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2018年4月28日 (土)

最近ではエヴァの作詞家としておなじみ

Title:ネコイズム~及川眠子作品集

最近ではTwitterでの積極的な発言で話題にのぼることも多い作詞家、及川眠子。アラフォー世代以上にはWinkの数多くのヒット曲でなじみある方も多いでしょうし、なによりももっと若い世代にとってはエヴァンゲリオンのテーマ曲の作詞家、というイメージが強いでしょう。既に作詞家として「大御所」の域に達している彼女ですが、そんな1980年代から一線で活躍した彼女の30年強に及ぶ活動を網羅した作品中がリリースされました。

内容はいまや彼女の代名詞ともなった「残酷な天使のテーゼ」からスタートし、ラストもエヴァンゲリオンのテーマ曲「魂のルフラン」で締めくくる内容。もちろんWinkのヒット曲「愛が止まらない~Turn it into love~」「淋しい熱帯魚」も含まれています。楽曲的にはバリエーションが多く、アイドルポップからAOR、ムード歌謡曲からキッズソングまで様々。職業作家らしい、いい意味でジャンルを全く選ばない仕事ぶりが目立ちます。

さてそんな及川眠子の代表作を並べた今回のコンピレーション。「歌詞」という側面の共通項で全体が貫かれていますが、彼女の作品でまず感じられるのが歌詞にほとんど癖がない、という点でした。もちろん職業作家である以上、自らの個性をあまり強く押し出すことはできません。ただそれでも、例えば秋元康などは今時の若者言葉を積極的に利用して「今時感」を出そうという傾向がありますし、例えば松本隆なども歌詞全体に純朴な恋愛観が目立つなど個性を感じます(もっとも松本隆の場合、デビューは「職業作家」ではありませんが)。

ただ彼女の場合、このコンピを聴いても特に目立つような特徴はあまりありません。彼女の場合、特に90年代前半はWinkのイメージが強いためかアイドルポップを手掛けていることが多いのですが、このアイドルポップはいかにもアイドルらしいかわいらしく元気ある歌詞が目立ちますが、かと思えば池田聡に提供した「僕は君じゃない」ややしきたかじん「東京」などではしっかりと大人の世界を描いています。

少年隊に提供した「PGF」などはしっかりといかにもジャニーズ系らしい歌詞に仕上げていますし、ご存じ「残酷な天使のテーゼ」や「魂のルフラン」はよく公言されているようにエヴァンゲリオンを一切見ない状況で書いたにも関わらず、エヴァの世界観に沿ったような歌詞とバリエーションが豊富。いい意味で癖のない歌詞を書くからこそ、幅広いタイプのシンガーから作詞を求められるということでしょう。

作品的には90年代のアイドルポップが多い印象。90年代のアイドルシーンといえば、当時、「アイドル冬の時代」と呼ばれ、アイドルの大きなヒットがほとんどありませんでしたが、もしこの時代、アイドルがもっと売れていたら、おそらく彼女ももっともっと多くのヒット曲を書いていたんだろうなぁ、と思います。最近はゲーム「アイドルマスター」のキャラソンの作詞を手掛けるなど、相変わらずいい意味で仕事を選ばず職業作家として活動を続ける彼女。まだまだその活躍は止まらなさそうです。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

鯛~最後の晩餐~/小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド

ラジオDJなどで活躍し、その渋い声とネイティブ顔負けの端正な英語の発音で男でも思わず聴き惚れてしまうトークを聴かせてくれる小林克也。そんな彼はかつてザ・ナンバーワン・バンドというバンドを率いて音楽活動をしていたのですが、25年ぶりとなるアルバムをリリースしてきました。御年77歳となる彼。ユニークな言葉遣いのセンスやウィットでシニカルな視点は相変わらずでその年齢を感じさせないパワーを感じますが、サウンドにしても歌詞にしても若干80年代的なものを感じてしまうのは否めません。ただ、「夢」ではともすれば上の世代にとっては批判の的となりそうな「お金をつかわない」若者たちをむしろ肯定的に描いており、ここらへんのセンスには若さを感じます。インタビューなどで「これが最後になる」と語っていますが、いや、是非80歳になってからも活動を続けてほしいなぁ・・・。まだまだお元気で!

評価:★★★★

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