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2018年3月16日 (金)

タイトルに偽りなし

Title:キラーチューンしかねえよ
Musician:ゴールデンボンバー

ご存じそのユーモラスなパフォーマンスが大きな話題を呼んだ「エアーバンド」ゴールデンボンバー。正直言ってしまうと、一時期に比べると人気に関しては一段落した感もあります。約2年半ぶりとなるニューアルバムである本作も最高位2位を記録したものの初動売上は前作から大きくダウンしてしまっています。

ただ、ユーモラスなパフォーマンスに関しては話題にのぼることが多く、例えばLINE MUSICスタンプで曲が流れる限度の8秒だけの長さの曲「出逢って8秒」をLINE MUSICスタンプで発表したかと思えば、8秒限定ライブというライブを実施したり、本作でも収録されている「#CDが売れないこんな世の中じゃ」でミュージックステーションに出演した時は、同曲の無料ダウンロード先が記載されたQRコードをテレビに映したりと、そのユニークなパフォーマンスはむしろ勢いを増しているように思います。

今回のアルバムに関して言っても、楽曲的な勢いはむしろ以前よりも増しているようにすら感じます。彼らの音楽のスタイルは歌謡曲風の平凡なJ-POPという印象なのですが、今回のアルバムでは、例えば「燃やして!マイゴッド」ではラテンの雰囲気を強くして正統派歌謡曲の方向性をより深化させたり、一方では「スイートマイルーム」では90年代J-POP路線をより押し進めて、むしろJ-POPのパロディー的な感じなまでに成立させたりしています。

要するに平平凡凡な歌謡曲、J-POPという楽曲をむしろ逆手にとって、歌謡曲、J-POPらしさをさらに強調した結果、王道の歌謡曲やJ-POPのパロディー的な楽曲にまで仕上げていました。また一方、「#CDが売れないこんな世の中じゃ」や「お前を-KOROSU-」はハードロックテイストの強い作品になっていますが、こちらも本格的なハードロックというよりも、ハードロックの王道を模倣したような作品に。こちらも彼ららしいユーモアテイストを感じました。

また一方、歌詞に関しても今まで以上にユーモアテイストを強く感じる曲が多く、ユーモラスさと真面目さがちょうどよいバランスに成り立っていました。例えば「やさしくしてね」は、すぐ傷ついてしまう今時の若者を皮肉ったようなユニークな歌詞に(ただ、心が弱っている時に聴くと、グッと来てしまいます)。先行シングルになっている「水商売をやめてくれないか」も水商売をやっている彼女を持つ彼氏の悲哀を歌ったユニークなテーマ。「スイートマイルーム」も爽快さを感じる別れのナンバーかと思いきや、叙述トリック的なオチが秀逸ですし、「誕生日でも結婚式でも使える歌」もタイトル通り、あえて具体的な状況設定をしないで「おめでとう」だけ歌われる歌詞が非常にユニークになっています。

メロディーの側面でも歌詞の側面でも、むしろいままでの楽曲がさらに成長を遂げており、ミュージシャンとしての大きな進歩を感じさせるアルバム。売上的には落ち着いてしまいましたがミュージシャンとしてはむしろ今、最も脂がのっているのではないか、とすら感じてしまいます。

間違いなくバンドとしての最高傑作。これだけの作品をリリースできるのなら、売上的にもまた回復してくるのでは?パフォーマンスもまだまだユニークなものを見せてくれそう。いろいろと、まだまだ今後が楽しみなグループです。

評価:★★★★★

ゴールデンボンバー 過去の作品
ゴールデン・アワー~下半期ベスト2010~
ゴールデン・アルバム
NO MUSIC NO WEAPON


ほかに聴いたアルバム

Sugar/浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS

浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS名義としては約2年半ぶりとなる新譜。さすがに以前のような異常なほどの多作を繰り返した結果、凡作を乱発する事態は落ち着き、本作も冒頭の「Vinegar」「Beautiful Death」が疾走感あるかなりカッコいいロックチューンに仕上がっています。ただ序盤の期待とは裏腹に、その後は結局いつも通り、くすんだ世界観の浅井健一らしい良くも悪くも大いなるマンネリ的な楽曲が並んでいるアルバムに。ただ、ここ最近のアルバムの中では一番出来はよく、バンドとしてのまとまりも感じさせるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

浅井健一 過去の作品
Sphinx Rose
PIL
Nancy
METRO(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)

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コメント

鬼龍院翔という一人のソングライターの音楽家としての力量にますます深みが増したバンド最高傑作と言ってもいい作品ですね。

投稿: ひかりびっと | 2018年7月 9日 (月) 17時31分

>ひかりびっとさん
ご感想ありがとうございました。

投稿: ゆういち | 2018年7月23日 (月) 23時16分

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