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2018年4月23日 (月)

15年の沈黙をやぶった新作

Title:ロックブッダ
Musician:国府達矢

MANGAHEAD。この名前を聴いて「いたなぁ、懐かしい!」と感じる音楽ファンはどのくらいいるでしょうか。ただ、その名前に聞覚えがある方は少なからずいるかもしれません。1999年にシングル「Lines」でメジャーデビューした彼は、同年にアルバム「THE PLANET OF MANGAHEAD」をリリース。同作はプロデューサーに小林武史を起用。その当時はそれなりに話題を集めましたが、残念ながら売上的にはいまひとつ。その後、2003年には本人名義でアルバム「ロック転生」をリリース(こちらは未聴)したものの、その後はSalyuへの楽曲提供やインディーズからのシングルリリースなど活動は限定的なものとなりました。

そんな彼が15年ぶりとなるアルバムをリリース。MANGAHEADのアルバムはリアルタイムで聴いており、その名前を憶えていただけに「懐かしい!」という気分となり、何気ない気持ちでアルバムを聴いてみました。オルタナティブ傾向が強いロックサウンドを奏でていたミュージシャンということもあり、さほど期待はしていなかったものの、好みのサウンドだったらいいなぁ、程度の軽い気持ちで。

ただ、これが予想以上に素晴らしいアルバムにしあがっていました。まず耳を惹かれたのがアルバム冒頭を飾る「Rose」。ノイジーなエフェクトをかけつつ刻まれるロッキンなギターリフ。そしてそんなサウンドをバックに歌いあげる国府達矢のボーカルは浪曲風のこぶしを聴かせたもの。ロッキンなサウンドと和風なボーカルの微妙なバランスが非常にユニークに感じます。

この和風な雰囲気はアルバム全体を流れており、例えばタイトルからして和風な印象のある「祭りの準備」はどこか祭りの雰囲気を感じさせるビートにハイトーンのラップがのった独特なサウンド。非常にソリッドなサウンドに和風の要素を加味したラップというスタイルは、どこかZAZEN BOYSに通じるものを感じます。また「続・黄金体験」などもこぶしを聴いたサウンドと散文的な雰囲気のあるギターサウンドのバランスがユニークな楽曲に仕上がっています。

そんな「和」の要素を取り入れつつ、一方では「いま」ではファンキーなギターにスペーシーなシンセを重ねたサウンドを聴かせたり、「朝が湧く」ではギターのリフにエキゾチックな雰囲気を感じたりと様々な楽曲の要素を取り入れてきています。また、複雑なドラムのリズムやラップテイストのボーカルを取り入れた楽曲も目立ち、実験的なポップスという印象を強く受けます。前作「ロック転生」はかの七尾旅人に大きな影響を与えたとか。確かにタイプ的には七尾旅人と似たような方向性を感じます。

一方では「weTunes」では爽快でポップなナンバーになっており、アルバム全体としても意外とポップな要素を感じることが出来るのもユニークなところ。MANGAHEAD時代のアルバムも、プロデューサーが小林武史ということもあったのでしょうが、アルバム全体としてポップな雰囲気が強い作品になっており、国府達矢自身が強いポップスセンスを持ったミュージシャンだということに気が付かされます。

国府達矢が個性的でとてもおもしろい音を奏でるミュージシャンだということを実感させられるアルバム。15年ぶりのアルバムということですが、これだけの才能を持ったミュージシャンが、全くアルバムをリリースできなかったという事実が残念に思います。

ただひとつだけ気になることがあって、それは彼の声。正直言うと、彼の声は非常に弱く感じてしまいます。特に今回のアルバム、こぶしを利かせたボーカルの曲が多いのですが、そうなると彼のように線が細いシンガーはかなり不利だったような。このボーカルの弱さがマイナス要素になっていましたし、ひょっとしたら彼がいまひとつ売れなかった要因のひとつがこの声だったのかもしれません。

そういう気になる部分はあったものの国府達矢の実力がよくわかる文句なしの傑作だったと思います。なんでも今年はあと2枚、アルバムのリリースを予定しているのだとか。これは期待せざるを得ません!これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

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