岸田繁の好みを強く反映
Title:京都音楽博覧会2017 in 梅小路公園
2007年から毎年、京都の梅小路公園でくるり主催により開催されている「京都音楽博覧会」。私も一度だけ足を運んだことがありますが、毎年、「音楽博覧会」という名前にふさわしく、ロックやポップスというジャンルを超えて、ほかの音楽フェスではまずお目にかかれないようなミュージシャンも呼び、話題となっています。
今回紹介するアルバムは昨年9月に行われた「京都音楽博覧会」の模様をおさめたライブアルバム。配信限定でのリリースとなっています。2017年に開催された「音楽博覧会」では、おなじみのくるりはもちろん、ブラジルのミュージシャン、Alexandre Andrés & Rafael MartiniやインドネシアのシンガーソングライターDhira Bongs、ブエノスアイレス出身のバンドネオン奏者でシンガーソングライターのTomi Lebreroといったワールドミュージック界隈のミュージシャンも多く参加しています。
さらには京都音博フィルハーモニー管弦楽団としてスペシャルオーケストラが参加したほか、このオーケストラをバックに「京都音博”生”歌謡ショー」と称してアジカンのゴッチ、オリジナルラヴ田島貴男、UA、二階堂和美がその歌を披露し、今回のアルバムでもその模様が収録されています。
さて、そんなバラエティー豊かなミュージシャンたちが参加した「京都音楽博覧会」。もともとくるりが主催=ミュージシャンの選定は基本的に岸田繁が決定しているだけあって、岸田繁の好みが如実に反映されたラインナップになっています。基本的に彼の好みの方向性はブラックミュージック的要素が排除された、いかにも西洋音楽的な方向性。彼自身、ブラックミュージックに言及することもあって、それなりに聴いているようですが、どちらかというと「お勉強」的に聴いている印象があり、彼の薦めるミュージシャンのラインナップを見る限りは、複雑なリズムやグルーヴ感よりも整ったリズムや美しいメロディーラインが主軸となった西洋音楽的な楽曲が好みであることがわかります。
「京都音楽博覧会」に招待されたラインナップを見てもまさにそんな感じ。海外からのミュージシャンもアコースティックな演奏でフォーキーな雰囲気の曲が多く、まずは美しいメロディーラインを楽しむタイプのミュージシャンが並びます。
またこのアルバムの特徴はすべてのミュージシャン、オーケストラをバックとしたステージという点でした。そのため聴きなれたような曲もストリングスアレンジがほどこされており新鮮味も感じるステージになっています。11回目の開催となる「京都音博」ではじめてライブアルバムがリリースされたのも、そんなオーケストラバックのステージを記録的に残しておきたいという意図が働いたのかもしれません。
特にくるりの「ジュビリー」や「奇跡」、田島貴男のご存じ「接吻」などはストリングスによるアレンジがより映えて、楽曲の新たな魅力を感じることが出来ました。ただ逆に、くるりの「everybody feels the same」は正直バンドアレンジの方がしっくりきたような。またゴッチの「Taxi Driver」も歌い方が完全にロックのそれだったためか、いまひとつしっくりこなかったのは残念です。
ただ、海外から参加したミュージシャンもそれぞれ非常に魅力的な歌を聴かせてくれ、後半、「京都音博”生”歌謡ショー」と称したステージングも、それぞれ「歌」が本来持つ魅力を存分ひ引き出した魅力的なステージ。最後は締めくくりにふさわしいくるりの「宿はなし」をストリングスやホーンを入れて叙情感たっぷりに聴かせてくれ、ほどよい聴後感を残してアルバムは幕を下ろします。最近、家庭的な事情からなかなか遠出のライブはいけなくなってしまったのですが・・・また久しぶりに「京都音博」に足を運びたくなったライブアルバムでした。
もっともこのアルバム、ひとつ非常に残念なのが、「大人の事情」でしょうか、この日参加した布施明の音源が収録されていません。ある意味、彼のステージはいかにも「ザ・歌謡ショー」といった感じと想像でき、この日の「京都音博”生”歌謡ショー」の主軸でもあったと思われるのですが・・・この点だけはとても残念です。
そんな残念な点はあったのですが、全体としては間違いなく「京都音博」の魅力を存分に伝えるアルバム。毎回、ユニークなラインナップが特徴的なだけに、この手のライブアルバムはまたリリースしてほしいです。とても楽しめました。
評価:★★★★★
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