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2018年3月24日 (土)

ボーカルは日本人ティーンエイジャー

Title:Superorganism
Musicain:Superorganism

また一組、イギリスから要注目のバンドがデビューしました。その名はSuperorganism。その名前からしてなかなか刺激的なグループですが、まず日本においてその名前が注目されたのがボーカルがOrono Noguchiという日本人のティーンエイジャーの女の子という点でしょう。アメリカ在住の彼女が、インターネットを介して他のメンバーと知り合ったとか。ほかのメンバーもイギリス、韓国、オーストラリア、ニュージーランドと多種多様な出自を持つ8人組のグループだそうで、ネットを介して知り合い、ネットを介して楽曲制作をしているそうです。インターネットというとネガティブな側面も最近は目立っているのですが、普通なら知り合うことのないようなワールドワイドなメンバーが集い、あらたな音楽を生み出しているというのはインターネットのポジティブな側面だと言えるでしょう。

楽曲は様々な音をサンプリングして展開していくアバンギャルドさも感じるポップソングといった感じ。イメージとしてはGorillazに近い方向性を感じます。特にラップは入らず、バックにはバンドサウンドも流れていますが、音楽の構成的にはHIP HOP的な影響を強く感じるポップソングになっています。

そんなサウンドは全体的には軽快でポップ。決して難解な雰囲気や必要以上にアバンギャルドな方向性に走っている感じではなく、音の使い方などはどこかユーモアさを感じます。ジャンル的には一言「インディーポップ」という言い方もできそうですが、ギターロックともHIP HOPともポップとも違った、様々な音を取り入れた自由度を感じさせるポップソングになっていて、いい意味でのこだわりのなさが今風と言えるかもしれません。

そしてどうしても注目したくなるOronoのボーカルですが、正直言えば、日本人っぽさはほとんどありません。彼女の非常にダウナーで気だるい感じのボーカルもこのバンドの大きな特徴。ある意味、ティーンエイジャーらしい若々しさは感じませんが(笑)、どこか今の時代に対してつまらなさを感じているように感じている点は、逆にティーンエイジャーらしいと言えるかもしれません。

そんな彼女のボーカルによって歌われるメロディーラインは全体的に気だるさは感じるものの至ってポップでメロディアス。このポップなメロディーも本作のポピュラリティー、聴きやすさを作り出す大きな要素になっていました。ちなみに上でGorillazに近いと書いたのですが、サイケだけど非常にポップなメロディーを書いているという点でMGMTとの近似性を指摘する向きも強いようです。

ちなみにOronoのボーカルには日本人らしさを感じない、と言いましたが、サンプリングの中で明確に「日本」なものがあり、それが「Nai's March」。この曲、首都圏のJR線の電車が駅を出発する時のアナウンスと出発ベルがサンプリングされています。ただ、この出発ベルのサンプリングって、どこかほかの曲でも聴いたような記憶があり、今の海外にとってはあの通勤電車の出発の音が日本の象徴のひとつなのかな、なんて思ったりもしました。

ボーカルが日本人だから、という点で日本では注目されていますが、本国イギリスでもアルバムチャートで25位に入ってくるなどそこそこの売上を記録しており人気を確保している模様。前述のGorillazやMGMTと比べてしまうと物足りなさも感じるのですが、ただユーモラスなサウンドには彼女たちの個性も感じられ、これからが楽しみなバンドなのは間違いありません。ボーカルが日本人だからという内向きな理由ではなく、将来有望な新人バンドということで要注目だと思います。

評価:★★★★★

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