レトロな雰囲気も漂いつつ
Title:Get With The Times
Musician:BEKON
昨年、おそらくもっとも話題となったアルバム、ケンドリック・ラマーの「DAMN.」。そのアルバムの14曲中8曲に参加して大いに話題となったプロデューサーがいました。それがBEKONという、ちょっと奇妙な名前のプロデューサー。本名ダニエル・タネンバウムで作曲も行い、ケンドリック・ラマーのほかにEMINEMの「Recovery」やDr.Dreの「Compton」にも参加しており、今、もっと注目を集めている彼のデビューアルバムが本作となります。
まず、なんかジャケット写真がいいですね。タキシードからピストルを取り出しているスタイリッシュだけど怪しげなセルフポートに、黄色の背景に赤字でミュージシャン名とアルバムタイトルという原色の組み合わせ。全体的な構成にもどこかレトロさが漂います。
アルバムはそんなちょっとレトロな雰囲気の漂うインストナンバー「Madame Butterfly」からスタート。そしてまず強い印象を残すのが先行配信曲でありPVも作成された3曲目の「Cold As Ice」。ハイトーンボイスのとろけるようなボーカルとメロディーライン。シンプルに流れるエレクトロテイストのサウンドとあわせて全体的にドリーミーな雰囲気が漂うナンバー。ちょっと一昔前のソウルテイストも漂う楽曲になっており、懐かしさを感じつつ、聴きながらその美しいメロディーとボーカルにとろけてしまいそうになる楽曲です。
基本的にはこの「Cold As Ice」で聴かせてくれるような、美しいハイトーンボイスを聴かせつつ、ゆっくりとソウルテイストの美しいメロディーラインを聴かせてくれる楽曲が並びます。「Cold As Ice」のあとのインターリュード曲を挟んでつづく「Oxygen」も同じようなタイプのナンバーですし、タイトルチューンの「Get With The Times」やラストを飾る「In Your Honor」も似たようなタイプのナンバーになっており、アルバム全体の方向性を決めています。
一方では「17」のような、アコギのアルペジオで聴かせる、どちらかというとギターポップ寄りのナンバーがあったり、フレンチポップ色の強い「Candy and Promises」のような曲があったりと、なにげに音楽的に広いバリエーションを聴かせてくれます。この音楽的な引き出しの多さこそ、シンガーソングライターというよりも、まずほかのミュージシャンへの楽曲提供やプロデューサーとして名を知らしめた彼らしい「プロ」の仕事ぶりと言えるのかもしれません。
ただここらへんの曲に関しても基本的にはドリーミーな雰囲気の美しいポップチューンにハイトーンボイスというスタイルは共通しており、アルバム全体としての統一感はしっかりと保たれています。また、全体的にレトロな雰囲気は漂わせつつも、HIP HOP的な要素を取り入れたり、今風のリズムを強調したトラックを入れたりと今の音楽性にもしっかりとアップデートしており、そういう意味では懐かしさを感じさせつつ全体的には今の音楽としてしっかりと成立する内容になっていました。
話題のプロデューサーということも納得の聴いていてその美メロにとろけそうになる傑作アルバム。これからもますます彼は様々なミュージシャンからおよびがかかりそうですね。その名前、いまから注目していてもよさそうです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
AVICI(01)/AVICII
2016年いっぱいでDJとしてのツアーやライブ活動の終了は宣言してものの、音楽活動は継続しているようで本作は配信限定でリリースされたアルバム。ちなみに日本ではこれにボーナストラック1曲を加えて「WITHOUT YOU」というタイトルでCDリリースされています。
基本的にはいままでのAVICII同様、バリバリに踊らせるような楽曲ではなくアコギの音などを取り込んでメロディアスにポップな歌を聴かせるような構成。所々に入るリズミカルなエレクトロサウンドの音色が心地よく楽しめるアルバムで、全体的にはおとなしいポップアルバムという印象ですが、最後まで素直に楽しめるアルバムでした。
評価:★★★★
AVICII 過去の作品
True
True:Avicii By Avicii
STORIES
CultureII/Migos
おそらく今、もっとも注目を集めるHIP HOPミュージシャンの一組、Migos。トラップという注目を集めるジャンルを代表するミュージシャンで、前作「Culture」も昨年の各種メディアで軒並みベストアルバムの上位にランクインしてきました。そんな彼らの早くもリリースされた最新作は基本的には前作から連なる内容。ダークな雰囲気に重低音を強調したビートがカッコいいナンバーが並びます。特に後半に関してはジャジーな楽曲が並び、音楽性の幅を感じます。前作同様、中毒性あるサウンドを聴かせてくれる作品で、今年のベスト盤候補としてまた取り上げられそうな予感もします。
評価:★★★★★
Migos 過去の作品
Culture
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