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2018年5月 5日 (土)

デビュー10周年の総括に

Title:魚図鑑
Musician:サカナクション

2007年にメジャーデビュー。昨年、デビュー10周年を迎えたサカナクション。その10周年の活動を総括する形で、彼ら初となるオールタイムベストがリリースされました。彼らはご存知のとおり、2009年にリリースした「シンシロ」でブレイク。その後リリースしたシングル「アルクアラウンド」でさらなる話題を呼び、2013年には紅白歌合戦への出場も果たしています。

今回のベストアルバムでユニークなのはその構成。Disc1は「浅瀬」と名付け、「アルクアラウンド」や「新宝島」「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」などのシングル曲を中心の構成に、さらに中層と名付けられたDisc2、今回は通常版を聴いたので聴けなかったのですが、深海と名付けられたDisc3まで、内容を聴き進むにつれて、より「マニアック」な楽曲が並ぶ構成になっています。

さて今回あらためて彼らの楽曲を網羅的に聴いたのですが、まず強く感じるのはやはり彼らは今、活躍中のロックバンドの中でも間違いなく頭ひとつ抜けた存在であるな、という印象でした。特に彼らがデビューした2007年は目立って活躍するバンドの少なかった年。(ちなみにこの年の音楽的に最も大きな「デビュー」は初音ミクだったりします)ある意味、谷間の世代とも言える彼らですが、それだけに逆に彼らの存在が際立ちます。

まず彼らの音楽シンセによるエレクトロサウンドとバンドサウンドを融合させてリズミカルな楽曲に仕上げているのが基本線。このエレクトロサウンドとバンドサウンドのバランスが実に絶妙で、バンドサウンドのダイナミズムを残しつつ、エレクトロサウンドによる無機質で近未来的な雰囲気もきちんと維持しているという、ほどよいバランスを保っているにもまた、彼らの大きな魅力に感じます。

そんな中、例えば「新宝島」ではエスニックな香りを漂わせたり、「アイデンティティ」ではとライバルなパーカッションからスタートしたり、Disc2の曲では「三日月サンセット」ではファンキーなリズムを入れてきたり、「夜の東側」のようなシティポップを彷彿とさせるメロウさを入れてきたり、バリエーションある音楽性が魅力的。もっとも、CD2枚分、さすがにずっとシンセ中心のサウンドだとちょっとダレてくる部分もあるのですが、そんなことを思い出した直後、Disc2の終盤「ドキュメント」「目が明く藍色」はバンドサウンド主体のメロを聴かせる曲となっており、再び気分が盛り上がります。

特にここ最近、フェス向けのとにかくリスナーを煽りまくるようなメロやサウンドを奏でるバンドが目立つ中、彼らはエレクトロでリズミカルな音というライブで楽しめそうな楽曲を奏でつつ、必要以上に高揚感あるサウンドに頼ることなく、しっかりとメロディーやサウンド自体を聴かせるスタンスを貫いているのはさすが。フェス向けバンドとはあきらかに一線を画する実力を感じさせます。

シンセの音を中心としつつ、バンドとしての様々な挑戦をあらためて感じることの出来るベスト盤。サカナクションの魅力をしっかりと出しているアルバムだったと思います。これからの彼らの活躍も非常に楽しみです。

評価:★★★★★

サカナクション 過去の作品
シンシロ
kikUUiki
DocumentaLy
sakanaction
懐かしい月は新しい月~Coupling&Remix works~

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