日本を代表するパンクバンドのベスト盤
1970年代より活動を続ける日本を代表するパンクロックバンドとして名高いシーナ&ザ・ロケッツ。2015年にはボーカルのシーナが61歳という若さでこの世を去るという非常に残念な事態となりました。ただその後も残ったメンバーによりライブなどを中心に積極的な活動が続いているそうです。
さて、今回紹介するのはそんな彼らの楽曲を網羅的に収録したベストアルバム。
Title:ゴールデン☆ベスト シーナ&ロケッツ EARLY ROKKETS 40+1
Musician:シーナ&ザ・ロケッツ
まずこちらは1979年から1983年に所属したアルファレコード時代の楽曲を収録。鮎川誠とシーナのソロアルバムからの楽曲も収録されています。
Title:ゴールデン☆ベスト シーナ&ロケッツ VICTOR ROKKETS 40+1
Musician:シーナ&ザ・ロケッツ
そしてこちらが1984年のビクター移籍後の楽曲を収録したベスト盤。シーナ存命時のラストアルバムとなってしまった現時点での最新アルバム、2014年の「ROKKET RIDE」の楽曲まで収録されています。
今回のベスト盤、廉価版ベストとしてのシリーズである「ゴールデン☆ベスト」の名前を冠していますが、メンバー鮎川誠選曲・監修による内容。それぞれ彼らの代表曲40曲がほぼ発表順に並んでおり、かつボーナストラックも1曲ついているという豪華な内容になっており、名実ともに2作まとめてオールタイムベストといった内容になっています。
個人的にシナロケは実は2000年のアルバム「Rock The Rock」を聴いたことがあるくらいで、彼らの楽曲を網羅的に聴くのは今回がはじめて。まず今回のベスト盤を聴いて感じたのは、パンクロックバンドというイメージが強い彼らですが、楽曲的には意外とポップな作品も多いなぁ、という印象でした。
特に「EARLY ROKKETS」収録の楽曲についてはやはり80年代初頭という時代性を反映したからでしょうか、シンセを積極的に取り入れた曲が多く、ニューウェーヴからの影響を強く感じます。メインボーカルのシーナの旦那であり、シナロケの多くの曲の作曲を手掛ける鮎川誠は非常にロックンロールやブルースへの造詣が深いミュージシャンで、「EARLY ROKKETS」の楽曲でも「たいくつな世界」や「スージーQ」のようなガレージロックなナンバーも目立つのですが、「ミックス・ザット・マン」のようにブルージーなギターが入りつつもニューウェーヴ的なシンセが同時に入ってくるような曲もあったりと、80年代という時代性を感じます。
もっともブルースからの影響は楽曲の要所要所に顕著に感じられ、例えばサウンド的な面のみならず、彼女たちの代表曲「レモンティー」の歌詞もそう。直接は言及していないものの、あきらかにセックスを「レモンティー」に例えて歌うスタイルはブルースの世界ではよくありがちな歌詞のスタイル。もっとも、セックスに例えられるのは「レモンティー」よりもむしろ「ミルクティー」の方だったりするのですが(要するに男性のものが「ミルク」に例えられるんですね・・・)おそらくそれだとあまりに露骨なので・・・ということなのでしょう。
ただもっともポップス路線が多いとはいっても例えば「EARLY ROKKETS」収録の「マイ・ボーイフレンド」や「VICTOR ROKKETS」収録の「プリティ・リトル・ボーイ」のように60年代のガールズポップ風な曲も目立ち、ルーツ志向はポップな楽曲でもしっかりと感じることが出来ます。鮎川誠の音楽に対する深い造詣はこういうところでも感じることが出来ました。
またちょっと興味深かったのはむしろアルバム後半、最近の曲になればなるほどよりポップス色が後ろに下がり、よりロックやパンク色の強い楽曲が増えてきたという点でした。日本でもへヴィーなサウンドを前に押し出したバンドが次々とブレイクして、よりロック色の強い楽曲をやりやすくなってきた、ということでしょうか。また、最近の曲でもデビュー時と変わらないような勢いのあるパンクロックを奏でており、最後の最後まで・・・というよりも今でもしっかりと現役のバンドなんだな、ということをあらためて感じさせられました。
CDにして4枚。全82曲というかなりのボリューム感ですが、シナロケの歩みを知ることが出来るベスト盤。予想していたよりもポップ色が強い・・・といってもそういう面も含めて魅力的な楽曲が多く、いまさらながら、もっと彼女たちのアルバムをしっかりと聴いておけばよかったな、と思いました。ライブも一度行っておけばよかったな・・・。ロック好きは是非ともチェックしておきたいベスト盤です。
評価:どちらも★★★★★
ほかに聴いたアルバム
PLAY/ROTTENGRAFFTY
前作「LIFE is BEAUTIFUL」で初のベスト10ヒットを記録するなど、デビューから17年目のベテランバンドながらもここに来て人気上昇中のパンクロックバンドROTTENGRAFFTYの新作。エレクトロサウンドとポップ色を前に出した前作と比べると今回はエレクトロサウンドを取り入れた曲もあったものの、へヴィーなバンドサウンドを前に出したアルバムで、へヴィーロックを聴いたという満足感はグッと増した感じが。哀愁感あるメロが良くも悪くもいかにもJ-POP的な部分は否めないのですが、いい意味で聴きやすさを感じさせる作品でした。
評価:★★★★
ROTTENGRAFFTY 過去の作品
LIFE is BEAUTIFUL
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