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2018年3月19日 (月)

バンドとして一区切りのベスト盤

Title:赤飯
Musician:赤い公園

最近、続々とデビューしてくるガールズバンド勢の中で、独特の音楽性が高い評価を受け、デビュー以来、着実に人気を獲得してきた女性4人組ガールズバンド赤い公園。ただ昨年、非常に残念なことにボーカルの佐藤千明が脱退を発表。いままでの4人での活動にひとまず幕を下ろした彼女たちがひとつの区切りとして発表したのがこのベストアルバムです。

赤い公園の音楽的な大きな魅力といえば、プログレ、ポストロック、ギターロック、歌謡曲、J-POPなどの要素を楽曲に取り込みつつ、楽曲全体としては聴きやすくインパクトあるポップソングにまとめあげているという点でしょう。またその雑多な音楽性のため、基本的にポップなギターロックという共通軸はあるものの、楽曲によってその雰囲気はかなり異なってきます。

今回のベストアルバムも全22曲入りで彼女たちの代表曲が収録されていますが、ベスト盤でよくありがちなリリース順という形ではなく、アルバム全体としてひとつの流れを持っているように構成されています。まず1曲目「NOW ON AIR」は音楽の楽しさを歌った爽快なギターポップチューン。続く「KOIKI」もノイジーなギターリフでロック的な要素を聴かせつつ、メロディーはあくまでもインパクトあるメロディアスというポップな楽曲が続きます。

そんな感じで前半なポップなメロディーがインパクトのある楽曲が続きます。そんな中でも「サイダー」のようなノイジーなサウンドが楽曲全体を流れるような曲だったり、「黄色い花」のようなファンキーなギターやストリングスでソウル的な要素を感じる曲もあったりと、彼女たちの音楽性の幅の広さを感じます。

中盤は一転、「風が知ってる」のようなダークな雰囲気のサイケ調のナンバーがあらわれたり、「闇夜に提灯」のようなポストパンク的な楽曲が登場したり、「のぞき穴」のようにサイケやハードコア的な要素も感じられる曲が登場してきたりと、彼女たちの「コア」な部分が顔をのぞかせるような楽曲の展開となっています。

さらにその後は歌詞もユニークな「西東京」「絶対的な関係」のようなへヴィーなサウンドに和風なメロディーラインがインパクトある楽曲が続いたかと思えば、「カメレオン」はホーンセッションでリズムを刻む軽快な楽曲も顔を覗かせます。

そして終盤は「ランドリー」「透明」のようなミディアムチューンの楽曲に。「デイドリーム」のようなタイトル通りのドリーミーな作風も耳を惹きます。ラスト前の「東京」はまたポップなメロがインパクトを持つギターポップチューンを聴かせ、最後の「journey」はダイナミックなバンドサウンドでスケール感ある楽曲。現在のメンバーでのラストシングルとなったこの曲は、メンバーそれぞれの新たな旅立ちに対するエールを感じさせる曲で締めくくりとなりました。

そんな感じで全22曲、赤い公園というバンドの持つ様々な音楽性と魅力が凝縮されたベスト盤になっていました。ともすればバラバラになりがちな幅広いタイプの音楽を奏でている彼女たちですが、楽曲を貫くポップなメロディーラインと佐藤千明の透明性あるボーカルのため、赤い公園らしさは終始一貫しています。基本的に赤い公園の音楽的キーパーソンは津野米咲のため、今後も音楽的な方向性は大きくは変わらないのでしょうが、ただ佐藤千明のボーカルも彼女たちの魅力のひとつだっただけに彼女の脱退というのは非常に残念。ただ、今後もそれぞれの活動を続ける彼女たち。赤い公園もソロとなった佐藤千明も、これからの活動に期待したいところです。

評価:★★★★★

赤い公園 過去の作品
透明なのか黒なのか
ランドリーで漂白を
公園デビュー
猛烈リトミック
純情ランドセル
熱唱サマー


ほかに聴いたアルバム

相聞/中島みゆき

中島みゆきの2年ぶり42枚目となるフルアルバム。基本的にはいつもの中島みゆき節といった感じで、哀愁感たっぷりのメロディーラインにダイナミックなアレンジで力強く歌い上げるスタイルとよくも悪くも大いなるマンネリといったスタイル。女性の心を低気圧に例えば「移動性低気圧」や可愛らしくも悲しい歌詞の「ねこちぐら」などインパクトある聴かせる歌詞をきちんと織り込んでくるあたりは、見事の一言。ファンにとっては安心して楽しめるアルバムに仕上がっています。

評価:★★★★

中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~
問題集
組曲(Suite)

中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』
中島みゆきConcert「一会」(いちえ)2015~2016-LIVE SELECTION-

STEREO/大橋トリオ

デビュー以来、コンスタントに作品をリリースし続ける大橋トリオの約11ヶ月ぶりとなるニューアルバム。今回もソウルやジャズの要素を取り込んだポップソングがあったかと思えば、アコギやアコギでしんみりと聴かせるようなナンバーやダンサナブルなポップチューン、さらにはラップを取り入れた曲もあったりと音楽性豊か。そんな中でもあくまでもメロディーを聴かせる大人のポップに終始しているのも大きな魅力となっています。今回もいい意味で安定感のある傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue

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コメント

佐藤千明さんの脱退は本当に惜しまれます。

投稿: ひかりびっと | 2018年3月21日 (水) 19時29分

>ひかりびっとさん
本当に残念です。

投稿: ゆういち | 2018年3月27日 (火) 23時40分

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