井和哉「SOUNDTRACK ~Beginning & The End~」。ソロデビュー15周年を迎えてリリースされたライブアルバム。THE YELLOW MONKEYとしての活動を再開させた彼ですが、ソロでの活動も並行して行っていく模様。初動売上7千枚。直近作はカバーアルバム「ヨジー・カズボーン~裏切リノ街~」で、こちらの8千枚(12位)からは微減。

最後8位には韓国の男性アイドルグループSHINee「The Story of Light EP.2」がランクイン。3作連続してリリースされるミニアルバムの第2弾で、初動売上6千枚は前作「The Story of Light EP.1」の7千枚(7位)より若干のダウン。ちなみに6月25日には第3弾のリリースが予定されています。

さて、今週はベスト10返り咲きが1枚。安室奈美恵のベストアルバム「Finally」が先週の15位からランクアップし、10位にランクイン。5月14日付チャート以来6週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。ただし、売上枚数は先週の6千枚から5千枚にダウンしており、ベスト10の売上枚数が全体的に落ち込んだことによる返り咲きとなっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年6月20日 (水)

日米「愛国ソング」対決?

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週、ここで大きく取り上げたRADWIMPS「HINOMARU」。先週の27位から9位にランクアップ。2週目にしてベスト10入りしてきました。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で10位にランクインしたほか、Twitterつぶやき数で3位にランクイン。そのほかの順位はいずれもランク圏外でしたが、この曲をめぐる騒ぎが良くも悪くも宣伝効果につながったようです。ちなみに肝心の「カタルシスト」の方は今週11位にランクダウンしています。

一方、先週も話題に出しましたがDA PUMP「U.S.A.」。今週は5位と2ランクダウンながらもYou Tube再生回数では1位を記録。大きな話題となっておりロングヒットを記録しそうな予感があります。この曲、先週も書きましたがアメリカへの讃歌となっており、そういう意味では皮肉にも日米の「愛国」ソングが並んだような結果となっています。

ただ「U.S.A.」の歌詞はアメリカへの愛情を感じさせる歌詞をコミカルに描いており、そういう意味ではアメリカに対して反感を持っているような人にも苦笑いと共に受け入れられそうな内容に。先週もチラッと書きましたが、この手の曲ってのはユーモアさを混ぜるというのが自分とは意見の異なる人にも受け入れられる秘訣だと思うんですけどね・・・。

さてランキングに戻って。まず今週1位はモーニング娘。'18「Are You Happy」が獲得。実売数で1位獲得しましたが、そのほかの順位はラジオオンエア数で38位、PCによるCD読取数で11位、Twitterつぶやき数28位と若干奮いませんでした。ちなみにオリコンでは初動売上11万4千枚で1位獲得。前作「邪魔しないでHere We Go!」の11万1千枚(2位)よりアップしています。

2位はAKB48「Teacher Teacher」が2週連続で2位をキープ。3位にはEXILEの弟分グループGENERATIONS from EXILE TRIBE「F.L.Y. BOYS F.L.Y. GIRLS」が先週の65位からCDリリースにあわせてランクアップしベスト10入り。洋服の青山CMソング。実売数及びPCによるCD読取数3位、ラジオオンエア数6位を記録した一方でTwitterつぶやき数88位、You Tube再生回数59位とネット系のランキングで伸び悩みました。

続いて4位以下の初登場曲です。まず6位にはサザンオールスターズの配信限定シングル「闘う戦士たちへ愛を込めて」が先週の57位からランクアップしてベスト10入り。ちなみに「たたかうものたち」と読むそうです。映画「空飛ぶタイヤ」主題歌。勇ましいタイトルとは反して哀愁感漂うちょっと昔の歌謡曲的な楽曲。社会の中でがんばっているサラリーマンへの応援歌的な歌詞となっています。ちなみにオリコンのデジタルシングルチャートでは見事1位を獲得しています。

9位にランクインしたのが韓国の女性アイドルグループMOMOLANDの日本デビューシングル「BBoom BBoom」。K-POPらしい軽快なEDMチューンで、先週の50位からCDリリースにあわせてベスト10入りを果たしています。実売数9位、ラジオオンエア数80位、PCによるCD読取数30位、Twitterつぶやき数44位、You Tube再生回数9位を記録。You Tube再生回数の順位が高いのは、最近のK-POPの女性アイドルグループの傾向か?オリコンでも初動売上1万8千枚で4位に初登場しています。

ちなみにMOMOLANDという名前はかのミヒャエル・エンデの児童文学の傑作「モモ」に由来し、「時間に追われる人々に一つずつファンタジーを取り戻す」という意味だそうです。ただ・・・いかにも商業主義的なアイドルグループにミヒャエル・エンデの作品のタイトルをつけるという行動に違和感というかモヤモヤ感しか抱かないのですが・・・。

最後10位に藍井エイル「流星」が先週の93位からCDリリースにあわせてランクアップしています。2016年に体調不良のため無期限の活動休止となっていた彼女ですが、このほど無事活動を再開。本作は約2年ぶりのシングルとなります。テレビアニメ「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」オープニングテーマ。実売数は11位、ラジオオンエア数44位、PCによるCD読取数13位、Twitterつぶやき数17位といずれも10位にランクインしていませんが、総合順位では見事ベスト10入りを果たしています。オリコンでは初動売上1万3千枚で8位初登場。前作「翼」の1万2千枚(5位)から若干とはいえアップしており、復帰を待ちわびたファンが多かったことを物語っています。

今週のチャート評は以上。

ちなみに「HINOMARU」について先週に続き、ちょっと語りたいことが・・・。読んでいただける方は「続きを読む」をクリック。

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2018年6月19日 (火)

大物ミュージシャン同士が自由に融合

Title:EXITENTIALIST A XIE XIE
Musician:THE BEATNIKS

ご存じ、YMOのメンバーとしても活躍し、最近ではMETAFIVEとしての活動でも知られる高橋幸宏と、元ムーンライダーズの鈴木慶一によるユニット、THE BEATNIKS。デビュー作は1981年ですから、もうキャリア35年以上のベテランユニットですが、その間、コンスタントに活動を続けるというよりも、それぞれキャリアを持った彼らが、気の向いた時に集まって、ひょっこりアルバムをリリースする、というようなスタイルで断続的な活動を続けてきました。

本作はそんな彼らの約5年半ぶりとなるニューアルバム。とにかくまず目を惹くのはそのジャケット写真で、真っ黒なバックにモノクロでふたりの顔が浮かび上がるジャケットが、実に渋くてカッコいい!まさに渋くてカッコいい「おじさん」という雰囲気をビンビンと醸し出しているジャケット写真となっています。

また楽曲的にも大人のポップス、と言えるような作品が並んでいます。イントロ的な立ち位置となるアバンギャルドなポップス「Crepuscular Rays」からスタート。続く「I've Been Waiting For You」はニールヤングのカバー。こちらをギターをメインとしたバンドサウンドでカバーした後は、高橋幸宏と鈴木慶一、それぞれソロでも十分なキャリアと実力のあるミュージシャンによる、それぞれの個性を発揮した作品が並んでいます。

例えば「鼻持ちならないブルーのスカーフ、グレーの腕章」「ほどよい大きさの漁師の島」はおそらく鈴木慶一が主導したナンバー。前者はほどよくブルージーなサウンドが心地よいですし、後者はポップなメロディーが印象に残ります。

逆にフォーキーな雰囲気の「Brocken Spectre」やエレクトロ風の「Softly-Softly」はおそらく高橋幸宏が主導したポップス。ちょっと実験的な雰囲気もある作風がいかにも高橋幸宏らしい雰囲気を感じさせるポップスとなっています。

そういう意味でお互いの個性を尊重しつつ、それぞれが好きなことをやっているアルバムと言えるかも。ただ、それでいて両者の音楽性がきちんと融合してTHE BEATNIKSのアルバムとして仕上がっているあたりに両者の音楽的な近似性を感じさせますし、いい意味でお互い、「大人」な対応をしたんだな、ということを感じさせます。それぞれが好きな音楽を奏でつつ、お互いほどよい距離感を保っているアルバム。この手の大物ミュージシャン同士のユニットが断続的とはいえ30年以上続くというのは驚きなのですが、そこにはお互いの「大人な対応」があったからなんでしょう。

そしてユニークなのがラストの「シェー・シェー・シェー・DA・DA・DA・Yeah・Yeah・Yeah・Ya・Ya・Ya」。THE BEATNIKSに赤塚不二夫の世界観を加えたような実にユニークなナンバー。ただ一方でこういう曲をアルバムの中に違和感なく織り込むことが出来る点も彼ら2人の実力を感じさせます。

決して楽曲に派手さはありませんが、高橋幸宏、鈴木慶一の実力がしっかりと反映された大人のポップスアルバムに仕上がっていました。ある意味、非常に自由度も高く感じさせるアルバムになっていたと思います。これからも断続的にTHE BEATNIKSの活動は続いていくんでしょうね。これからの活動も楽しみです。

評価:★★★★★

THE BEATNIKS 過去の作品
LAST TRAIN TO EXITOWN


ほかに聴いたアルバム

DAPPER/SOIL&"PIMP"SESSIONS

「デスジャズ」を標榜し、ハードなサウンドで踊れるジャズを奏でていたSOIL&"PIMP"SESSIONS。2年ぶりのニューアルバムももちろんそんな路線を期待しつつアルバムに耳を通したのですが・・・これがいままでとは全く違う路線でビックリ。エレクトロなソウルテイストのジャズで、「デスジャズ」の方向性は皆無。かなりおとなしいサウンドになっており、最初は「なんじゃこれ」という印象を正直なところ受けてしまいました。

2016年にサックスの元晴が脱退し5人組となった彼ら。今回の音楽性の変更はその影響も大きく、最初はかなり違和感があったのですが・・・何度か聴くと、おそらく彼らはここ最近のジャズの傾向を追った結果、このようなサウンドに行き着いたんだろうなぁ、と強く思いました。特に方向性としてはWONK近辺からの影響を強く感じます。ファンキーなサウンドはそれなりにカッコよく、これはこれでそれなりに良いアルバムだったと思います。ただ、この方向性がこのまま続くのは、「デスジャズ」として彼らの個性を確立していたのに、ちょっともったいないような印象も・・・。

評価:★★★★

SOIL&"PIMP"SESSIONS 過去の作品
PLANET PIMP
SOIL&"PIMP"SESSIONS presents STONED PIRATES RADIO
MAGNETIC SOIL
"X"Chronicle of SOIL&"PIMP"SESSINS
Brothers & Sisters
BLACK TRACK

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2018年6月18日 (月)

基本路線は変わらず、エレクトロ色が強めに

Title:わがまマニア
Musician:CHAI

昨年、アルバム「PINK」が大きな評判を呼んだ4人組ガールズロックバンドCHAI。チャットモンチーのブレイク以降、数多くのガールズバンドがデビューを果たしました。そんなガールズバンドの中ではかわいいルックスでアイドル的な人気を博するグループも少なくない中、彼女たちのルックスは失礼ながらお世辞にも「美人」とは言えません。しかし彼女たちはそんなルックス的な特徴を逆手に生かし、「コンプレックスこそアートなり」「ネオかわいい」をバンドのテーマにかかげ、ありのままの自分を賞賛する楽曲を発表し、それが大きな話題となりました。

個人的にもアルバム「PINK」にはすっかりはまってしまい、昨年の個人的ベストアルバムでは1位に選出。すっかりCHAIのファンになってしまいました。そして早くもリリースされた彼女たちの新作は5曲入りのミニアルバム。そしてその路線は基本的に前作「PINK」を踏襲したものでした。

彼女たちのもうひとつ大きな魅力といえばその非常に足腰の強いバンドサウンド。力強く迫力ある演奏に、キュートともいえるポップなメロディーライン。そしてハイトーンでそのルックスとは異なり(失礼!)とてもキュートなボーカルが強く印象に残ります。前作「PINK」のレビューの時にも書いたのですが、サウンド的にはメスカリン・ドライブや少年ナイフからの流れを感じる部分もあり、日本のガールズパンクの歴史の流れに名を連ねるバンドのひとつといって間違いないでしょう。

本作でいえば、2曲目「アイム・ミー」がまさにそんなCHAIらしさをあらわした楽曲と言えます。へヴィーなバンドサウンドと、それと対照的ともいえるポップなメロディーライン。「わたしがわたしをかわいくするの」と歌い本作は、まさに「ありのままの自分」を標榜する歌詞。実にCHAIらしい楽曲にまとまっています。

「FAT-MOTTO」なんかも彼女たちらしいポップソング。太っていることの全肯定なユニークな歌詞。リズム隊のファンキーな分厚いグルーヴ感もカッコよく、こちらもCHAIの魅力がサウンドの面でも歌詞の面でも全開となっています。

ただ今回のアルバムは「PINK」に比べるとシンセのサウンドを前に押し出して、ちょっと軽くなったような印象を受けます。特に「フューチャー」「Center of the FACE!」などは特にエレクトロな側面が強くなっている楽曲。シンセを取り入れたサウンドは「PINK」でも見受けられましたが、今回のアルバムではそれがより目立ったように思います。

個人的にはバンドとしての体力のあるグループなだけにエレクトロサウンドに走るよりも、もっとバンド色を前に押し出した方がよいとは思ったのですが、ただ、もちろんエレクトロサウンドを前に押し出した2曲に関しても十分魅力的。5曲入りのミニアルバムなだけにもっと聴きたいなぁ、という印象も残るのですが、「PINK」に引き続き大満足の傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

CHAI 過去の作品
PINK


ほかに聴いたアルバム

666 (TRIPLE SICK'S)/ ヒステリックパニック

名古屋で結成された5人組バンドによるミニアルバム。彼らのアルバムを聴くのは前作「LIVE A LIVE」に続いて2作目なのですが、基本的な感想は同じ。メタルテイストのハードコアサウンドに、そんなサウンドと対照的なポップなメロが特徴的なのですが、全体的なごちゃごちゃ感が否めず、音的に整理されていない印象が。一皮むければグッとおもしろくなると思うのですが・・・。

評価:★★★

ヒステリックパニック 過去の作品
LIVE A LIVE

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2018年6月17日 (日)

oasisフォロワーによる2枚目

Title:FOR NOW
Musician:DMA'S

これが2枚目のアルバムとなるオーストラリアはシドニー出身の3人組バンド。デビューアルバム「Hills End」が一部で大きな話題となりました。その話題となった最大の理由は、あまりにもわかりやすいoasisフォロワーだったから。デビューアルバムではoasisの1st、2ndあたりをストレートに彷彿とさせるようなギターロックの曲が並んでおり、oasis好きにとっては非常に壺にはまるようなアルバムになっていました。

このoasis愛は2枚目となる本作でも強く感じられます。1曲目のタイトルチューン「For Now」からしてサイケでグルーヴィーな雰囲気はまさにoasisらしいUKギターロック・・・・・・というよりもoasisのルーツのひとつであるSTONE ROSESっぽいかも?

その後の「Do I Need You Now?」「Break Me」のようなノイジーでグルーヴィーなギターロックにちょっとダウナー気味だけれどもわかりやすいポップなメロが重なるスタイルもある意味oasisらしい感じ。oasisらしさはアルバムの随所に感じられます。

ただ、前作で感じられたoasisとの相違点が今回のアルバムではより強くなってきたようにも感じます。それはoasisに比べてより軽くポップであるという点。例えば「In The Air」はアコースティックなギターで切ないメロディーを爽やかに聴かせるナンバー。oasisというよりもむしろTRAVISあたりっぽい雰囲気を感じさせますし、「Warsaw」「Lazy Love」も軽快なギターポップナンバーとなっており、oasisとはその方向性が異なります。

歌い方も前作同様、リアム・ギャラガーからの影響を強く感じさせるものの、ポップになった作風のせいか、もうちょっと素直な歌い方の曲も増え、前作ほどは「まんまリアム」な印象が薄れた感じもします。そういった意味でアルバム全体としてはoasis色が薄くなり、DMA'Sとしての色が出せれたアルバムになっていたようにも思います。

とはいえ、上にもSTONE ROSESやTRAVISといったバンドをイメージとして出したように、全体的にはイギリスのオルタナ系ギターロックからの影響を強く受けたメロディーラインとサウンドという点は共通。そういう意味ではoasisが好きな方ならばおそらく気に入るであろう範疇の音を出しているアルバムだったと思います。実際私も、前作同様にすっかりこのアルバムにはまってしまいました。

全体的にはサイケなサウンドの方向性もあったものの、さっぱりとした味付けがされており、oasis的なものをあまりに求めすぎるとちょっと薄味に感じられるかもしれません。ただ、そういった点を含めて前作よりもDMA'Sらしさは出せていたアルバムだったように思います。いい意味で難しいこと抜きにポップな路線を貫いていた点は大きなプラス。これからの活躍がまだまだ非常に楽しみなバンドです。

評価:★★★★★

DMA'S 過去の作品
Hills End

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2018年6月16日 (土)

全カバー曲を網羅!

Title:EIICHI OHTAKI Song Book III 大瀧詠一作品集Vol.3「夢で逢えたら」(1976~2018)

ある意味、とんでもないアルバムがリリースされました。大瀧詠一の代表曲であり、日本ポップスのスタンダードナンバーとも言える「夢で逢えたら」。もともとは1976年に吉田美奈子がアルバム「FLAPPER」の中で歌ったのが「オリジナル」なのですが、その後、数多くのミュージシャンがこの楽曲を取り上げカバーし、歌われ継いでいます。今回は現在確認できるカバー86曲を網羅。4枚組のアルバムに収録したアルバムになっています。おととしにアルバム全曲が「GET WILD」というアルバムがリリースされ話題になりましたが、こちらはCD4枚計314分、すべて「夢で逢えたら」。まさに聴き終わった後も曲が夢に出てきそうなアルバムになっています。

この「夢で逢えたら」という曲、オリジナルは決して大ヒットした曲ではないのですが、なぜこれだけのカバーがあり、歌い継がれているのか、このアルバムを聴きながらまず感じた点はここでした。そして聴きながら思い当たったのが次の5つの理由でした。

① 曲がとてもシンプルでわかりやすい

楽曲は基本的にAメロ→サビの繰り返し。途中に大サビやセリフも入ってくるのですが、インパクトあるサビが繰り返される内容でとてもわかりやすい楽曲になっており、これが多くのリスナーに親しまれる大きな要因に感じました。

② 歌詞のテーマが普遍的

好きな人に夢で逢いたいというテーマは、万葉集の昔から片想いの定番中の定番。だからこそ多くのリスナーがこの歌詞に惹かれるのでしょう。

③ 歌詞が男性でも女性でも共通して歌える

②にもつながるのですが、「好きな人に夢で逢いたい」という歌詞は男性が歌っても女性が歌っても違和感がありません。そういう意味で男女問わずカバーしやすい歌詞と言えるでしょう。

④ セリフを改変しやすい

オリジナルは途中にセリフが入っているのですが、このセリフが改変しやすく、オリジナリティーを出しやすいのがカバーしやすい大きな要因のように感じます。またセリフ自体を省略した曲も少なくありませんでした。

⑤ オリジナルがヒットしていない

失礼ながら吉田美奈子によるオリジナルは決して大ヒットは記録していません。ただ、その分、オリジナル曲のイメージが薄くなり、その分、カバーしやすくなったのではないでしょうか。

さてそんな「夢で逢えたら」ですが、カバーしているミュージシャンは実に多岐にわたります。もともとはオリジナルに沿った女性シンガーによるカバーが多かったのですが、1996年にラッツ&スターがカバーするとグッと男性ボーカルも増えてきます。そのほかにも香西かおりのような演歌歌手やNICO Touches the Wallsのようなロックバンド、Rankin Taxiのようなレゲエシンガーや、Darlene Loveのような海外勢も登場します。

ほかにもオルゴールによるカバーや航空自衛隊 航空中央音楽隊による演奏。さらには京急の駅のメロディーまで収録されているあたり、全カバーを網羅したアルバムらしいところでしょうか。最近ではゲーム「アイドルマスター」のキャラソンとしてもカバーされており、まさに時代、ジャンルを問わない楽曲の人気の高さをうかがわせます。

ただ、どの曲も基本的にはメロディーと歌を大切にしているカバーとなっており、原曲から大きく逸脱したようなカバーはありません。シンプルな曲なだけに、逆に原曲から逸脱しにくいということもあるのでしょうが、それだけメロディーも歌詞も魅力的ということが言えるのでしょう。

また今回の全カバー網羅により気が付いたのが、年代的に最近のカバーが加速度的に増している点でした。年代ごとにまとめると

70年代・・・3曲
80年代・・・11曲
90年代・・・12曲
2000年代・・・19曲
2010年代・・・41曲

96年のラッツ&スターによるカバーが大ヒットを記録したことがひとつのきっかけにはなっているのでしょうが、それを差し引いてもここ10年くらいで激増しています。もちろん、それだけ時代を超えた名曲ということが言えるのでしょうが、一方でここ最近、音楽業界全体に元気がなく、過去の曲に頼らざるを得ない事情も垣間見れてしまいました。

さて、そんな様々なタイプの「夢で逢えたら」が網羅された本作。その中で印象に残った曲・・・と言われると、個人的によかったのは岩崎宏美による1981年のカバーかなぁ。伸びやかにしんみり聴かせるカバーなのですが、表現力に富んだ歌声が耳に残る内容となっており、より心に響くカバーになっていました。

さすがに5時間以上に続く「夢で逢えたら」攻勢にお腹いっぱいになるのですが、この企画の素晴らしさと実現させたスタッフの努力に敬意を表して下記の評価に。ちなみにこの曲と並んでカバーの定番中の定番といえば「君の瞳に恋してる」なんですが、こちらもどなたか、全カバー網羅のアルバムとか企画してくれないかなぁ(笑)。

評価:★★★★★

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2018年6月15日 (金)

一世を風靡した落語家のベストアルバム

Title:ザ・月亭可朝ベスト+新曲
Musician:月亭可朝

1960年代から70年代にかけて一世を風靡した落語家、月亭可朝。今年3月、80歳にして惜しまれつつこの世を去りました。月亭可朝といえば、なんといっても知られるのが1969年にリリースして80万枚という大ヒットを記録した「嘆きのボイン」「ボインはぁ~赤ちゃんが吸うためにあるんやでぇ~、お父ちゃんのもんとちがうのんやでぇ~」という印象的なフレーズからスタートするこの曲は、おそらくリアルタイムで聴いていた世代でなくても知っている方も多いのではないでしょうか。かく言う私もこの曲が流行ったのは生まれる遥か昔な訳ですが、どこで覚えたのかこの曲はしっかりと知っていた訳で。

この曲を含めてギター漫談が大きな評判を呼び、数多くのコミックソングを作詞作曲してきた彼。本作はタイトル通り、そんな月亭可朝の代表曲を集めたベストアルバムです。ただ、逝去後リリースされた追悼盤という訳ではなく、このアルバムのリリースは彼が亡くなる以前の昨年の11月。期せずして彼の最後の作品となってしまいました。

中盤には「さよならのブルース」みたいな正統派歌謡曲も収録されていたりするのですが、基本的には同じようなフレーズに語り気味の歌で展開されるギター漫談のコミックソングがメイン。正直言ってしまうと時代を感じさせる部分があるのも事実で、デビュー作である「出てきた男」なんかは今の時代だったらちょっとリリースするのは厳しいかもしれないかも。また、一方ではギター漫談だけではなく「ミスター・チョンボ」は接待麻雀をテーマにしたファンクチューンになっており、ちょっと場末のキャバレー的な雰囲気や、時代を先行したようなラップ的なボーカルも収録されていたりして、レアグルーヴ的なユニークな作風になっています。

また前述の「出てきた男」や「嘆きのボイン」もそうですが、明るくて楽しいエロ小唄が目立つ内容で、ある意味18禁ながらも(笑)、大人がクスッと笑えるような楽しいコミックソングが並んでいます。歌詞の内容については上に書いた通り、昭和を強く感じさせるものが多いのですが、それもまたこのアルバムの大きな魅力のように感じました。

ちなみにタイトル通り、33年ぶりとなる新曲「寝るに寝られん子守唄」が収録されていますが、これまた単なる子守唄かと思えば、かなりドギツイ歌詞が展開している「大人」な歌詞が魅力的。晩年までそのセンスが全く衰えていなかったことを感じます。

またこのアルバム、パラダイス・ガラージとしての活躍でも知られる豊田道倫がプロデュースを手掛けていることでも大きな話題に。今回「嘆きのボイン2017」「シャッシャッ借金小唄(借金のタンゴ2017)」としてかつての代表曲のセルフカバーも収録されていますが、サウンドは今風にアップデート。ただあきらかに老けたボーカルとちょっとマッチしていなかったようにも思いました。

最後には「芸能生活を振り返る」というテーマでのトークも収録。月亭可朝の芸能生活を総括する内容になっていますが、ある意味、彼の最期を予期していたかのようなアルバムになっていました。個人的に彼の全盛期は知らず、正直、思い入れみたいなものはないのですが、それでも十分楽しめた1枚でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

DANCE TO THE POPCORN CITY/サニーデイ・サービス

ここ最近「DANCE TO YOU」「Popcorn Ballads」「the CITY」と立て続けに傑作アルバムをリリース。第2の全盛期か?と思うほど勢いのあるサニーデイ・サービス。その傑作3作のタイトルを並べたような今回のアルバムはライブアルバム。例のごとく、配信+LPのみというリリース形態となっています。

ライブアレンジについて、ポップなメロは残しているもののギターサウンドを前面に入れたサイケなサウンドになっています。原曲の良さはもちろん残っているものの、特に「DANCE TO YOU」や「Popcorn Ballads」の世界をイメージすると「あれっ?」と思ってしまう部分も。それはそれでライブアレンジのおもしろさとは思うのですが、CD音源が素晴らしかっただけにちょっともったいなさも感じる部分もありました。

評価:★★★★

サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

Popcorn Ballads
Popcorn Ballads(完全版)
the CITY

RED JACKET/the Mirraz

Redjacket

2017年にはミニアルバムを含めてこれで5作目のアルバムをリリースしたthe Mirraz。ちょっと乱発しすぎでは?と思ってしまうのですが、本作も基本的にはthe Mirrazらしい、早口のボーカルで疾走感あるギターロック。一時期のEDM路線から離れてギターロック路線に回帰してきた彼らですが、今回はよりハードなギター色を前に出して、ロックの色合いが濃いアルバムになっています。「るーざー」「China Dream」のような楽しい歌詞も健在で、さすがに乱発気味のためマンネリ的な部分もなきにしもあらずなのですが、良くも悪くもthe Mirrazらしいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
言いたいことはなくなった
選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ
夏を好きになるための6の法則
OPPOTUNITY
しるぶぷれっ!!!
BEST!BEST!BEST!
そして、愛してるE.P.

ぼなぺてぃっ!!!
Mr.KingKong
バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロとMoon Song Baby
ヤグルマギク

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2018年6月14日 (木)

ロック勢が目立つ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週のアルバムチャートはロック勢が目立つチャートとなりました。

まず2位にMAN WITH A MISSION「Chasing the Horizon」が獲得。約2年4ヶ月ぶりとなるアルバムで、2位はアルバムでは自己最高位となります。ただし初動売上7万枚は前作「The World's On Fire」の9万9千枚(3位)からダウン。売上的には右肩上がりの状況が続いていましたがここで一段落。残念ながら初動10万枚の大台突破はなりませんでした。

さらに4位にはエレファントカシマシ「Wake Up」が初登場。こちらは約2年7ヶ月ぶり23枚目となるアルバム。初動売上2万3千枚。直近作はベスト盤「All Time Best Album THE FIGHTING MAN」で、こちらの2万5千枚(3位)よりは若干のダウン。ただし、オリジナルアルバムとしては前作「RAINBOW」の初動1万3千枚(12位)から大きくアップし、オリジナルとしては「MASTERPIECE」以来2作ぶりのベスト10ヒット。さらに4位という順位はオリジナルとしては2009年にリリースした「昇れる太陽」の3位に次ぐ高順位となりました。

さらにさらに、8位にはKen Yokoyama,NAMBA69「Ken Yokoyama VS NAMBA69」がランクイン。こちらはご存じHi-STANDARDの横山健と、難波章浩のバンドNAMBA69によるスプリットCD。ハイスタ再結成もビックリしたのですが、横山健とNAMBA69がこうやって同じCDにおさまるというのも、かなり胸熱なのですが・・・。初動売上は1万6千枚。横山健のソロとしては、前作「Sentimental Trash」の2万1千枚(2位)よりダウン。一方、NAMBA69としては前作「HEROES」の2千枚(25位)から大幅アップ。NAMBA69としては初のベスト10ヒットとなりました。

さて、そんな感じでロック勢が目立ったチャートですが、上位に話を戻すと、まず1位を獲得したのはロック勢・・・ではなくEXILE系。三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「FUTURE」が獲得しています。オリジナルアルバムでありながらもメンバーの今市隆二、登坂広臣のソロ作がついており、最低3枚組(最高で7枚組1万1千円!)というファン泣かせなアルバムになっています。初動売上は18万1千枚。直近作のベスト盤「THE JSB WORLD」の35万6千枚(1位)からも、オリジナルアルバムとしては前作となる「THE JSB LEGACY」の47万6千枚(1位)からも大幅ダウンなのは、さすがにファンからぼったくろうとしすぎた結果か?

3位にはaiko「湿った夏の始まり」がランクイン。オリジナルアルバムとしては2010年の「BABY」より4作連続1位を獲得してきましたが、残念ながら本作は3位とダウン。初動売上4万7千枚も前作「May Dream」の6万8千枚からダウン。ここ数作、16万7千枚→13万5千枚→10万1千枚→8万2千枚→6万8千枚と続いた減少傾向に歯止めがかかりませんでした。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず5位に男性声優宮野真守「MAMORU MIYANO presents M&M THE BEST」がランクイン。歌手デビュー10周年を記念してリリースされたベストアルバム。初動売上2万2千枚は前作「THE LOVE」の1万8千枚(6位)からアップ。

6位初登場は鈴木愛理「Do me a favor」。昨年6月に解散したアイドルグループ℃-uteのメンバーによるソロデビュー作。初動売上1万8千枚を記録しています。

最後10位には松田聖子「Merry-go-round」がランクイン。デビュー以来、毎年必ず1枚はアルバムをリリースし続けた彼女の53枚目となるオリジナルアルバム。初動売上1万2千枚は前作「Diary」の1万枚(5位)からアップしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週に!

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2018年6月13日 (水)

話題の「愛国ソング」ネタもアルヨ!

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

とりえずはまず、どちらかというと悪い意味で話題のこちらの曲から。7位RADWIMPS「カタルシスト」。先週の20位からランクアップしベスト10入りしてきました。フジテレビ系「2018 FIFA WORLD CUPロシア大会」テーマソング。CD販売・ストリーミング・ダウンロード数(以下「実売数」)及びラジオオンエア数7位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数30位。オリコンでは初動売上2万6千枚で5位初登場。前作「Mountain Top」の1万1千枚(10位)からアップしています。

さて、話題になったのはこの曲ではなくシングルのカップリングだった「HINOMARU」という曲のこと。ちなみにHot100では27位にランクインしているのですが、愛国的な内容もさることながらも、歌詞が軍歌を彷彿とさせるような内容で物議をかもしています。この曲に関しては思うこともいろいろあり、私なりの感想をまとめてみましたが、ヒットチャートとは関係ないので、「続きはこちら」以降で。駄文ですが、興味がある方はどうぞ・・・。なお、同曲はTwitterでも相当話題になったのですが、Twitterつぶやき数は9位にとどまっています。どういう集計のやり方をしたかは不明なのですが、あれだけ話題になっても9位なんだ・・・。

さて1位に戻ります。今週1位はジャニーズ系。Sexy Zone「イノセントデイズ」が初登場でランクイン。日テレ系ドラマ「Missデビル 人事の悪魔・椿眞子」挿入歌。実売数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数がそれぞれ1位ながらもラジオオンエア数は圏外という結果に。オリコンでは初動売上14万8千枚で1位初登場。前作「ぎゅっと」の11万8千枚(1位)からアップしています。

2位はAKB48「Teacher Teacher」が先週の1位からワンランクダウンしてこの位置に。そして3位にはDA PUMP「U.S.A.」が先週の81位からランクアップしベスト10入りしています。3年半ぶりとなる新作はちょっとベタさも感じるユーロビートのナンバーですが、楽曲はタイトル通りのアメリカ讃歌。それもかなりベタベタな内容になっており、はっきりいって笑えますが、妙に耳に残るナンバーに。もともと人気コンピ盤「スーパー・ユーロビート」に収録されていた曲のカバーだそうですが、「ダサい」雰囲気が逆にうけている模様。RADWIMPSもこういうノリで日本讃歌を歌えば、誰も批判しなかったんでしょうけどね。実売数5位、ラジオオンエア数6位、PCによるCD読取数30位、Twitterつぶやき数及びYou Tube再生回数2位と、漏れなく上位にランクイン。オリコンでは初動1万2千枚の9位に留まっていますが、デジタルシングルチャートでは2位に入ってきており、配信中心のヒットになっています。初動売上は前作「New Position」の3千枚(11位)から大幅にアップ。彼らにとっては2004年の「胸焦がす...」以来、8作ぶりのベスト10ヒットとなっています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位に私立恵比寿中学「でかどんどん」が初登場でランクイン。実売数3位、PCによるCD読取数16位、Twitterつぶやき数17位を記録。最初のAメロが山本リンダの「どうにもとまらない」を彷彿とさせます。オリコンでは初動6万3千枚で3位初登場。前作「シンガロン・シンガロン」の7万1千枚(2位)からダウンしています。

初登場組最後。6位にキム・ヒョンジュン「Take my hand」がランクイン。韓国のアイドルグループSS501のリーダーでもある彼のソロシングル。実売数4位、Twitterつぶやき数10位を記録しています。歌い上げるようなスケール感あるスタジアムロック仕様のナンバー。オリコンでは初動売上4万4千枚で前作「風車 <re:wind>」の3万1千枚(3位)からダウンしています。

さてロングヒット組。米津玄師「Lemon」ですが、今週は先週から同順位の5位をキープ。実売数6位、PCによるCD読取数3位、You Tube再生回数1位もそれぞれ先週から同順位をキープしており、まだまだ強さを感じます。ただ「LOSER」のほうは今週は13位にダウン。残念ながらベスト10からダウンしています。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日に!

そんな訳で、RADWIMPS「HINOMARU」の話題は「続きを読む」のあとに。

続きを読む "話題の「愛国ソング」ネタもアルヨ!"

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2018年6月12日 (火)

とにかくポップで楽しい作品

Title:Dirty Computer
Musican:Janelle Monae

前作「The Electric Lady」が大きな話題となり各種メディアでも高い評価を受けたR&Bシンガー、ジャネール・モネイ。その後、映画「ムーンライド」や「ドリーム」などにも出演し、女優としても活躍をはじめた彼女。まさに今、もっとも勢いのある女性シンガーの一人といえる彼女ですが、そんな彼女の実に4年7ヶ月ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

その話題となった前作「The Electric Lady」は全体的に80年代風のポップが並ぶ中、ディスコやアーバンソウル、R&BやHIP HOPなど、様々なジャンルを取り入れた楽曲が並ぶのが非常に魅力的なアルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムでも比較的80年代の空気を感じられるエレクトロポップチューンが大きな魅力になっています。軽快でリズミカルなエレクトロポップチューンの「Take A Byte」やGrimesを迎えた「Pynk」はテクノテイストも強いエレクトロナンバー。「Make Me Feel」はファンキーなナンバーながらもどこかユーモラスなエレクトロアレンジが楽しいナンバーになっていますし、トライバルなリズムが印象的な「I Got The Juice」も魅力的です。

ちょっと雰囲気の変わったところではHIP HOPテイストにまとめた「Django Jane」なんて曲もあったり、またメロウなバラードチューン「Don't Judge Me」ではボーカリストとしての魅力を甘い歌声でこれでもかというほど聴かせてくれています。

そしてラストを飾る「Americans」は、80年代にMTVにPVがそのまま流れていても違和感のないような楽しいポップチューン。非常にハッピーな気分となりアルバムは幕を閉じます。

全体的なバリエーションとしては正直、前作の方が広かったような印象を受けました。ただ一方、全体的に前作以上にポップにまとめっており、純粋にワクワクするような楽しさを持った作品に。特に、そのポピュラリティーはどこかキュートな部分があわさっており、そういう意味でもアルバム全体としてかわいらしさを感じさせるアルバムに仕上がっていたと思います。

R&Bというジャンルにこだわらずとても楽しいアルバムで、ポップス好きならおそらく一発で楽しめるアルバムになっていたと思います。シンガーとしても女優としても積極的な活躍が目立つ彼女。これからのさらなる飛躍が楽しみになってくる1枚です。

評価:★★★★★

Janelle Monae 過去の作品
The Electric Lady


ほかに聴いたアルバム

World Wide Funk/Bootsy Collins

60年代から活躍を続けるP・ファンクの代表的なベーシスト、Bootsy Collins。御年66歳にしていまだに積極的な活動を続けていますが、今回の新作も「World Wide Funk」とある意味、あまりにひねりのないタイトルが逆にユニークさすら感じてしまいます。

サウンド的には今風のHIP HOP的な要素を入れつつも、基本的には昔から変わらないP・ファンクのスタイル。そういう意味では目新しさはない反面、純粋にファンキーなリズムを楽しむことが出来るアルバムに。とにかくファンクを聴いたという満足感を覚えるアルバムでした。

評価:★★★★

Bootsy Collins 過去の作品
THA FUNK CAPITAL OF THE WORLD

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2018年6月11日 (月)

知る人ぞ知る、実力派女性SSWへのトリビュート

Title:イズミカワソラトリビュートアルバム「タイムカプセル」

正直言うと、今回のトリビュートアルバムリリースに関しては少々ビックリしてしまいました。女性シンガーソングライター、イズミカワソラのデビュー20周年を記念したトリビュートアルバム。しかし、このイズミカワソラ、これとして「大ヒット」した曲もなく、知る人ぞ知る的なミュージシャンではないかと思います。ただ私個人的には、底抜けに楽しいポップチューンが気に入り、2ndアルバム「ヤッホー!」以来、ずっとその動向を追いかけていて秘かに応援していたミュージシャン。そんな彼女に対するトリビュートアルバムのリリースというのは正直言ってかなりの驚きでもあり、かつうれしくも感じられました。

そしてそのトリビュートアルバムへの参加ミュージシャンもなかなかな豪華な面子。今をときめくUNISON SQUARE GARDENやカーネーションの直枝政広、個人的にファンな花*花(ちょっと懐かしい!)やJungle Smileの吉田ゐさおが参加しているというのも私的にはうれしい面子だったりします。まあ、本人が2曲も参加しているほか、UNISON SQUARE GAREDNがバンド名義と斎藤宏介名義で2曲参加しているのは、参加メンバーの水増しなんじゃないかと秘かに思ったりもするんですが・・・(^^;;

さて、そんないろいろなミュージシャンによってカバーされたイズミカワソラの楽曲の数々、彼女の曲はとにかく明るくポップな楽曲が大きな特徴なわけですが、基本的にはそんな「ポップ」な部分をきちんと生かしたカバーが多く、大胆にリアレンジして「原曲はどこに?」的な、この手のトリビュートアルバムでよくありがちなカバーはありませんでした。

そんな明るいポップ路線で言えば、まさにUNISON SQUARE GARDENなんて、彼ら自身の方向性と一致しているわけで、彼らがカバーした「サイボーグ99%」などは完全に彼らの曲になっています。また 鈴木蘭々・鈴木秋則・河相我聞・フジイケンジ・松本祐一という豪華なメンバーが結集して「鈴木組」名義でカバーした「荒野のガンマン」も疾走感ある明るい、イズミカワソラのイメージそのままなカバーになっています。ただ軽快なピアノのリズムは、鈴木秋則がかつて参加していたSENTIMENTAL:BUSを彷彿とさせました。

ただ一方ではイズミカワソラのポップな面を生かしつつ、それぞれのミュージシャン独特の味付けをしたカバーも多く、イズミカワソラの楽曲の持つ意外な魅力を感じられたのもこのアルバムの大きな魅力でした。例えばH ZETTRIOの「あかね色」や花*花の「ロケットで」はジャジーな味付けがほどこされていましたし、Hiroshi Nakamura+MASSANの「message」な今風のエレクトロジャズなアレンジになっていたのがユニーク。

また吉田ゐさお&日之内エミ名義による「願い」はR&B風のカバーになっており、イズミカワソラの楽曲に意外とブラックミュージック的な要素が隠れていたことに気が付かされますし、また直枝政広の「此処から」もアコースティックギターによるシンプルなカバーが魅力的。こちらもイズミカワソラの楽曲の持つメロディーラインの良さがより際立ったカバーに仕上げています。

そんな訳で様々な側面からイズミカワソラの楽曲の魅力をしっかりと伝えているトリビュートアルバムになった本作。あらためて彼女のポップミュージシャンとしての実力を感じさせてくれる作品になっていたと思います。参加ミュージシャンのファンの方にはぜひとも聴いてほしい1枚ですし、それをきっかけで、是非イズミカワソラというミュージシャンも知ってほしいなぁ、と強く感じるアルバムでした。もちろん、イズミカワソラ本人のこれからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

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2018年6月10日 (日)

ルーツロック志向が文句なしにカッコいい!

Title:THIS IS THE BEST
Musician:THE BAWDIES

結成15周年、デビューから10周年を迎えるロックバンドTHE BAWDIESの初となるベストアルバム。私がTHE BAWDIESをはじめて聴いたのは2009年にリリースされたメジャーデビューアルバム「THIS IS MY STORY」。当時の宣伝文句が「日本発!ビートルズの再来!」とかなり強気な煽り文句を用いていて、正直、最初はかなり疑いの目を持って聴いてみたのですが、ルーツ志向のカッコイイロックンロールナンバーにいきなり大ハマリをしてしまいました・・・まあ「ビートルズの再来」というのは今でも言い過ぎだと思いますが(笑)。

今回のベストアルバムであらためて彼らの代表曲をまとめて聴いたのですが、やはりTHE BAWDIESはカッコいい!ということを再認識しました。本作は彼らの楽曲が発売順に2枚組のCDに収録されているのですが、特にカッコよかったのはインディーズ時代からデビュー直後の曲を収録したDisc1の楽曲。はっきりいってしまうと60年代あたりのルーツロックやソウルからの影響が非常に顕著・・・というよりもそのまんまな楽曲なのですが、彼らの敬愛するルーツロックやソウルを演奏するのがとにかく楽しくて仕方ないという気持ちが楽曲から強く伝わってきており、素直にロックンロールのカッコよさを体現化しているというのが大きな理由のように感じます。

また、これだけルーツロックそのままの曲を奏でつつ、さらに英語詞という不利な条件ながらも大ブレイクし、武道館まで埋めてしまえるという事実には驚かされます。ここ最近、HIP HOPが台頭し、ロックバンドが売れない、と言われていますが(日本では比較的ロックバンドの人気が高いものの)ルーツロックそのままな彼らがこれだけ売れるという事実を考えると、ロックバンドが売れないというのは、ただ単純にカッコいいロックバンドがいないだけなんじゃないか、と思ってしまいます。

ただ一方、比較的最近の楽曲を収録したDisc2についても確かにカッコいいです。ただ、カッコいいことはカッコいいのですが、薄々感じていたのですが、初期のナンバーの方がよりカッコよさを感じてしまいます。ただその理由は明確で、最近のナンバーの方が「マンネリ」から脱しようと、いろいろと新機軸を打ち出そうとしているから。それも新機軸として比較的、今時の音にアップデートしようと試みているから、のように感じます。

特に顕著だったのがリリース時も「新しいスタイル」ということで話題となった「THE SEVEN SEAS」あたりで、ギターの音が初期の彼らから大きく変化。比較的オルタナロックに近いような、最近の音に変化しています。また今回新曲「FEELIN' FREE」が収録されていますが、こちらも文句なしにカッコいいナンバーながらも、音的には60年代志向のルーツロックやソウルというよりもガレージロックに近いスタイル。これはこれで良いのですが、やはり少々新機軸をいろいろと模索しているように感じます。

確かにマンネリから逃れるために新機軸を開拓するという方向性は決して間違ってはいないと思うのですが、結果として今時の音にアップデートするという方向性は正直、彼らの良さを失わせているようにも感じられます。よくよく考えると、チャック・ベリーにしてもボ・ディドリーにしても長く活動していたロックンロールの大御所たちはいずれも最後まで同じスタイルを貫きつつもカッコよさを保っていました。そう考えると彼らも無理に新機軸を模索する必要性もないのでは?と思ってしまいます。また新たなスタイルを模索するにしても、もっとロックンロールのルーツ的な部分やソウル、ファンクなど60年代や70年代的なサウンドから新しい鉱脈を発掘したほうが、より彼らの良さを生かせるようにも感じます。そういう意味でも今の彼らの方向性が今後どのように展開していくか、ちょっと気になってしまった部分でした。

ちなみに今回、初回盤ということで彼らのPVを収録したDVDも見たのですが、彼らのPVって、非常に凝ったPVが多く、こちらも必見。昨今、費用節約のためか演奏風景をそのまま撮ってお終いというPVも少なくない中での彼らのこだわりを感じます。今回のDVD、ボーカルROYをMCとして「テレビ番組」のような形式で構成されているのも、単なるPVをつなげたDVDにしたくないというこだわりを感じます。ただ、途中から展開されるメンバーが奇怪なキャラクターに扮して行われるコント仕立ての展開は、どうなんだろう・・・と思ってしまうのですが・・・。

評価:★★★★★

THE BAWDIES 過去の作品
THIS IS MY STORY
THERE'S NO TURNING BACK
LIVE THE LIFE I LOVE
1-2-3
GOING BACK HOME
Boys!
「Boys!」TOUR 2014-2015 –FINAL- at 日本武道館
NEW


ほかに聴いたアルバム

サクラ/前野健太

途中、CDブックスタイルでの作品「今の時代がいちばんいいよ」のリリースはあったものの、純然たるオリジナルアルバムとしては実に4年半ぶりとなる新作。基本的にはフォークをメインに、ジャズ、ソウル、歌謡曲的要素を飲み込んだような聴かせるポップソングに、都市の日常風景を描いた歌詞が印象的なアルバム。非常によく出来たポップアルバムという印象で、完成度の高い楽曲が並んでいますが、その分、「通受け」というか、少々地味で個人的には真面目すぎるかな、という印象を受けました。高い評価を受けるのはよくわかるのですが・・・。

評価:★★★★

前野健太 過去の作品
オレらは肉の歩く朝
ハッピーランチ
LIVE with SOAPLANDERS 2013~2014
今の時代がいちばんいいよ

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2018年6月 9日 (土)

あれから30年も

渡辺美里 ribbon power neo

会場 Zepp Nagoya 日時 2018年6月1日(金) 19:00~

1988年にリリースされ、渡辺美里の代表作のひとつであり、かつ80年代のポップアルバムの代表的な作品のひとつとも言われる「ribbon」。今年はリリースから30周年ということで、先日、「30th Anniversary Edition」がリリース。さらには今回、アルバム収録曲をすべて聴くことができるライブツアーが東名阪で行われました。かなり魅力的なライブイベントだったのですが、前売でチケット代が1万円という高額(!)。そのため迷ったのですが、貴重なライブ・・・ということで足を運ぶことにしました。

Misato_ribbon

会場のZepp Nagoyaは今回は椅子席でのライブ。客層は・・・やはり高い(^^;;やはりリアルタイムで「ribbon」を聴いた世代なのか、正直、いつもの美里ライブの客層よりもさらに平均年齢が高かったような気がします・・・アラフォーの自分が一番若い世代なくらいで。

ライブは開演時間通りの19時ほぼピッタリにスタート。最初はステージ後ろのスクリーンに「ribbon-30th Anniversary Edition-」初回盤特典のDVDにも入っていた、本人出演のUCCコーヒーのCMからスタートします。そしてまずはこの日の司会、@FMパーソナリティーの川本えこが登場し、挨拶。そしてバンドメンバー紹介があった後、ついに渡辺美里本人が登場です。

この日のライブ、セットリストは「ribbon」の曲を曲順に並べただけというシンプルなもの。その間に、司会の川本えこと、さらにこの日のゲスト、山口智充の3人でトークするというスタイルでライブは進んでいきます。

まずは「センチメンタル・カンガルー」「恋したっていいじゃない」と「ribbon」の曲順ということもあり、いきなりライブで一番盛り上がるナンバーからスタート。正直、この日一番盛り上がったかも。アルバムの曲順通りですから仕方ないんですけどね。

2曲終わったら次はトークへ。ステージの端にソファーが用意されており、川本えこの司会のもと、トークを進めるというスタイルでした。最初はまずは山口智充が名古屋で持っているレギュラー番組「ぐっさん家」の話。渡辺美里もよくゲストに出てくるそうですが、個人的にも過去に何度か見たことあったのですが、まだ続いてたんだ、この番組・・・。その後は冒頭で流れたCMの話に。階段を駆け上るシーンがあるのですが、まだ若かったためか、疲れたという記憶がないというエピソードや、階段を駆け上がる時に音が出るようにタップダンサーが履くような鋲がうたれた靴を履いていたというエピソードを語ってくれました。

その後は「さくらの花の咲くころに」「Believe」「シャララ」と3曲。「さくらの花の咲くころに」と「Believe」は名曲中の名曲ながらもライブ映えしないためか、あまりライブでやらない曲だけに生で聴けたのはとてもうれしかったです。逆に「シャララ」はライブでもおなじみのナンバーで、この日も盛り上がっていました。

その後は再びトークに。まず映し出された東京ドーム仕様の野球盤から、ぐっさんがまずは野球盤について熱く語ります。ただ、その後は1989年に行われた東京ドームでのライブの映像が流れます。また、この頃のグッズとしてラジカセの写真が映し出され、懐かしいトークで盛り上がったり、また当時のオリコンチャートが映し出され、「ribbon」が19万枚を売り上げて、2位以下を圧倒しての1位だった事実が語られました。(同日にラウドネスのアルバムがランクインしており、むしろそちらの話題で盛りあがったりもしていましたが・・・)

そして再び曲へ。「19歳の秘かな欲望」「彼女の彼」と曲順通りに続きます。特に「彼女の彼」は知る人ぞ知る的な隠れた名曲でライブでもめったに歌われないだけに、こういう機会だからこそ聴ける貴重なステージでした。

続いてのトークではゲスト(?)としてバンドマスターである本間昭光(ポルノグラフィティなどの曲を手掛けていることでも有名な方ですね)が登場し、4人でのトークに。「ribbon」は当時の最先端の機材を用いて曲をつくっていたエピソードを語ってくれたほか、その上で今回のライブでは「今の音」も取り入れているという話もしてくれました。

そしてライブは終盤戦へ。「ぼくでなくっちゃ」「Tokyo Calling」と続きます。特に「Tokyo Calling」はおそらく「ribbon」の中でももっとも知名度が低いナンバーで、私もライブで聴くのはこれがはじめて。こういう曲が聴けるのはこの手のライブならではです。

ステージ中央でまた3人で簡単なトークを繰り広げた後、さらにお待ちかねの「悲しいね」へ。力強く歌われる悲しげなメロディーラインをしんみりと聴き入ります。そして本編ラストは「10years」へ。こちらはライブでもおなじみのナンバーなのですが、この日のライブのラストを飾るにもふさわしいナンバー。とりあえずライブは幕を下ろします。

もちろんその後は盛大なアンコールが起こり、バンドメンバーと渡辺美里本人は再びステージへ。ラストは「ribbon」がリリースされた年にリリースしながらアルバム未収録曲だった「君の弱さ」へ。アルバム未収録曲だったためか、本人曰く「隠れた名曲」。もちろんこの時期の彼女らしい前向きで元気が出るような名曲で、この日の会場も盛り上がり、ライブは幕を下ろしました。

約2時間程度のステージ。歌った曲は「ribbon」収録の11曲+1曲だったので、数は少な目。その合間のトークで盛り上がり、全体的には「ライブ」というよりも「ショー」といったイメージのステージだったように感じます。

ただ「ribbon」の曲は名曲揃いですし、この日はじめて聴くような隠れた名曲も多く聴くことが出来、個人的には非常に満足度の高いステージでした。トークはもうちょっと「ribbon」制作時のエピソードを聴けるか、と思ったのですが、そういう話はほとんどなかったのはちょっと残念でしたが、もともと仲の良かった渡辺美里と山口智充のトークは息もあっており、間違いなく楽しめる内容だったと思います。

ステージ自体はアラフィフになっても全く衰えないパワフルな渡辺美里のボーカルを聴くことが出来、また、アレンジ自体は基本的に原曲準拠。ただ、途中のトークでバンマスの本間昭光も語っていたように、微妙に今風の音にアップデートしており、そういう意味では元の曲の良さもあるのでしょうが、全く「古さ」を感じさせないステージ。30年前のアルバムの再現ながらも、しっかりと「現役感」のあるステージになっていたと思います。

まあ正直言って、素晴らしいライブではあったのですが、やはり1万円はちょっと高い・・・と思いつつも、久しぶりに聴いたみさっちゃんの唄声と名曲の数々に満足しつつ帰路につきました。また、この手のイベントがあったら行きたいなぁ。次は「tokyo」?「Lucky」??

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2018年6月 8日 (金)

クリアボイスと独特の世界観で20年

Title:EVOLVE to LOVE-20 years Anniversary BEST-
Musician:KOKIA

その澄み切ったクリアボイスとストリングスやピアノをふんだんに取り入れたファンタジックなアレンジで独特の世界観をつくりあげているKOKIA。そんな彼女も1998年のデビュー以来、早くも20年。その節目となる年に、初となるオールタイムベストをリリースしました。

20年間、出産の時期以外はほぼ休むことなく活動を続けてきた彼女。ただ、ぶっちゃけた話、20年間、大きなヒットにはあまり恵まれませんでした。一時期、ポップ寄りにシフトし「ミュージックステーション」にも出演したりして、2003年にリリースされた「The Power of Smile」はオリコン最高位15位を記録。直後にリリースされたアルバム「Remember me」も最高位15位を記録しましたがオリコンの順位的にはここがピーク。その後の作品はランキング上位にあがってくることはありません。

ただ、そんな状況にも関わらず楽曲のタイアップは途切れることはなく、さらには海外にも進出し、一定の人気を博しました。それが楽曲のヒット状況にも関わらずまた20年間、ほぼ休むことなく活動を続けられた大きな理由でしょうし、また彼女にこれだけのタイアップオファーが相次いだのも、彼女の人を惹きつける澄んだボーカルと、ファンタジックな独自の世界観が大きな魅力だったのでしょう。

今回、全4枚組というボリューミーな内容となったオールタイムベスト。20年という彼女の活動歴の長さを物語っているようです。そのうちDisc1、2は「SINGLE COLLECTION」として彼女の過去のシングル曲が発売順に並んでいます。一方Disc3、4は「KOKIA SELECTION」として彼女が選んだ曲がこちらも発売順に並んでおり、KOKIAの代表曲が網羅された内容となっています。

まず彼女の活動の歩みという観点から興味深いのは「SINGLE COLLECTION」。彼女の20年の歩みがそのまま反映されているのですが、ファンタジックな世界観や澄んだ彼女の声を生かした曲という点では共通しているものの、時期によっていろいろなタイプの曲が混ざっています。上にも書いた通り、20年間、大きなブレイクがなかった彼女でしたが、それだけに音楽的な方向性を模索した後が強く見受けられました。

デビューシングル「愛しているから」「Tears in Love」はAOR的なアレンジで90年代初頭のアイドルポップ的な雰囲気を彷彿とさせる楽曲にデビュー直後の彼女がアイドル的な方向性も模索していたことを感じさせます。ただ、私の記憶によれば、なのですがこれらの曲がリリースされた1998年当時でも、このサウンドは少々時代遅れだったような気が・・・。

その後、ファンタジックな世界観へとシフトしていくのですが、また雰囲気が変わるのが2002年リリースの「人間ってそんなものね」あたりから。バンドサウンドを積極的に取り入れて、良くも悪くもサウンド的に聴きやすい方向性にシフトします。さらに決定的だったのが上にも書いた彼女の最大のヒット曲「The Power of Smile」。インパクトあるメロディーラインに明らかに「売れる」ことへの強い意識を感じさせます。さらにアテネオリンピック日本選手団公式応援歌にもなった2004年の「夢がチカラ」になると前向きな歌詞も含めて、完全に「J-POP王道系」的な作品に。さすがにここらへんになるとKOKIAらしさが薄くなってしまい、当時でも違和感を覚えた印象があります。

残念ながら大ブレイクには結びつかなかったためか、その後はまたファンタジックな路線に回帰していきます。ただ「KARMA」のようにアジアンテイストでエキゾチックさを醸し出したサウンドを入れてきたり、「Fate」のようにオーケストラアレンジで大胆なアレンジを加えてきたり、彼女のボーカルを生かした独自性を感じつつも、全体的には少々仰々しい感じも。一方では「光の方へ」のようにピアノでしんみりと聴かせるバラードナンバーなどもあったりして、かなりその方向性に苦心した跡が見受けられます。

ただ直近の「Battle of destiny」「記憶の光」ではファンタジックな作風の中でポピュラリティーも入っており、良くも悪くも落ち着いた感じの楽曲に仕上がっています。そういう意味ではとりあえずはひとつの方向性は見つけ出しつつあるのでしょうか。とはいえ、これらのシングルもすでに5年前の曲なのですが・・・。

一方で「KOKIA SELECTION」の方は大胆なアレンジのファンタジックな曲からピアノやアコギ、ストリングスでしんみりと聴かせる曲まで、全体的に幻想的な世界観が統一されており、アレンジの雰囲気こそ異なるものの、「SINGLE COLLECTION」に比べると統一感がある内容になっていました。そういう意味ではシングルで方向性を模索している反面、アルバム曲などで見せた彼女のコアな部分はデビュー以来、一貫していた、といえるのかもしれません。

全4枚組、さらにはかなり仰々しいアレンジの曲も少なくないことから、正直言うと、少々おなか一杯になったベスト盤でしたが、KOKIAの歩みをしっかりと知ることができ、かつ彼女の魅力もしっかりと感じられることが出来るアルバムになっていました。彼女の魅力的なボーカルと独特の世界観がある限り、まだまだ彼女の活躍は続きそうですね。そろそろ大きなシングルヒットが欲しいころではあるのですが・・・。

評価:★★★★★

KOKIA 過去の作品
The VOICE
KOKIA∞AKIKO~balance~
Coquillage~The Best Collection II~
REAL WORLD
Musique a la Carte
moment
pieces
心ばかり
Where to go my love?
I Found You

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2018年6月 7日 (木)

男性アイドル陣が上位に

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週は男性アイドル勢が上位を独占しています。

まず1位を獲得したのはジャニーズ系。関ジャニ∞「GR8EST」が1位を獲得です。タイトル通りのベストアルバムで、彼らのベストアルバムは2012年にリリースした「8EST」以来となります。初動売上は30万5千枚。直近のオリジナルアルバム「ジャム」の32万7千枚(1位)よりダウン。ただし、ベスト盤としての前作「8EST」の初動29万8千枚(1位)を上回る結果となっています。

2位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「WE MAKE YOU」が獲得。初動売上は12万7千枚。直近作の「DIRECTOR'S CUT」の2万1千枚(2位)を大きく上回る結果となっています。

3位にはBTS(防弾少年団)「LOVE YOURSELF 轉 'Tear'」が先週から同順位をキープ。2週連続ベスト3入りとなっています。

続いて4位以下の初登場盤です。4位初登場はKnights「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ Knights」がランクイン。女性向け男性アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!」からのキャラクターソング。初動売上は4万6千枚。同シリーズの前作「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ Ra*bits」の1万4千枚(6位)から大きくアップしています。

5位には氷川きよし「新・演歌名曲コレクション7-勝負の花道-」がランクインです。演歌の名曲のカバーと彼のオリジナルが収録された「名曲コレクション」シリーズの最新作。初動売上2万2千枚は前作「新・演歌名曲コレクション6 -碧し-」の2万1千枚(5位)から微増です。

6位初登場はソロデビュー10年目を迎えるタレント上地雄輔のミュージシャン名義、遊助「あの・・こっからが山場なんですケド。」がランクイン。相変わらず癇に障るタイトルです。初動売上1万枚は前作「あの・・いま脂のってるんですケド。」(3位)から横バイ。

7位には、こちらも韓国の男性アイドルグループSHINeeの韓国盤アルバム「The Story Of Light' EP.1:SHINee Vol.6」がランクイン。初動売上7千枚。直近作はベスト盤「SHINee THE BEST FROM NOW ON」でしたが、こちらの8万9千枚(1位)からはさすがに大きくダウンしています。

今週の初登場盤は以上ですが、今週はもう1枚、ベスト10圏外からランクアップしベスト10入りした曲がありました。それが今週10位にランクインした西城秀樹「GOLDEN☆BEST deluxe 西城秀樹」。先日、惜しまれつつこの世を去った西城秀樹のヒット曲を網羅した3枚組のベスト盤。逝去のニュースに応じて売上を大幅に伸ばし、一気にベスト10入りしてきました。彼への根強い人気を感じさせます。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年6月 6日 (水)

また投票券付CDが1位

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

また例の投票券付CDが1位獲得です。

今週1位はAKB48「Teacher,Teacher」が1位獲得。また例のAKB48総選挙の投票券付CDで、CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位、ラジオオンエア数5位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数16位を獲得しています。ここ最近、右肩下がりの傾向が続いていたのですが、オリコンでは初動売上166万6千枚を記録。前作「ジャーバージャ」の111万5千枚(1位)からアップしているほか、昨年の投票券付CDの「願いごとの持ち腐れ」の130万5千枚(1位)からも大幅アップしています。正直言って、このAKB48総選挙自体、お茶の間レベルではほとんど話題にならなくなった中、なぜCD売上が急上昇したのかはかなり疑問なんですが・・・。

2位初登場は宇多田ヒカル「初恋」。TBS系ドラマ「花のち晴れ~花男 Next Season~」イメージソング。配信限定のシングル。ストリングスやピアノを入れて優雅な雰囲気でハイトーン気味のボーカルを聴かせるナンバー。実売数2位、ラジオオンエア数6位、Twitterつぶやき数34位、You Tube再生回数18位を記録し、見事ベスト3入りとなりました。

3位はV6「Crazy Rays」が初登場でランクイン。テレビ朝日系ドラマ「特捜9」主題歌。実売数3位、ラジオオンエア数21位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数37位を記録。オリコンでは初動売上8万1千枚で初登場2位。前作「COLORS」の8万7千枚(1位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場ですが、まず6位に男性アイドルグループDa-iCE「FAKESHOW」が初登場でランクインしています。実売数は4位を記録したもののラジオオンエア数15位、PCによるCD読取数61位、Twitterつぶやき数18位という結果となり、総合ランクではこの順位に。オリコンでは初動4万4千枚で3位初登場。前作「TOKYO MERRY GO ROUND」の4万8千枚(2位)からダウン。

7位には高橋優「プライド」が先週の27位からCDリリースにあわせて大きくランクアップしています。Eテレアニメ「メジャーセカンド」エンディングテーマ。実売数7位、ラジオンエア数2位、PCによる高橋優らしい、よくも悪くも熱量のある前向きソングになっています。オリコンでは初動1万7千枚で7位初登場。前作「ルボルタージュ」の1万3千枚(6位)よりアップしています。

さて、ロングヒット組ですが、今週もまた米津玄師の活躍が目立ちます。まず「Lemon」ですが、今週は先週の4位からワンランクダウンの5位。ラジオオンエア数86位、Twitterつぶやき数17位にとどまっていますが、実売数はまだ6位をキープ。さらにPCによるCD読取数は3位、さらにはYou Tube再生回数は先週の2位から見事1位に返り咲き。まだまだ強さを感じます。そして「LOSER」は先週の6位から9位にダウン。ただこちらも実売数9位のほか、You Tube再生回数も3位をキープしており、まだまだ強さを感じさせます。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年6月 5日 (火)

突き抜けたポップチューンが魅力

Title:MODE MOOD MODE
Musician:UNISON SQUARE GARDEN

底抜けにポップなメロディーラインで人気上昇中のギターポップバンドUNISON SQUARE GARDEN。飛びぬけてキャッチーなメロディーラインが強いインパクトを持つ彼らですが、それだけに数多くのタイアップを確保して、その知名度も急上昇中です。そしてそんな彼らの新作は、彼らの今の状況を反映させた勢いのあるポップチューンが並んだアルバムとなりました。

もともと彼らはあくまでも「ポップバンド」でありルーツレスなJ-POP的な色合いが濃く、「ロックバンド」としては物足りなさを感じる点が多いバンドでしたが、今回のアルバムではそんな「ロック」に挑戦するかのようなヘヴィーなバンドサウンドの曲がまずは目立ちます。冒頭を飾る「Own Civilization」などまさにダイナミックなギターリフが展開されるロックテイストの強いナンバーですし、「MIDNIGHT JUNGLE」もヘヴィーなギターサウンドが耳につくナンバー。ロックという側面が強い印象を残します。

ただ、このロックな方向性はアルバムの中ではあくまでも余興的な感じ。今回のアルバム、むしろいままでのアルバム以上に突き抜けてポップなメロディーラインの安定感が増したように感じます。ドラマ主題歌となった「Silent Libre Mirage」などのメロディーのインパクトの強さや、「フィクションフリーククライシス」のようにファンキーなAメロから展開していくポップなサビのインパクトなど、完全にUNISON SQUARE GARDENとして求められるメロディーを余裕にこなしていく姿がここには感じられます。

前作「Dr.Izzy」でもある種の余裕を感じられ、ポップバンドとして一皮むけたように感じた彼らでしたが、今回のアルバムではその余裕が楽曲に良いように反映されたように感じます。基本的に疾走感あるギターロックが多く、楽曲のインパクトとしてリズムの勢いに頼っている部分もあるのですが、「夢が覚めたら(at that river)」のようにミディアムチューンでもそのメロディーの良さをしっかりと発揮しており、メロディーメイカーとしての成長は確実に感じさせてくれます。

ラストの「君の瞳に恋してない」もスカ調のリズムで軽快に締めくくり。おなじみカバーの大定番「君の瞳に恋してる」のパロディー調のタイトルも非常にユニークで、このタイトル自体にもインパクトを感じます。歌詞にもユーモアセンスを感じる彼ららしい締めくくりといえるでしょう。

斎藤宏介のボーカルはハイトーンでインパクトはあるものの、悪く言えば「キンキン声」なだけに好き嫌いがわかれそうですが、今回の作品ではそのハイトーンボーカルも上手くメロディーラインにマッチさせており、ほとんど気になりません。そういう意味でもしっかりUNISON SQUARE GARDENとしてどのようなポップチューンが似合っているのか、バンドとしてしっかりと認識してきた、と言えるのかもしれません。

よく勢いのあるミュージシャンは、その勢いの頂点だからこそ作れるような傑作アルバムをリリースしてくるのですが、本作はおそらく彼らにとってそんな1枚だったように思います。今後、このアルバムの勢いをどれだけ維持できるかに、これからの彼らの行く末がかかってきそう。次回作がどうなるか、いろいろな意味で楽しみです。

評価:★★★★★

UNISON SQUARE GARDEN 過去の作品
CIDER ROAD
Catcher In The Sky
DUGOUT ACCIDENT
Dr.Izzy


ほかに聴いたアルバム

PERMAFROST/スーパーカー

90年代から2000年代にかけて一世を風靡したギターロックバンド、スーパーカー。デビュー時はシューゲイザーサウンド直系のホワイトノイズを存分に聴かせた楽曲が評判を呼び、さらに2000年に「Futurama」からは、当時としてはまだギターロックバンドが取り入れるのが珍しかったエレクトロサウンドを積極的に取り入れて、大きな驚きを与えました。

本作はそんな彼らがデビュー20周年を記念してリリースしたオールタイムベスト。ノイジーなギターサウンドやドリーミーなエレクトロサウンドは20年近くたった今でも魅力的。逆に言えば音楽シーンの中で音楽的に今に至るまでそれほど大きな変革がない点も気にかかるのですが・・・ただ、ドラムの使い方などはやはり今聴くとちょっと時代を感じられるのも事実。そういう意味では音楽的にも少しづつですが進歩しているんでしょうが。

むしろ20年近くたった今聴くと、メロディーラインの良さが再認識させられます。強いインパクトはなく、比較的淡々と展開していくのですが、妙に耳に残る強度のあるメロディーラインが魅力的。リアルタイムでももちろん彼らのメロディーも評価されていたのですが、それよりもむしろサウンド面に注目のいくことが多かった彼らですが、今聴くと、メロディーに大きな魅力を持っていたんだな、ということに気が付かされましたベスト盤でした。

評価:★★★★★

スーパーカー 過去の作品
RE:SUPERCAR 1
RE:SUPERCAR 2

PEACHTREE/遊佐未森

遊佐未森デビュー30周年を記念してリリースされたベストアルバム。正直、5年前の25周年の時もベスト盤をリリースしており、さらに2010年にもシングル集をリリースしているなど、少々ベスト盤リリース過多な感じがするのですが、今回は「ターニングポイントになった曲」をテーマに選曲した企画盤的な要素も強いアルバムに。そのため、ほとんどが2000年代以降の曲になっており、「瞳水晶」や「地図をください」など初期の代表曲は収録されていません。

ただ、彼女の大きな魅力である幻想的なボーカルとサウンドは時代を経ても全く色あせておらず、1997年の「タペストリー」や1988年の「川」がここ最近の曲と並んでも、まったく違和感がありません。エバーグリーンという表現がピッタリな、時代性に左右されない彼女の曲の魅力がはっきりとわかるベスト盤でした。

ちなみに最後には彼女が手掛けた「国立市立国立第八小学校校歌」が収録。こちら、校歌ですが、遊佐未森らしい優しいメロディーラインが魅力的で、校歌にありがちな似たようなメロディーで覚えにくい感じがほとんどありません。母校の校歌がこういう曲なのはうらやましいな・・・。

評価:★★★★★

遊佐未森 過去の作品
銀河手帖
Do-Re-Mimo~the singles collection~
淡雪
VIOLETTA THE BEST OF 25 YEARS
せせらぎ

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2018年6月 4日 (月)

Eテレの子供向き番組のサントラだが

Title:デザインあ 2
Musician:Cornelius

Eテレで毎週土曜日に放送されているデザインをテーマとした子供向き番組「デザインあ」。放送自体も非常に高い評価を得ている番組のようですが、そんな中でも音楽をあのCorneliusが手掛けているという点でも大きな話題となっています。以前、この「デザインあ」で使用された曲をあつめたサントラ盤がリリースされましたが、前作から約5年2ヶ月。サントラ盤の第2弾がリリースされました。

全31曲。トラックは1曲あたり長くて2分、短いジングルだと10秒に満たない曲も収録されています。そんないかにも「サントラ盤」的な内容の本作ですが、そんな楽曲がいずれも、実にCorneliusらしさがはっきりと出た、彼の魅力がしっかりつまった作品に仕上がっていました。

「あ」という言葉をモチーフに、シンプルで最小限の音数のみで表現された美しいエレクトロサウンドやピアノの音色が耳を惹く作品。1曲1曲が非常に作り込まれたソリッドな音色に仕上がっており、例えば時計のリズムを入れてきたり、木琴の音色を入れてきたり、1曲1曲にしっかりと彼なりのアイディアを詰め込んできており、聴かせる作品にまとめてきています。

そんな中でも今回のサントラで光ったのが数多くのゲストが参加した歌モノの曲たち。青葉市子や原田郁子、ハナレグミ、坂本真綾など、比較的Cornelius近辺ではおなじみのミュージシャンたちなのですが、それだけに個々のミュージシャンの個性をしっかりと生かしたポップソングが並んでいました。

例えば青葉市子の「てざわりうた」は彼のウィスパー気味のボーカルを生かしたアコースティックなサウンドが耳に残りますし、「せん」も原田郁子の個性的なボーカルを生かしたちょっと幻想的な作風が特徴的。ハナレグミがボーカルを取る「つなげる」もアコースティックなサウンドで彼のボーカルの優しさをしっかりと生かした作品になっています。

さらにカッコよかったのがKAKATOと環ROY×鎮座DOPENESSが参加した「めでたい-だるま」。だるまの由来を綴ったユニークなラップチューンなのですが、エッジの利いたトラックにカッコよさを感じさせる楽曲でした。そして坂本真綾の「ともるひかる」もピアノでゆっくりと聴かせるとても暖かみを感じる楽曲。こちらも坂本真綾のボーカルをしっかりと生かした楽曲に仕上げています。

子供向け番組のサントラということで侮ることなかれ。番組がなくても曲単体で成り立つような楽曲ばかりですし、Corneliusの新作と言ってしまっても全く遜色ない傑作アルバムだったと思います。サントラということでチェックしないのはあまりにも残念な1枚です。

評価:★★★★★

cornelius 過去の作品
CM3
FANTASMA
「NHKデザインあ」
CM4
攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.music by Cornelius
Mellow Waves


ほかに聴いたアルバム

No.0/BUCK-TICK

デビュー30周年を迎えたベテランバンドBUCK-TICKの21枚目となるアルバム。今回のアルバムは全体的に打ち込みのサウンドが主軸となっているアルバム。そういう意味では基本的に前作「アトム 未来派 No.9」の延長線上にあるようなアルバムですが、その前作と同様に、ベテランらしい安定感がありつつも一方ではまさかの勢いすら感じさせるアルバムになっており、デビュー30年を迎え、いまだに進化を続ける彼らの姿を感じさせます。前作までの出来ではなかったものの、今回も文句なしの傑作アルバム。この進化はある意味驚きです。

評価:★★★★★

BUCK-TICK 過去の作品
memento mori
RAZZLE DAZZLE
夢見る宇宙
或るいはアナーキー
アトム 未来派 No.9
CATALOGUE 1987-2016

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2018年6月 3日 (日)

よりJ-POP色は強くなったけど

Title:旅に出る準備
Musician:Czecho No Republic

約1年8ヶ月ぶりのニューアルバムとなるCzecho No Republicの新作。前作「DREAMS」では、メロディーラインのインパクトもグッと増した爽快なポップチューンが大きな魅力となった作品になっていましたが、今回のニューアルバムはその前作以上にポピュラリティーの増したアルバムに仕上がっていました。

まずやはり彼らのポップチューンの最大の特徴かつ大きな魅力は武井優心とタカハシマイという男女のツインボーカル体制を、本作では実にうまく利用している点ではないでしょうか。トランシーなシンセが心地よいダンスチューン「テレパシー」をはじめ、80年代のシンセポップの雰囲気が爽快な「ザナドゥ」、ハイテンポで爽快なギターロックチューン「チキンレース」、シティポップ風の「シュガーボーイ」など、バリエーションあるポップチューンの中で男女デゥオを実に効果的に用いてきています。

またそんな中でも話題となったのが「タイムトラベリング」で、こちらはSKY-HIがゲストとしてラップを披露するナンバー。こちらも男女2人のデゥオが実に爽快なギターロックナンバー。SKY-HIのラップも、しっかりと目立ちつつも、ポップなメロディーラインの中にほどよいバランスの「調味料」的な役割に徹しているのも特徴的でした。

「愛を」みたいなタカハシマイが主導を取っているナンバーや、逆に「Spring」のような武井優心がメインとなるようなナンバーでも、それぞれお互いが上手くコーラスを取っており、こここらへんのバランス感覚も絶妙。実に効果的なポップチューンに仕上がっています。

楽曲的にはシンセのサウンドを多用しつつ、80年代や90年代的なテイストを色濃くいれたポップチューンが印象的。前作よりも洋楽テイストはちょっと薄れ、J-POPな色合いが濃くなったように思うのですが、ただそこはベタな感じに陥っていないのは、しっかりとした音楽的な素養が支えているからでしょうか。前作以上に良い意味でインパクトが増したアルバムに仕上がっていました。

前作が一皮むけたようなアルバムに感じたのですが、今回の作品はその印象が間違いではなかったことを確信できた作品。そういう意味ではいつブレイクしてもおかしくないバンドだとは思うのですが・・・これからの活躍が楽しみです。

評価:★★★★★

Czecho No Republic 過去の作品
MANTLE
Santa Fe
DREAMS


ほかに聴いたアルバム

分離派の夏/小袋成彬

宇多田ヒカルプロデュースということで大きな話題となった小袋成彬(「おぶくろ」と呼ぶらしいです)のデビュー作。楽曲的にはFrank OceanやD'Angeloの「Black Messiah」以降の、今時のR&B路線といった感じ。ハイトーンボイスとシンプルな打ち込みメインのサウンドが印象的な作風になっています。パッと聴いた感じは、確かに歌声を含めて強いインパクトを受けますし、特に宇多田ヒカルに相当ダメ出しされたという歌詞は、そぎ落とされ、かつ楽曲のリズムともマッチする言葉の選択はさすがと感じさせます。ただ一方、サウンド面はFrank OceanやD'Angeloに比べるとムダな音が多く、整理が出来ていない感を覚えますし、なによりも似たような曲が多く、最後は飽きが来てしまうあたり、正直言って、メロディーラインに若干物足りなさを感じます。さらに意味不明なのは1曲目6曲目に入っていた語り。いわば小袋成彬について第三者が語るスタイルなのですが、無駄に理屈っぽすぎて全く共感を覚えず、はっきりいってアルバムの流れの中で邪魔なだけでした。

正直言って、宇多田ヒカルプロデュースという話題性で無理に持ち上げようとしているハイプ的な部分を感じる一方で、上で感じた不満点の多くがプロデュースワークで改善できそうな部分も多く、そういう意味では宇多田ヒカルのプロデューサーとしての能力にちょっと疑問を感じてしまう部分も・・・。特に宇多田ヒカルをフューチャーしたデビューシングル「Lonely One」はサウンド面を含めて出来がよかっただけに(宇多田ヒカルのボーカルに依る部分も大きいものの)、もうちょっとなんとかならなかったのか、とも感じさせます。とりあえず次のアルバムに期待、とは思える程度の才は感じられたのですが・・・現状は「ハイプ」という言葉が先行してしまうようなアルバムでした。

評価:★★★

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2018年6月 2日 (土)

いつものせっちゃん節だが・・・

Title:Toys Blood Music
Musician:斉藤和義

今年デビュー25周年を迎えたせっちゃんの約2年半ぶりとなるニューアルバム。ここ数年、すっかり人気ミュージシャンの仲間入りを果たした彼ですが、今回のアルバムではなんとオリコンアルバムチャートで1位を獲得。シングル、アルバム通じて自身のキャリア初の1位獲得となりました。

今回のアルバムも相変わらずのせっちゃん節ともいえる安定したクオリティーのポップミュージックを聴くことが出来ます。特に歌詞が印象的な曲が多く、自分の今の姿に不満を感じる人たちを歌った「マディウォーター」はアラフィフ世代の心の叫びを歌った歌詞が、10歳程度年下の私にとっても心に響いてきますし、現在の世の中を皮肉的に歌う「オモチャの国」もユニークに感じます。

ただ一方で「いつも最後にはどうにかなるさ」と歌う「青空ばかり」や心配事を「問題ない」と言い切る、そのまんまなタイトル「問題ない」のような、ある意味アラフィフ世代らしい吹っ切れた感じもする前向きソングもユニークで彼らしい応援歌を聴かせてくれますし、またギターアルペジオで切なく聴かせるラブソング「世界中の海の水」は逆に世代を超えた恋心をストレートに感じるナンバーで、そのメロディーを含めて強い印象に残ります。

また今回、アルバムの中で少々異質に感じられたのがラスト。最後を締める「Good Night Story」はフュージョン風のギターインストに。そのサウンドの面を含めて、少々異質なナンバーで締めくくられています。

ただ今回のアルバム、この最後の曲もそうなのですが、全体的にちょっと異質感があったのがサウンド面。ドラムマシンやリズムマシン、アナログシンセサイザーを駆使したサウンドとなっていました。そのため、例えば「マディウォーター」も打ち込みのリズムを取り入れたリミックスバージョンが収録されていましたし、「青空ばかり」の打ち込みのリズムが目立つサウンドに。「問題ない」も全面的にシンセを取り入れたダンサナブルなナンバーになっています。

そんな打ち込みやシンセによるサウンドが目立つ本作なのですが、正直言うと全体的にはこのサウンドが彼の歌詞やメロディーとはちょっと合っていなかったかな、という印象を受けます。斉藤和義といえばブルージーなギターをかき鳴らし、メロや歌詞をしっかりと聴かせるスタイルが特徴的なのですが、そんな方向性の楽曲に、無機質さを感じさせるドラムマシーンやシンセはちょっと違和感を残してしまう出来になっていました。

今回、このアルバム全体の方向性にあわなかったためか、先行シングル(配信を含む)やCMソングなどとして発表済の曲は初回盤のボーナスディスクにまとめて収録されています。基本的にシングル曲がメインということもあるのですが、全体的な出来はこちらのボーナスディスクの方が圧倒的によかった・・・。特に「遺伝」など、歌詞を含めてまんま60年代フォークのような楽曲になっており、非常に印象に残る名曲に仕上がっています。そのため斉藤和義のミュージシャンとしての勢いは、全く衰えていないことを感じるのですが、アルバム本体の方はその良さを上手く反映されていないように感じました。

もっとも、あえて打ち込みやシンセを取り入れた作品に仕上げているだけに、デビュー25年を迎えて積極的な挑戦を続ける彼の姿勢には強く感心させられますし、その姿勢こそが、今なお人気ミュージシャンとして一線で活躍を続ける理由なのでしょう。それだけにこのアルバムも「彼らしい」と言えるのかもしれませんが・・・。悪いアルバムではないのですが、絶賛するには違和感が残る1枚でした。

評価:★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21


ほかに聴いたアルバム

エスカパレード/Official髭男dism

同アルバムに収録されている先行シングル「ノーダウト」がフジテレビ系月9ドラマ主題歌に起用されるなど、今、もっとも注目度の高いバンドのひとつ、Official髭男dism。ソウルやブラックミュージックの要素をほどよく加えたポップミュージックを聴かせてくれるバンドで、洋楽テイストも強く、ある意味「音楽的な偏差値が高い」バンドといった印象を受ける反面、ほどよくベタにまとめたメロディーもインパクトを持っており、確かに注目度の高さも納得できます。

ただ一方では楽曲としての完成度が高く、良くも悪くも隙のない楽曲という印象も強く、ちょっと無難にまとまりすぎているかな、という印象も受けました。個人的にはもうちょっとソウル、R&B寄りに走ってしまった方がおもしろいかも、とも思うのですが。ただ、今後の活動も注目していきたいバンド。タイミングがあえばシングル単位で一気にブレイクしそうな予感もします。

評価:★★★★

ENSEMBLE/Mrs.GREEN APPLE

Mrs.GREEN APPLEの3枚目となるアルバム。もともとポップな要素が強く、陽性度の高いバンドでしたが、本作はストリングスやピアノ、エレクトロサウンドなどを積極的に取り入れ、分厚くなったサウンドが特徴的。今まで以上に楽曲が明るく楽しくなっており、ある意味、「振り切れた」感を覚えました。いままで3枚のアルバムの中では一番出来がよかったかも。この「振り切れた」感が今後も続けばおもしろいのですが。

評価:★★★★

Mrs.GREEN APPLE 過去の作品
TWELVE
Mrs.GREEN APPLE
はじめてのMrs.GREEN APPLE

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2018年6月 1日 (金)

4年半ぶりの新作

Title:Snares Like A Haircut
Musician:No Age

約4年半ぶり・・・というから少々インターバルがあったことになります、ロサンゼルスの2人組ロックバンド、No Ageのニューアルバム。2008年にアルバム「Nouns」が話題となり一躍注目を集めてから早10年という事実に月日が経つのの早さを感じてしまいます。

No Ageといえば、いわゆるシューゲイザー系からの影響を色濃く受けたバンドで、デビュー当初は「ニュー・ゲイザー」なんて呼ばれ方をしていたりもしました。「Nouns」を受けて次にリリースした「EVERYTHING IN BETWEEN」は実験的な要素が強くなり、ポップス的な要素が強くなったのですが、その次の作品である前作「An Object」は再びポップな要素を前面に押し出したシンプルなギターロック路線に戻りました。そして待望のニューアルバムである本作は、デビュー作から続くシューゲイザー系の影響を強く感じる作品に。前作に引き続き、シンプルでポップなギターロックの作品に仕上がっています。

とにかく冒頭を飾る「Cruise Control」からしてギターの歪み方が完全にシューゲイザー直系。疾走感あるパンキッシュな作品で、メロディーは至ってポップで聴きやすい内容に。序盤はその後も「Stuck in the Changer」「Drippy」と疾走感あふれるギターロックが続きます。とにかく楽曲を埋め尽くすギターのホワイトノイズがとにかく心地よい作品が並びます。

中盤のタイトルチューン「Snares Like a Haircut」はちょっと雰囲気が変わって、幻想的でサイケデリックなインストナンバー。ちょっと実験的な要素を感じるものの、こちらはインターリュード的な作品で、続く「Tidal」はシャウト気味のボーカルとへヴィーなギターでガレージロック色が強いナンバーに。その後も「Soft Collar Fad」「Popper」と、よりロック、パンク色が強い作品が並びますが、これらのナンバーもギターノイズが流れる中、ポップなメロディーが流れる彼らのスタイルが貫かれています。

サイケデリックなインストチューン「Third Grade Rave」を挟んで終盤は、シンセや打ち込みのリズムでエレクトロ色の強い「Squashed」へ。歪みまくった音像が不思議な世界観を作り上げ、実験的な要素も強い作品に。ラストの「Primitive Plus」もノイズを前面に出したより幻想的な雰囲気を強くしたドリームポップの作品に。ほかの曲と比べると、実験的な要素の強い曲で締めくくられています。

このように2曲のインストを挟んである意味「3部構成」的な作品となっている本作。ただ、基本的にギターノイズを前に押し出したサウンドにシンプルでポップなメロディーという点は共通。そういう意味では非常に聴きやすいアルバムだったと思います。前作に引き続き、非常にはまってしまった傑作アルバム。とにかく心地よいギターノイズに惹きこまれた作品でした。

評価:★★★★★

No Age 過去の作品
EVERYTHING IN BETWEEN
An Object

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