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2018年4月30日 (月)

フェラ・クティの息子たち

主に1970年代から80年代にかけて活躍し、アフロビートの創始者としても名高いナイジェリア出身のミュージシャン、フェラ・クティ。彼は1997年にわずか58歳という若さでこの世を去りましたが、アフロビートという音楽は世界的に広まっていきました。そして、そんな彼の音楽を直接受け継いだのが彼の息子たち。その彼の音楽を受け継いだ長男、フェミ・クティと末の息子、シェウン・クティが相次いでアルバムをリリースしたということで話題となりました。

Title:BLACK TIMES
Musician:SEUN KUTI&EGYPT 80

まず末の息子、シェウン・クティのニューアルバム。幼少の頃からフェラ・クティのステージに立ち、彼のバンド、EGYPT80を引き継きついでいます。さすがに父親のような30分近い長尺の曲はありませんが、1曲あたり7分から9分程度の長い曲が多く、ミニマル的なサウンドで高揚感をあげて盛り上がるというスタイルはまさにフェラ・クティのスタイルを引き継いでいます。

全体的にホーンセッションを入れて明るく盛り上がるスタイルの曲が多く、軽快なサウンドが特徴的。昔、彼のステージはフジロックで一度見たことがあるのですが、そのアゲアゲなステージに我を忘れるほど踊ったことを覚えていますが、その高揚感はこのアルバムでも伝わってきます。

彼のアルバムを聴くのはこれが3作目。以前の作品は非常にあか抜けたサウンドだったという印象を受けました。特に前作はR&Bやラップなどの要素を入れて、いわば西洋音楽に近づいたスタイルを感じました。ただ、今回のアルバムに関してはそんないかにも西洋音楽的なR&B的な雰囲気やラップ的な要素は薄く感じます。むしろアフロ・ビートらしさを強く押し出したと言えるかもしれません。もっとも、全体的にあか抜けた雰囲気を醸し出している点は変わりありませんが。

また、意外とポップなメロディーラインもしっかりと聴かせてくれます。特に「Kuku Kee Me」「Bad Man Lighter(B.M.L.)」などではメロディアスなフレーズが印象に残る楽曲になっており、いい意味での聴きやすさを感じました。

今回ももちろん、魅力たっぷりのアフロー・ビートをしっかりと楽しめる傑作アルバム。父親の遺伝子はしっかりと受け継がれていることをあらためて強く感じました。

評価:★★★★★

SEUN KUTI&EGYPT80 過去の作品
FROM AFRICA WITH FURY:RISE
A Long Way To The Beginning(ロング・ウェイ・トゥ・ザ・ビギニング~始まりへの長い道のり)

Title:ONE PEOPLE ONE WORLD
Musician:FEMI KUTI

で、こちらはフェラ・クティの長男、フェミ・クティ。すでに御年55歳。シェウン・クティは36歳ですから兄弟とはいえ19歳の年の差があるわけです(ちなみに腹違いです)。彼もまた、フェラ・クティの生前、彼とともにバンド活動をしていたそうです。

シェウン・クティとフェミ・クティの一番わかりやすい違いは曲の長さ。1分あたり10分近い楽曲が並ぶシェウンの曲と比べると彼の曲は1曲あたり4、5分というポップソング志向。そのためミニマルなサウンドでどんどんと盛り上げるアフロ・ビートの特徴からすると高揚感が長く続かないという点でちょっと物足りなさを感じる部分も無きにしも非ずなのですが、その分、ポップなメロで聴きやすさを感じるアルバムになっています。

もちろん彼の楽曲に関してもホーンセッションを入れた軽快なファンキーなリズムというアフロ・ビートをしっかりと聴かせてくれます。そしてそんな中、メロディーラインもポップという点もシェウン・クティと共通項と言えるかもしれません。

ただ、彼の楽曲はそんな中でも55歳という年齢ということもあるのでしょうが、どこか大人らしい渋みのあるメロディーとサウンドが印象に残ります。メロディーに関しても比較的哀愁感の強いメロでしっかりと聴かせるようなスタイルがメイン。またサウンドに関してもアフロ・ビートのみならずジャズ的な要素を感じます。

同じアフロ・ビートを基調にし、フェラ・クティの遺伝子を引き継ぎつつも、シェウンとフェミ、それぞれ音楽性が微妙に異なってくるのが非常にユニーク。今回、比較的近い時期に2枚のアルバムを聴き、その「違い」をより強く感じました。

もちろんその違いがそれぞれの個性であり、ユニークさも感じました。そしてシェウン同様、彼もまたしっかりと引き継がれたフェラの遺伝子も感じます。もちろんしっかりと聴かせる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

FEMI KUTI 過去の作品
NO PLACE FOR MY DREAM

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