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2018年5月21日 (月)

13年の年月を経て

Title:KEEENLY
Musician:DMBQ

今回紹介するアルバムはDMBQというロックバンドの新作。この少々奇妙なバンド名は「Dynamite Masters Blues Quartet」の略称だそうで、なにげに結成が1989年という30年近いキャリアを持つベテランバンドだったりします。

彼らはもともと90年代から2000年代初頭にかけて積極的に活動。2002年にはavexと契約、さらに2005年には全米デビューを果たすなど、一時期、日本のみならず海外でも話題のバンドとして大きな注目を集めました。

しかし、その全米デビュー後のツアーで悲劇が起こります。2005年11月の全米ツアー中、交通事故に逢い、ドラムの西浦真奈が急逝。ほかのメンバーも病院に運ばれるという事態となってしまいました。その後、新メンバーを迎えて活動を再開するものの、ライブ活動のみに留まり、音源は(トリビュートアルバムなどへの参加はあったものの)2005年のアルバム「The Essential Sounds from the Far East」が最後となっていました。

そしてそれから13年。ようやく待望となるニューアルバムがリリースされました。その13年の間もライブ活動はコンスタントに実施していましたし、リーダーである増子真二はボアダムスへの参加やエンジニアとしてN'夙川BOYSの楽曲に関わっていたりと積極的な音楽活動を進めていたのですが、DMBQとしてのオリジナルアルバムとしては非常に久しぶりとなるニューアルバムとなりました。

ちなみに私は以前、DMBQのライブを見たこともありますし、彼らのアルバムも何枚も聴いたことがありました。そんな私でも、久しぶりに彼らのアルバムを耳にするとそのサウンドにまずは度胆を抜かれました。まずアルバムがスタートすると流れてくるのはこれでもかというほど分厚くへヴィーなギターのリフに重いドラムのリズム。そこにさらに別のシンセのサウンドが重なり、これでもかというほどの音の塊が耳に飛び込んできます。

彼らのサウンドは例えるながらサイケデリックに振り切れたレッド・ツェッペリンが、現代に復活したといった感じ。70年代さながらのへヴィーでサイケデリックなバンドサウンドながらも、音圧は今の時代にしっかりと対応したもの。サウンドの方向性としては70年代直系の音なのですが、その音の感じはしっかりと2010年代の今にアップデートされているため、ほとんど違和感を覚えません。

そんな暴力的ともいえるサウンドが続く「Blue Bird」が終ったかと思えば、そのまま続く「Alone In The Milky Way」は分厚いギターノイズが延々と続く、混沌とした世界観を感じさせるようなナンバーに。まさにサイケデリックな音の世界に迷い込んだような楽曲にトリップ感を覚えること間違いありません。

楽曲はそのまま「Fitzcarraldo!」へ。埋め尽くされるノイズのピッチが徐々に高くなっていったかと思えば「No Things」では再びへヴィーなギターリフが展開するハードロック的なナンバーへと変化していきます。さらに「Thou,Winter Song」は12分にも及ぶこのアルバム最長のナンバー。最初は強烈なノイズの洗礼を受けるこの曲なのですが、後半はギターノイズが埋め尽くす中、重いドラムがリズムを刻み、その中で流れるシンセの音でどこかスペーシーな雰囲気に。12分という長さながら緊迫感あるサウンドで一瞬たりとも耳の離せないナンバーになっています。

終盤の「So The Word Of Good Spread」は疾走感あるギターロック。ある種の聴きやすさのあるナンバーなのですが、ハイテンポなドラムスとギターノイズでトリップ感満載のナンバーに。そしてラストの「Cosmos, Universe」は、ある意味1曲目と対になるようなヘヴィーなギターリフでゆっくりと展開していくハードなナンバーで締めくくられます。

とにかく終始、迫力あるヘヴィーなサウンドに圧倒され続けるアルバム。決して「ポップで聴きやすい」というアルバムではありませんが、そのダイナミックなサウンドはロックという音楽が好きなら、必ず食指にひっかかるサウンドだと思います。13年前という長いインターバルを経たのちのアルバムですが、13年前よりもその凶暴さは増していたように思われます。これはライブも圧倒されそうだなぁ・・・と感じつつ、その一方、ライブで感じるであろう迫力が、CD音源にもしっかりと収録されていました。13年の年月を経て、間違いなくバンドとして成長したアルバム。またこれから再び注目を集めるバンドとして日本のロックシーンで暴れまわるかもしれませんね。

評価:★★★★★

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コメント

サウンドに中だるみはないですね。むしろ、そこらの若手よりも緊迫感やストレートさが伝わってきます。

投稿: ひかりびっと | 2018年6月14日 (木) 16時59分

>ひかりびっとさん
ご感想ありがとうございます。

投稿: ゆういち | 2018年6月15日 (金) 23時18分

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