2年ぶりでもまだ18歳(!)
Title:Resources
Musician:Takaryu
「RO69JACK 2015 for COUNTDOWN JAPAN」で優勝しデビューしたトラックメイカーTakaryu。デビュー時点において若干16歳という年齢も大きな話題となりました。それから早くも2年弱。初となるフルアルバムがようやくリリースされました。
デビュー作となった「MANUAL」の出来が素晴らしく、2016年の私的ベストアルバムでも8位に入れさせていただいたのですが、その後、彼についての話題があまり聴こえてこなかったので、どうなったんだろう、と少々心配していました。
そんな中、ようやくリリースしてきた初のフルアルバムですが、これがまた前作同様の傑作アルバムに仕上がっていました。まずアルバム全体で流れるのは前作同様の熱量の低いエレクトロサウンド。サウンドは基本的にシンプルにまとめあげており、前作で感じた「老成」という表現を今回のアルバムでも感じることが出来ます。
AORやジャズ、ソウルなどの要素を取り入れたメロウなポップチューンも本作の大きな特徴。「Left-field」「Static Thought」では前作でも参加した女性シンガー綿めぐみが参加したほか、「Cave」「Reminisce Over You」では声優としても活躍している宮原永海がボーカリストとして参加。どちらも楽曲の雰囲気にあった抑え気味なボーカルが印象に残るボーカリストで、澄んだ歌声も楽曲にマッチしていました。
そんな女性ボーカルによる歌モノの間には比較的挑戦的な楽曲も含まれています。「Null」では本人がボーカルを取ったナンバー。この曲や「Rain」などは強いビートが展開するトラックが挑戦的な曲づくりを感じさせますし、「Refusal」もボーカルをサンプリングしてリズムを刻ませている実験的な作風に仕上げています。
ただこれらの曲に関しても基本的に熱量は抑え気味で、かつR&Bテイストのメロディーラインがしっかりと根底に流れており、いい意味で聴きやすいポップチューンとして完成されています。サウンド的に斬新で目新しいという感じではないのですが、メロディーメイカーとしてのセンスの良さを含めて、間違いなく彼の才能を感じさせてくれる傑作アルバムだと思います。
しかしちょっと気にかかるのが、彼の名前について検索すると、彼のデビューのきっかけになったロッキンオン系の記事ばかりが出てきて、そのほかのメディアやブログ等の記事がほとんど出てこない点。Amazonでのレビューがついていないようですし、いまひとつ話題になっていないように感じます。こんな素晴らしいミュージシャンなのになぜ??確かに、あまりロッキンオンで取り上げられるようなタイプのミュージシャンではないと思うのですが・・・。これだけ素晴らしい傑作なだけに、もっと広いリスナー層に聴いてほしいなぁ・・・。
評価:★★★★★
Takaryu 過去の作品
MANUAL
ほかに聴いたアルバム
Runner/サンプラザ中野くん
1988年にリリースし大ヒットを記録した爆風スランプの代表曲「Runner」のリリース30周年を記念して、現在、活動休止中の爆風スランプのボーカル、サンプラザ中野くんがセルフカバーしてリリースされたアルバム。完全に昔の名前で売っているようなアルバムで、実際、私みたいにそれに惹かれて聴いてしまう人も多いのでしょうが、「Runner」も基本的にオリジナルアレンジそのまんまなので、オリジナルのファンも安心して聴け、懐かしさに浸れるアルバムになっています。
ほかに「神話」「さよなら文明」という爆風スランプのセルフカバーも収録されていますが、こちらは「リゾ・ラバ」や「大きな玉ねぎの下で」のようなヒット曲ではなく、少々マイナーな曲を取り上げたのはなぜ?ただ、ソロでの新曲2曲を含め、基本的には爆風スランプ時代の雰囲気を踏襲した曲になっているので、「Runner」の懐かしさで聴いたアラフォー世代も安心して聴けるような内容になっていました。
評価:★★★★
クリープショー/Creepy Nuts
最近、急速に注目を集めているR-指定(MC)とDJ松永による1MC1DJによるHIP HOPユニット。「ダメな自分」をつづくリリックにロッキンで聴きやすいトラックをバックにラップするスタイルがインパクトがあり人気を集めています。わかりやすくポップテイストが強いのですが、基本的にはしっかりとHIP HOPのマナーに沿ったスタイルを保っています。ただ、リリックはユニークなのですが、いまひとつインパクトあるフレーズや展開が少なかったのが残念。トラックのインパクトは十分ですが、リリックにもう少しのインパクトが欲しいところ。
評価:★★★★
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コメント
メロウな楽曲が多いのでAORだったりジャズだったりとそういったジャンルとしても聴けるのがtakaryuの音楽性の幅広さと奥深さを実感できるのが率直に言って凄いです。
投稿: ひかりびっと | 2018年6月24日 (日) 17時55分
>ひかりびっとさん
Takaryuはいいミュージシャンですよね。もっと注目を集めてもいいと思うのですが・・・。
投稿: ゆういち | 2018年7月23日 (月) 23時11分
>高橋竜之介さん
(元の書き込みにつきましてはご本人からの希望より、非公開とさせていただきました)
はじめまして!まさかのご本人からの書き込み、こんな拙いレビューにコメントしていただいてありがとうございます。私は間違いなくTakaryuさんの2枚のアルバムは傑作だと思っています。いつの日か聴けるであろう新作を、心待ちにしています。
投稿: ゆういち | 2020年1月 4日 (土) 23時56分