アフリカ的なサウンドを加えて
Title:Black Panther: The Album
今回紹介するアルバムは、今年公開された映画「ブラック・パンサー」にちなんだアルバム・・・といってもいわゆるサントラ盤ではなく、今、もっとも注目を集めているラッパーといってもいいKendrick Lamar プロデュースにより、映画にインスパイアされた曲を集めたアルバム。一部は映画にも使用されたようですが、基本的には映画本編とは直接関係ないアルバムで、ケンドリックの曲も多く収録されているため、Kendrick Lamarの事実上の新作的立ち位置でも注目を集めています。
そのため楽曲的にはまずは彼らしいといえる重低音のリズムのシンプルなサウンドが主軸になっているHIP HOPが中心となっています。また、例えばアルバムの冒頭を飾るタイトルチューンの「Black Panther」が、映画の主人公になりきって心境を語るというスタイルの作品になっており、内省的な楽曲も目立ちます。
ある意味、そういう意味でもケンドリックのアルバムらしい内容になっているのですが、一方で大ヒット映画のタイトルを冠したアルバムだから、ということでしょうか、歌モノも多く取り入れたポップな楽曲も目立ちます。例えば2曲目の「All the Stars」はケンドリック所属のレーベルの女性シンガーで、昨年リリースされた「Ctrl」が大きな話題となったSZAが参加。伸びやかでメロディアスなポップソングを聴かせてくれます。
また「I Am」では今、イギリスで注目のミュージシャンとして話題を呼んでいるJorja Smithが参加。気だるげなボーカルで感情たっぷりの歌声を聴かせてくれますし、「Bloody Water」ではかのJames Blakeが参加し、メロウな歌声を聴かせてくれます。
そしてここまで様々なミュージシャンをあげてきたことからもお分かりかと思いますが今回のアルバム、もうひとつの特徴としてKendrick Lamarを軸として様々なミュージシャンが参加し、アルバムに彩りを加えています。
そんなゲスト勢の中で目を引くのが今回、南アフリカのミュージシャンが多く参加しているという点でしょう。例えば「X」では南アフリカのMC、サワディが、「Opps」では同じく南アフリカのユーゲン・ブラックロックが参加。もともと映画の舞台がアフリカということでアフリカ的なものを意識しているのでしょう。実際、1曲目の「Black Panther」も最初、トライバルなリズムが薄く流れています。
個人的にこのアルバムの中で一番強い印象を受けた「Redemption」でも南アフリカの女性ラッパーBabes Wodumoが参加しトライバルなラップを聴かせてくれます。この曲はアフリカ的なリズムを入れつつ、メロディアスな歌が流れてポップに仕上げているという意味でもこのアルバムを代表するような作品と言えるかもしれません。
ただ、アフリカ的なサウンドを意識しつつも、基本的にはアメリカのメインストリームなHIP HOPに準じた楽曲が並んでおり、そういう意味ではアフリカ的なアフロサウンドを上手く融合させつつも、非常に聴きやすいアルバムに仕上がっていたと言えるかもしれません。ポップな楽曲が多いだけに、ともすればKendrick Lamarのアルバムよりも聴きやすく感じる方も多いかも。個人的にはポップなメロもさることながらアフロなサウンドも非常に心地よく、最初から最後まで楽しめたアルバムになっていました。Kendrick Lamarの新作的な立ち位置で注目すべき傑作です。
評価:★★★★★
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