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2018年5月

2018年5月31日 (木)

今週も目立つK-POP

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

まず今週の1位はあのアイドルグループのベスト盤が1位獲得です。

1位はももいろクローバーZ「MOMOIRO CLOVER Z BEST ALBUM 『桃も十、番茶も出花』」が獲得。デビュー10年を迎える彼女たちの初となるベスト盤となります。初動売上5万6千枚。前作はウィンターソングを集めた企画盤「MCZ WINTER SONG COLLECTION」の2万3千枚(5位)からはさすがにアップしているものの、2枚同時リリースとなった直近のオリジナルアルバム「白金の夜明け」「AMARANTHUS」の8万1千枚(1位)及び8万枚(2位)からは大きくダウン。一時期より人気は落ち着いた感はあったのですが、オリジナルよりもベスト盤の売上が落ちるという点は固定ファン以外のリスナー層を引き付けられていない証拠であり、少々厳しい結果となりました。

2位初登場はNCT127「Chain」がランクイン。韓国の男性アイドルグループNCTからの派生グループで本作が日本でのデビュー作となります。初動売上4万4千枚。前作は韓国盤の「Cherry Bomb:3rd Mini Album」でこちらの2千枚(22位、ただし翌週は3千枚を売り上げて18位にランクアップ)。から大きくアップしています。

先週はK-POPのアルバムが1位を獲得しましたが、今週もこの2位NCT127をはじめ、K-POPが目立つチャートになりました。まず3位にBTS(防弾少年団)の韓国盤「LOVE YOURSELF 轉 'Tear'」がランクイン。初動売上4万4千枚で、直近の国内盤「FACE YOURSELF」の28万2千枚よりさすがに大きくランクダウンしています。ただこのアルバム、大きな話題となったのはアメリカビルボードチャートでK-POP史上初の1位を獲得したという点。前作「Love Yourself: Her」も7位を記録しており、徐々に知名度を伸ばしていたようですが、1位獲得は驚き。ただ正直、シングル曲を聴く限りは良く出来たポップスとは思いつつも、それほど際立って個性的な内容だとは思えないし、なぜここまで売れたのか不思議というのが率直な印象。結局は「売り方」ってことなんでしょうか・・・。

ほかにK-POP勢は8位にCHANSUNG(From 2PM)「Complex」が、10位にGFRIEND「今日から私たちは~GFRIEND 1st BEST~」がそれぞれランクイン。CHANSUNGは男性アイドルグループ2PMからのソロ作で、これがソロ初のアルバムとなります。初動売上は1万5千枚を記録。GFRIENDは同じく韓国発の女性アイドルグループ。初動売上1万3千枚。本作が日本デビューアルバムとなり、また初のベスト10ヒットとなりました。

ほかのベスト10初登場組は・・・まず4位にA.B.C.-Z「VS 5」がランクイン。こちらはジャニーズ系男性アイドルグループ。初動売上3万3千枚。前作「5 Performer-Z」の3万9千枚(2位)からダウンしています。

5位初登場は女性アイドルグループE-girls「E.G.11」がランクイン。初動売上3万1千枚は前作「E.G.Crazy」の9万3千枚(1位)から大きくダウンしています。ちなみに今回はじめて知ったのですが、もともとE-girlsはLDHの女性アイドル3グループ、Dream、Flower、Hapinessの合同ユニットだったのですが、いつの間にかDreamが活動休止となり、11人組のユニットになっていたんですね。Dreamといえば2000年デビューという、ある意味親玉のEXILEよりも活動歴が長い由緒ある(?)グループだったのですが、LDHに移籍して徐々に埋もれて消えてしまいましたね・・・。まるで由緒ある銀行だったのに、大手銀行との合併でいつの間にか名前が消えてしまった東京銀行のよう・・・(たとえがわかりにくい?)

6位には「アダムとイヴの林檎」がランクイン。こちらはデビュー20年を迎えた椎名林檎へのトリビュートアルバム。宇多田ヒカルや井上陽水、木村カエラなど豪華なメンバーがズラリと名前を並べています。初動売上2万8千枚を記録。

7位初登場は人気女性声優水瀬いのり「BLUE COMPASS」。初動売上1万8千枚は前作「Innocent flower」の1万7千枚(3位)より若干のアップ。

最後9位には「ゼノブレイド2 オリジナル・サウンドトラック」がランクイン。Nintendo Switchのゲーム「ゼノブレイド2」のサントラ盤。初動売上1万4千枚で見事ベスト10入りを果たしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年5月30日 (水)

ジャニーズ系新人アイドルが1位獲得

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここ最近、K-POP勢の活躍が目立っていますが、今週は日本の男性アイドルグループが1位獲得です。

今週の1位はKing&Prince「シンデレラガール」が先週31位からCDリリースに伴い大幅にランクアップ。ジャニーズ系の新人グループのデビュー作となります。TBS系ドラマ「花のち晴れ~花男 Next Season~」主題歌。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数で1位、ラジオンエア数で5位、Twitterつぶやき数4位、You Tube再生回数で82位を記録。ジャニーズ系にしては珍しくYou Tubeで楽曲が試聴でき、最近のジャニーズ事務所のネット戦略の変化を感じます。

オリコンでは初動売上57万6千枚で堂々の1位。ただ、作詞作曲は河田総一郎・佐々木望というコンビで、欅坂46や遊助への楽曲提供で実績のある作家勢ですが、ジャニーズ系の大物新人デビュー作にありがちな超有名ミュージシャンの起用はありませんでした。

あと・・・最近はSMAPやTOKIOの件でよく叩かれがちなジャニーズ事務所ですが、こうやってジャニーズ系のほかのアイドルグループの人気には一切影響ないんですよね。そりゃあネットでいくら叩かれようが、ジャニーズ事務所としてはいままでのスタンスを変えないし、テレビ局もジャニーズ事務所への「忖度」をやめないはずだわ・・・。

2位初登場は和田アキ子 with BOYS AND MEN 研究生「愛を頑張って」。和田アキ子デビュー50周年を記念してリリースされたシングルで、名古屋を中心に活動する男性アイドルグループBOYS AND MENの弟分のBOYS AND MEN 研究生とのコラボとなりました。楽曲的には完全にモータウンサウンドの曲、というか明らかにジャクソン5の曲のフレーズをサンプリングしたような構成になっています。実売数2位、ラジオオンエア数14位、Twitterつぶやき数77位を記録しています。

一方オリコンでは初動売上10万4千枚で2位初登場。意外なことに2位というのは彼女のシングルとしては最高位だそうです。ただどう考えてもBOYS AND MEN研究生の人気に引っ張られる形でのヒット。彼女としても背に腹は代えられなかったということでしょうか。ただ、これで今年の紅白復帰は確実になりそう・・・。もっとも彼女の場合、2005年の紅白でm-floと組んだ「HEY!」で紅白出場を果たしていますので、そういう意味ではこの手のやり方には「前科」があるのですが。

3位は先週1位のTWICE「Wake Me Up」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下初登場ですが、まず7位に韓国の男性アイドルグループSF9「マンマミーア!」が初登場でランクインしています。実売数4位ながらもPCによるCD読取数93位、Twitterつぶやき数27位、そのほかは圏外という結果でこの順位に。オリコンでは初動売上3万6千枚で4位初登場。前作「Easy Love」の2万5千枚(5位)からアップしています。

9位にはロックバンド[Alexandros]「KABUTO」が初登場でランクイン。実売数は13位にとどまりましたが、ラジオオンエア数9位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数30位を獲得し、ベスト10入りを果たしています。ノイジーで攻撃的なギターリフがカッコいいナンバー。オリコンでは初動売上1万3千枚で8位初登場。前作「明日、また」の2万2千枚(4位)からダウンしています。

最後10位にはXOX「OVER」がランクイン。名前的には完全にK-POPなのですが、日本の男性読者モデル6人組によるアイドルグループだそうです。エレクトロな楽曲も完全にK-POPなのですが・・・。実売数7位、ラジオオンエア数79位のほか、すべて圏外という結果に。ちなみにオリコンでは初動売上2万枚で5位初登場。前作「Ex SUMMER」の1万1千枚(6位)からアップしています。

さて、ここ最近チャートを賑わせている米津玄師ですが、今週「Lemon」は先週から変わらず4位をキープ。You Tube再生回数は2位にダウンしたものの、PCによるCD読取数も2位をキープ。実売数もまだ6位にランクインしています。さらに先週6位の「LOSER」は今週も6位をキープ。実売数6位、You Tube再生回数4位を記録しており、こちらもロングヒットが続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年5月29日 (火)

2年ぶりでもまだ18歳(!)

Title:Resources
Musician:Takaryu

「RO69JACK 2015 for COUNTDOWN JAPAN」で優勝しデビューしたトラックメイカーTakaryu。デビュー時点において若干16歳という年齢も大きな話題となりました。それから早くも2年弱。初となるフルアルバムがようやくリリースされました。

デビュー作となった「MANUAL」の出来が素晴らしく、2016年の私的ベストアルバムでも8位に入れさせていただいたのですが、その後、彼についての話題があまり聴こえてこなかったので、どうなったんだろう、と少々心配していました。

そんな中、ようやくリリースしてきた初のフルアルバムですが、これがまた前作同様の傑作アルバムに仕上がっていました。まずアルバム全体で流れるのは前作同様の熱量の低いエレクトロサウンド。サウンドは基本的にシンプルにまとめあげており、前作で感じた「老成」という表現を今回のアルバムでも感じることが出来ます。

AORやジャズ、ソウルなどの要素を取り入れたメロウなポップチューンも本作の大きな特徴。「Left-field」「Static Thought」では前作でも参加した女性シンガー綿めぐみが参加したほか、「Cave」「Reminisce Over You」では声優としても活躍している宮原永海がボーカリストとして参加。どちらも楽曲の雰囲気にあった抑え気味なボーカルが印象に残るボーカリストで、澄んだ歌声も楽曲にマッチしていました。

そんな女性ボーカルによる歌モノの間には比較的挑戦的な楽曲も含まれています。「Null」では本人がボーカルを取ったナンバー。この曲や「Rain」などは強いビートが展開するトラックが挑戦的な曲づくりを感じさせますし、「Refusal」もボーカルをサンプリングしてリズムを刻ませている実験的な作風に仕上げています。

ただこれらの曲に関しても基本的に熱量は抑え気味で、かつR&Bテイストのメロディーラインがしっかりと根底に流れており、いい意味で聴きやすいポップチューンとして完成されています。サウンド的に斬新で目新しいという感じではないのですが、メロディーメイカーとしてのセンスの良さを含めて、間違いなく彼の才能を感じさせてくれる傑作アルバムだと思います。

しかしちょっと気にかかるのが、彼の名前について検索すると、彼のデビューのきっかけになったロッキンオン系の記事ばかりが出てきて、そのほかのメディアやブログ等の記事がほとんど出てこない点。Amazonでのレビューがついていないようですし、いまひとつ話題になっていないように感じます。こんな素晴らしいミュージシャンなのになぜ??確かに、あまりロッキンオンで取り上げられるようなタイプのミュージシャンではないと思うのですが・・・。これだけ素晴らしい傑作なだけに、もっと広いリスナー層に聴いてほしいなぁ・・・。

評価:★★★★★

Takaryu 過去の作品
MANUAL


ほかに聴いたアルバム

Runner/サンプラザ中野くん

1988年にリリースし大ヒットを記録した爆風スランプの代表曲「Runner」のリリース30周年を記念して、現在、活動休止中の爆風スランプのボーカル、サンプラザ中野くんがセルフカバーしてリリースされたアルバム。完全に昔の名前で売っているようなアルバムで、実際、私みたいにそれに惹かれて聴いてしまう人も多いのでしょうが、「Runner」も基本的にオリジナルアレンジそのまんまなので、オリジナルのファンも安心して聴け、懐かしさに浸れるアルバムになっています。

ほかに「神話」「さよなら文明」という爆風スランプのセルフカバーも収録されていますが、こちらは「リゾ・ラバ」や「大きな玉ねぎの下で」のようなヒット曲ではなく、少々マイナーな曲を取り上げたのはなぜ?ただ、ソロでの新曲2曲を含め、基本的には爆風スランプ時代の雰囲気を踏襲した曲になっているので、「Runner」の懐かしさで聴いたアラフォー世代も安心して聴けるような内容になっていました。

評価:★★★★

クリープショー/Creepy Nuts

最近、急速に注目を集めているR-指定(MC)とDJ松永による1MC1DJによるHIP HOPユニット。「ダメな自分」をつづくリリックにロッキンで聴きやすいトラックをバックにラップするスタイルがインパクトがあり人気を集めています。わかりやすくポップテイストが強いのですが、基本的にはしっかりとHIP HOPのマナーに沿ったスタイルを保っています。ただ、リリックはユニークなのですが、いまひとつインパクトあるフレーズや展開が少なかったのが残念。トラックのインパクトは十分ですが、リリックにもう少しのインパクトが欲しいところ。

評価:★★★★

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2018年5月28日 (月)

サムライジャケットが大きなインパクト

Title:Resistance Is Futile
Musician:MANIC STREET PREACHERS

マニックスの新作は、我々日本人にとって、まずジャケット写真が非常に気になる作品になっています。このジャケット写真、アルバムのテーマとも結びついているそうで、それは今回のアルバムタイトル「Resistance Is Futile=抵抗無用」とつながるもの。雑誌のインタビューによると今回のアルバムのテーマは、様々に変化する現状に対して、それに抗うのか、理解しようと努力するのか、身を任せるのかという難しい決定を行う複雑な心境をテーマにしたそうで、このサムライの顔つきにその複雑な心境が反映されていることを感じたそうです。

ただ、そんな複雑なテーマ設定とは裏腹に、楽曲自体は彼らの美しいメロディーラインが際立つ傑作アルバムに仕上がっていました。アルバムはまずストリングスを入れてスケール感を出した「People Give In」からスタート。さらに続く「International Blue」は爽快なギターロックナンバー。シンプルなギターポップのアルバムなのですが、それだけに彼らのメロディーラインの良さがキラリと光るインパクトある楽曲に仕上がっています。

中盤もまず「Dylan&Caitlin」が耳に残ります。彼らと同郷のウェールズ出身の女性シンガーソングライター、ザ・アンコレスとのデゥオによるナンバーで、女性ボーカルを入れることによりアルバムの中で大きなインパクトになっています。さらに後半、ノイジーなギターサウンドを前に出してきてロックテイストの強い「Sequels of Forgotten Wars」「Broken Algorithms」もまた、ダイナミックでパンキッシュなサウンドがロックリスナーにとっては心地よさを感じさせます。

終盤も「A Song for the Sadness」の切なさを感じるメロディーラインに耳を惹かれつつ、ラストの「The Left Behind」もアコギを入れて聴かせるナンバーで締めくくり。最初から最後まで魅力的なポップチューンが並ぶアルバムになっています。

マニックスといえばもともといい意味でわかりやすい、インパクトあるポップなメロディーが大きな特徴でしたが、今回のアルバムに関してはその方向性をさらに突き進んだ、爽快感あふれる気持ちよいメロディーの曲が並ぶアルバムになっていました。全体的にはストリングスをふんだんに取り入れるなど、バンドサウンドよりもポップであることに重点を置いたような作品になっているのですが、前述の「Sequels of Forgotten Wars」や「Broken Algorithms」のようなロック色を前に押し出したダイナミックなナンバーも入っており、そこはきちんとロックリスナーの壺をついてくる構成になっています。

前々作「Rewind The Film」もメロディーの良さが際立っていた傑作アルバムだったのですが、今回のアルバムはそれを上回る傑作アルバムだったと思います。個人的には年間ベスト盤候補ともいえる1枚。マニックスの魅力を存分に感じることが出来る作品でした。

評価:★★★★★

MANIC STREET PREACHERS 過去の作品
Journal For Plague Lovers
POSTCARDS FROM A YOUNG MAN
NATIONAL TREASURES-THE COMPLETE SINGLES
Rewind The Film
FUTUROLOGY


ほかに聴いたアルバム

Triplicate/Bob Dylan

ノーベル文学賞の受賞で大きな話題となったボブ・ディランが、同受賞後はじめてリリースしたアルバムはなんと3枚組のアルバム。さらにオリジナルではなくすべてアメリカのオールドポップスのカバーと、ノーベル賞受賞後で話題の時期にこういうアルバムを出すとは・・・ある意味、彼らしいのかもしれません。3枚組とはいえ全95分程度という長さ。どの曲もジャジーな雰囲気でムーディーに聴かせる「大人のポップス」。味わい深いアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

BOB DYLAN 過去の作品
Together Through Life
Tempest

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2018年5月27日 (日)

60年代ポップスをそのまま再現

Title:My Name is SOLEIL
Musician:SOLEIL

非常に興味深い、ユニークなバンドがデビューしました。SOLEIL(それいゆ)というちょっと奇妙なバンド名はこのバンドのボーカルである女の子の名前。まだ若干14歳の彼女は日本人とイギリス人のハーフというアイドル的なルックスの持ち主なのですが、もともとたんきゅんデモクラシーというガールズポップデゥオで活動していた彼女をザ・ファントムギフト、les 5-4-3-2-1で活躍していたサリー久保田がプロデュース。それいゆにサリー久保田、さらにはヒックスビルのメンバーである中森泰弘の3人でバンドSOLEILを結成しました。(ちなみに「それいゆ」とは彼女の母親が好きだったかつて日本にあった女性誌の名前からつけられたそうです)

このバンドが非常にユニークなのは、60年代のイギリスやアメリカのポップスがそのまま今の日本に再現されたようなポップチューンが繰り広げられている点でした。作家陣にはメンバーのサリー久保田、中森泰弘のほか、真島昌利、近田春夫、GREAT3の白根賢一、カジヒデキ、元ピチカート・ファイブの高浪慶太郎など豪華なメンバーがズラリ。そんな豪華な作家陣が60年代を意識した甘いポップチューンを書いてきているわけですから、これが傑作でないわけがありません。

アルバムはタイトルからしてまさに60年代風な「魔法を信じる?」からスタート。こちらはまさに軽快なモータウンビートが楽しいポップチューンになっています。続く「恋するギター」は真島昌利によるモータウンビートのロックンロールナンバー。「ごめんね、テディベア」はそれいゆのかわいらしいボーカルがピッタリとくるようなポップチューン。メロや歌詞はアイドルポップ風なのですが、それが60年代風のアレンジにピッタリとマッチし、どこかレトロな雰囲気のガールズポップに仕上がっています。

同じくマージービートで軽快なロックンロール「姫林檎 GO!GO!」も非常に軽快なポップチューンになっていますし、スカ風のビートが軽快な「キャンディの欠片」はレトロでかわいらしいポップナンバーはどこか小島麻由美を彷彿とさせる雰囲気も。「さよなら14歳」も軽快なスカのナンバーなのですが、こちらもそれいゆの可愛らしいボーカルが上手くサウンドにマッチしたポップチューンに仕上がっています。

ボーカルは14歳の日英ハーフのかわいらしい女の子ということでアイドル的な要素も強いバンド。彼女のボーカルは決して技巧的に上手い訳でも声量があるわけでもないのですが、ちょっと素人っぽさも残すかわいらしいボーカルが60年代のガールズポップ風の楽曲に逆にマッチしており、SOLEILの大きな魅力となっています。

またオールドスタイルのポップですが、マニアックに走っているわけではなく、十分、今のポップシーンで通用しそうなポピュラリティーも備えており、そういう意味でも多くのリスナー層にアピールできそうなバンド。これからの活躍も非常に楽しみです。

評価:★★★★★

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2018年5月26日 (土)

洋楽邦楽がほどよくバランス

Title:enigma
Musician:MONKEY MAJIK

在日カナダ人の兄弟と日本人2名という洋邦ハイブリッドのバンドということでデビュー時には大きな注目を集めたMONKEY MAJIK。今年でデビューから12年目という、そろそろベテランの領域に入ってくる彼らですが、2年前にリリースされたアルバム「southview」はデビューから10年目にして彼らの最高傑作ともいえるアルバムに仕上がっていました。

それから2年ぶりとなるアルバムは、前作が彼らのキャリアの中で偶然リリースされた奇跡の傑作なのか、それとも前作で彼らが間違いなく殻をひとつ脱いで成長を遂げたのか見極めるための重要なアルバムと言えるのですが・・・結論としては、間違いなく彼らはひとつの殻を脱ぎ捨てて、大きな成長を遂げたことが実感できる傑作に仕上がっていました。

前作が傑作だった大きな理由は今までの作品に比べてグッと洋楽テイストに近づいたという点が大きなポイントでした。その方向性は本作にも引き継がれています。爽快なポップチューンである「Tokyo lights」に続く「40 days」がまず耳を惹きます。英語詞ということもありバタ臭さの強い本作ですが、ピアノの美しいフレーズにビート感を強調したエレクトロサウンドが非常に洋楽テイストが強いナンバーに。さらに「A.I.am Human」もファンキーなリズムが耳を惹く、エレクトロダンスチューンで、このテンポのよいリズム感はあきらかにJ-POPというよりも洋楽的なリズムを感じさせます。

実は今回のアルバム、前作リリース後、初の47都道府県ライブを実施し日本をくまなく旅してきた彼らが、そこで出会った日本の「神秘」に独自のアプローチで描いたアルバムという点がテーマとなっています。そのため「和」のテイストも多分に含められており、例えば「Venom」はR&Bと演歌と融合させたナンバーだそうで、女性ボーカルによるこぶしの利いた歌声が入っており、確かに「演歌」的なフレーズが楽曲の中に含まれていますし、例えば前述の「A.I.am Human」も洋楽的なリズムの中で流れる哀愁感あるメロはどこか和風なものを感じます。

また4曲目の「Seiko」は文字通り、松田聖子に捧げるナンバー。80年代的なエレクトロチューンなのですが、やはり彼女が活躍した80年代を意識しているのでしょうか。また「ray of light」も仮面ライダーの映画の主題歌ということもあるのでしょうが、いかにもJ-POP的な楽曲。ラストを飾る「のぞみ」もアコギの弾き語りによるフォーキーなナンバーなのですが、哀愁感あるメロはいかにも和風な情緒を感じさせます。

そういう意味ではアルバム全体としてきちんと「日本的」な要素の入ったアルバムであるということは間違いありません。ただ和風な要素を入れた楽曲にしても安直に「和」の要素を押し出している訳ではなく、バックにきちんとMONKEY MAJIKらしい洋楽的なテイストをきちんと残しています。そのためアルバム全体として平凡なJ-POPのアルバムに陥ることなく、MONKEY MAJIKの個性がしっかりと発揮された作品に仕上がっていました。

特にこの洋楽的なテイストと邦楽的なテイストが実にほどよくバランスされていたアルバムでした。前々作以前の彼らの作品は「洋楽風のJ-POP」といった感じで良くも悪くもよく出来たポップスだったのですが、中途半端に洋楽のテイストとJ-POPのテイストを取り入れた作品が多く見受けられました。今回のアルバムは全編、エレクトロサウンドを取り入れたリズミカルな曲が多いのですが、リズム感やサウンドの面は洋楽におもいっきりシフトすることにより洋楽的なスタイリッシュな雰囲気を出しつつも、一方ではメロディーラインではしっかりと日本的な哀愁感を出すことにより邦楽的な要素も残しています。その結果、洋楽的な要素と邦楽的な要素がほどよくバランスされた、まさに洋邦のハイブリッドバンドという彼らの特質を100%生かした傑作に仕上がっていました。

前作に引き続きの傑作で、バンドとして完全に「化けた」と言えるでしょう。ある意味、デビューから12年、以前のようなヒットを出さなければいけないというプレッシャーからようやく逃れられ、彼ららしさを出してきたとも言えるのかもしれません。売上的には正直以前に比べると低迷気味の彼らですが、これだけの傑作を続けてリリースすれば、おそらくまた人気が上向きになってくるのでは?これからの彼らの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

MONKEY MAJIK 過去の作品
TIME
MONKEY MAJIK BEST~10years&Forever~
westview
SOMEWHERE OUT THERE
DNA
Colour By Number
southview


ほかに聴いたアルバム

情景泥棒/THE BACK HORN

THE BACK HORNの新作は全7曲入りのミニアルバム。結成20周年を迎える彼らがベスト盤に続いてリリースした作品なのですが、それだけにある意味、THE BACK HORNのイメージそのままなアルバム。とにかくダイナミックなバンドサウンドに哀愁感あふれるメロディーラインを叙情感たっぷりにこれでもかというほど聴かせるアルバム。レゲエ的なリズムを取り入れた曲やサイケ的な要素を強めた曲もありましたが、基本的にはいかにも彼ららしい作品が収録されていました。

評価:★★★★

THE BACK HORN 過去の作品
BEST
パルス
アサイラム
リヴスコール
暁のファンファーレ
運命開花
BEST OF BACK HORN II

殺風景~15th Anniversary Edition~/熊木杏里

女性シンガーソングライターの熊木杏里が2003年にリリースしたデビューアルバムにシングルのカップリング曲を加えて再発した15周年の記念盤。哀愁感たっぷりのフォーキーなメロディーが魅力的。デビュー時から一定以上の完成度を誇ったことが感じられます。デビューから15年、いまひとつ大きなブレイクもない彼女。もうちょっと売れてもいいミュージシャンだと思うのですが・・・。

評価:★★★★★

熊木杏里 過去の作品
ひとヒナタ
はなよりほかに
風と凪
and...life
光の通り道

飾りのない明日
群青の日々

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2018年5月25日 (金)

日本を代表するパンクバンドのベスト盤

1970年代より活動を続ける日本を代表するパンクロックバンドとして名高いシーナ&ザ・ロケッツ。2015年にはボーカルのシーナが61歳という若さでこの世を去るという非常に残念な事態となりました。ただその後も残ったメンバーによりライブなどを中心に積極的な活動が続いているそうです。

さて、今回紹介するのはそんな彼らの楽曲を網羅的に収録したベストアルバム。

Title:ゴールデン☆ベスト シーナ&ロケッツ EARLY ROKKETS 40+1
Musician:シーナ&ザ・ロケッツ

まずこちらは1979年から1983年に所属したアルファレコード時代の楽曲を収録。鮎川誠とシーナのソロアルバムからの楽曲も収録されています。

Title:ゴールデン☆ベスト  シーナ&ロケッツ VICTOR ROKKETS 40+1
Musician:シーナ&ザ・ロケッツ

そしてこちらが1984年のビクター移籍後の楽曲を収録したベスト盤。シーナ存命時のラストアルバムとなってしまった現時点での最新アルバム、2014年の「ROKKET RIDE」の楽曲まで収録されています。

今回のベスト盤、廉価版ベストとしてのシリーズである「ゴールデン☆ベスト」の名前を冠していますが、メンバー鮎川誠選曲・監修による内容。それぞれ彼らの代表曲40曲がほぼ発表順に並んでおり、かつボーナストラックも1曲ついているという豪華な内容になっており、名実ともに2作まとめてオールタイムベストといった内容になっています。

個人的にシナロケは実は2000年のアルバム「Rock The Rock」を聴いたことがあるくらいで、彼らの楽曲を網羅的に聴くのは今回がはじめて。まず今回のベスト盤を聴いて感じたのは、パンクロックバンドというイメージが強い彼らですが、楽曲的には意外とポップな作品も多いなぁ、という印象でした。

特に「EARLY ROKKETS」収録の楽曲についてはやはり80年代初頭という時代性を反映したからでしょうか、シンセを積極的に取り入れた曲が多く、ニューウェーヴからの影響を強く感じます。メインボーカルのシーナの旦那であり、シナロケの多くの曲の作曲を手掛ける鮎川誠は非常にロックンロールやブルースへの造詣が深いミュージシャンで、「EARLY ROKKETS」の楽曲でも「たいくつな世界」「スージーQ」のようなガレージロックなナンバーも目立つのですが、「ミックス・ザット・マン」のようにブルージーなギターが入りつつもニューウェーヴ的なシンセが同時に入ってくるような曲もあったりと、80年代という時代性を感じます。

もっともブルースからの影響は楽曲の要所要所に顕著に感じられ、例えばサウンド的な面のみならず、彼女たちの代表曲「レモンティー」の歌詞もそう。直接は言及していないものの、あきらかにセックスを「レモンティー」に例えて歌うスタイルはブルースの世界ではよくありがちな歌詞のスタイル。もっとも、セックスに例えられるのは「レモンティー」よりもむしろ「ミルクティー」の方だったりするのですが(要するに男性のものが「ミルク」に例えられるんですね・・・)おそらくそれだとあまりに露骨なので・・・ということなのでしょう。

ただもっともポップス路線が多いとはいっても例えば「EARLY ROKKETS」収録の「マイ・ボーイフレンド」や「VICTOR ROKKETS」収録の「プリティ・リトル・ボーイ」のように60年代のガールズポップ風な曲も目立ち、ルーツ志向はポップな楽曲でもしっかりと感じることが出来ます。鮎川誠の音楽に対する深い造詣はこういうところでも感じることが出来ました。

またちょっと興味深かったのはむしろアルバム後半、最近の曲になればなるほどよりポップス色が後ろに下がり、よりロックやパンク色の強い楽曲が増えてきたという点でした。日本でもへヴィーなサウンドを前に押し出したバンドが次々とブレイクして、よりロック色の強い楽曲をやりやすくなってきた、ということでしょうか。また、最近の曲でもデビュー時と変わらないような勢いのあるパンクロックを奏でており、最後の最後まで・・・というよりも今でもしっかりと現役のバンドなんだな、ということをあらためて感じさせられました。

CDにして4枚。全82曲というかなりのボリューム感ですが、シナロケの歩みを知ることが出来るベスト盤。予想していたよりもポップ色が強い・・・といってもそういう面も含めて魅力的な楽曲が多く、いまさらながら、もっと彼女たちのアルバムをしっかりと聴いておけばよかったな、と思いました。ライブも一度行っておけばよかったな・・・。ロック好きは是非ともチェックしておきたいベスト盤です。

評価:どちらも★★★★★


ほかに聴いたアルバム

PLAY/ROTTENGRAFFTY

前作「LIFE is BEAUTIFUL」で初のベスト10ヒットを記録するなど、デビューから17年目のベテランバンドながらもここに来て人気上昇中のパンクロックバンドROTTENGRAFFTYの新作。エレクトロサウンドとポップ色を前に出した前作と比べると今回はエレクトロサウンドを取り入れた曲もあったものの、へヴィーなバンドサウンドを前に出したアルバムで、へヴィーロックを聴いたという満足感はグッと増した感じが。哀愁感あるメロが良くも悪くもいかにもJ-POP的な部分は否めないのですが、いい意味で聴きやすさを感じさせる作品でした。

評価:★★★★

ROTTENGRAFFTY 過去の作品
LIFE is BEAUTIFUL

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2018年5月24日 (木)

2週目にして1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週は珍しくランクイン2週目のアルバムが1位獲得です。

今週1位を獲得したのは、先週2位に初登場した韓国の男性アイドルグループEXO-CBX「MAGIC」。初登場から2週目にして1位獲得です。売上枚数は1万4千枚と先週の4万1千枚から大きくダウンしていますが、ほかに強力盤がなかったこともあり、ランクアップを果たしました。

2位初登場はBuster Bros!!!・MAD TRIGGER CREW「Buster Bros!!! VS MAD TRIGGER CREW」。男性声優キャラによるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」からのキャラソン。ある意味、HIP HOPとアニメファンって、ファン層的にもっとも遠い存在のように思っていたのですが、それがこのように結びつくという点にラップバトルがすっかり世間一般に浸透したということを感じさせます。それが長い目でみてHIP HOPにとっていい事かどうかはまた別の話ですが。

3位には韓国の男性アイドルグループMONSTA X「PIECE」が32位から一気にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。いきなり売上が大きく回復した理由はいまひとつ不明なのですが、5月18日まで来日ツアーが行われており、その影響でしょうか。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にcero「POLY LIFE MULTI SOUL」がランクイン。主に音楽ファンを中心に絶大な支持を誇るシティポップバンド。前作「Obscure Ride」がベスト10ヒットを記録しましたが、続く3年ぶりの新作もベスト10入り。初動売上1万枚は、その前作の8千枚(8位)を上回っており、その人気のほどに驚かされます。

7位にはTHE PRIMALS「THE PRIMALS」がランクイン。人気MMORPG「ファイナルファンタジーXIV」のサウンドディレクター、祖堅正慶を中心として2014年に結成されたオフィシャルバンドのデビューアルバム。初動売上6千枚で見事ベスト10入りです。

8位初登場はMooNs「GO AROUND」。アニメキャラによる男性アイドルプロジェクトB-PROJECTから登場したキャラクターユニット。初動売上6千枚。同プロジェクトでは、別のユニットKiLLER KiNG「ファントム・オブ・ラブ」の3千枚(18位)からアップしています。

最後9位には男性アイドルグループSUPER FANTASY「ROMEO and JULIET」がランクイン。初動売上5千枚で、これが初のベスト10ヒットとなりました。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年5月23日 (水)

高い人気の女性アイドルグループが1位

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位はここ最近、高い人気を誇るK-POPの女性アイドルグループが見事1位を獲得しました。

今週1位はTWICE「Wake Me Up」が獲得。5月7日付チャートで8位を獲得していましたが、その後は一度ベスト10落ち。このたび、CDリリースにあわせて再度ランクアップし、3週ぶりにベスト10返り咲きを果たし、なおかつ見事1位獲得となりました。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位を獲得したほか、ラジオオンエア数2位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数7位、You Tube再生回数6位といずれも上位を獲得。一部の固定ファンのみの人気に留まる傾向が強いK-POPの中では彼女たちは固定リスナー層に留まらない人気を見せています。オリコンでも初動売上26万2千枚で初登場1位を獲得。前作「Candy Pop」の26万6千枚(1位)からは若干のダウンとなっています。

2位には刀剣男士 formation of つはもの「BE IN SIGHT」がランクイン。ゲーム「刀剣乱舞」から派生したミュージカルの出演俳優によるシングル。実売数2位、PCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数25位を獲得しています。オリコンでも初動9万9千枚で2位初登場。刀剣男士名義では前作、刀剣男士 formation of 三百年「勝利の凱歌」の9万枚(1位)よりアップしています。

3位初登場は=LOVE「手遅れcaution」。指原莉乃×代々木アニメーション学院プロデュースの女性声優によるアイドルグループ。実売数3位、ラジオオンエア数45位、PCによるCD読取数25位、Twitterつぶやき数12位。オリコンでは初動売上6万2千枚で3位初登場。前作「僕らの制服クリスマス」の4万枚(3位)からアップしています。

続いては4位以下の初登場曲です。7位初登場はヤバイTシャツ屋さん「鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック」。メタ的視点の歌詞が特徴的なタイトル通り、ポップなメロディーのメロコアに仕上がっています。実売数8位、ラジオオンエア数4位、PCによるCD読取数5位を獲得。オリコンではこの曲を含むシングル「げんきいっぱい」が初動売上1万4千枚で4位初登場。前作「パイナップルせんぱい」の1万7千枚(2位)からはダウンしています。

8位にはパンクバンドWANIMA「Drive」が初登場でランクイン。映画「OVER DRIVE」主題歌で配信限定のシングルとなります。実売数は6位でしたが、ラジオオンエア数21位、Twitterつぶやき数36位にとどまりこの順位に。ちなみにオリコンではデジタルシングルチャートで2位初登場となっています。

そして9位10位にはいずれも韓国の男性アイドルグループBTS(防弾少年団)の曲がランクイン。9位には「DNA」が、10位には「FAKE LOVE」がそれぞれベスト10入り。特に「DNA」は最初のランクインから23週目にして初のベスト10入りとなっています。5月18日に韓国盤のアルバム「LOVE YOURSELF 轉 'Tear'」がリリースされた影響。「FAKE LOVE」は同盤の収録曲となっています。「DNA」は実売数68位ながらもTwitterつぶやき数6位、You Tube再生回数で3位を記録。また「FAKE LOVE」も実売数は26位ながらもTwitterつぶやき数で1位を記録して、それぞれベスト10入りとなりました。

さて今週のチャートで注目なのはHot100ですっかりおなじみの米津玄師「Lemon」は先週の2位から4位にランクダウンしてしまいましたが、今週はなんと「LOSER」が先週の66位から6位に一気にランクアップ。2016年10月10日付チャート以来85週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。これは同曲がHonda「JADE」のCMソングとしてオンエアされた影響。オリコンでもデジタルシングルチャートで3位にランクインするなど、一気に注目度を増し、ベスト10ヒットとなりました。おそらく今、最も勢いのある米津玄師の高い人気を感じさせるチャートとなりました。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2018年5月22日 (火)

ユニークな切り口で曲をわけた2枚組

1998年のデビュー以来、「半径5メートル以内の日常生活」をテーマに、日常のふとした出来事をユニークな視点で切り取った曲が話題のブリーフ&トランクス。2000年に活動を休止するものの2012年に再結成。そして今年ついに、デビュー20年を迎えました。そのデビュー20年を記念して2枚同時リリースとなったのが今回のベスト盤。

Title:ブリトラBESTバイブルⅠ~家族で聴いても恥ずかしくない曲集~
Musician:ブリーフ&トランクス

この2枚同時リリースの楽曲の分け方が彼ららしくてユニーク。まずこちらは「家族で聴いても恥ずかしくない曲集」として「下ネタ」や「エロ」の要素が薄めの曲がメイン。ブリトラの代表曲といっても過言ではない「青のり」「コンビニ」、また「らせん状の涙」「風のとらえかた」のような笑いの要素のない真面目な楽曲も収録されています。

Title:ブリトラBESTバイブルⅡ~ひとりでこっそり聴いた方がいい曲集~
Musician:ブリーフ&トランクス

で、こちらはタイトル通り、「ひとりでこっそり聴いた方がいい曲集」として「下ネタ」や「エロ」の要素がさく裂した曲が並びます。こちらも「さなだ虫」「ひとりのうた」「ペチャパイ」のような、再結成以前の代表曲が並ぶほか、特に「下ネタ」「エロ」がさく裂しているのは再結成後の楽曲が目立つ印象が。特に「まんげつ」「パチンコ」のように歌詞自体は真面目っぽく見えるにも関わらず、歌い方で一気にエロ歌詞に変わるという曲も非常にユニークです(ただこの手法は少々つボイノリオっぽいのですが)。

そんな訳で今回の2枚のベスト盤、再結成前の曲はもちろんのこと、ここ最近の再結成後の曲も多く収録されています。再結成前の曲と再結成後の曲を並べても楽曲のユニークさに差異はなく、むしろ上に書いた「まんげつ」や「パチンコ」のような新たな手法を取り入れるなどミュージシャンとしてさらなる進化を感じさせます。

またここ最近の曲を聴いても、いい意味で若手バンドのような初々しさを感じます。彼らの曲にはどこか学生ノリ的な部分が感じられ、メンバー2人の仲の良さも感じられるのですが、この学生ノリ的な仲の良さが、ある種のセオリーに捕らわれない、自由な視点からのユニークな曲を作り続ける原動力なのはないでしょうか。

最近の曲を含めてテーマとなっている「半径5メートル以内の日常生活」の主人公は、学生であることも多く、正直言ってここ最近の曲に関しては、既に40歳を超えた彼らが歌うには「いつまで学生ネタを続けるんだろう」という印象を受けないではありません。ただ経歴を見る限り、一般企業にサラリーマンとして就職した経験のない彼らが、無理にサラリーマンネタに走るよりは、誰もが一度は経験する「学生時代」のネタを続けた方が、より共感が得られるのかもしれませんが・・・。

またこの手のユニークなネタを歌うと、ここ昨今ではよく「あるある」ネタに走りがちなのですが、彼らの場合は「あるある」ネタというよりも「あるのか?」と思うような、ちょっと暴走しているような主人公やネタが登場することが少なくありません。ただそれだけに彼らの発想のユニークさが際立ち、独特のブリトラワールドが展開されている点も大きな魅力。「そんなことあるわけないだろ」と思いつつも「でも、あるかも・・・」と思ってしまう曲もまた彼らの魅力に感じます。

そんな訳で、2枚のアルバムでブリトラの魅力を存分に感じられるベスト盤。個人的には「Ⅱ」の方がよりブリトラの本質的な部分が出ているように思うのですが、「Ⅰ」もまた彼らの魅力がしっかりと伝わる選曲になっていました。デビュー20年ながらもまだまだ勢いが止まらない彼ら。ここ最近のアルバムリリースペースもかなりハイペースですし、これからもユニークな曲をたくさん聴くことが出来そう。これからの彼らの活躍も楽しみです。

評価:どちらも★★★★★

ブリーフ&トランクス 過去の作品
グッジョブベイベー
ブリトラ道中膝栗毛
ブリトラ依存症
手のひらを満月に


ほかに聴いたアルバム

#5/凛として時雨

約2年7ヶ月ぶり、フルアルバムとしては実に約4年10ヶ月ぶりとなる凛として時雨のニューアルバム。久々のアルバムでした、凛として時雨としての楽曲の方向性にはほとんどブレがなく、焦燥感もあるハイテンポなリズムに哀愁感たっぷりのマイナーコードのメロディーラインにハイトーンのボーカル。以前に比べるとサウンドは若干軽めになったかな、という印象もあるのですが、全体的には以前から変化はなく、良くも悪くも安心して聴けるアルバムでした。

評価:★★★★

凛として時雨 過去の作品
just A moment
still a Sigure virgin?
i'mperfect
Best of Tornado

es or s

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2018年5月21日 (月)

13年の年月を経て

Title:KEEENLY
Musician:DMBQ

今回紹介するアルバムはDMBQというロックバンドの新作。この少々奇妙なバンド名は「Dynamite Masters Blues Quartet」の略称だそうで、なにげに結成が1989年という30年近いキャリアを持つベテランバンドだったりします。

彼らはもともと90年代から2000年代初頭にかけて積極的に活動。2002年にはavexと契約、さらに2005年には全米デビューを果たすなど、一時期、日本のみならず海外でも話題のバンドとして大きな注目を集めました。

しかし、その全米デビュー後のツアーで悲劇が起こります。2005年11月の全米ツアー中、交通事故に逢い、ドラムの西浦真奈が急逝。ほかのメンバーも病院に運ばれるという事態となってしまいました。その後、新メンバーを迎えて活動を再開するものの、ライブ活動のみに留まり、音源は(トリビュートアルバムなどへの参加はあったものの)2005年のアルバム「The Essential Sounds from the Far East」が最後となっていました。

そしてそれから13年。ようやく待望となるニューアルバムがリリースされました。その13年の間もライブ活動はコンスタントに実施していましたし、リーダーである増子真二はボアダムスへの参加やエンジニアとしてN'夙川BOYSの楽曲に関わっていたりと積極的な音楽活動を進めていたのですが、DMBQとしてのオリジナルアルバムとしては非常に久しぶりとなるニューアルバムとなりました。

ちなみに私は以前、DMBQのライブを見たこともありますし、彼らのアルバムも何枚も聴いたことがありました。そんな私でも、久しぶりに彼らのアルバムを耳にするとそのサウンドにまずは度胆を抜かれました。まずアルバムがスタートすると流れてくるのはこれでもかというほど分厚くへヴィーなギターのリフに重いドラムのリズム。そこにさらに別のシンセのサウンドが重なり、これでもかというほどの音の塊が耳に飛び込んできます。

彼らのサウンドは例えるながらサイケデリックに振り切れたレッド・ツェッペリンが、現代に復活したといった感じ。70年代さながらのへヴィーでサイケデリックなバンドサウンドながらも、音圧は今の時代にしっかりと対応したもの。サウンドの方向性としては70年代直系の音なのですが、その音の感じはしっかりと2010年代の今にアップデートされているため、ほとんど違和感を覚えません。

そんな暴力的ともいえるサウンドが続く「Blue Bird」が終ったかと思えば、そのまま続く「Alone In The Milky Way」は分厚いギターノイズが延々と続く、混沌とした世界観を感じさせるようなナンバーに。まさにサイケデリックな音の世界に迷い込んだような楽曲にトリップ感を覚えること間違いありません。

楽曲はそのまま「Fitzcarraldo!」へ。埋め尽くされるノイズのピッチが徐々に高くなっていったかと思えば「No Things」では再びへヴィーなギターリフが展開するハードロック的なナンバーへと変化していきます。さらに「Thou,Winter Song」は12分にも及ぶこのアルバム最長のナンバー。最初は強烈なノイズの洗礼を受けるこの曲なのですが、後半はギターノイズが埋め尽くす中、重いドラムがリズムを刻み、その中で流れるシンセの音でどこかスペーシーな雰囲気に。12分という長さながら緊迫感あるサウンドで一瞬たりとも耳の離せないナンバーになっています。

終盤の「So The Word Of Good Spread」は疾走感あるギターロック。ある種の聴きやすさのあるナンバーなのですが、ハイテンポなドラムスとギターノイズでトリップ感満載のナンバーに。そしてラストの「Cosmos, Universe」は、ある意味1曲目と対になるようなヘヴィーなギターリフでゆっくりと展開していくハードなナンバーで締めくくられます。

とにかく終始、迫力あるヘヴィーなサウンドに圧倒され続けるアルバム。決して「ポップで聴きやすい」というアルバムではありませんが、そのダイナミックなサウンドはロックという音楽が好きなら、必ず食指にひっかかるサウンドだと思います。13年前という長いインターバルを経たのちのアルバムですが、13年前よりもその凶暴さは増していたように思われます。これはライブも圧倒されそうだなぁ・・・と感じつつ、その一方、ライブで感じるであろう迫力が、CD音源にもしっかりと収録されていました。13年の年月を経て、間違いなくバンドとして成長したアルバム。またこれから再び注目を集めるバンドとして日本のロックシーンで暴れまわるかもしれませんね。

評価:★★★★★

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2018年5月20日 (日)

踊れるロックがテーマ

Title:BEAT&ROSES
Musician:及川光博

いまだにほぼ毎年、アルバムをリリースし、さらにライブツアーを行うミッチーこと及川光博。さらには俳優としての活動も目立ち、御年48歳、デビューから20年以上という「ベテランミュージシャン」の域に入る彼ですが、まるで若手ミュージシャンのような積極的な活動が続いています。

そんな前作からわずか1年というインターバルでリリースされたのがこの新作。全7曲入りのミニアルバムとなっています。ここ最近、ミニアルバムのリリースが続いています。ちょっと寂しい感じもするのですが、ただアルバムリリースの間隔をあけてでもフルアルバムをリリースするよりも、少しでも早く多くの曲をファンに届けたいという彼の意気込みが感じられます。今回もまさにミッチー節といえる彼らしい曲が並んでいました。

今回のアルバムコンセプトは「踊れるロック」。そしてアルバムの中にそのテーマに沿ったJ-POPのカバーが収録されている点は前作「FUNK A LA MODE」と同じような構成になっています。そして今回カバーに選ばれたのは布袋寅泰の「スリル」。原曲に比べてギターの音は後ろに下がり、シンセの音を入れて軽快なビートを強調したようなカバー。ちょっと意外な選曲のようにも思いましたが、今回のアルバムの中でしっくりおさまっており、しっかりとミッチーの曲になっています。

そんな「スリル」以外にも今回はテーマに沿った「ロック」の曲が多く収録されています。1曲目「インフィニティ∞ラブ」から軽快なギターロックのナンバーからスタート。「セックスフレンド」のセルフカバー「セックスフレンド<2018>」もハードロック風なカバーに仕上がっていますし、ラストのタイトル曲「BEAT&ROSES」も軽快なビートロックのナンバーに仕上げています。

ほかのナンバーも、「恋にうつつをぬかしたい」もキラキラしたシンセが目立つ楽しいポップチューンながらもヘヴィーなギターとベースラインというロック風のアレンジが加わっていますし、「Birthday~バラのブレス~」もメロディアスなポップチューンながらも分厚いギターサウンドが加わっているなど、ロック風のアレンジが目立ちます。

そんな訳で、全体的にロックなアレンジを主軸とした楽曲が目立つ今回のアルバム。ただし、基本的にはいつものミッチーらしさは変わらず、良い意味でファンにとっては安心して聴ける作品ですし、安定感ある作品に仕上がっていたと思います。ロックなアレンジなだけにライブ映えしそうですし、ライブは盛り上がりそう・・・。聴いていて素直に楽しめる1枚でした。

評価:★★★★

及川光博 過去の作品
RAINBOW-MAN
美しき僕らの世界
喝采
銀河伝説
ファンタスティック城の怪人
さらば!!青春のファンタスティックス
男心DANCIN'
20 -TWENTY-
パンチドランク・ラヴ
FUNK A LA MODE


ほかに聴いたアルバム

doorAdore/Plastic Tree

昨年、メジャーデビュー20周年を迎えたPlastic Tree。ただライブ公演は行ったものの音源としてはベスト盤もオリジナルアルバムもリリースせずリリースされたのはトリビュートアルバムのみ。ある意味、マイペースな感じが彼ららしいのですが、約2年4ヶ月ぶりにリリースされたオリジナルアルバムが本作。基本的にはいつもの彼ららしい耽美的で哀愁感あふれるメロディーにノイジーなギターロックというスタイルなのですが、シューゲイザー路線はちょっと後ろに下がり、ダイナミックなバンドサウンドが目立つような印象が。前作「剥離」でもバンドサウンドのへヴィネスさが増していた印象がありましたが、その路線を引き継いだような新作になっていました。

評価:★★★★

Plastic Tree 過去の作品
B面画報
ウツセミ
ゲシュタルト崩壊
ドナドナ
ALL TIME THE BEST
アンモナイト
インク
echo
剥離

スポットライト/FLOWER FLOWER

ソロミュージシャンとして活動していたyuiが結成したバンドFLOWER FLOWER。yuiの結婚・出産により一時期活動を休止していたものの、徐々に活動を再開。そして3年ぶりとなるアルバムがリリースされました。

楽曲的には比較的シンプルなギターロック。前作「色」では実験的な作品も目立ったのですが、本作は一部幻想的な曲はあるものの、基本的にはポップな楽曲がメイン。ただ、バンド色、ロック色はより強くなり、ロックバンドとしての明確な方向性が感じられます。インパクトとしてはちょっと弱く、核となるような1曲がないのはちょっと残念ですが、YUI時代に感じられた外連味なく楽しめるアルバムになっていたと思います。

評価:★★★★

FLOWER FLOWER 過去の作品


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2018年5月19日 (土)

なにげにワンマンははじめて

椎名林檎 ひょっとしてレコ発2018

会場 名古屋国際会議場センチュリーホール 日時 2018年5月11日(金)19:00~

Ringolive

なにげにほぼ20年来のファンなのですが、実はワンマンライブに足を運ぶのははじめてだったりします。椎名林檎ワンマンライブ@センチュリーホール。いままで椎名林檎はエゾロックで1回、東京事変として日比谷野音でライブを1回見ただけ。今回、念願のチケットも手に入れ、初となる椎名林檎ワンマンに足を運んできました。

会場についたのは19時ちょっと前。で、ホールに入るとステージの後ろで既にカウントダウンがはじまっていました。私が来た時は3分前。やがて10秒前になるとカウントダウンがスタートし、0になると同時にロケットが打ちあがる映像が流れるのと同時にライブがスタート。最初は「人生は思い通り」からスタート。シングルのカップリング曲という、ちょっと意外なスタートとなりました。

最初はホーンセッションが楽しく鳴り響くレビュー風の楽曲からスタート。さらに「色恋沙汰」ではジャジーな雰囲気を醸し出し、全体的にムーディーな雰囲気が漂う序盤となりました。その間もバックのスクリーンでは、最初はロケットが打ちあがり宇宙に出ていくシーンからスタートし、ド派手な映像の演出が続いていきます。

そしてこの日一番歓声があがったのは懐かしいヒット曲「ギブス」を演奏したところでしょうか。いままでのムーディーな雰囲気から一転、へヴィーなバンドサウンドをバックとしたロッキンな演奏に。さらにこちらも懐かしい「意識」へと続き、個人的にはかなり懐かしさを感じる展開となりました。

さらに「JL005便で」では曲にあわせた飛行機の映像をバックにオープニングロールとしてバンドメンバーやスタッフが紹介されます。ちょっと映画みたいな展開がユニーク。この日はこの映像もさることながら、ライブ全体でひとつのエンターテイメントとして組み立てられたような構成が目立ちました。

そしてこちらもちょっと懐かしい「浴室」。いままでのバンドサウンドから一転、打ち込みでテンポよいリズムからスタート。最初は着物姿で歌っていた彼女ですが、ラストでは着物を脱いでセクシーなキャミソール姿に(!)。思わず目をみはってしまいました(笑)。

その後は「暗夜の心中立て」で番傘をつかって踊りを披露していたかと思えば、最後は番傘で自らの姿を隠し、そのままステージからいなくなるという演出。ここで一度、ステージから去ります。

後半戦はスタンダードナンバー「枯葉」のカバーからスタート。映像をバックにフランス語の語りも入り、映画風でムーディーな雰囲気からのスタートとなります。そんな「大人」な雰囲気からスタートした後半戦なのですが、ガラッと雰囲気がかわるのが「重金属製の女」。いままでの色っぽい雰囲気から一転、Tシャツ1枚のパンクロックな雰囲気に。ステージも完全にロックな雰囲気に一転。へヴィーなバンドサウンドを聴かせます。

さらに「華麗なる逆襲」では「MANGARAMA」という文字(椎名林檎の率いるバンドの名前だそうです)をバックのダンスチューンに。この日、観客には小さな旗が配られましたが、椎名林檎本人もこの旗を持って、みんなで振り回します。ちなみにこの旗、ちょっとチベットの文字のような不思議な文字が書かれています。よく見るとバンドメンバーの服もどこかモンゴル風な雰囲気が・・・。テーマは東アジアの内陸部、なのでしょうか?

後半はバンドサウンドメインのロックの雰囲気が強い楽曲が続きますが、ラストは「人生は夢だらけ」で締めくくり。ホーンセッションも入って賑やかな雰囲気で、ラストにふさわしい展開に。ある意味、スタートと対になるような構成といった感じでしょうか。

もちろんその後は盛大なアンコールが。アンコール1曲目はこちらも懐かしい「丸の内サディスティック」からスタート。原曲と異なりフランス語(?)混じりの歌詞になっており、ちょっとムーディーな雰囲気が加わります。そして続いては「NIPPON」。ロック色が強いナンバーで盛り上がります。そしてラスト前にようやくこの日はじめての簡単なMCが。「また近いうちに会いましょう。明日もやってるよ!」というMCが妙にかわいらしさを感じました(笑)。ラストは「野性の同盟」で締めくくり。ライブは幕を閉じました。

序盤から最後まで一気に走り抜けた感のあるこの日のライブ。MCもラスト前にちょっとあっただけ。結果として1時間40分程度というちょっと短いステージでした。

最初から最後までバックの映像をふんだんにつかった演出が魅力的。上にも書いた通り、ライブ全体としてひとつのエンタテイメントとして構成されたようなステージで、ライブ自体ももちろんのこと、演出にも惹かれるものがありました

そしてこの日のライブなのですが、「ひょっとしてレコ発」というタイトルとは裏腹に、残念ながらアルバムはリリースされなかったのですが、それだけにかなり懐かしいナンバーから最近の楽曲まで網羅したベスト盤的なセットリストになっています。

またそのベスト盤的なセットリストによってあらためて感じたのですが、椎名林檎って、本当に音楽的な幅が広いんですね。ビックバンド的な曲からジャジーな曲、バリバリのロックナンバーや打ち込みのエレクトロサウンドなどなど、ありとあらゆるタイプの曲が次々と展開されるステージ。それにも関わらず、楽曲はきちんと椎名林檎のカラーが一貫してついておりバラバラになっていません。バラバラになっていない要因としてはどの曲もポップなメロディーがしっかりと流れているから。あらためてメロディーメイカーとしての椎名林檎の魅力も再認識させられました。

正直なところ2時間にみたないライブはかなりあっという間という印象が強く、非常に素晴らしいステージだっただけに、あまりにも短く、そういった意味での物足りなさを感じてしまいました。それだけ中身の濃いステージだった、ということでもあるのですが・・・。とにかく、椎名林檎の魅力を再認識させられたステージで非常に楽しかったです。これはまた次のライブにも足を運ばなくては!

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2018年5月18日 (金)

初音ミク10周年!

Title:HATSUNE MIKU 10th Anniversary Album 「Re:Start」

昨年、最初のリリースから10周年を迎えたボーカロイドソフト初音ミク。このソフトが音楽シーンに与えた影響はご存じの通り。動画サイトを中心に、いわゆる「ボカロP」と呼ばれる初音ミクを使用して数多くの楽曲を生み出すミュージシャンたちが登場。そしてその中でその「ボカロP」出身の米津玄師が昨今ではお茶の間レベルでのヒットを飛ばしているのはご承知の通りです。

本作はタイトル通り初音ミクリリース10周年を記念してリリースされたアルバム。2枚組となっており、Disc1は人気ボカロPが10周年を記念して書き下ろした曲が収録されており、Disc2は、過去のボカロ曲の代表曲が収録された内容となっています。残念ながらハチこと米津玄師は参加していないようですが・・・。

さて、ちょうど先日、同じく初音ミク10周年にあわせるかのようにリリースされたオムニバスアルバム「合成音声ONGAKUの世界」を紹介しました。こちらは「初音ミク」という名前を一切出さないタイトルやジャケット写真からもわかるようにストイックの音楽のみの側面にスポットをあてたアルバム。ボカロ曲として決して大ヒットは記録していなくても音楽的に「聴くべき」と思われる曲を収録しています。

この「Re:Start」はある意味、「合成音声ONGAKUの世界」とは裏表の関係にあるアルバムと言えるかもしれません。「合成音声ONGAKUの世界」がボカロシーンにおける「サブカルチャー」的な存在だとすると、「Re:Start」におさめられている曲はボカロシーンにおけるメインカルチャー。ヒットシーンの中心を行くような曲が収録されています。

そんな「メインカルチャー」の曲を集めた本作を聴くとまず感じるのが、収録曲が良くも悪くもJ-POPだな、ということでした。「合成音声ONGAKUの世界」のアルバム評でも書いたのですが、全体的に昨今のJ-POPシーンと共通するような情報を詰め込んだようなポップスがメイン。サウンド的にはオルタナ系のギターロック、あるいはエレクトロポップがメインとなっており、目新しいものはありません。当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、オリコンのヒットチャートに入ってくる曲とボカロのヒット曲に大きな差異はありません。

個人的にはボカロシーンはもっと自由度が高いはずなので、もっといろいろなタイプの曲がヒットすればおもしろいのに・・・とは思っているのでちょっと残念に感じるのですが・・・。ただ、そうとはいってこのオムニバスアルバム、さすがにそんな中でも人気のボカロPの曲やボカロ曲が収録されているだけあって、しっかりと聴かせる魅力的なポップソングが並んでいます。

特に印象に残ったのがまず和田たけあき(くらげP) feat.初音ミク「ひとごろしのバケモノ」。童謡のような世界観のファンタジックな歌詞とカントリーテイストの軽快なポップチューンが耳を惹く作品。また、れるりり feat.初音ミク「神様からのアンケート」も歌詞がユニークで耳を惹く作品。ともすれば早口すぎて聴き取りにくい曲が多いボカロ曲の中で、しっかりと歌詞が耳に残る作品になっていました。

ボーカロイド音楽のシーンの「中心」を総括的に知るにはもってこいのオムニバスアルバム。有名曲も手っ取り早くおさえられます。ただ、純粋に音楽的な側面について言えばやはり「合成音声ONGAKUの世界」の方が断然よかったかなぁ。初音ミクの「合成音声」という側面を上手くいかしていたのもあちらに収録されていた曲が多く、こちらは「初音ミクの消失」みたいな曲はあるものの、基本的には「人間のボーカルの代わり」みたいな位置づけにすぎない曲がほとんどだったし・・・。

もっとも、「合成音声ONGAKUの世界」に収録されているような曲だけではなく、こういう万人が楽しめる「売れ筋の曲」があるからこそ、ボカロのシーンとしての分厚さが増しているのは間違いありません。一時期に比べるとちょっと落ち着いた感じもするボカロシーンですが、まだまだ魅力的なミュージシャンたちが登場してきそう。これからのボカロシーンもまだまだ要注目です。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Year Book 1985-1989/坂本龍一

坂本龍一のレア音源を集めた「Year Book」シリーズの第4弾。今回はタイトル通り、1985年から1989年の音源を収録したアルバムで、なんと全5枚組の大ボリューム。まずDisc1は1985年の「国際科学技術博覧会」いわゆるつくば万博で行ったライブパフォーマンスの模様をおさめたライブ盤。Disc2はビル・ラズウェルや近藤等則と1985年に六本木インクスティックで行った即興演奏の模様をおさめたライブ盤。Disc3,4は1985年にバッハ生誕300年を記念して製作された音楽パフォーマンス「マタイ1985 ~その人は何もしなかった~」の模様を収録した音源。さらにDisc5ではNHK「科学万博ハイライト」エンディング・テーマ曲やフジテレビCM「しなやか思想」テーマ曲などのレア音源が収録されています。

全体的にはいかにも現代音楽的な曲が多く、ポップスさは全くなく、聴く人を選びそう。また楽曲的にも「いかにも80年代」といった感じの曲が多く、昨今、80年代の音楽は見直されつつあるものの、それを差し引いても、今聴くとちょっと厳しいかも、といった感じの曲の見受けられます。どちらかというと「記録」という側面の強いアルバム。興味深い貴重な音源なのですが、5枚組というボリュームもあり、熱心なファン以外にはちょっとお勧めできにくいかも。

評価:★★★

坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984

ASYNC-REMODELS

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2018年5月17日 (木)

ベスト盤が1、2フィニッシュ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週は1位2位に2枚同時リリースされたベスト盤が並びました。

主にアニソンを中心に歌う女性ボーカリストLiSAの2枚同時リリースのベスト盤「LiSA BEST-Way-」が初動売上4万2千枚で1位を獲得。「LiSA BEST-Day-」が初動売上4万1千枚で2位に続き、2枚同時のランクインとなっています。彼女の1位獲得はシングルアルバム通じて初。前作「LiTTLE DEViL PARADE」の2万8千枚(4位)からもアップしています。

3位は韓国の男性アイドルグループEXO-CBX「MAGIC」がランクイン。アイドルグループEXOからチェン、ベクヒョン、シウミンの3人が組んだ別働ユニット。初動売上4万1千枚。直近作は韓国盤の「BLOOMING DAYS」でこちらの7千枚(10位)よりは大きくアップ。ただし、国内盤では前作「GIRLS」の5万5千枚(2位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まずは4位にポルカドットスティングレイ「一大事」が入ってきました。最近人気上昇中の女性ボーカル+男性3名のロックバンドで4位は自己最高位。ただし初動売上1万2千枚は前作「全知全能」の1万6千枚(6位)よりダウン。ただし、前作がフルアルバムだったのに対して本作はミニアルバムという要因もあるのですが。

5位初登場はヨルシカ「負け犬にアンコールはいらない」。ボカロPとして活躍していたn-bunaが結成したロックバンドで、これが初のベスト10入りとなります。初動売上は8千枚。前作「夏草が邪魔をする」の2千枚(32位)から大きくアップしています。

7位にはThe BONEZ「WOKE」が入ってきました。こちらはRIZEのJESSEが、元RIZEのNAKA、Pay money to my PainのT$UYO$HI、ZAXと組んだロックバンド。本作が初のベスト10ヒットとなりました。初動売上6千枚は前作「To a person that may save someone」の4千枚(16位)からアップ。

最後9位10位には海外勢が並びました。まず9位にはイギリスの4人組ロックバンドArctic Monkeys「Tranquility Base Hotel & Casino」がランクイン。約5年ぶりのアルバムとなります。初動売上は4千枚。前作「AM」の7千枚(10位)よりダウン。

そして10位にはアメリカのシンガーソングライターCharlie Puth「Voicenotes」がランクインしています。こちらが2枚目のアルバムでベスト10ヒットは初。ただし初動売上4千枚は前作「Nine Track Mind」(27位)から横バイとなっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2018年5月16日 (水)

アイドルグループが目立つ中

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はアイドルグループが目立つチャートとなりました。

まず1位は名古屋を中心に活動する男性アイドルグループBOYS AND MEN「進化理論」が初登場で獲得。TBS系アニメ「新幹線変形ロボ シンカリオン」オープニングテーマ。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)1位、Twitterつぶやき数17位、ラジオオンエア数40位を記録。オリコンでは初動売上13万9千枚で1位を獲得。前作「帆を上げろ!」の16万5千枚(2位)よりダウン。

また3位には乃木坂46「シンクロニシティ」が先週2位よりワンランクダウンでベスト3をキープ。さらに4位以下でもまず4位にハロプロ系女性アイドルグループアンジュルム「泣けないぜ...共感詐欺」が初登場でランクイン。実売数2位ながらもラジオオンエア数28位、PCによるCD読取数25位、Twitterつぶやき数47位といずれも奮わなかった影響でこの位置に。オリコンでは初動売上4万4千枚で2位初登場。前作「愛さえあればなんにもいらない」の4万5千枚(3位)から微減。

また6位にはBABYMETALの配信限定シングル「Distortion」が初登場でランクイン。実売数7位、Twitterつぶやき数9位、You Tube再生回数28位を記録。さらに10位に韓国の男性アイドルグループBTS(防弾少年団)「Don't Leave Me」が先週の14位からランクアップしてベスト10入り。4月4日にリリースされたアルバム「FACE YOURSELF」収録の楽曲で、フジテレビ系ドラマ「シグナル 長期未解決事件捜査班」主題歌に起用されています。実売数は34位に留まりましたが、Twitterつぶやき数で1位を獲得し、初のベスト10ヒットとなりました。

そんなアイドル勢の中で、孤軍奮闘2位を獲得したのが米津玄師「Lemon」。先週は4位までランクダウンしましたが、再び2位に返り咲き。実売数4位、ラジオオンエア数35位、Twitterつぶやき数11位を記録したほか、PCによるCD読取数及びYou Tube再生回数では先週から引き続き1位を記録しており、まだまだロングヒットは続きそうです。

4位以下のアイドル系以外の初登場ではまず8位にレン(楠木ともり)「To see the future」がランクイン。アニメ「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」エンディングテーマで、登場キャラクターのレンが歌っている設定のキャラソン。声優の楠木ともりとしても初のシングルとなります。実売数6位、PCによるCD読取数11位、Twitterつぶやき数15位を記録。ちなみにオリコンでは初動売上4千枚で18位止まり。ただし、デジタルシングルチャートでは3位を記録しており、デジタル系中心のヒットとなっています。

最後9位には三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「恋と愛」がランクイン。6月6日リリース予定のアルバム「Future」からの先行配信曲。実売数28位、Twitterつぶやき数5位、You Tube再生回数10位を記録。主にネット系チャートで高順位を記録し、ベスト10入りとなりました。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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2018年5月15日 (火)

ソロ活動10年目のベスト盤

Title:(re:Rec)
Musician:AA=

ご存じ90年代後半から2000年代初頭にかけて絶大な人気を誇り、日本のみならず海外でも多くのファンを獲得していたパンクロックバンドTHE MAD CAPSULE MARKETS。そのバンドの全曲のプロデュースを手掛け、ほとんどの曲の作曲を手掛けていた上田剛士。2006年から残念ながらTHE MAD CAPSULE MARKETSは活動休止状態に入っていますが、2008年から自身のソロプロジェクト、AA=を立ち上げ、その後、アルバム6枚をリリースし、現在まで積極的な活動を続けています。

本作はそんな彼の活動10周年を迎えてリリースされた初のベストアルバム。タイトル「(re:Rec)」(リレックと読むようです)の名前の通り、全曲再録した内容となっており、単なる過去の曲の羅列ではなく、今のスタイルにリメイクしている点、彼のこだわりも感じさせます。

楽曲的にはTHE MAD CAPSULE MARKETSの司令塔だった上田剛士のソロプロジェクトだけあって、基本的にはマドカプの延長線上のような楽曲がメイン。エレクトロサウンドにへヴィーなバンドサウンドを重ねたハードコア路線が主軸となっており、「2010 DIGItoTALism」「sTEP Code」のようなシャウト気味のボーカルに分厚いサウンドというスタイルが耳を惹きます。ただ、一番印象的なのはただハードな楽曲スタイルだけではなく、「KILROY WAS HERE」「The Klock」のように、へヴィーなサウンドが続いたかと思えば、途中、いきなりサウンドが爽やかに抜けてポップになるスタイルの曲。こういう曲のスタイルはTHE MAD CAPSULE MARKETSでもよく見受けられ、彼らの曲の大きな魅力となっていましたがAA=でもそのスタイルは受け継がれていました。

また、ただへヴィネスさ1本ではなく、例えば「ROOTS」はレゲエ的な裏打ちのリズムで軽快なポップチューンになっていますし、「DREAMER」のようにノイジーなエレクトロビートは流れていつつも、ハードコアなサウンドではなくポップなメロディーが主軸となっているような曲もチラホラ。ハードなデジタルサウンドを聴かせるだけではなく、メロディーメイカーとしての魅力も持っていることを感じさせます。

そして今回のベスト盤の中でも一番インパクトがあったのが、自らのミュージシャン名「AA=」の元ともなっている「ALL ANIMALS ARE EQUAL」。もともとはジョージ・オーウェルというイギリスの作家の作品「動物農場」に登場する言葉。基本的にエレクトロ路線を前に押し出したへヴィーなバンドサウンドよりもエレクトロ色の強いナンバーなのですが、「すべての創造は平等である」という繰り返させるサビの歌詞に彼の強い主張を感じるナンバーになっています。

そんな訳でへヴィーなエレクトロサウンドは文句なしにカッコよく、ロック好きには文句なしにお勧めできるAA=。今回のベスト盤もそんな彼の魅力が文句なしに発揮されており、入門盤的にも文句なしにお勧めできるアルバムにあんっています。ただ・・・THE MAD CAPSULE MARKETS時代の曲と比べると、確かに方向性的には完全に一致するのですが・・・「でも、何かが違う・・・」(by「2010 DIGItoTALism」)と印象を受けてしまいます。一番わかりやすいのがドラムスのサウンドが軽くなってしまっているという点なのでしょうが、それ以外にも全体的にTHE MAD CAPSULE MARKETSの3人が奏でていたグルーヴ感に比べると、どこか物足りなさを感じてしまいます。

最近はBABYMETALなどへの楽曲提供でも大きな話題をさらった上田剛士。ただ、正直なことを言ってしまうと、それよりも是非、THE MAD CAPSULE MARKETSの活動再開を!!とも思ってしまいます。まあ、上田剛士一人の問題ではないだけに活動再開は難しいのかもしれないのですが・・・。AA=の楽曲ももちろん素晴らしい名曲ばかりなのですが、THE MAD CAPSULE MARKETS不在の物足りなさを、10年以上たった今でも正直感じてしまったベスト盤でした。

評価:★★★★★

AA= 過去の作品
#1
#2
#
4

#5

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2018年5月14日 (月)

岸田繁の好みを強く反映

Title:京都音楽博覧会2017 in 梅小路公園

2007年から毎年、京都の梅小路公園でくるり主催により開催されている「京都音楽博覧会」。私も一度だけ足を運んだことがありますが、毎年、「音楽博覧会」という名前にふさわしく、ロックやポップスというジャンルを超えて、ほかの音楽フェスではまずお目にかかれないようなミュージシャンも呼び、話題となっています。

今回紹介するアルバムは昨年9月に行われた「京都音楽博覧会」の模様をおさめたライブアルバム。配信限定でのリリースとなっています。2017年に開催された「音楽博覧会」では、おなじみのくるりはもちろん、ブラジルのミュージシャン、Alexandre Andrés & Rafael MartiniやインドネシアのシンガーソングライターDhira Bongs、ブエノスアイレス出身のバンドネオン奏者でシンガーソングライターのTomi Lebreroといったワールドミュージック界隈のミュージシャンも多く参加しています。

さらには京都音博フィルハーモニー管弦楽団としてスペシャルオーケストラが参加したほか、このオーケストラをバックに「京都音博”生”歌謡ショー」と称してアジカンのゴッチ、オリジナルラヴ田島貴男、UA、二階堂和美がその歌を披露し、今回のアルバムでもその模様が収録されています。

さて、そんなバラエティー豊かなミュージシャンたちが参加した「京都音楽博覧会」。もともとくるりが主催=ミュージシャンの選定は基本的に岸田繁が決定しているだけあって、岸田繁の好みが如実に反映されたラインナップになっています。基本的に彼の好みの方向性はブラックミュージック的要素が排除された、いかにも西洋音楽的な方向性。彼自身、ブラックミュージックに言及することもあって、それなりに聴いているようですが、どちらかというと「お勉強」的に聴いている印象があり、彼の薦めるミュージシャンのラインナップを見る限りは、複雑なリズムやグルーヴ感よりも整ったリズムや美しいメロディーラインが主軸となった西洋音楽的な楽曲が好みであることがわかります。

「京都音楽博覧会」に招待されたラインナップを見てもまさにそんな感じ。海外からのミュージシャンもアコースティックな演奏でフォーキーな雰囲気の曲が多く、まずは美しいメロディーラインを楽しむタイプのミュージシャンが並びます。

またこのアルバムの特徴はすべてのミュージシャン、オーケストラをバックとしたステージという点でした。そのため聴きなれたような曲もストリングスアレンジがほどこされており新鮮味も感じるステージになっています。11回目の開催となる「京都音博」ではじめてライブアルバムがリリースされたのも、そんなオーケストラバックのステージを記録的に残しておきたいという意図が働いたのかもしれません。

特にくるりの「ジュビリー」「奇跡」、田島貴男のご存じ「接吻」などはストリングスによるアレンジがより映えて、楽曲の新たな魅力を感じることが出来ました。ただ逆に、くるりの「everybody feels the same」は正直バンドアレンジの方がしっくりきたような。またゴッチの「Taxi Driver」も歌い方が完全にロックのそれだったためか、いまひとつしっくりこなかったのは残念です。

ただ、海外から参加したミュージシャンもそれぞれ非常に魅力的な歌を聴かせてくれ、後半、「京都音博”生”歌謡ショー」と称したステージングも、それぞれ「歌」が本来持つ魅力を存分ひ引き出した魅力的なステージ。最後は締めくくりにふさわしいくるりの「宿はなし」をストリングスやホーンを入れて叙情感たっぷりに聴かせてくれ、ほどよい聴後感を残してアルバムは幕を下ろします。最近、家庭的な事情からなかなか遠出のライブはいけなくなってしまったのですが・・・また久しぶりに「京都音博」に足を運びたくなったライブアルバムでした。

もっともこのアルバム、ひとつ非常に残念なのが、「大人の事情」でしょうか、この日参加した布施明の音源が収録されていません。ある意味、彼のステージはいかにも「ザ・歌謡ショー」といった感じと想像でき、この日の「京都音博”生”歌謡ショー」の主軸でもあったと思われるのですが・・・この点だけはとても残念です。

そんな残念な点はあったのですが、全体としては間違いなく「京都音博」の魅力を存分に伝えるアルバム。毎回、ユニークなラインナップが特徴的なだけに、この手のライブアルバムはまたリリースしてほしいです。とても楽しめました。

評価:★★★★★

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2018年5月13日 (日)

お茶の間レベルでブレイク

Title:GOOD LUCK TRACK
Musician:竹原ピストル

俳優としての活躍から徐々に知名度をあげ、前作「PEACE OUT」で本格的にブレイク。さらには昨年末の紅白歌合戦への初出場も果たし、お茶の間レベルにまで知名度を広げてきた竹原ピストル。野狐禅としてデビューしてから15年以上が経過しており、ブレイクまでの非常に長い時間がかかった訳ですが、既に自分のスタイルをキッチリと確立しており、今回リリースされたアルバムでもそのスタンスを大きく変えることはありません。

とはいえ今回のアルバム、1曲目の「ぼくは限りない~One for the show~」は最初、アコギのみの演奏からスタートし、いつもの彼らしいと思いつつ聴きすすめると、いきなり打ち込みのリズムが入って来たりして、ちょっと驚かされます。その後も「どーん!とやってこい、ダイスケ!」ではホーンセッションを入れてきたり、「月光の仮面」ではレゲエなリズムを入れてきたりとバリエーションを出していますが、基本路線はいつも通り。弾き語りによるアコースティックギターでの力強い歌声を聴かせる曲をメインに、バンドサウンドの曲を加えてくるといういつものスタイルでした。

なによりもメロディーに、そして歌詞を重視するのが彼のスタイル。歌詞は一語一語丁寧に歌い上げるスタイルで、それだけに印象に残る歌詞が本作でも多く収録されています。特に、モデルがいるのかな?と思われるような、具体性あり、かつドラマ性ある歌詞が大きな魅力。「どーん!とやってこい、ダイスケ!」は歌手としてようやく売れてきた友人へのエールのような歌詞で、ともすれば昔の彼が今の彼へエールを送っているようにも感じられます。ラップで歌詞を綴る「本庄のド根性」はボクシング部の先輩へのエール。かなり具体的な内容になっているのですが、モデルもいるのでしょうか?「ドライブドライブ~初代機材車、二郎号に捧ぐ~」もライブを共にする機材車へ語った歌詞が印象に残ります。

そんな中でも今回のアルバムで大きなインパクトになっているのが「Amazing Grace」。有名なスタンダードナンバーを歌詞を書き換えてカバーした曲。最初はちょっと過激なラブソングか?と思って聴き進めるのですが・・・最後に感涙モノのオチが・・・。テレビの音楽番組でも歌って大きな反響があったそうですが、その理由も納得のインパクト強いナンバーになっています。

そんな感じでとにかく歌詞を聴かせるスタイルの曲が並ぶ今回のアルバム。正直言って、非常にリスナーの耳に押しこんでくるような雰囲気の歌詞が多く、しゃがれ声の彼の声質と歌い方とあわせて、少々暑苦しいという印象も受けます。ただ一方で、抽象的で説教じみた歌詞ではなく、物語性ある歌詞で具体的に伝えてくるような歌詞なだけに、ボーカルので受ける暑苦しさのイメージよりは比較的あっさり聴けるような曲が多かったようにも思います。前述の「Amazing Grace」も、最後のオチが非常に感情的なだけに、必要以上に「オチ」を強調しがちなのですが、そこはあっさりと曲を終わらせ、変なくどさを感じさせる前に歌い終えています。ここらへんにはバランスの上手さも感じました。

ブレイク後の曲ということもあって自分のスタイルは変えていないものの、比較的聴きやすい曲も多く、徐々に「ヒット」の壺をつかんできたのかな、という印象も受けた本作。これからもまだまだこの人気は続きそうです。

評価:★★★★

竹原ピストル 過去の作品
PEACE OUT

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2018年5月12日 (土)

プロの2人によるセッション

Title:SESSIONS
Musician:田島貴男&長岡亮介

オリジナル・ラヴとしても活躍している田島貴男が、ひとりだけでステージに立つ恒例のライブツアー「ひとりソウルツアー」。昨年10月から11月にかけ、その番外編としてペトローズの長岡亮介と2人のみでライブをめぐる「ふたりソウルショウ」が開催されました。本作は、その「ふたりソウルショウ」の全6公演から音源をセレクトして収録したライブアルバム。2人のみで行われた貴重なライブ音源が収録されています。

収録曲は全14曲ですが、うちオリジナル・ラヴの曲が6曲、ペトロールズの曲が5曲、カバーが2曲に「ふたりソウルショウ」のために作られた「ふたりソウルショウのテーマ」の全14曲からなる構成になっています。ペトロールズの曲に関しては、実は一度も聴いたことがなかったのですが、並べて聴いてもほとんど違和感はありません。基本的に、特に前半に関してはファンキーなリズムでアコースティックギターをかき鳴らすようなナンバーが並びます。2人がかき鳴らすアコギが勢いよく鳴り響く楽曲が目立つ中、「Million Secrets of Jazz」ではボイスパーカッションも披露。2人だけのステージなのですが、決して「アコギの弾き語り」だけに留まらない演奏スタイルを聴かせてくれます。

中盤「湖畔」ではアコギをつまびきながらゆっくりと聴かせてくれたかと思えば、続く「Crazy」はアメリカのカントリーシンガー、パッツィー・クラインのカバー。ソウル、ファンクの色合いが強かったこれまでの曲とはまた異なる、カントリーテイストのナンバーをしんみりと聴かせてくれます。

基本的に今回のアルバムは、「ふたりソウルショウ」6公演の中からのベスト音源を収録したアルバムのためMCは収録されていませんし、ライブの雰囲気を伝えるというよりは2人のセッションを録音した、記録的要素の強いアルバムになっています。ただ、それでもオリジナル・ラヴ最大のヒット曲「接吻」がはじまった時は観客席が大きくざわつきます。それだけファンからの期待度も強いナンバーをアコギ1本でしんみり歌い上げており、オリジナルとはまた異なる「接吻」の魅力を感じるステージングを披露してくれました。

全体的にはメンバー2人が火花を切らしてセッションを行うという感じでもなく、仲良しの2人が和気藹々といった感じでもありません。ただ、プロの2人が淡々と素晴らしい音楽を作り上げるような演奏といったイメージでしょうか。それだけにライブの迫力というよりは楽曲として完成度の高い14曲が収録されていました。

最後は50年代から60年代にかけて活躍したギターデゥオ、エヴァリー・ブラザーズの「Love Hurts」で締めくくり。こちらでは息の合った2人のハーモニーを聴かせてくれます。全体的にはわかりやすい派手なパフォーマンスというよりも、しっかりとしたプロの演奏を聴くことが出来た傑作アルバム。今後もこの2人でまたセッションを行うのでしょうか?是非次は、ライブで見てみたいです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ネオンと虎/パスピエ

前作「OTONARIさん」に続いて2作連続となるミニアルバム。前作から引き続き、良くも悪くも素直なポップスのアルバムになっていたという印象。「トビウオ」のようなピコピコ音が楽しいポップや「オレンジ」のようなエレクトロディスコチューンで、エレクトロ色が強く感じたかと思えばラストの「恐るべき真実」ではスケール感を持った曲調で締めくくるというバラエティーある展開も。ただやはり突き抜けたようなインパクトには不足しているのは気になります。

評価:★★★★

パスピエ 過去の作品
ONOMIMONO
演出家出演
幕の内ISM
娑婆ラバ
&DNA
OTONARIさん

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2018年5月11日 (金)

約半日のTakkyu地獄

Title:Takkyu Ishino Works 1983~2017
Musician:石野卓球

すさまじいBOX盤がリリースされました。石野卓球といえばご存じ電気グルーヴのメンバーにして、世界的にも名を響かせる日本を代表するテクノミュージシャンの一人。昨年12月に50歳の誕生日を迎えた彼ですが、その彼の30年に及ぶソロ活動の曲から代表曲を網羅的に収録した8枚組となるBOX盤が本作です。

この8枚の中に、彼がプロデュースした曲、リミックスした曲、コラボした曲、そしてソロ楽曲など、ありとあらゆる石野卓球の「仕事」が収録。まずDisc1はプロデュース曲。リリース当初大きな話題となった篠原ともえ「クルクルミラクル」や、電気グルーヴの全身バンド、人生の「いかした彼女」も収録。比較的コミカルな曲が多く、ハリウッドザコシショウというお笑い芸人が歌う「ゴキブリ男」などは90年代あたりの電気グルーヴを彷彿とさせるようなかなりコミカルかつシニカルなナンバー。ちなみに作詞作曲も石野卓球です。あと細川ふみえの「にこにこにゃんにゃん」も今聴くと、あきらかに「自分は誰でもやらせてしまう女性だ」と歌っているナンバーで、ある意味、かなり破壊度の強いナンバー。この曲も作詞作曲石野卓球です・・・。ある意味、石野卓球の「狂気」の部分がもっとも強く出た1枚となっていました。

Disc2から4はリミックス曲を集めた曲。Disc2はちょっと前のリミックスが収録されていて、時代を感じさせるような曲もありますが、そんな曲を含めて石野卓球らしさがリミックスによくあらわれています。エレカシの「浮雲男」などはエレクトロのサウンドと宮本浩次のボーカルのミスマッチが非常にユニークなリミックスで印象に残ります。

Disc5はほかのミュージシャンとのコラボ曲を集めた1枚。TOKYO No.1 SOUL SETの川辺ヒロシと組んだユニット、Inkの曲もこちらに収録されています。Disc6は「ASSOATED CLUB TRAX」として基本的に石野卓球ソロ曲がメイン。ミニマルなテクノが淡々と続く作品で、石野卓球のストイックな側面が表にあらわれています。Disc7は「OTHER WORKS」ということで、ほかのどれにもあてはまらない「その他の仕事集」。Disc7のストイックな雰囲気から一転、コミカルな曲が多く収録されています。2008年にリリースされた「マッハGoGoGo」へのトリビュートアルバムに収録された「SPEED RACER」は、その「マッハGoGoGo」の昔のテーマソングがサンプリングされておりインパクトの強いナンバー。夏木マリの「逆走BBA」も彼女の力強いボーカルが逆にコミカルに聴こえる石野卓球らしいユーモラス感あふれる曲になっています(ただし、彼は作曲のみで参加)。

そしてラスト8枚目は「RARE TRAX」としてタイトル通りのレア曲集。なによりもレア度が目立つのがラスト石野文敏(16)名義の「Noise In The Ear」。ご存じのとおり、石野文敏とは石野卓球の本名。「16」ということはおそらく彼が16歳の頃に作った曲なのでしょう。いまから聴くと音は非常にチープですが、きらりと光るポップスセンスはこの頃から健在。のちに花開く彼の才能の片りんを確実に感じることが出来ます。

そんなわけで全8曲。「約半日のTakkyu地獄」とは石野卓球のこのアルバムに対するコメントから抜粋した、彼らしい言い回しですが、全10時間近くにも及ぶ石野卓球の世界を堪能できるアルバムになっています。

さてそんな石野卓球の仕事ぶりをたっぷりと聴いたのですが、まず彼に関して感じた大きなポイントは彼は良い意味で仕事を選ばないな、ということでした。以前から様々な毒舌ぶりが話題の彼ですが、昔から今に至るまで「実力派ミュージシャン」だけではなくアイドル系からお笑いタレント、最近でもORANGE RANGEやらSCANDALやら、なにげにいろいろなタイプのミュージシャンのプロデュースやリミックスを手掛けています。そんな相手を選ばない仕事ぶりにも関わらず一貫とした石野卓球色を感じることが出来、より彼の実力が際立つ結果となっています。

もう1点は彼の仕事にはかなりコミカルな曲が多い反面、音楽的にはストイックな仕事をしているという点でした。彼自体、普段の発言もコミカルでシニカルな発言が多い反面で、音楽に関しての発言は非常にストイックな発言が目立ちます。そんな彼に音楽に対する真摯な態度はまずはこの仕事ぶりに非常に反映されており、歌詞にはコミカルな側面が目立つ反面で音楽的にふざけたりしている点は皆無。彼の「真面目」な側面を強く感じました。

そんな訳で石野卓球を存分に体験できる約半日。さすがに10時間、通しでは聴いていませんが、CD1枚ずつ聴いてももちろん楽しめるアルバムです。ちなみにこの8枚組から厳選し、2枚組とした「Takkyu Ishino Works 1986~2017(Excerpt)」もリリースされていますので、さすがに8枚組は・・・と思った方はこちらを是非。

評価:★★★★★

石野卓球 過去の作品
CRUISE
WIRE TRAX 1999-2012
LUNATIQUE
EUQITANUL
ACID TEKNO DISKO BEATz


ほかに聴いたアルバム

ポプテピピック ALL TIME BEST

今年1月から3月の放送で一番話題となったクソアニメ「ポプテピピック」で使用された楽曲を収録したサントラ盤。ただ、基本的にDisc1はアニメでつかわれたBGM集で、アニメを見ていたからならシーンを思い出して「クスっ」と笑える方もいるかもしれませんが、曲だけで純粋に聴くのは厳しい感じ。エンディングテーマの「POPPY PAPPY DAY」はアニメ同様、様々な声優さんによって歌われているのですが、それによってオルタナ系ギターロックっぽく聴こえたりアイドル系っぽく聴こえたりするのがユニーク。ただオープニングテーマが未収録なのが残念なのと、アニメの狂いっぷりに反して収録曲自体は「普通の」J-POPなのはちょっと残念。個人的にはコラボTシャツも発表している電気グルーヴあたりに、もし2期があったらテーマ曲を歌ってほしいのですが・・・。

評価:★★★

ラーメンな女たち/矢野顕子×上原ひろみ

2011年に東京・昭和女子大学人見記念講堂で行ったレコーディングライブにて共演。ライブアルバム「Get Together -LIVE IN TOKYO-」をリリースした矢野顕子×上原ひろみ。本作はその後5年を経て、久々の共演となった2016年9月15日渋谷・Bunkamuraオーチャードホールで行われたライブの模様をおさめたアルバム。矢野顕子、上原ひろみどちらも非常に自由度の高い演奏が魅力的で相性の良さを強く感じます。特にジャズをベースに「おちゃらかほい」や「真っ赤な太陽」、「東京ブギウギ」など、古き良き日本の童謡、歌謡曲などを盛り込み、フリーキーなジャズの中に和の要素を強く感じるユニークな作品に仕上がっていました。

前作同様、矢野顕子と上原ひろみが対峙するというよりも一体となって演奏でている感じが強く出ており、ある意味ベクトル的には近いミュージシャンなんだな、ということを感じます。このコンビでまた是非アルバムを作ってほしい!そう強く感じた1枚でした。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート
(矢野顕子+ TIN PAN)
矢野山脈
Soft Landing

上原ひろみ 過去の作品
BEYOUND THE STANDARD(HIROMI'S SONICBLOOM)
Duet(Chick&Hiromi)
VOICE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
MOVE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
ALIVE(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
SPARK (上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
ライヴ・イン・モントリオール(上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ)

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2018年5月10日 (木)

安室奈美恵、強し!

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週は集計対象週がゴールデンウィークとあって初登場盤の少ない週となりました。ただ、その中で目立つのが安室奈美恵。まず初登場として8位に安室奈美恵 with SUPER MONKEY'S「ORIGINAL TRACKS VOL.1」がランクインしています。

本作は1996年にリリースされた初期ベスト。安室奈美恵 with SUPER MONKEY'Sとして活動していた東芝EMI(当時)時代の曲から選曲したアルバムを今回、リマスター&SHM-CDとして再リリースし、初動売上6千枚を売り上げ、ベスト10ヒットを記録しました。

はっきりいって完全に、彼女の引退に乗じてリリースされた便乗商法な訳ですが、もっともこのアルバムがもともとリリースされた1996年も、「Body Feels EXIT」や「Chase the Chance」が大ヒットし、アルバム「SWEET 19 BLUES」がリリースされた直後にリリースされた、完全に便乗商法でリリースされたアルバム。要するに「便乗商法ふたたび」的な感じな訳ですが・・・。

そんでもって大ヒットを続ける彼女のベスト盤「Finally」も先週の10位から5位にランクアップ。売上枚数も先週の6千枚から1万枚にアップし、ここに来て盛り返してきました。GWで買い物に出たついでにCDを買って帰ったという方も多いのでしょうか。累計売上枚数は220万枚を突破し、まだまだ売上枚数を伸ばしそうです。

そして同じく女性ボーカリストのベスト盤で奮戦しているのが松任谷由実「ユーミンからの、恋のうた。」。こちらも先週の5位から4位にランクアップしています。ただしこちらは売上枚数2万枚から1万3千枚にダウン。とはいえ、まだまだ根強い人気が続きそうです。

さて、そんな中今週1位を獲得したのはENDRECHERI「HYBRID FUNK」。Kinki Kids堂本剛のソロプロジェクト。毎回、いろいろなプロジェクト名でのアルバムをリリースしている彼ですが、今回のプロジェクトは「エンドリケリー」と読むそうです。初動売上7万7千枚。堂本剛名義でリリースされた前作「Grateful Rebirth」の3万9千枚(1位)よりアップしています。

2位初登場はRoselia「Anfang」。BanG Dream!という漫画やアニメを中心としたプロジェクトから登場した声優によるユニット。本作がデビューアルバムとなります。初動売上2万5千枚でベスト3入りとなりました。

3位は先週1位を獲得したKis-My-Ft2「Yummy!!」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤なのですが、今週4位以下の初登場は前述の安室奈美恵 with SUPER MONKEY'Sの1枚のみ。ただし、ベスト10返り咲きが2枚もありました。まず9位。DJ和「ラブとポップ ~好きだった人を思い出す歌がある~mixed by DJ和」が先週の24位から一気にランクアップ。3月5日付チャート以来、10週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。売上枚数も3千枚から6千枚にアップ。こちらもやはりGWとなり買い物ついでに購入するような方が増えたのでしょうか。

また10位には韓国の女性アイドルグループTWICE「What Is Love?:5th Mini Album」が先週の11位からランクアップ。こちらは2週ぶりのベスト10返り咲きとなります。売上枚数は6.5千枚から6.3千枚に若干ダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週!

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2018年5月 9日 (水)

AKB系が目立つチャート

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はAKB系が目立つチャートとなりました。

まず今週1位に博多を中心に活動を行うユニット、HKT48「早送りカレンダー」が初登場でランクイン。CD販売・ダウンロード・スクリーミング数(以下「実売数」)で1位、Twitterつぶやき数4位、PCによるCD読取数で11位を記録。ただしラジオオンエア数は圏外になっています。オリコンでは初動16万5千枚で1位獲得。前作「キスは待つしかないのでしょうか?」の19万9千枚(1位)からダウン。

2位もAKB系。先週1位の乃木坂46「シンクロニシティ」がワンランクダウンでこの位置。AKB系が1位2位を獲得したほか、ロングヒットを続ける欅坂46「ガラスを割れ!」は10位から8位にランクアップしています。

3位にはSingTuyo「KISS is my life.」がランクイン。ご存じ元SMAPの香取慎吾と草彅剛のユニットによる配信限定のシングル。実売数3位、Twitterつぶやき数2位のほか、ラジオオンエア数5位という高い順位につけています。ちなみに作詞作曲はぼくのりりっくのぼうよみ(!)。新進気鋭の若手ライターを使うあたりはSMAPからの伝統を受け継いでいる感じがします。配信限定なのでオリコンシングルランキングではランクインしていませんが、デジタルシングルチャートでは1位を獲得し、その強さを見せつけました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず5位にUVERworld「ODD FUTURE」が初登場でランクイン。日テレ系アニメ「僕のヒーローアカデミア」オープニングテーマ。打ち込みのサウンドを前面に押し出したシンセポップとなっています。実売数4位、PCによるCD読取数で3位を記録した一方、ラジオオンエア数33位、Twitterつぶやき数65位とのびなやみました。オリコンでは初動売上3万7千枚で3位初登場。前作「DECIDED」の4万枚(2位)からダウンしています。

6位にはaiko「ストロー」が先週の94位からCDリリースにあわせてランクアップしベスト10入りしてきました。実売数7位、PCによるCD読取数5位のほか、ラジオオンエア数では見事1位を獲得しています。aikoらしい爽快なラブソングながらも独特の節回しが特徴的な曲になっています。オリコンでは初動2万2千枚で6位初登場。前作「予告」の2万6千枚(3位)からダウンしています。

7位初登場は小田和正「この道を」。TBS系ドラマ「ブラックペアン」主題歌。なんと5年1ヶ月ぶりのシングルとなります。実売数6位、PCによるCD読取数7位、ラジオオンエア数21位を記録。Twitterつぶやき数が圏外なのは彼のファン層を反映した結果(?)でしょうか。オリコンでは初動売上2万3千枚で4位初登場。前作「その日が来るまで」の1万1千枚(10位)より大きくアップしています。

今週、初登場は以上ですが、先週まで長らく2位をキープしていた米津玄師「Lemon」は残念ながら今週は4位にランクダウン。ただPCによるCD読取数及びYou Tube再生回数は1位を獲得しており、まだまだロングヒットが続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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2018年5月 8日 (火)

原点に立ち返る

Title:My Dear Melancholy,
Musician:The Weeknd

前作「STARBOY」がグラミー賞を受賞するなど、相変わらず高い評価と人気を誇るThe Weeknd。最近話題となったアルバム「Black Panther: The Album」にも参加し話題を呼びました。そんな彼の1年4ヶ月ぶりとなる新作が本作。今回のアルバムは6曲入りのミニアルバムとなっています。

今回のアルバムの特徴として「原点に立ち返る」ということをひとつのテーマとしたそうです。前作「STARBOYS」はインパクトあるメロの多い、良くも悪くも「売れ線」とも捉えかねられるようなアルバムに仕上がっていました。それに対して今回のアルバムはミニマルなエレクトロサウンドの楽曲がメイン。強いビートを前に押し出しつつも静かなサウンドを聴かせる、いわゆる今時なサウンドに仕上がっています。決して派手さはありませんが、そのサウンドが印象に残るアルバムに仕上がっていました。

まず伸びやかなハイトーンボイスで静かに聴かせる「Call Out My Name」からスタート。悲し気なメロディーラインも印象に残ります。続く「Try Me」はファルセットボイスで聴かせるナンバー。「Wasted Times」もハイトーンボイスで聴かせるナンバーですが、ミニマルテイストのエレクトロトラックも印象に残ります。

続く「I Was Never There」「Hurt You」はフランスのDJ/プロデューサー、Gesaffelsteinをフューチャーしたナンバー。ほかの曲と比べるとより広い空間を感じさせるようなサウンドにThe Weekndの歌声が響きます。そしてラストの「Privilege」はまたしんみり聴かせるメロディーが印象的なナンバーで締めくくられます。

アルバムの長さとしてはわずか22分程度。エレクトロトラックが目立つアルバムである一方、彼の哀愁感ただよう歌はアルバムの中でしっかりと流れており「ポップ」のアルバムとしても十分に楽しめる作品になっていました。正直言って、全6曲、タイプ的には似たような曲が多く、バリエーションという意味では乏しいという印象を受けるかもしれません。ただわずか22分程度の長さであるため最後まで全くダレることなく楽しめるアルバムになっていたと思います。

アルバム全体としてちょっと地味という印象もあるかもしれませんが、メロディーにしろトラックにしろしっかりと楽しめるアルバムになっていたと思います。ミニアルバムでありながらもアメリカビルボードチャートではしっかりと1位を獲得。その人気のほどを見せつけました。これからもまだまだ彼の活躍は続きそう。次はフルアルバムを、期待しましょう。

評価:★★★★★

The Weeknd 過去の作品
Kiss Land
Beauty Behind The Madness
STARBOY

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2018年5月 7日 (月)

キャッチーな4枚目

Title:COMBAT SPORTS
Musician:THE VACCINES

イギリスのロックバンド、THE VACCINESの4枚目となるオリジナルアルバム。 以前のアルバムでも書いたのですが、日本ではデビュー作こそそれなりに話題になったものの、それ以降、さほど大きく取り上げられない一方で、イギリスでは一定以上の人気を確保。本作もイギリスのアルバムチャートでは4位とヒットを記録しています。

さてそんら彼ら。彼らの大きな特徴はシンプルなギターロック路線を貫ているという点。ある意味、さほどひねりもなければ、例えばベルセバやらTEENAGE FANCLUBのような圧倒的な美メロといった感じもなく、ある意味非常にシンプルなギターロックバンドという印象を受けます。彼らの日本のメディアでの取り上げ方がさほど大きくないのはそのためかもしれません。

そんな中、前作「English Graffiti」では比較的幅広い作風に挑戦していました。ピアノバラードがあったりサイケな作風があったり、いままでの彼らのイメージからすると挑戦的なアルバムとも言える作品になっていました。

もちろん前作でもアルバム全体を貫くのはシンプルでポップなギターロック路線でした。そして今回の作品はそんなシンプルでポップなギターロック路線をさらに突き進めるようなアルバムになっていたと思います。疾走感あって爽快なギターサウンドが楽しい「I Can't Quit」「Surfing in the Sky」、軽快でリズミカルなロックンロールチューン「Nightclub」、ロックというよりもポップ色が強く、明るく爽快なメロディーを聴かせる「Maybe(Luck of the Draw)」「Take It Easy」、個人的には特に終盤の「Someone to Love」の爽快なサマーポップのような明るさを感じさせるギターポップチューンが気に入りました。

今回のアルバム、いままでの作品の中でも特にポップ。さらに言えばキャッチーという表現がピッタリくるようなアルバムだったと思います。「Young American」のような聴かせるミディアムチューンもありましたが、全体的にはポップ路線でまとめあげられていた作品。前作でも書いたとおり、良くも悪くも無難なイギリスにおけるJ-POP的な位置にいる印象は否めませんが、それでも爽快でほどよくノイジーなギターサウンドはUKのギターロック好きにはツボにはまりそう。難しいこと抜きにして、素直に楽しめる1枚でした。

評価:★★★★

THE VACCINES 過去の作品
WHAT DID YOU EXPECT FROM THE VACCINES?
Come of Age
Please Please Do Not Disturb EP

English Graffiti


ほかに聴いたアルバム

The Final Tour: The Bootleg Series, Vol. 6/Miles Davis&John Coltrane

ジャズ界の巨匠、マイルス・デイヴィスのブートレグシリーズの第6弾。本作は同じくジャズ界のレジェンドのサックスプレイヤー、John Coltraneがマイルスのバンドに参加していたラストのツアーの模様を収めたアルバム。1960年のヨーロッパツアーからの音源だそうです。60年近く前のブートレグの音源とはいえ、音的には聴いていてほとんど違和感なく、2人の才気あふれる演奏が楽しめるアルバムになっています。

ジャズ界のレジェンド、それも最後のツアーでの共演・・・ということで緊迫感あふれるセッションが、といったイメージがあったのですが、どちらかというと2人ともそれぞれセッションでからみあって喧嘩のような、というよりも別々にプレイしているような印象を強く受けました。逆にだからこそコルトレーンはこのツアーを最後にマイルスのバンドを離れたのかもしれませんが・・・。ただ、演奏に関しては文句なしに聴かせる内容。音もかなりよく取れていますし、ブートレグという言い方をしていますが、ジャズに興味があるならば間違いなく「聴くべき」アルバムだと思います。

評価:★★★★★

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2018年5月 6日 (日)

3枚のベスト盤

Title:BEST HIT AKG 2(2012~2018)
Musician:ASIAN KUNG-FU GENERATION

2012年にベストアルバム「BEST HIT AKG」をリリースし大ヒットを記録したASIAN KUNG-FU GENERATION。それから6年2か月。2作目となるベスト盤がリリースされました。ベスト盤のインターバルが6年というのは昨今のベスト盤事情としては決して極端に短いわけではないのですが、その間リリースされたオリジナルアルバムがわずか2枚ということもあり、正直言えばちょっと短いようにも感じます。

そうとはいってもこのベスト盤、聴いてみればやはりそのアジカンの分厚いロックサウンドとポップなメロディーラインにはまってしまいます。これはアジカンについて以前から言っていることなのですが、彼らの楽曲はとにかくロックを聴いたという満足感に浸れるサウンド。変なひねりもない素直なバンドサウンドなのですが、その音圧がとにかく強く、ロックのダイナミズムを感じさせてくれます。

そんな中、前作「BEST HIT AKG」では後半の作品について若干マンネリ気味な点を指摘しました。実際、アジカンのサウンドはよくも悪くも非常に愚直で、サウンド的なバリエーションは決して豊富なわけではありません。それだけにマンネリ傾向になりつつあったのが気にかかりました。

今回のベストアルバムでも確かにマンネリ気味な作品も見受けられました。ただ一方でここ最近の作品でも勢いを感じさせ、聴かせるような作品も少なくなく、特に「Wonder Future」からの収録曲に関しては、彼らの充実ぶりをうかがわせるインパクトある作品が多く収録されています。今回のベスト盤では2ndアルバム「ソルファ」のリメイク盤「ソルファ(2016)」からの曲も収録されており、そういう意味ではマンネリ感を気にすることなく、最後まで楽しめるアルバムになっていたと思います。

評価:★★★★★

そしてこのベスト盤と同時に「オフィシャル・ブートレグ」を名乗る2枚のベスト盤がリリースされました。

Title:BEST HIT AKG Official Bootleg "HONE"
Musician:ASIAN KUNG-FU GENERATION

Title:BEST HIT AKG Official Bootleg "IMO"
Musician:ASIAN KUNG-FU GENERATION

通称「"HONE"盤」「"IMO"盤」と呼ばれる2枚のアルバム。
もともとは「BEST HIT AKG」の選曲に関わっていなかった後藤正文が自身の日記で発表した架空のベストアルバムだったそうです。

彼らの楽曲の中で「骨っぽい」楽曲と「芋っぽい」楽曲をまとめたベスト盤。「骨っぽい」曲はいわゆる社会派的な楽曲や後藤正文の理想論を反映したような作品が並び、「芋っぽい」曲とは、どちらかというと甘酸っぱいような青春っぽいナンバーが並んでいます。

サウンド面ではどちらも分厚いギターサウンドが楽しめるロックチューンという意味では差異はないものの、歌詞の側面でアジカンの魅力を両面から迫ったベスト盤。前述の「BEST HIT AKG 2」が2012年以降の曲しか収録されていないため、それを補完する意味もあったのでしょう。「BEST HIT AKG 2」とあわせていわばオールタイムベストといった感じでしょうか。Amazonのレビューではどちらも思いっきり叩かれていますが、正直、この程度の焼き直しベストなんていくらでも出ているので、珍しくもないと思うのですが・・・。

評価:どちらも★★★★★

ASIAN KUNG-FU GENERATION 過去の作品
ワールドワールドワールド
未だ見ぬ明日に
サーフ ブンガク カマクラ
マジックディスク
BEST HIT AKG
ランドマーク
THE RECORDING at NHK CR-509 STUDIO
フィードバックファイル2
Wonder Future
ソルファ(2016)

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2018年5月 5日 (土)

デビュー10周年の総括に

Title:魚図鑑
Musician:サカナクション

2007年にメジャーデビュー。昨年、デビュー10周年を迎えたサカナクション。その10周年の活動を総括する形で、彼ら初となるオールタイムベストがリリースされました。彼らはご存知のとおり、2009年にリリースした「シンシロ」でブレイク。その後リリースしたシングル「アルクアラウンド」でさらなる話題を呼び、2013年には紅白歌合戦への出場も果たしています。

今回のベストアルバムでユニークなのはその構成。Disc1は「浅瀬」と名付け、「アルクアラウンド」や「新宝島」「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」などのシングル曲を中心の構成に、さらに中層と名付けられたDisc2、今回は通常版を聴いたので聴けなかったのですが、深海と名付けられたDisc3まで、内容を聴き進むにつれて、より「マニアック」な楽曲が並ぶ構成になっています。

さて今回あらためて彼らの楽曲を網羅的に聴いたのですが、まず強く感じるのはやはり彼らは今、活躍中のロックバンドの中でも間違いなく頭ひとつ抜けた存在であるな、という印象でした。特に彼らがデビューした2007年は目立って活躍するバンドの少なかった年。(ちなみにこの年の音楽的に最も大きな「デビュー」は初音ミクだったりします)ある意味、谷間の世代とも言える彼らですが、それだけに逆に彼らの存在が際立ちます。

まず彼らの音楽シンセによるエレクトロサウンドとバンドサウンドを融合させてリズミカルな楽曲に仕上げているのが基本線。このエレクトロサウンドとバンドサウンドのバランスが実に絶妙で、バンドサウンドのダイナミズムを残しつつ、エレクトロサウンドによる無機質で近未来的な雰囲気もきちんと維持しているという、ほどよいバランスを保っているにもまた、彼らの大きな魅力に感じます。

そんな中、例えば「新宝島」ではエスニックな香りを漂わせたり、「アイデンティティ」ではとライバルなパーカッションからスタートしたり、Disc2の曲では「三日月サンセット」ではファンキーなリズムを入れてきたり、「夜の東側」のようなシティポップを彷彿とさせるメロウさを入れてきたり、バリエーションある音楽性が魅力的。もっとも、CD2枚分、さすがにずっとシンセ中心のサウンドだとちょっとダレてくる部分もあるのですが、そんなことを思い出した直後、Disc2の終盤「ドキュメント」「目が明く藍色」はバンドサウンド主体のメロを聴かせる曲となっており、再び気分が盛り上がります。

特にここ最近、フェス向けのとにかくリスナーを煽りまくるようなメロやサウンドを奏でるバンドが目立つ中、彼らはエレクトロでリズミカルな音というライブで楽しめそうな楽曲を奏でつつ、必要以上に高揚感あるサウンドに頼ることなく、しっかりとメロディーやサウンド自体を聴かせるスタンスを貫いているのはさすが。フェス向けバンドとはあきらかに一線を画する実力を感じさせます。

シンセの音を中心としつつ、バンドとしての様々な挑戦をあらためて感じることの出来るベスト盤。サカナクションの魅力をしっかりと出しているアルバムだったと思います。これからの彼らの活躍も非常に楽しみです。

評価:★★★★★

サカナクション 過去の作品
シンシロ
kikUUiki
DocumentaLy
sakanaction
懐かしい月は新しい月~Coupling&Remix works~

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2018年5月 4日 (金)

ズシリと重い

Title:梵唄-bonbai-
Musician:BRAHMAN

途中、ベスト盤のリリースはあったもののオリジナルアルバムとしては5年ぶりとなるBRAHMANのニューアルバム。本作がリリースされた2日後には自身初となる武道館公演も成功させ、バンドとしての高い人気と変わらぬ挑戦心を見せつけました。

さてそんな彼らの最新作を聴いてまず第一に感じたのはロックバンドとしての圧倒的なカッコよさでした。へヴィーなサウンドという表現はロックバンドに対してよく使われますし、彼らのサウンドに関してもその表現はピッタリ来ます。ただ彼らのバンドサウンドは単なるヘヴィーでもほかのバンドとは大きく異なるように感じます。まずその重みが違います。重低音だの激しい音などで、無理やり音に重みを出しているというよりも、エッジの利いたサウンドで、ギター、ベース、ドラムスそれぞれの音がズシリと耳に響いてくる感じ。抽象的な表現かもしれませんが・・・音の密度が全く異なります。

ズシリと重く響くのは音だけではありません。歌詞もズシリと重く心に響いてきます。例えば「真善美」では

「さあ 幕が開くとは
終わりが来ることだ
一度きりの意味を
お前が問う番だ」

(「真善美」より 作詞 TOSHI-LOW)

という歌詞は、日々の出来事ひとつひとつに重みを感じさせる深いメッセージ性を感じますし、続く「雷同」でも

「惰性の同調を
無知蒙昧のその他大勢が
いつまで紛れていんだ
飛び出すんだよ サンハイ」

(「雷同」より 作詞 TOSHI-LOW)

は、ある種リスナーの背中を押す応援歌的ともとれるのですが、一般的なJ-POPとはそのメッセージの重さが全く異なります。

その後も続く楽曲は基本的にはメロコア路線。ただどこか感じるエスニックな雰囲気にBRAHMAN独特の要素を感じますし、またメロディーは意外とポップでメロディアス。どこか「和」な要素を感じる哀愁感も大きな魅力となっています。

本作、前半は「AFTER-SENSATION」など複雑なリズム要素の入った楽曲などもあるものの、基本的には王道路線とも言えるメロコア路線の曲が続きます。ただ、その雰囲気が変わってくるのが後半戦。まず「怒涛の彼方」ではゲストとして東京スカパラダイスオーケストラが参加。へヴィーなサウンドの中に軽快なホーンセッションが大きなインパクトを与えています。

そしてアルバムの中で大きなインパクトとなっているのがラストの2曲「ナミダノウタゲ」「満月の夕」でしょう。BRAHMANといえば2011年の東日本大震災の後、積極的に被災者の支援を行ったことでも知られています。「ナミダノウタゲ」は東日本大震災の津波で子供を奪われた宮城県石巻市の知人のエピソードを基につくったナンバー。あくまでも歌とメロディーを前面に出して聴かせるナンバーになっていますが、歌詞も非常に心に来る曲になっています。

さらに「満月の夕」はご存じ、ソウルフラワーユニオンとヒートウェイヴが1995年の阪神・淡路大震災の被災者支援を行う中で誕生したナンバー。数多くのミュージシャンがカバーしたいわばスタンダードナンバーですが、東日本大震災の支援活動の中でTOSHI-LOWの頭の中で流れてきたのがこの楽曲だったそうで、今回のアルバムでカバーを収録。ソウルフラワーユニオンの中川敬、元メンバーのうつみようこ、ヒートウェイヴの山口洋もゲストとして参加しています。

そういう曲をラストに持ってきているだけに前半の印象と聴き終わった後の印象が変化するのもこのアルバムの大きな特徴であり魅力。かつBRAHMANの音楽性の広さも感じることが出来ると同時に、いまなお大きな傷跡を残す東日本大震災の被災者に対する想いも強く感じることが出来るアルバムになっていました。

今回のアルバムも文句なしの傑作アルバム。音楽的な側面でも歌詞の側面でも、さらに最後2曲に感じた東日本大震災の被災者に対する想いという側面でもズシリと重さを感じるアルバムでした。

評価:★★★★★

BRAHMAN 過去の作品
ANTINOMY
ETERNAL RECURRENCE~永劫回帰~
超克
尽未来際

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2018年5月 3日 (木)

1位は"Yuming"ではなくて

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

ユーミンのアルバムがヒットを続ける中、このタイトルはややこしい・・・(^^;;

今週1位はジャニーズ系アイドルグループKis-My-Ft2の「Yuming」ならぬ「Yummy!!」が獲得。もちろん「おいしい」という意味の英語ですね。初動売上は21万7千枚。前作「MUSIC COLOSSEUM」の20万5千枚(1位)から若干アップしています。ちなみにその松任谷由実のアルバム「ユーミンからの、恋のうた。」は今週、2万枚を売り上げて5位にランクインしています。

2位初登場は和楽器奏者を集めてバンド形態で活躍する和楽器バンド「オトノエ」。昨年はベスト盤をリリースしましたが、オリジナルアルバムとしては約1年ぶりの新作となります。初動売上は3万1千枚。直近のベスト盤「軌跡 BEST COLLECTION+」の4万2千枚(3位)よりダウン。オリジナルアルバムとしては前作となる「四季彩-shikisai-」の4万1千枚(2位)よりもダウンしてしまいました。

3位は韓国の男性アイドルグループMONSTA X「PIECE」がランクイン。これが日本でのデビューアルバムだそうで、初動売上2万3千枚でいきなりのベスト10入りとなりました。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位には「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド オリジナルサウンドトラック」。タイトル通り、昨年3月にリリースされて大きな話題となったゲーム「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」に使用された曲を集めたサントラ盤です。初動売上は2万3千枚。「ゼルダの伝説」関連では昨年リリースされた東京フィルハーモニー交響楽団による「ゼルダの伝説 30周年記念コンサート」の1万枚(9位)よりアップしています。

6位には女性向け男性アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!」より「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ Ra*bits」がランクイン。初動売上は1万4千枚。同シリーズの前作「あんさんぶるスターズ! アルバムシリーズ 流星隊」の2万6千枚(2位)よりダウン。

7位には女性声優内田真礼「Magic Hour」がランクイン。初動売上1万3千枚は前作「Drive-in Theater」の1万5千枚(6位)から若干のダウン。

8位初登場は角松敏生「Breath From The Season 2018~Tribute to Tokyo Ensemble Lab~」。タイトルは彼が30年前にプロデュースを手掛けたビックバンドTokyo Ensemble Labへの敬意をあらわせたもので、同バンドの曲をカバー。ビックバンドによるアレンジのアルバムとなっています。初動売上は9千枚。「SEA IS A LADY 2017」の1万2千枚(4位)からダウン。

初登場最後9位にはPPP「ペパプ・イン・ザ・スカイ! 」がランクイン。昨年話題となったアニメ「けものフレンズ」に登場するキャラクターによるアルバム。初動売上は7千枚。「けものフレンズ」関連では1位2位同時ランクインで話題となった「TVアニメ『けものフレンズ』ドラマ&キャラクターソングアルバム『Japari Cafe』」「TVアニメ『けものフレンズ』オリジナルサウンドトラック」以来ですが、同作の初動売上2万7千枚(1位)及び2万4千枚(2位)からは大きくダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週!

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2018年5月 2日 (水)

今週も「2位」

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここ最近のチャートで良くも悪くも2位が定位置となっている米津玄師「Lemon」。今週も2位をキープし、通算8週目4週連続の2位となりました。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)、PCによるCD読取数2位、You Tube再生回数1位、Twitterつぶやき数9位と上位をキープ。ラジオオンエア数のみ31位と若干奮わない状況です。オリコンでは週刊シングルランキングでは15位、デジタルシングルチャートではずっと1位をキープしていましたが、今週、ついに2位にダウンしています。

そして今週1位を獲得したのが乃木坂46「シンクロニシティ」。先週の8位からCDリリースにあわせてランクアップし、1位獲得となりました。実売数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数で1位、ラジオオンエア数6位、You Tube再生回数24位。オリコンでは初動売上111万6千枚で初登場1位を獲得。前作「いつかできるから今日できる」の85万枚からアップしています。

3位初登場はTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「Fandango」が初登場でランクイン。ラテン風のリズムな軽快な暑い雰囲気のナンバー。実売数4位の一方、ラジオオンエア数40位、PCによるCD読取数13位、Twitterつぶやき数11位と実売数以外のチャートは振るいませんでした。オリコンでは初動売上2万9千枚で2位初登場。前作「100degrees」の1万3千枚(8位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場曲です。4位には宇多田ヒカル「Play A Love Song」が初登場でランクイン。本人が出演する「サントリー 南アルプススパークリング」のCMソングで配信オンリーでのリリース。実売数及びラジオオンエア数で3位を記録。そのほかのチャートがランク圏外だったので残念ながらベスト3入りは出来ませんでした。ちなみにオリコンのデジタルシングルチャートでは米津玄師「Lemon」を下して見事1位を記録するなど、宇多田人気の強さを感じる結果となっています。

5位には人気上昇中のロックバンドsumika「フィクション」が初登場でランクイン。非常に爽快で気持ち良いポップチューン。ちょっと星野源っぽい雰囲気も?実売数6位、ラジオオンエア数4位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数56位を記録。確かにラジオ受けしそうなタイプの曲ですね。オリコンでは同作が収録された「Fiction e.p.」が初動1万7千枚で3位初登場。前作「SALLY e.p.」は初動7千枚(12位)でしたが、こちらはオリコンではアルバム扱い。シングルチャートにランクインしてきたのはおととしリリースした「Lovers」以来で、こちらの4千枚(15位)より大きくアップしています。

8位には韓国の女性アイドルグループTWICE「Wake Me Up」がランクイン。5月16日リリース予定のシングルからの先行配信。実売数は25位、ラジオオンエア数47位にとどまっていますが、Twitterつぶやき数8位、You Tube再生回数3位とネット系ランキングで強さを見せ、ベスト10入りです。なおTWICEは「What is Love?」が今週も7位にランクインしており、2曲同時のベスト10入りとなっています。

今週の初登場組は以上。ロングヒット組はまず欅坂46「ガラスを割れ!」は今週10位にランクダウン。実売数9位、PCによるCD読取数は5位を記録していますが、Twitterつぶやき数52位、You Tube再生回数28位とネット系ランキングが足を引っ張った形になっています。そして今週星野源「ドラえもん」が先週の11位から9位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。PCによるCD読取数が4位と根強い人気を見せているほか、実売数も16位とまだまだ人気の高さを感じます。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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2018年5月 1日 (火)

ボカロ系のイメージも変わるかも。

Title:filia
Musician:春野

先日、ここのサイトで「合成音声ONGAKUの世界」というオムニバスアルバムを紹介しました。初音ミクをはじめとするボーカロイドの音楽を紹介したオムニバスなのですが、初音ミクの音楽として一般的にイメージされるような楽曲とは異なるタイプの楽曲が収録されており、ボーカロイド音楽の世界の広がりを感じさせてくれるオムニバスで、あらためてボーカロイド音楽に興味を抱かせてくれる内容でした。

今回紹介するアルバムはその「合成音声ONGAKUの世界」の1曲目で紹介された、いわゆるボカロPによるアルバム。オムニバスアルバムに収録されていた「nuit」も本作には収録されており、今年2月にリリースされたアルバムをあらためて聴いてみました。

もっとも1曲よかったといってもアルバム単位で聴くといまひとつ、という経験はいままで何度もしているだけに今回のアルバムも期待半分不安半分という印象で聴き始めたのですが、結論としてはとても素晴らしい内容のアルバムを聴くことが出来ました。

このアルバムで非常におもしろかったのはアコースティックな音とエレクトロサウンドがほどよいバランスで奏でられていた点でした。初音ミクのボーカルをはじめ、どこか無機質さを感じるサウンドと暖かみを感じるサウンドが同居しており、一種独特の音の世界に惹きこまれます。

まず1曲目の「in between」。エレクトロサウンドと爽快なピアノの音色が明るさを感じさせるポップチューンからスタート。「ルーム」はアコースティックギターをベースとした音色でしんみりと聴かせるナンバーになっていますし、「プリムラの食べ方」もアコースティックなサウンドにエレクトロサウンドがのる構図にユニークさを感じます。

サウンドの側面で特に耳を惹いたのが「幽霊花」。ゆっくりと奏でられる重低音のリズムに、ノイズのような音色とアコギとピアノがのってゆっくりと奏でられる同作はポストロック的な色合いを感じる楽曲。サウンド面でも非常に凝った意欲作になっています。

オムニバスアルバムに収録されていた「nuit」ももちろん耳を惹きますし、「楽園」もメロウさを感じるR&Bテイストのメロディーラインが強い印象を残すナンバー。サウンドの面でもメロディーの面でも春野の高い実力を感じさせます。

本作はボカロ系でよくありがちな音や歌詞を詰め込んで早口で歌わせるというスタイルはありません。アコースティックなサウンドとエレクトロなサウンドをほどよくバランスさせている影響でしょうか、時として無機質さを感じる初音ミクのボーカルも楽曲の中で上手く溶け込んでいてほとんど違和感がありません。そういう意味でもボカロ系を全く聴かないような方でも胸を張ってお勧めできるアルバムだと思います。こんな実力のあるミュージシャンがいたとは知りませんでした。ボカロの世界に留まらず、もっともっと知られてもいいミュージシャンだと思います。ボカロに抵抗感を覚える人も含めて文句なしにお勧めできる1枚です。

評価:★★★★★

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