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2018年4月10日 (火)

未発表音源集第3弾

Title:BOTH SIDES OF THE SKY
Musician:JIMI HENDRIX

2010年にジミ・ヘンドリックの音源に対する著作権がソニー・ミュージックに移って以降、彼に関する音源が様々とリリースされています。そんな中でもリリースのたびに話題になるのが未発表音源を集めた「オリジナルアルバム」。2010年にリリースされた「VALLEYS OF NEPTUNE」、2013年にリリースされた「People,Hell And Angels」も大きな話題となりましたが、本作はそれに続く第3弾。彼は様々な場所でジャム音源を残していたということで膨大な量の未発表音源が残っているそうなのです。そんな未発表音源がこうやって整理されて正式な形でアルバムとしてリリースされるというのは、やはりファンとしてはうれしいことでしょう。

今回のアルバム、収録曲の多くが後にバンド・オブ・ジプシーズになることで知られるビリー・コックス、バディ・マイルスとのトリオで収録されています。アルバムの冒頭に収録されている「MANNISH BOY」などはまさにそのトリオによって1969年に行われたセッションの模様を収録したナンバー。ただ、このナンバーもそうなのですが、「STEPPING STONE」など、新しいメンバーとのセッションということもあるのでしょう、演奏が全体的に明るく陽気な雰囲気がつたわってきます。新しいメンバーとのセッションはやはり希望に満ちており楽しかったということなのでしょうか。なによりも音楽を演れることの楽しさが伝わってくるようです。

セッションの楽しさが伝わってくるという意味では「$20 FINE」「WOODSTOCK」も同様。こちらはスティーヴン・スティルスとのセッションとなっており、2人の意気投合したセッションからは演奏していることへの楽しさも伝わってくるように感じます。

またアルバムとして、特に後半の聴きどころだったのが「THINGS I USED TO DO」「GEORGIA BLUES」。「THINGS I USED TO DO」はジョニー・ウィンターたちとのセッションということですが、正統派のブルースナンバーなこの楽曲。語るようなギターも印象的ですが、ブルージーなジミの歌声も印象に残ります。また、後半のハイライトともいえるのが「GEORGIA BLUES」。こちらはシャウト気味のボーカルが印象に残るナンバーなのですが、ブルージーなギターサウンドも非常に力強く、とにかく熱量の多いパワフルなセッションに仕上がっています。

さらにラスト前「SEND MY LOVE TO LINDA」はラフなデモ音源的な録音となっているのですが、そのギターサウンドは後のグランジにもつながりそうなサウンドとなっており、さらにラストの「CHEROKEE MIST」はエスニックな雰囲気が漂うサイケなナンバー。どちらも彼の音楽性の広さが垣間見れます。

未発表音源集の第3弾ということもあるのでしょう、正直、聴いていて素直にその演奏にカッコよさを覚えるという点では以前2作品の方が上だったと思います。ただ、上にも書いたとおり、とにかくセッションの楽しさを味わうかのような陽気なナンバーが多く、聴いていてこちらも楽しくなるような楽曲が多かったように思います。もちろん本作も彼の魅力が存分に味わえるアルバムであることは間違いないでしょう。

ちなみに本作、「VALLEYS OF NEPTUNE」、「People,Hell And Angels」とあわせて「未発表音源3部作」と称されているようですが、未発表音源集はこれで一区切りということでしょうか。ただ、まだまだ彼には多くの未発表音源が残されているようなので、今後も期待してしまうのですが・・・さてさて・・・。

評価:★★★★★

Jimi Hendrix 過去の作品
VALLEYS OF NEPTUNE
People,Hell And Angels
MIAMI POP FESTIVAL(THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE)


ほかに聴いたアルバム

2017 Grammy Nominees

毎年リリースされているグラミー賞のノミネート曲をあつめたオムニバスアルバム。こちらはその2017年バージョン。毎年、アメリカの、引いては世界的な音楽シーンの状況を俯瞰でき、ミュージックシーンの充実度を測るにはもってこいのアルバムなのですが、2017年バージョンはここ数年来、まれにみる不作ぶり。特にここ数年、音楽シーンには新たな才能が続々とあらわれてくる盛況ぶりを感じられただけにその落差は激しいように思います。冒頭のBeyonce feat.Jack Whiteによる「Don't Hurt Yourself」は文句なしにカッコいいのですが、その後はいまひとつ。後半のカントリー勢を含めてメロディアスな曲が多く、それなりに聴かせるものの平凡で目新しさはありません。

ここ数年で一番の不作だった2011年ほどの悪さはないものの、それ以来のいまひとつぶりが気になります。2018年以降にもっともっとおもしろいミュージシャンが世に表れてくることを期待したいのですが・・・。

評価:★★★★

Grammy Nominees 過去の作品
2011 GRAMMY NOMINEES
2012 GRAMMY NOMINEES
2013 GRAMMY NOMINEES
2014 GRAMMY NOMINEES
2015 GRAMMY NOMINEES
2016 GRAMMY NOMINEES

American Utopia/David Byrne

元Talking Headsのボーカリスト、David Byrneの14年ぶりとなるソロアルバム。渋みのあるボーカルを前面に押し出してメロディーを聴かせるような構成。ただ、所々トライバルな要素やエキゾチックな要素なども飛び出してひとひねりあるユニークなサウンドもまた聴かせどころになっています。全体的に派手さはないものの、ベテランらしい味のある1枚となっていました。

評価:★★★★

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